

純正のままサーキットを5周走ると、あなたのブレーキはノーブレーキ状態になることがあります。
ブレーキダクトとは、バンパー下部などの開口部からブレーキローターやキャリパーに走行風を直接送り込むための配管です。スポーツ走行時の激しいブレーキングで発生する熱を強制的に排出し、フェード現象やベーパーロック現象を防ぐための冷却装置として機能します。
では、どれほどの熱が発生するのでしょうか。一般道での通常走行ではローター温度は約250℃程度ですが、ワインディングでは400〜500℃、サーキットでは800℃近くに達することがあります(参考:日本レーシングマネージメント「ブレーキで止まるしくみ」)。純正ブレーキパッドの適正温度は約300℃前後のため、サーキット走行では軽くその3倍近い温度に晒されることになります。これがフェード現象の直接の原因です。
ちなみに、フェード現象とは摩擦材が高温で分解してガス化し、パッドとローターの間に膜を作ることでブレーキが効かなくなる現象です。ベーパーロックはさらに深刻で、ブレーキフルードが沸騰してブレーキペダルを踏んでも全く反力が返ってこなくなる状態です。岡山国際サーキットなど複合コースでは、全開走行わずか5周でベーパーロックが発生したという実例も確認されています。
市販品のブレーキダクトキットは1万円〜4万円程度するものが多い一方、自作であれば材料費4,000円前後で仕上げることが可能です。これは使えそうですね。自作の最大のメリットは、自分の車のバンパー形状やサスペンション形状に合わせて最適なルーティングができることにあります。既製品では干渉して取り回しが難しい車種でも、DIYなら柔軟に対応できます。
ブレーキ冷却ダクト(goo-net)|基本的な仕組みと役割の解説ページ
自作に必要な主な材料は以下の通りです。ホームセンターやネットショップで手軽に揃えられるものばかりで、工具も含めた総費用はおおよそ4,000〜8,000円程度に収まります。
| 材料 | 目安価格 | 備考 |
|------|----------|------|
| アルミダクトホース(50〜75mmΦ×1m) | 700〜1,500円/本 | JURAN等の蛇腹タイプが加工しやすい |
| ホースバンド | 260円前後/個 | ステンレス製が錆びにくく耐久性◎ |
| PP板(ポリプロピレン板)2mm厚 | 500〜1,000円 | マッドガードへの固定プレートに使用 |
| アルミテープ | 300〜500円 | 接続部の気密性アップに必須 |
| タイラップ(結束バンド) | 100〜300円 | 100mmタイプの細目が使いやすい |
| ファンネル(75mmΦ) | 500〜1,500円 | 空気取り入れ口の径を広げる目的 |
ホース径の選択は冷却性能を左右する重要なポイントです。50mmΦと75mmΦが一般的ですが、径が大きいほど多くの空気を送り込めます。軽量スポーツカーや排気量2L以下の車であれば50mmΦでも十分ですが、重量のあるセダン系やターボ車でサーキット走行をするなら75mmΦを選ぶのが原則です。
また、ファンネル(空気取り込み口)について見落としがちな点があります。ホームセンターのスポーツ用品コーナーで販売されているサッカー用の「ミニコーン」が50mmΦのダクトホースへの接続に丁度いいサイズで、3個セット数百円という驚きの低コストで代用できることが知られています。材料の流用という発想が、DIYの幅を大きく広げてくれます。
接着剤については、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)のような難接着素材に対応した「セメダイン スーパーXハイパーワイド」のような製品を選ぶと安心です。ただし完全硬化に3日を要する製品もあるため、サーキット走行の前日に接着作業をするのは避けてください。
取り付け作業は大きく4つのステップに分かれます。難易度は「初級」で、工具と材料が揃っていれば3時間以内で片側1本の取り付けが完成します。両側で2本仕上げるには合計5〜6時間を見ておきましょう。
ステップ1:バンパーへの開口・ファンネル取り付け
まず、フロントバンパーの下部または霧灯(フォグライト)取り付け穴を活用して、空気取り込み口を設けます。フォグランプ用の既存開口部が内径77mm前後の車種なら、75mmΦのアルミファンネルをほぼそのまま差し込むことができます。ファンネルの固定には耐水テープとタイラップを組み合わせると、振動が多い走行環境でも脱落しにくくなります。
フォグランプ穴がない場合は、バンパー下部に自分でカッターやドリルで穴を開ける必要があります。この場合、穴の形状や仕上げが雑になると「破損」と見なされる可能性があるため、開口部にネットやゴムグロメットで仕上げ処理をするのがおすすめです。
ステップ2:PP板の切り出しとマッドガードへの固定
アルミダクトホースをタイヤハウス内のマッドガード(インナーフェンダー)に固定するための接続プレートを、2mm厚のPP板から切り出します。中央に82mmΦの穴と、タイラップを通す3mmΦのドリル穴を複数設けます。PP板はカッターと定規で直線カットできますが、丸穴はホールソーかサークルカッターを使うと綺麗に仕上がります。
PP板とアルミダクトをタイラップ8本で縫い付けてから、今度はそのPP板をマッドガードにタイラップで固定します。この「PP板を介した二重固定」が、走行中のホースの脱落を防ぐポイントです。タイラップ直結では走行中の振動でいずれ緩みます。二重固定が原則です。
ステップ3:ホースのルーティング
アルミダクトホースをバンパーのファンネルからブレーキキャリパー付近まで這わせます。ホースはステアリング操作でタイヤが切れる方向に追従するため、余裕を持たせたルーティングが必要です。直線的に張り詰めてしまうと、ステアリングを切ったときにホースが引っ張られてバンパー側の固定部が破損します。
フロントロアアームに既存の穴がある場合は、U字ステーを使ってホースを固定する場所として活用できます。テンションロッドに沿って這わせてホースバンドとタイラップで固定すると、タイヤの切れ角に合わせてホースが自然に動きます。
ステップ4:出口の向きを調整して取り付け完了
これが最も重要なステップです。ホースの出口をどこに向けるかで冷却効率が大きく変わります。次のH3で詳しく解説しますが、出口はキャリパー本体ではなくローターの「ハット部(ホイールハブに接する中心部分)」に向けることで、ローター内部のベンチレーション(通風孔)を経由した効率的な冷却が実現します。
みんカラ:WRX STI 自作ブレーキ冷却ダクト2号製作|PP板とアルミダクトの固定方法・寸法の実例
ブレーキダクトを取り付ける際に多くの人が陥る誤解があります。「キャリパーに向ければいい」と思って取り付けると、冷却効率が半減する場合があるということです。意外ですね。
ローターの冷却メカニズムを理解することが正解への近道です。ベンチレーテッドディスク(通風孔付きローター)は、ローターの中心部分(ハット部)から空気を吸い込み、外周方向に吐き出す構造になっています。ちょうど遠心ファンのような動作原理で、回転しながら自己冷却を行っています。
そのため、ダクトホースの出口をローターの中心付近(ハット部)に向けることで、ベンチレーションに新鮮な冷気を押し込む効果が得られます。一方、キャリパーの横や外周に向けるだけでは、ローター内部の通風孔は冷やせないため冷却効率が低くなります。ローターのハット部が条件です。
ただし、例外もあります。ベーパーロック対策を優先する場合は、キャリパー本体を冷やすことでキャリパー内部のブレーキフルードへの熱伝導を防ぐアプローチも有効です。この場合はキャリパーのバンジョーボルト(フルードの入口付近)に風を当てることを意識します。
実際の取り付け例では「キャリパーを冷やしても多少意味があるようです。ローターを冷やしている時に効果が出る」という声も確認されており、理想はローターのハット部とキャリパー双方に風が当たるルーティングです。どちらか一方に固執しないほうが結果的に好成績が出やすくなります。
また公道走行の有無によっても最適解が変わります。サーキット専用ならローターの冷却最優先で問題ありませんが、公道でも使う車では「冷え過ぎ」にも注意が必要です。冬の気温が低い環境では、ブレーキが冷えすぎてウォームアップ中に制動力が出にくくなることがあります。冷やしすぎにも注意が必要です。
アドヴィックスセールス:ブレーキ雑学講座「走行時のローター温度」|ベンチレーテッドディスクの冷却メカニズムと空気ダクトの効果についての専門解説
DIYでブレーキダクトを自作する際には、いくつかの典型的な失敗パターンがあります。それぞれを把握しておくだけで、完成度が大きく変わります。
失敗1:ステアリング操作によるホース引っ張り
最も多いのがこのミスです。ホースをぴんと張った状態で固定してしまうと、ステアリングを切るたびにホースに張力がかかり、バンパー側のファンネルやタイラップが破損します。対策は「ホースに自由度を持たせること」に尽きます。具体的には、ステアリングをフルロックした状態で手でホースを動かし、張らずに緩んでいることを確認してから固定を本締めしてください。
失敗2:固定をタイラップだけに頼る
タイラップだけで固定すると走行中の振動で徐々にズレてホースが外れます。PP板などの接続プレートを挟んだうえで、タイラップとホースバンドを組み合わせた多点固定が必要です。かれこれ2年・サーキット5回を乗り越えた事例でも、このような多点固定が耐久性の秘訣とされています。
失敗3:接着剤の乾燥不足
PP・PE素材への接着では専用の多用途接着剤を使っても完全硬化に24〜72時間かかる製品があります。接着直後にバンパーを取り付けて走行すると、振動でダクトが剥離してタイヤハウス内で暴れることがあります。接着後は最低でも24時間、できれば3日待つのが原則です。
失敗4:オイルクーラーやサスアームとの干渉チェック不足
後からオイルクーラーを取り付けたり、サスペンションをリセッティングしたりするとホースと干渉するケースがあります。特にフロントロアアーム付近は部品が集中しているため、ホースを通す前に他のパーツとのクリアランスを10mm以上確保できているか確認してください。
工夫1:耐水・耐熱テープで接続部を補強
ファンネルとホースの接続部はアルミテープで巻き付けて気密性を上げると、折角送り込んだ冷気が途中で漏れるのを防げます。アルミテープは耐熱性もあるため、エンジンルーム付近での使用にも適しています。
工夫2:ホース出口にノズルを付ける
ホース出口を絞ったノズル形状にすると、出口での空気流速が上がりローターへの風当たりが強くなります。アルミ板を円錐状に丸めてホースに差し込む方法や、市販のホース口金(エア工具用)を流用する方法が実例として確認されています。これは使えそうです。
工夫3:サーモテープで冷却効果を確認する
取り付け後の効果確認には「ブレーキサーモテープ」が便利です。ローターに貼り付けておくことで、走行後に到達した最高温度を色の変化で確認できます。ダクトあり・なしでの温度差を比較することで、ホースの向きや径が適切かどうかを数値として把握できます。
ZEROMAX:サーキットのすすめ③ ブレーキ冷却|フェード後のパッド・ローターの状態と冷却強化の3つのアプローチを解説
サーキット専用ではなく、公道でも走る車にブレーキダクトを自作取り付けする場合、見落とされがちな季節ごとの課題があります。多くの自作記事ではサーキットでの効果に焦点が当たっていますが、公道使用時の挙動も把握しておくべきです。
夏の公道走行:効果は限定的だが害もない
一般道での走行速度では走行風の量がサーキットほど多くないため、ダクト冷却の恩恵は小さくなります。しかし、渋滞中の山道や峠道を連続して走る場合は、それでも冷却効果が得られます。夏のツーリングや峠走行が多い方にとっては意味があります。
冬の公道走行:逆効果になる可能性
外気温が低い冬場は、ブレーキが暖まりにくくなります。とくにサーキット用の高温域対応パッド(適正温度が100〜800℃など高温域タイプ)を使っている場合、街乗りでの温度域(100℃以下)では摩擦係数が十分に上がらず、「コールドブレーキ」による制動力低下を招くことがあります。冷えすぎが条件となる状況は危険です。
対策としては、冬場にサーキットへ行かない期間はダクトホースをクリップで閉じておくか、バンパーのファンネル開口部をガムテープ等で塞ぐ「着脱式」の構造にしておくのがおすすめです。シーズンで使い分けるという発想が公道走行者には重要になります。
車検・ナンバー車への影響
バンパーに穴を開けてダクトを取り付ける場合、「バンパーの破損」と見なされないよう、開口部の処理が必要になることがあります。開口部にメッシュネットやゴムグロメットを取り付け、意図的な加工であることが分かる仕上げにすると車検でのトラブルを避けやすくなります。完全に削り取っただけの粗い処理は避けるのが無難です。
また、フォグランプを撤去してその穴をダクト開口部として転用するケースでは、ランプ類の「有無」の変更になるため、車検証の記載と相違が出る場合があります。ディーラーや車検場に事前確認することを強く推奨します。なお、フロントバンパー下部に加工を施した場合、最低地上高(9cm以上)の要件を満たしているか測定しておくと安心です。
🚗 まとめると、ブレーキダクトの自作はサーキット専用車なら迷わずおすすめできますが、公道兼用車では取り外しやすい構造を意識することと、パッドの温度域の確認が不可欠なステップです。
Yahoo!知恵袋:バンパーに穴あけ後の車検通過について|開口部の処理方法と検査員の判断基準に関するQ&A

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