

ラリーアートは三菱自動車のモータースポーツ部門として誕生し、WRCやパリ・ダカールラリーといった過酷な舞台で「ラリーの三菱」と呼ばれるほどの実績を残したブランドです。
当初は三菱のワークスチームを担う子会社という立ち位置で、ランサーエボリューションをはじめとした競技車両の開発・運用や、ラリー競技ノウハウのフィードバックを市販車へ還元する役割を果たしてきました。
特にグループA〜WRC時代のランサーエボリューションは、WRCドライバーズタイトル4連覇、マニュファクチャラーズタイトル獲得など、ヘビーデューティな環境で耐えうる駆動系・4WDシステム・冷却のノウハウを蓄積し、それが現在のSUVや4WDモデルにも息づいている点が特徴です。
ダカールラリーではパジェロをベースにしたワークスマシンが幾度も総合優勝を飾り、砂丘や高地など極端な気象条件での信頼性を証明しました。
参考)世界のレースを見据えて設立された『ラリーアート』が大成。一時…
その結果、「ラリーアート」という名前自体が、競技専用車だけでなく、量販モデルの中でも“走り”を重視したグレードやチューニングパーツのシンボルとして広く認知されるようになります。
整備士目線では、このバックボーンを理解しておくことで、SUVユーザーやランサーエボリューション系オーナーに対し、「なぜこの車はこういう足回り・4WD制御になっているのか」を歴史と絡めて説明しやすくなるのが利点です。
参考)ラリーアート(ブランド)
ラリーアートは2010年に一度活動を終了しており、WRCワークス参戦の中止とともに、ブランドとして表舞台から姿を消した時期があります。
しかし2021年5月の中期経営計画説明の場で三菱自動車が「ラリーアートブランドの復活」を明言し、まずはアクセサリー販売や特別仕様車から再スタートを切る方針が示されました。
同年、タイ・バンコクで開催されたモーターショーでは、ピックアップトラック「トライトン」とSUV「パジェロスポーツ」にラリーアート仕様の特別仕様車が出展され、エクステリアデカールや専用ホイール、インテリアのロゴ加飾などが披露されています。
日本国内では2022年の東京オートサロンにおいて「ヴィジョン・ラリーアートコンセプト」や「アウトランダーPHEV ラリーアートスタイル」が展示され、ラリーアートデザインをまとった電動SUVという新しい方向性が示されました。
参考)三菱自動車、ラリーアートブランドの国内復活第一弾として4車種…
これに続く形で、アウトランダー、エクリプス クロス、RVR、デリカD:5向けのラリーアート純正アクセサリーが発売され、国内でも“復活したラリーアート”を身近に体感できるラインナップが整いつつあります。
参考)三菱自動車、ラリーアートブランドの国内復活第一弾として4車種…
整備現場では、ラリーアートの名前が再びカタログに載ることで、かつてのエボ系世代のユーザーだけでなく、SUV・ミニバンユーザーにも「ラリーアート=走りの三菱」のイメージを説明する機会が増え、提案内容の幅が広がる点がポイントです。
2022年3月17日から販売された国内向けラリーアートアクセサリーは、アウトランダー、エクリプス クロス、RVR、デリカD:5用に設定され、それぞれ車種専用のエアロやマッドフラップ、デカールがラインナップされています。
アウトランダー向けにはフロントスキッドガーニッシュ、サイドアンダーガーニッシュ、リヤバンパーガーニッシュの3点を組み合わせた「ガーニッシュパッケージ」が設定され、SUVとしてのタフさとラリーアートらしいスポーティさを強調する外観が特徴です。
エクリプス クロス向けにはフロントアンダーガーニッシュ、サイドエクステンション、リヤアンダーガーニッシュをまとめた「スタイリングパッケージ」があり、さらにマッドフラップやテールゲートスポイラーを追加すると、視覚的な重心が下がり、ラリー車らしいシルエットに仕上がります。
RVRではフロントスキッドプレートとリヤスキッドプレートの「スキッドパッケージ」が設けられ、デリカD:5には大型テールゲートスポイラーやマッドフラップなど、ミニバンでもラリーアートの雰囲気を楽しめる構成になっています。
整備士としては、これらのパーツが基本的にボルトオンのエアロ・ガーニッシュ類とはいえ、ジャッキアップポイントやサービスホールへのアクセスが純正と異なる場合があるため、下回り作業やリフトアップ時に干渉しないかを事前確認しておくことが重要です。
参考)三菱・ラリーアートの復活第1弾は、アウトランダー(PHEV)…
また、マッドフラップの装着によってタイヤハウス内の泥はねパターンが変化するため、雪国や未舗装路が多い地域では、泥や雪の堆積による固着・振動音の訴えが出やすくなる可能性があり、点検メニューに「泥詰まり・干渉チェック」を加えておくとクレーム予防につながります。
ラリーアート共通アクセサリーとしては、RALLIARTロゴ入りのナンバープレートフレームやロックボルト、ブラックホイールロックナット&ラグナットセットなど、小物系のドレスアップパーツも販売されています。
これらは作業自体は難しくないものの、盗難防止ボルトの締め付けトルク管理や、ホイールナット座面形状とのマッチング確認を怠ると、走行中の異音・緩み・振動につながるリスクがあるため、トルクレンチでの最終確認を徹底したい部分です。
ユーザーへは「見た目だけでなく、下回り保護や飛び石防止など実用面のメリットもある」と説明しつつ、エアロ・ガーニッシュ装着後の洗車方法(高圧洗浄機の当て方や樹脂パーツのコーティングメンテナンス)をセットで案内すると、満足度が上がりリピート入庫にもつながります。
ラリーアートアクセサリー公式情報(現行車種向けパーツ構成と価格、適合車種一覧の確認に有用)
三菱自動車 ラリーアートアクセサリーサイト
コルト・ラリーアートなど、かつてのラリーアートグレードを持つ車両は現在も多くが中古市場や現場に残っており、スパークプラグ交換や駆動系整備、足回りリフレッシュなどの作業事例が各整備工場で報告されています。
実際にコルト ラリーアート Version-Rのスパークプラグ交換では、オーナー側が予防整備として高性能プラグを持ち込み、エンジンルームがきれいに保たれているケースも多く、走り志向のユーザーが定期的にメンテナンスへ投資している傾向がわかります。
このような車両では、純正ラリーアートサスペンションや補強パーツが装着されている場合もあり、経年劣化によるブッシュのへたりやダンパー抜けが進行していることが多いため、試運転時の直進安定性や段差通過時の収まりを細かくチェックしておくと、提案の説得力が高まります。
ラリーアート仕様車は足回りやブレーキが強化されている反面、標準仕様と比べてタイヤ外径やホイール幅が攻め気味のサイズとなっている場合があり、車検適合やフェンダー干渉の観点での確認が重要です。
参考)コルト・ラリーアート(三菱)のメンテナンス・整備手帳
特に中古で購入した個体では、歴代オーナーが社外ホイールや車高調を追加していることも多く、「純正ラリーアートなのか、後付け社外パーツなのか」を見分けるために、刻印・品番・カタログ照合を行っておくと、部品注文や車検時の説明で迷いが減ります。
ユーザーへは、「ラリーアートの名前が付いているからこそ、本来の性能を発揮させるための定期メンテナンスが重要」と伝え、オイル・プラグ・冷却水だけでなく、ターボ車であればインタークーラー・ホース系やブローバイ回りの清掃提案まで含めてパッケージ化すると、満足度と入庫単価の両方を高めやすくなります。
コルト・ラリーアートの整備手帳やパーツ取り付け事例を多数閲覧できるコミュニティサイトで、作業のコツを事前に把握するのに役立ちます。
ラリーアートの復活は、かつてのランエボ世代だけでなく、現在のアウトランダーPHEVやデリカD:5ユーザーにも「走りの三菱」を再認識してもらうチャンスであり、整備士側から見ると“ストーリーのあるオプション提案”がしやすくなったと言えます。
単にスポイラーやマッドフラップを勧めるのではなく、「WRCやダカールで鍛えたブランドが手掛けたアクセサリーで、デザインだけでなく実用性も考えられている」という背景を添えることで、価格以上の価値を感じてもらいやすくなります。
また、診断書や見積書の備考欄に「RALLIARTアクセサリー装着車(アンダーカバー形状変更あり)」のようなメモを残しておくと、次回以降別のメカニックが触っても作業性の違いを事前に想像でき、作業時間のブレや工賃トラブルを減らせます。
もう一つの独自視点として、ラリーアートブランドをきっかけに「ユーザーとの会話の糸口」として活用する方法があります。
例えば定期点検の受付で「このマッドフラップ、ラリーアートの新しいアクセサリーですよね。ダート走ることはありますか?」と聞けば、使用環境や走行距離の聞き取りが自然にでき、メンテナンス提案に直結させやすくなります。
逆に、旧来ラリーアート車に新しいラリーアートグッズ(ロゴ入りナンバーフレームやアパレル)を組み合わせる提案をすると、長年のファンにとっては「今もラリーアートを楽しめている」という満足感につながり、そのまま買い替えや増車の相談に発展することもあり得ます。
整備士としては、“壊れたところを直すだけ”ではなく、「ラリーアートの世界観を楽しむサポーター」として関わる視点を持つことで、顧客との関係性を一段深められるでしょう。
ラリーアートブランド全体の位置づけやヘリテージ、今後の方向性について公式の整理がされているページです(ブランド説明の補強に有用)。
MITSUBISHI MOTORS RALLIART ブランドサイト
ラリーアート復活の背景や、タイ向け特別仕様車の内容など、ビジネス面と商品企画の意図が解説されている記事です。
三菱自動車「ラリーアート」ブランド復活の真意(東洋経済オンライン)
国内向けラリーアートアクセサリー発売時の公式ニュースリリースで、各車種のパッケージ内容とコンセプトが詳しく掲載されています。
ラリーアートブランドの国内復活第一弾として4車種の専用アクセサリーを発売(三菱自動車公式)