

旧車フォードの整備でいちばん事故りやすいのは、症状の「原因」ではなく「順番」を飛ばすことです。たとえば始動不良ひとつ取っても、燃料・点火・圧縮のどれが崩れているかで作業は別物になります。現場では、(1)症状の再現条件(冷間/温間、雨天後、アイドル直後、負荷時)(2)バッテリー電圧と電圧降下(3)燃圧と点火波形、のように“計測で絞る”方が、結果的に最短で安く直ります。
とくに日本ではフォードの正規ディーラー網が消滅しており、車両ごとの仕様差を整備工場側が吸収しないといけません。フォードは2016年末までに日本の事業から撤退する方針を発表しており、以降は「正規の窓口に投げて解決」が難しい前提で段取りする必要があります。
整備士向けに実務で効くコツは次の通りです。
参考リンク(日本撤退の経緯とアフターの前提を確認できる)。
米フォード、日本事業について正式発表。2016年末までに撤退…
旧車フォードは「壊れること」より「部品の確定と手配」で日程が伸びがちです。ここで重要なのは、年式・型式の文字情報だけに頼らず、VIN(車台番号)と現物情報で適合を取りに行く運用に切り替えることです。VINから適合部品を手配できることを明示しているパーツ供給業者もあり、旧車や希少車まで含めて修理パーツに対応する旨が案内されています。
部品入手の段取りで、整備側が押さえる“ミスりどころ”は次です。
実務のおすすめは、見積の段階で「VIN」「現物写真(コネクタ/取付部/銘板)」「寸法(プーリー幅等)」の3点セットを顧客からもらい、手配ミスの確率を落とす方法です。これだけで、再入庫や納期遅延による工数ロスが大きく減ります。
参考リンク(VINからの適合確認・旧車までの部品供給方針の確認に使える)。
https://www.ecruizauto.com
旧車フォードの代表格としてマスタングは情報量が多く、整備の“型”を作りやすい車種です。国内の整備事例でも、始動不良でのオルタネーター交換、冷却水の減り(サーモスタットケース周辺の水漏れ)、ラジエーター水漏れ、キャブレター交換など、典型トラブルが繰り返し登場します。
整備の現場でありがちなポイントを、エンジン周りに絞って深掘りします。
意外と効く小技は「過去の不調をあえて再現する」ことです。顧客が“たまに”と言う不調ほど、工場内の短時間点検では再現しません。再現条件(負荷・温度・湿度・電圧)を仮説立てして、わざと条件を寄せると、結果的に1回で直せます。
旧車フォードで電装が絡むと、原因が「部品単体」ではなく「配線の劣化・増設・アース不良」になりやすいのが特徴です。実際にマスタングの整備事例でも、エンジン始動不良からオルタネーター交換に至ったケースが紹介されています。
電装診断をブレさせないための基本は、配線図に沿って“電源→アース→負荷”の順で電圧降下を見ることです。電圧が出ている/出ていないだけでは、腐食したカシメや半断線のような「軽負荷ではOK、重負荷でNG」を取り逃します。旧車はライトや電動ファン追加など後付け配線が混じりやすいので、純正系統と増設系統を切り分けたうえで測定点を決めます。
配線図やトルクスペックを引く資料として、Haynesなどの整備マニュアル(配線図付き)が流通していることもありますが、購入先によって情報の鮮度や適合範囲が違うため、必ず対象年式・エンジンの範囲を確認してから採用すると安全です。
参考)【2026年最新】Yahoo!オークション -マスタング マ…
検索上位が「部品がある/ない」「どこで直す」に寄りがちな一方で、現場で効く独自視点は“文化差を前提にした説明設計”です。旧車フォードは、オーナーがDIY経験者だったり、逆に「全部お任せだが部品はネットで買う」タイプだったり、関与度合いが極端になりやすい傾向があります。そこで整備士側は、作業そのもの以上に「部品持ち込みの可否」「不具合再発時の扱い」「互換部品の選定理由」を文章化して合意しておくと、炎上が激減します。
また、日本では正規ディーラー網が消滅したという事実が、修理の難しさを“技術”ではなく“運用”に変えています。撤退後もアフターサービス等を提供するとされた経緯はあるものの、整備の窓口が一元化されない以上、工場ごとの情報資産がそのまま品質になります。
参考)米フォード、日本事業について正式発表。2016年末までに撤退…
実務で情報資産を増やす方法は、派手なノウハウより地味な記録です。
この積み重ねが、旧車フォードのように個体差が大きい車両で、次の1台を早く・安く・確実に直すいちばんの近道になります。