

プジョースポーツカーの評判は、日本国内において「熱狂的なファンを持つが、維持には知識が必要な車」という位置づけで定着しています。ドイツ車のような剛健な直進安定性とは異なり、路面の凹凸をいなすような独特の乗り心地と、コーナーで深くロールしながらもタイヤが路面を離さない粘り強さが最大の特徴です。
一般的に輸入車、特にフランス車は「壊れやすい」という評判が先行しがちですが、近年のプジョースポーツカーは主要コンポーネントの信頼性が大幅に向上しています。特にエンジンに関してはBMWと共同開発された「Prince」エンジン(EP6型)が主力となり、タイミングチェーンの採用や直噴ターボ技術によって、コンパクトながら高出力を実現しています。しかし、このエンジン特有のウィークポイントも整備士の間では周知の事実となっており、正しい知識を持ってメンテナンスを行えば、決して恐れるような車ではありません。
中古価格に関しては、新車時の価格に比べて下落率が高く、コストパフォーマンスに優れる個体が多いのも特徴です。これは「フランス車はマニアック」という市場の偏見によるものであり、メカニズムを理解している整備士や車好きにとっては、非常に狙い目のカテゴリーと言えるでしょう。本記事では、整備士の視点からメカニズムの深層に切り込み、本当の価値をお伝えします。
以下のリンクは、フランス車の特徴や市場での立ち位置について解説している自動車メディアの記事です。
プジョースポーツカーの中でも、一際異彩を放つのが「RCZ」です。2010年から2015年まで販売されたこのクーペは、コンセプトカーをそのまま市販化したような大胆なデザインが特徴で、特にルーフ中央が窪んだ「ダブルバブルルーフ」は、イタリアのカロッツェリア「ザガート」のデザイン手法を彷彿とさせます。実はこのRCZ、生産はフランスではなく、オーストリアのマグナ・シュタイア社(メルセデス・ベンツGクラスなどを製造)に委託されており、製造品質が非常に高いことでも知られています。
中古価格市場において、RCZは現在「底値」に近い状態から、状態の良い個体がじわじわと値を上げ始めているフェーズにあります。ATモデル(156馬力)であれば総額100万円以下で探せる個体も多いですが、整備士として推奨したいのは、左ハンドルの6速MTモデル(200馬力)です。この200馬力仕様のエンジンは、吸気バルブのリフト量を連続可変させる機構を備えており、レスポンスが段違いに鋭いのです。さらに、フロントナックルが大径化されており、ハンドリングの剛性感がATモデルとは別物です。
また、RCZには「アクティブリアスポイラー」が装備されており、速度に応じて自動で展開しますが、ここのモーター故障は定番トラブルの一つです。中古車選びの際は、手動スイッチでの動作確認が必須です。デザイン重視と思われがちですが、重心高が極めて低く、トレッド(左右タイヤ間の距離)が広いため、コーナリング限界は驚くほど高いピュアスポーツカーと言えます。
RCZの購入前チェックポイントについて、オーナーの視点も交えて詳しく解説されている記事です。
【購入前に必読】プジョーRCZの注意点と中古での後悔しない選び方
「GTi」のバッジは、プジョーにとって特別な意味を持ちます。特に「208GTi」と「308GTi by PEUGEOT SPORT」は、単なるグレード違いではなく、メーカー直系のワークスチューニングカーと呼ぶべき存在です。これらに搭載される1.6L直列4気筒ターボエンジン(THP)は、排気量こそ小さいものの、過給圧を高めることで驚異的なパワーを絞り出します。
特筆すべきは「308GTi by PEUGEOT SPORT」に搭載されるエンジンです。わずか1.6Lの排気量から270馬力を発生させ、リッターあたり出力は約170馬力に達します。これは市販車としては限界に近いチューニングであり、エンジン内部のピストンはマーレ製の鍛造品、コンロッドも強化品が採用されています。整備士の視点で見ても、このエンジンの燃焼圧力に耐えるためのブロック剛性の確保や、冷却系統の取り回しはレーシングカーに近い設計思想を感じさせます。
一方、208GTiは200馬力または208馬力の設定ですが、1200kgを切る軽量ボディとの組み合わせにより、パワーウェイトレシオは一級品です。208GTiのエンジン特性は、低回転から最大トルクを発生させる「フラットトルク」型であり、街乗りでの扱いやすさとサーキットでのパンチ力を両立しています。ただし、直噴エンジン特有の「インテークバルブへのカーボン堆積」は避けられません。定期的な添加剤の投入や、数万キロごとのドライアイス洗浄などのメンテナンスが、新車時の性能を維持する鍵となります。
プジョーのスポーツモデルのメンテナンス事例について、実際の整備工場の記録です。
プジョーの修理事例と真相解説:208GTiや308のトラブル傾向
「プジョーといえば猫足」と言われるほど、そのサスペンションセッティングは有名ですが、スポーツカーにおいてもその哲学は貫かれています。しかし、スポーツモデルの猫足は、単に「乗り心地が良い」だけではありません。「初期入力は柔らかく、奥で強烈に粘る」という特性が、より高い速度域で実現されているのです。
技術的な深堀りをすると、プジョーのダンパー(ショックアブソーバー)は、伝統的に自社内製にこだわってきました(近年のモデルでは一部外部サプライヤー製もありますが、セッティングは独自です)。特に「微低速域」と呼ばれる、ハンドルを切り始めた瞬間のごくわずかなピストンスピードにおいて、減衰力を立ち上げるのが非常に上手いのです。これにより、車体はロール(傾き)を許容しながらも、不安なグラつきは一切排除され、タイヤが路面に吸い付くような感覚を生み出します。
また、リアサスペンションに採用されている「トーションビーム式」も、プジョーの技術力の見せ所です。一般的にトーションビームはコストダウンの産物と見られがちですが、プジョーはこのアームの剛性としなりを計算し尽くしています。コーナリング中に外側のタイヤに荷重がかかると、アーム全体が適度によじれることで、リアタイヤがわずかにステアリングを切るような動き(トーイン変化)を誘発します。これが、タックインを誘発しやすく、かつ破綻しない絶妙なハンドリングバランスを生んでいるのです。これを整備士用語で「コンプライアンスステア」の一種と捉えますが、このチューニングこそが猫足の正体の一つです。
猫足の構造について、開発者のインタビューを交えて技術的に解説した記事です。
WebCG:プジョーの“猫足”はどのようにできている?技術的解説
ここからは、カタログや一般的な試乗記には書かれていない、現場の整備士だからこそ知る「故障リスク」とリアルな「維持費」について解説します。プジョースポーツカー、特に1.6Lターボエンジン搭載車を狙う場合、以下の3点は必ず押さえておくべきポイントです。
1. 高圧燃料ポンプ(ハイプレッシャーポンプ)の突然死
直噴エンジンの心臓部である高圧ポンプは、プジョー(および同エンジンのミニ)におけるアキレス腱です。冷間時のアイドリング不調や、「Anti-pollution system faulty」という警告灯が点灯し、パワーが出なくなる症状が出たら要注意です。部品代だけで10万円近くすることがあり、中古車選びの際は「交換履歴があるか」が非常に重要な評価点になります。
2. 冷却水漏れとサーモスタットハウジング
エンジン側面の樹脂製サーモスタットハウジングが、熱による経年劣化でクラック(ひび)割れを起こし、冷却水漏れを引き起こす事例が多発しています。さらに特徴的なのが、ウォーターポンプを駆動するための「フリクションホイール」という独自の機構です。ベルトで直接回すのではなく、ゴムのローラーを押し付けてポンプを回す仕組みですが、このローラーのゴムが劣化して剥離したり、押し付ける力が弱くなってオーバーヒート気味になることがあります。これは日本車の常識では考えにくい構造なので、専門店以外では見落とされがちです。
3. タイミングチェーンテンショナーのへたり
「チェーンだから交換不要」というのは建前です。油圧でチェーンの張りを保つ「テンショナー」が弱く、朝一番の始動時に「ガラガラガラ」というディーゼルエンジンのような異音がしたら末期症状です。これを放置すると、タイミングチェーンが伸びてバルブタイミングが狂い、最悪の場合はエンジンブローに繋がります。対策品が出ていますので、交換済みかどうかもチェックポイントです。
維持費に関しては、部品代は国産車の1.5倍程度を見ておく必要がありますが、近年はOEMパーツ(純正同等品)がネットで安価に入手できるため、これらを活用してくれる理解のある整備工場を見つけることが、維持費を安く抑える最大のコツです。
具体的な修理事例と費用感が掲載されている整備工場のブログ記事です。
グーピット:プジョーRCZ エンジン関連修理・整備の実績一覧
最新のモデルも魅力的ですが、プジョースポーツカーの「評判」を決定づけたのは、1980年代から90年代にかけての伝説的なモデルたちです。特に「205 GTi」と「106 S16」は、今なお世界中に信奉者が存在し、クラシックカーとしての価値を高め続けています。
「205 GTi」は、まさに「ホットハッチ」という言葉を体現した車でした。1トンを大幅に切る軽量ボディに、吹け上がりの良いNAエンジンを搭載。その挙動は非常に過激で、アクセルオフで強烈なタックイン(リアが外に流れ出す挙動)が発生するため、乗り手を選ぶ「じゃじゃ馬」として恐れられ、同時に愛されました。WRC(世界ラリー選手権)でのグループBモンスター「205 T16」のイメージも相まって、プジョー=スポーティというブランドイメージを確立した立役者です。
それに続く「106 S16」は、日本でも大ヒットしました。左ハンドルのMTしか設定がないという潔い仕様にもかかわらず、そのコンパクトなサイズと、意のままに操れるハンドリングは、多くの日本の車好きを虜にしました。現代の車のような電子制御デバイスがほとんど介在しないため、ドライバーの操作がダイレクトに車の挙動に反映されます。整備士として見ると、構造がシンプルであるため、DIYで整備を楽しむユーザーが多いのもこの年代の特徴です。部品供給は厳しくなりつつありますが、イギリスやフランスの専門ショップからはまだパーツが出るため、維持は不可能ではありません。これらの歴史的名車が築いた「軽量・高回転・猫足」というDNAは、現代の208や308にも確かに受け継がれています。

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