

バタフライドアを採用している車は、実は「スーパーカー専用のドア」だと思われがちですが、日本の大衆メーカーであるトヨタでも1990年代に量産車として採用した実績があります。
「上に開くドア=ガルウィング」と思っている方は多いですが、それは正確ではありません。上方に開くドアだけでも、大きく分けてガルウィングドア・シザードア・バタフライドアの3種類が存在し、それぞれに明確な構造の違いがあります。
ガルウィングドアは、ルーフとドアの上部が水平なヒンジで接続されており、ドアが地面と平行に近い状態で垂直に持ち上がります。1954年にメルセデス・ベンツ300SLが初めて採用した形式です。カモメ(ガル)が翼を広げた形に似ていることから、この名が付きました。
シザードアは、ドア前方のAピラー底部にある1点のヒンジを軸に、ドアが前方かつ垂直上方向に開く形式です。ハサミ(シザー)のような動きをすることから命名されました。ランボルギーニのカウンタックやアヴェンタドールで有名で、「ランボドア」と呼ばれることもあります。
バタフライドアは、Aピラーに沿った2点以上のヒンジを軸にして、ドアが「斜め外側かつ上方向」に開く点が最大の特徴です。開き切ったドアは地面と水平に近い状態になり、前から見ると蝶(バタフライ)が羽を広げたように見えます。
3種類の見分け方は比較的シンプルです。
| ドアの種類 | ヒンジの位置 | 開き方の方向 | 代表車種 |
|---|---|---|---|
| ガルウィングドア | ルーフ中央 | 真上 | メルセデス・ベンツ300SL |
| シザードア | Aピラー下部(1点) | 縦・前方 | ランボルギーニ カウンタック |
| バタフライドア | Aピラー(2点以上) | 斜め外側上方 | フェラーリ・ラ フェラーリ |
なお、マクラーレンが自社の車に採用しているドアは、一般的に「バタフライドア」と同一視されていますが、メーカーとしては「ディヘドラルドア(Dihedral Door)」という独自の名称を使っています。構造的にも、バタフライドアが2点のヒンジを使うのに対し、マクラーレンのディヘドラルドアは1点のヒンジで外側斜め上に開くモデルも存在します。名称の違いには注意が必要です。
初めてバタフライドアを採用したのは、1967年のアルファロメオ・ティーポ33/2ストラダーレです。ベルトーネのフランコ・スカリオーネがデザインした同車は、「世界一美しい車」とも称されることがあり、バタフライドアの歴史はここから始まりました。
バタフライドアが基本です。この構造的な違いをおさえておくと、車好きの会話でも知識を生かせるでしょう。
バタフライドアを採用した外国車を確認していきましょう。スーパーカーを中心に、多彩なモデルが存在します。
🏎️ フェラーリ・エンツォフェラーリ(2002〜2004年)
フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリに捧げられたモデルで、F1技術を惜しみなく投入したスーパーカーです。バタフライドアを採用し、乗降時に広いスペースが確保されています。生産台数はわずか400台。新車価格は約6,500万円と言われ、現在のオークション市場では3億円を超える個体も登場しています。
🏎️ フェラーリ・ラ フェラーリ(2013〜2016年)
フェラーリの頂点に立つフラッグシップモデル。F1由来のハイブリッドシステムを搭載し、最高出力は963馬力(エンジン800ps+モーター163ps)という驚異の数値を誇ります。新車価格は約1億7,000万円。全世界499台のみの限定生産です。バタフライドアを採用した、現代における最も象徴的なモデルのひとつです。
🏎️ マクラーレン・F1(1992〜1998年)
当時の市販車最速記録(最高速度391km/h)を記録した伝説の市販車です。中央の運転席を含む3シート仕様という独自のレイアウトで知られており、ディヘドラルドア(バタフライドアに相当)を採用しています。新車価格は当時の日本円で約1億円。現在のオークションでは20億円超で取引された例もあります。
🏎️ マクラーレン・720S(2017〜)
より現代的なモデルとして、マクラーレンのディヘドラルドアを継承。720psのツインターボV8エンジンを搭載し、0〜100km/h加速は2.9秒という性能を誇ります。カーボンファイバー製のモノコックボディで車重は軽く、実用的なスーパーカーとして評価が高いです。
🏎️ BMW i8(2014〜2019年)
BMWのプラグインハイブリッドスポーツカーで、同ブランド初のバタフライドア採用モデルです。3気筒ターボエンジンとモーターを組み合わせた先進的なパワーユニットを持ち、燃費は国土交通省モード値で13.7km/Lと、スポーツカーとしては優秀な数値です。比較的手が届きやすい価格帯(新車当時1,650万円前後)だったこともあり、日本でも一定の台数が販売されました。これは使えそうです。
🏎️ メルセデス・ベンツ SLRマクラーレン(2003〜2009年)
メルセデス・ベンツとマクラーレンの協業で誕生したグランドツアラー。626psの過給エンジンを搭載し、最高速度334km/h。カーボンセラミックブレーキや、バタフライドアを採用した高性能モデルです。日本での新車価格は約3,000万円台でした。
🏎️ マセラティ MC20(2021〜)
マセラティが2021年に発表したミドシップスポーツカーで、排気量3.0Lのツインターボ「ネットゥーノ」エンジンを搭載。最高出力は630ps、0〜100km/h加速は2.9秒です。バタフライドアを採用し、モダンなスーパーカーとしての存在感を放っています。
🏎️ GMA・T.50(2021〜)
マクラーレンF1のデザイナーであるゴードン・マレーが手がけた最新スーパーカー。3.9Lの自然吸気V12エンジンをリアに搭載し、専用の大型ファンが空力を制御するという独自設計で注目を集めました。世界限定100台で、価格は約3億円とも言われています。
採用モデルは多岐にわたりますね。
量産国産車としてバタフライドアを採用したのは、トヨタ・セラ(1990〜1994年)ただ1台です。それだけでも十分驚きですが、セラのバタフライドアには、現代のスーパーカーに引けを取らないほどの技術的なこだわりが詰まっています。
セラのベースは、1,300〜1,500ccクラスのコンパクトカー「サイノス」の派生モデルです。トヨタが若手エンジニアの自由なアイデアをそのまま製品化したという背景があり、全面ガラス張りのキャノピーボディとバタフライドアが最大の特徴となりました。
バタフライドアの設計も緻密です。セラのドアは開いたとき、上方向に61.47cm、横方向に42.74cmしか広がらない設計になっています。つまり、天井高が187.5cm以上あれば立体駐車場でもドアを開けることができます。立体駐車場でもドアを開けられる設計です。
重たいドアの開閉を快適にするため、油圧ダンパーを3箇所に設けた独自機構を採用。さらに「操作力温度補償ステー」という仕組みで、気温が変わってもドアの開閉に必要な力がほとんど変わらないよう工夫されています。冬の凍えるような朝でも、夏の炎天下でも、同じ感覚でドアを開けられるのは画期的な設計と言えます。
一方でセラの最大の弱点は「走る温室」と揶揄されるほどの室内の温度上昇です。全面ガラス張りのキャビンは直射日光を大量に取り込むため、夏場には強力なエアコンをフル稼働させても車内温度を快適に保つのが難しいという声があります。現代であれば、UVカットフィルムやIRカットフィルムを施工することで大幅に改善できます。
生産台数は4年間で約1万5,000台と決して多くなく、現在の中古市場ではレア車として扱われています。2020年代に入ってからはクラシックカーとしての人気が高まっており、状態の良い個体には100万円を超えるプレミアムが付くケースも増えています。
トヨタ・セラが日本唯一の存在です。
バタフライドアを採用した国産車としての希少性・技術的な個性から、マニア・コレクターからの注目度は年々増しています。将来の資産価値という観点でも、見逃せない1台です。
トヨタ博物館 公式 – セラの車両データベース(油圧ダンパーや温度補償機構の詳細)
バタフライドアを採用する車を購入・検討する際には、通常のヒンジドアとの違いをしっかり理解しておくことが大切です。
✅ メリット
最大のメリットは乗降性の高さです。ドアが斜め上外側に広く開くため、頭上に空間が確保されます。車高が極端に低いスーパーカーでも、体をかがめずに乗り込めるのがポイントです。シザードアより開口部が広く確保できるという点でも、乗降のしやすさは際立っています。
次に横方向のスペース節約が挙げられます。通常の横開きドアは、隣の車との隙間が少ないと大きく開けられませんが、バタフライドアは上に向かって開くため、左右の余裕が少なくても乗降が可能です。マクラーレンの正規ディーラーが公式に発信しているSNS投稿でも「横の車に当たらない」と明言しており、狭い駐車場でも意外と使いやすいことが知られています。
さらにボディ剛性への貢献もあります。ドアを上方に開く設計にすることで、サイドシル(車体の床面側面部分)を太く設計できます。これがボディ剛性の向上に直結し、スポーツカーに必要な剛性を確保しながら低重心を実現する手助けになります。
⚠️ デメリット
最も気になるのが立体駐車場での制限です。ドアが上方に大きく開くため、天井が低い機械式立体駐車場(天井高1.55〜1.6m程度)では、駐車後にドアを開けることができません。バタフライドア車を購入する際は、自宅や職場・よく使う駐車場の天井高を必ず事前に確認することが必要です。
また、雨天時の問題もあります。ドアが上に開く構造のため、雨が降っているときはドアを開けた瞬間に室内に雨水が入り込みやすくなります。通常のドアであれば雨よけになりますが、バタフライドアでは逆にドアが屋根の役割を果たせないため注意が必要です。
さらに修理・維持費の高さがあります。バタフライドアはヒンジ構造が複雑で部品点数も多いため、故障や損傷が起きた場合の修理費用は通常のドアと比べて高額になる傾向があります。スーパーカーの場合、ヒンジやダンパーの交換だけで数十万円になるケースも珍しくありません。
厳しいところですね。
購入後の後悔を防ぐためには、駐車環境の確認と維持費の試算が不可欠です。スーパーカー専門の輸入車ショップや国産の専門整備工場に相談しながら検討するのが確実です。
「普通の車をバタフライドア(またはガルウィング系ドア)に改造したい」と考える方も少なくありません。実際、市販のキットを使えば比較的手軽に改造できる仕組みが存在します。
市場には「龍鬼眼」などのブランドが販売するガルウィング・バタフライ系ドアキットが流通しており、日産スカイラインGT-R・フェアレディZ・シルビア、マツダRX-7・RX-8などの国産スポーツカーをはじめ、メルセデスやBMWといった外車にも対応した製品があります。
気になる費用についてですが、キット本体の価格は10数万円〜30万円台が相場です。ただし、専門工場での取り付け工賃が別途10〜15万円程度かかることが多く、総費用としては30〜50万円前後となるケースが一般的です。さらに車種や仕上がりのクオリティによっては、フェンダー加工なども必要になり、費用が上がることもあります。
| 費用の内訳 | 相場 |
|---|---|
| キット本体(左右)| 10万〜30万円 |
| 取り付け工賃 | 10万〜15万円 |
| フェンダー加工等 | 車種によって変動 |
| 合計目安 | 30〜50万円以上 |
気になるのが車検への影響ですが、ドアの開閉方向を変えるキットの多くは車検への影響がないとされています。ボディ全体のサイズが大きく変わるわけではなく、最低地上高が9cm以下になるわけでもないためです。ただし、車種・キットの精度・施工状態によっては車検NGになるケースもあるため、事前にショップや車検業者への確認が必要です。
これは使えそうです。改造を検討する場合は、まずバタフライドア系のカスタムに実績がある整備工場に相談し、取り付け後の保証がどうなるかも確認しておくと安心です。
注意点が条件です。なお、バタフライドア専用キットではなく、一般的な「シザードア(ランボドア)キット」との名称で販売されている製品の中に、実際の開き方がバタフライドアに近いものが含まれている場合もあります。購入前には動画や施工実績を確認しておくのが確実です。
バタフライドアを採用した車の多くは、単なる「見た目のインパクト」だけでなく、中長期的な資産価値(リセールバリュー)という観点でも注目に値します。これは購入前に多くの人が見落としがちな視点です。
フェラーリ・エンツォフェラーリを例に挙げると、2003〜2004年の新車価格は約6,500万円でしたが、2020年代のオークション市場では3億円以上の落札事例が確認されています。マクラーレンF1に至っては、新車時の価格(約1億円)に対して、現在は20億円超での取引事例があります。こうした超高額スーパーカーにおいて、バタフライドア(またはディヘドラルドア)はモデルのアイコン性を高める重要な要素となっています。
日本の量産車であるトヨタ・セラも、生産終了から30年以上が経過した現在、良好なコンディションを維持した個体は100万円以上の価格で取引されるケースが増えており、かつての「珍車」から「旧車・コレクタブルカー」という位置付けへと変化しています。
もちろん、すべてのバタフライドア採用車が値上がりするわけではありません。意外ですね。BMW i8は生産終了(2019年)後も中古価格が比較的安定しており、300〜500万円台で流通しています(2020年代中盤時点)。これは量産台数が比較的多く、希少性が低いことが一因です。
つまり、「バタフライドア=高リセールバリュー」というわけではなく、生産台数・ブランド価値・モデルの希少性が総合的に影響します。ただ、バタフライドアという特徴的なデザイン要素が、そのモデルのアイコン性を高める方向に作用していることは確かです。
資産価値まで考慮した上でバタフライドア車を選ぶなら、限定生産モデルや生産終了モデルの中古車情報を、信頼できる輸入車専門業者やオークションプラットフォームで継続的にチェックしておくのが賢明です。
カーセンサーやGoo-netなど国内中古車サービスで「バタフライドア」「ディヘドラルドア」などのキーワードで定期検索する習慣を持つのも一つの方法です。
Wikipedia – バタフライドアの採用車種一覧(フェラーリ・マクラーレン・GMA T.50などを網羅)

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