

フロアジャッキだけかけたまま車の下に潜ると、あなたは1t超えの車に下敷きにされる可能性があります。
タイヤ交換やオイル交換、車高調取り付けなど、車を持ち上げて行う作業に欠かせないのが「アクスルスタンド(ジャッキスタンド)」です。日本では「ウマ」や「リジットラック」という呼び名がよく使われますが、これらはほぼ同じものを指しています。
まず整理しておきましょう。「ジャッキ」は車を持ち上げる道具であり、「アクスルスタンド(ジャッキスタンド)」は持ち上げた状態をキープするための道具です。この2つは役割がまったく異なります。フロアジャッキ(ガレージジャッキ)だけで車を持ち上げ、そのまま下に潜り込む作業は絶対に禁止です。油圧ジャッキは長時間使用すると油圧が徐々に抜けて自然降下するリスクがあり、過去に自宅での整備中に1t超えの車体に下敷きになり亡くなった事故が実際に発生しています。
厳密に言うと「アクスルスタンド」と「ジャッキスタンド」には設計上の違いがあります。ジャッキスタンドは車体のフレームや指定のジャッキポイントを支えることを目的とした汎用タイプです。一方、アクスルスタンドは車軸(アクスル)自体を支えるために設計されており、特にトラックやSUV・オフロード車など、ソリッドアクスルを持つ車両で車軸が主な支持点となる場面で使われます。
つまり基本的なことですね。ほとんどの一般乗用車では「ジャッキスタンド(リジットラック)=アクスルスタンド」として同義で使われており、どちらもジャッキアップ後に車体を安全に保持するために不可欠な道具です。
| 名称 | 主な役割 | 主な設置場所 | 向いている車種 |
|---|---|---|---|
| ジャッキスタンド(リジットラック) | 持ち上げた車体を保持 | サイドのジャッキポイント・フレーム | 乗用車全般 |
| アクスルスタンド(厳密な意味) | 車軸を直接サポート | アクスルハウジング下 | トラック・SUV・オフロード車 |
車のDIY整備でアクスルスタンドを使う最大の目的は「安全の確保」です。それが条件です。
参考:ジャッキスタンドとアクスルスタンドの違いについて詳しく解説されています。
ジャッキスタンドとアクスルスタンドの違いは何ですか? – leakproofjack
正しい手順で作業することが命を守る第一歩です。ここでは、フロアジャッキとアクスルスタンドを使った一般的な乗用車のジャッキアップ手順を解説します。
まず作業前の準備として、必ず平坦で硬い舗装面(コンクリートやアスファルト)に車を停めてください。砂利道や傾斜地では、スタンドが沈み込んだり倒れたりして非常に危険です。エンジンを切り、サイドブレーキを引き、持ち上げない側の車輪には輪止めをしっかり設置します。
次に作業の流れを確認しましょう。
この「直前で止めて確認する」ステップが基本です。フロアジャッキでジャッキアップした後、下ろしてくる過程で車の前後位置が微妙にずれることがあります。最初にスタンドを置いた場所にジャッキポイントがきちんと乗るとは限らないため、必ず直前確認が必要です。
また、車の下に潜る作業がある場合は追加の安全策として、外したタイヤ(スペアタイヤを含む)を車体の下に転がし入れておくことが強く推奨されます。万が一アクスルスタンドが倒れても、タイヤがストッパー代わりとなって車体が人体に直撃するのを防いでくれます。地震の多い日本では特に有効な対策です。
⚠️ 絶対にやってはいけないこと。
安全対策が条件です。ジャッキアップは慎重すぎるくらいでちょうど良い作業です。
参考:ウマ(リジットラック)の正しい使い方と足の向きについて図解で詳しく解説されています。
ウマ(リジットラック)の使い方入門。足の向き注意! – DIYラボ
アクスルスタンドは正しく置いても、「足の向き」を間違えると横に倒れる危険があります。これは多くのDIYユーザーが見落としがちな盲点です。
3本足タイプのアクスルスタンドを使う場合、特に注意が必要です。3本足のスタンドを2本並べて使うとき、両方の足を同じ向きで揃えてしまうと、一方向から力が加わったときに非常に倒れやすくなります。正解は、2本のスタンドが「互いに足の向きが逆方向になるよう」設置することです。車体の内側に2本足、外側に1本足が来るよう向きをそろえるのが基本です。
なぜ向きが重要なのでしょうか? 一見水平に見えるコンクリートの駐車場でも、水はけのために微妙な傾斜が設けられています。2本のアクスルスタンドで車体を支えた状態では、荷重がスタンドの中心から少しずれた位置にかかります。この「斜めの荷重」に対して、足の向きが適切でないと一方向への倒壊リスクが高まります。
意外ですね。「どう置いても同じでしょ」と思いがちですが、設置方向は安全性に直結します。
4本足タイプのスタンドは向きによる影響が比較的小さいですが、代わりに別の問題があります。4本足は一見安定しているように見えますが、実は地面が完全に平らでない場合に4本の足が均等に接地しないことがあり、不意にガタつく可能性があります。これは机の4本脚が傾いた床でぐらつく現象と同じ原理です。専門家の中には、安定性の観点から3本足を推奨する声もあります。
また、高さを最大まで伸ばした状態はスタンドの重心が高くなるため、横からの力に弱くなります。マフラー交換など車の下に深く潜る作業では、スタンドを高く伸ばした状態で使わざるを得ないケースがありますが、この場合は特に慎重に扱う必要があります。
アクスルスタンドは折りたたみ式ではなく、足の幅が広いタイプを選ぶと安心です。肩幅を広げると踏ん張りが利くように、足の間隔が広いスタンドは横方向の力にも強くなります。
アクスルスタンドを選ぶとき、最も重要な要素は「耐荷重」と「高さ」の2つです。ここを誤ると道具として機能しないばかりか、重大事故のリスクになります。
まず耐荷重について整理します。市販のアクスルスタンドは1基あたり「2t(2,000kg)」か「3t(3,000kg)」の製品がほとんどです。重要なのは、この数値が「1基あたり」の耐荷重であるということです。
| 車種・用途 | おおよその車両重量 | 推奨アクスルスタンド耐荷重(1基) |
|---|---|---|
| 軽自動車 | 700〜900kg | 2t(2,000kg)以上 |
| 一般的な普通乗用車(セダン・コンパクト) | 1,000〜1,500kg | 2t(2,000kg)以上 |
| SUV・ミニバン | 1,500〜2,200kg | 2t〜3t(2,000〜3,000kg)以上 |
| 大型ピックアップ・商用車 | 2,000kg超 | 3t(3,000kg)以上 |
車検証の「車両重量」が2tを超えているからといって、必ずしも3tのスタンドが必要なわけではありません。アクスルスタンドは通常2個(または4個)同時に使用するため、1基が受け持つのは車重の半分以下になります。車両重量が1,600kgの車なら、前後2個のスタンドを使う場合でも1基あたりの負担は800kg程度です。2tのスタンドで十分です。
これは使えそうです。ただし、より重いSUVやミニバン、あるいは将来的に車を乗り換えることを考えると、余裕を持って3tタイプを選んでおく方が安心といえます。
次に「高さ」の選び方です。一般的なアクスルスタンドの高さ調整範囲は約300mm〜450mm前後の製品が多く流通しています。はがき(148mm)の約2〜3枚分の高さを想像するとわかりやすいかもしれません。
純正車高の車やSUVなど、ある程度の車高があれば標準的な高さ範囲で問題なく使えます。一方、車高を大幅に下げているローダウン車には、最低位が160mm前後の超ローダウン対応タイプも市販されています。価格帯については、2t対応の標準的な製品が2個セットで3,000〜5,000円前後、3t対応やアルミ製の高品質タイプは2個セットで8,000〜12,000円前後が目安です。
3t対応ならより安心です。作業頻度が高い方ほど、ゴムパッド付きのサドルを備えた製品を選ぶとジャッキポイントを傷めにくく長期的なメリットがあります。
参考:リジットラック(ウマ)の失敗しない選び方と耐荷重・高さ・足の数について詳しく解説されています。
リジットラック(ウマ)の失敗しない選び方とおすすめ – Freedom
アクスルスタンドの使い方で、意外と見落とされているのが「ジャッキポイントの破損リスク」です。これを知らずにいると、修理費用が数万円規模になることもあります。
現代の乗用車のほとんどはモノコックボディ(ユニボディ)構造です。この構造では、ジャッキアップに使える指定ポイントは車体の各所に限定されており、そこ以外にアクスルスタンドやジャッキをかけるとボディが歪んだり、サイドシル(ロッカーパネル)が潰れたりします。修理費が高額になります。
特にガレージジャッキ(フロアジャッキ)でサイドのジャッキポイントを横からジャッキアップしようとすると、ジャッキのアームがボディの下側(爪の部分)にかかり、ジャッキポイントが曲がったり潰れたりするリスクがあります。これは国内のカーオーナーのDIY作業でたびたび見られるトラブルです。
正しい手順として、ジャッキポイントの位置は必ず車の取扱説明書で確認することが鉄則です。車種によってジャッキポイントの位置は異なります。トヨタ・アルファードやホンダ・ステップワゴンなどのミニバン、ランドクルーザーやRAV4などのSUVは車体が重く、ジャッキポイントへの負担も大きいため特に注意が必要です。
ゴム製のアダプター(パッド)をサドル部分に装着できるアクスルスタンドを選ぶとさらに安心です。ゴムパッドがジャッキポイントとスタンドの間でクッションになり、点当たりを防いで金属ボディのキズや変形リスクを軽減します。アストロプロダクツやエマーソンなどのブランドから、ゴム付きサドル対応モデルが1,500〜3,000円前後で購入できます。
ジャッキポイントが潰れた場合の補修は、板金・塗装の軽度なものでも1か所あたり2〜5万円程度かかるケースが多いです。これは痛いですね。アクスルスタンドの正しい使い方を知っておくだけで、こうした出費を丸ごと防ぐことができます。
ジャッキポイントの確認が原則です。「いつもここにかけてるから大丈夫」という慣れが、高額な板金修理につながる可能性があります。
アクスルスタンドとフロアジャッキを使いこなすことができると、自分でできる整備の幅が大きく広がります。これを知っている人は、整備コストで年間数万円以上の節約につながることもあります。
たとえばタイヤ交換をショップに頼んだ場合、タイヤ4本交換の工賃だけで軽自動車でも4,000〜8,000円、普通車では8,000〜15,000円前後が一般的です。これをDIYで行えば工賃はゼロになります。初期投資としてフロアジャッキ(5,000〜15,000円)とアクスルスタンド2個セット(3,000〜8,000円)を揃えても、2〜3シーズンのタイヤ交換で元が取れる計算です。
これは使えそうです。さらにアクスルスタンドが活躍する場面は、タイヤ交換にとどまりません。以下のような作業でも必要になります。
マフラー交換など車体下全体に入り込む必要がある作業では、スタンドの最高位が450mm以上ある製品が望ましいです。前後合わせて4個のスタンドが必要になる場面もあります。
また、車の下に潜る作業を定期的にするなら「クリーパー(メカニックシート)」と呼ばれる、仰向けで寝て滑らせて移動できる作業板と組み合わせると、作業効率が格段に上がります。2,000〜5,000円程度から購入できます。車の下での作業環境が整うことで、ミスも減らせます。
アクスルスタンドとフロアジャッキの組み合わせは、DIYメンテナンスの「入口」といえます。正しく使えば安全で、工賃節約にもつながり、愛車への理解も深まります。整備の幅が広がることで、不具合の早期発見にもつながるという副次的なメリットもあります。
参考:車のジャッキアップのやり方や、アクスルスタンドとの組み合わせ手順を詳しく解説しています。
車のジャッキアップとは?位置や方法について解説 – 損保ジャパン

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