

汎用シザーズドア キットを取り付けると、車検に通らず公道走行できなくなる場合があります。
シザーズドアとは、ドアのヒンジをフロントフェンダー(Aピラー根元)に置き、そこを支点にドアが前方かつ上方へ、ハサミのように跳ね上がる開閉方式です。英語の「scissors(ハサミ)」に由来し、ランボルギーニが1974年発売のカウンタックで初めて市販車に採用したことから「ランボドア」とも呼ばれます。
ガルウィングドアと混同されることがよくありますが、両者は構造がまったく異なります。ガルウィングはヒンジがルーフのほぼ中央にあり、ドアが左右対称にカモメの羽根のように真横へ上がります。一方のシザーズドアはヒンジがフェンダー側にあり、ドアの前端を軸にして前上方向へ回転しながら開くのが特徴です。開放したときの高さもガルウィングより前傾しているため、横から見ると独特のシルエットになります。
スーパーカーがこのような縦開き系のドアを採用する理由は、見た目だけではありません。車高の低いスポーツカーでは横開きドアだとサイドシルが薄くなりボディ剛性が落ちてしまうため、シザーズドアのような縦開き方式にすることでサイドシルを厚く幅広く設計できます。これがパワフルな走りを支える重要な構造的メリットとなっています。
シザーズドア キットとは、こうした開閉方式を一般の量産車にも後付けで再現できるよう設計されたパーツセットです。純正のヒンジを専用ブラケットに交換し、ダンパーで開閉をサポートする仕組みになっています。キットの内容は一般的に、左右一対の専用ヒンジブラケット、ダンパー(左右)、固定用ボルト・スクリュー、取り付け説明書で構成されています。
| 種類 | ヒンジ位置 | 開く方向 | 代表車種 |
|------|-----------|---------|---------|
| シザーズドア | Aピラー根元(フェンダー) | 前上方(ハサミ状) | ランボルギーニ カウンタック、アヴェンタドール |
| ガルウィング | ルーフ中央 | 真上(カモメ状) | メルセデス・ベンツ 300SL、SLS AMG |
| バタフライドア | ヒンジ前方・斜め上 | 前方斜め上 | マクラーレンF1、SLRマクラーレン |
つまり、キットで後付けできるのはシザーズドア(ランボドア)タイプが中心です。
シザーズドア キットには大きく分けて、「車種別ボルトオンキット」と「汎用キット」の2種類があります。この選択が仕上がりの品質・費用・車検対応のすべてに直結するため、最初に正確に理解しておくことが大切です。
車種別ボルトオンキットは、特定の車種・型式に合わせて専用設計されているキットです。純正ヒンジの取り付け穴にそのままボルトで固定できるため、車体への追加加工がほぼ不要(一部フェンダー内側の小カットが必要な場合あり)です。精度が高く、ドアのチリ合わせ(ドアと車体の隙間の均一さ)も純正に近い仕上がりになります。
価格は最低でも15万円前後が相場で、車種によっては20万円を超えるものも多数あります。日産スカイラインGT-R・フェアレディZ・シルビア・マツダRX-7・RX-8・ホンダS660・トヨタ86/GR86・スープラなど人気スポーツカーには専用キットが存在します。
汎用キットは、特定の車種に依存せずさまざまな車に取り付けることを想定したキットです。楽天市場などでは4,800円〜という格安品も流通しています。ただし汎用品は取り付けの際にキット自体の加工や車体側への追加加工が必要になることがほとんどです。強度や精度が劣るものが多く、ドアが閉まりきらない・隙間が生じるといったトラブルも報告されています。
そのため汎用キットは5万円以下が相場でも、施工難度が上がるため取り付けを断られるショップも少なくありません。最終的な仕上がりを考えると、総費用がボルトオン品と大きく変わらないケースもあります。
コストと品質のバランスを考えると、専用ボルトオンキット一択が基本です。
P.G MOTORING(P.G JAPAN):国産・輸入車向けのガルウィング・シザーズドアキット価格表と取り付け工賃の実例が確認できる専門ショップの公式ページ
キット代金だけを見て「15万円か、意外と安い」と思うのはまだ早いです。シザーズドアの改造は取り付け工賃が別途かかります。
ボルトオンキットであれば専門ショップでの工賃は5万円前後〜が目安ですが、複雑な作業が必要な場合やワンオフ調整が発生した場合は10万円超えになることもあります。ホンダS660専用キットの例では、取り付け工賃だけで11万円(税込)と案内しているショップもあります。さらに作業期間は3〜4日間の車両預かりが一般的です。
| 費用項目 | ボルトオンキット | 汎用キット |
|---|---|---|
| キット代 | 15万〜20万円 | 0.5万〜5万円 |
| 取り付け工賃 | 5万〜11万円 | 高難度のため10万円超えも |
| 想定総費用 | 20万〜30万円超 | 見積もり次第で同程度になる場合も |
なお、ダンパー(ドアを支える油圧・ガス式の棒状部品)は消耗品です。使用頻度の高い運転席側が特に早く劣化し、約2年を目安に交換が必要になります。ダンパー交換費用は1本あたり部品代11,000円+工賃5,500円(1本)が目安です。左右2本交換すると毎回3万円以上の出費になります。これは維持コストとして頭に入れておきましょう。
また、ヒンジ接合部は年に1回程度の締め増し点検(有料)が推奨されています。取り付けてからも継続的な費用が発生するということですね。
DIYでの取り付けを検討している方もいるかもしれません。しかし、ドア1枚の重量は一般的な乗用車で15〜25kgあり、2〜3人での作業が前提になります。溶接が必要なケースもあり、プロのショップでさえ「難易度が高い」と評するカスタムです。「頑張ったけど取り付けできなかった」「ドアが変形した」という失敗談は実際に多数報告されているため、DIYは現実的ではありません。
「シザーズドアを付けると車検に通らないのでは?」と心配している方は多いでしょう。結論から言うと、正しく取り付けられていれば車検に通ることがほとんどです。
その理由は、シザーズドアキットはドアの開閉機構(ヒンジ)を交換するだけであり、車体のフレーム構造・最低地上高・全幅・全高といった道路運送車両法の保安基準に関わる数値をほぼ変えないためです。ドアを閉めた状態では外観も純正とほぼ変わらず、検査項目に引っかかる要素が少ないことが理由です。
ただし、「通ることがほとんど」と「必ず通る」は別の話です。
注意すべきポイントは以下の通りです。
- 溶接作業を行った場合は溶接跡を必ずコーキングで処理する(溶接跡が露出していると指摘されることがある)
- ドアのチリ(隙間)が不均一だと指摘されることがある
- 乗降スペース(乗降開口部の高さ・幅)が保安基準を下回る場合は不合格
- 各陸運局の担当官によって判断基準が異なる場合がある
実際にカーチューニング掲示板などでは、「シザーズドアで車検戻しを命じられた」という事例も存在します。これは取り付け精度の問題か、担当官の判断によるものがほとんどです。事前に陸運局へ確認するか、実績のあるショップに相談するのが確実です。
また、ショーや展示用として販売されているキット製品の中には、「公道での使用はご遠慮ください」と明記されているものもあります。購入前に必ず製品の用途適合を確認してください。
COBBY(コビー):ガルウィング・シザーズドアのメリット・デメリット、車検に関する一般的な解説記事
シザーズドアは見た目のインパクトが最大の魅力ですが、実際の使用で感じるデメリットも無視できません。特に日本特有の駐車環境では、取り付け後に後悔する人が一定数います。
まず代表的なのが立体駐車場問題です。ランボルギーニのシザーズドアが全開した際の高さは約2mになります。キット装着の一般車でもドアを完全に上げると同様に2m前後の空間が必要です。これはタワーパーキングや機械式立体駐車場はもちろん、天井の低い地下駐車場でも問題になります。都市部に住んでいる方ほど、駐車場の選択肢が大幅に狭まります。
次に雨天時の乗降問題です。シザーズドアは開くとドアが上方に立つため、横開きドアのように「ドアを傘代わり」にすることができません。乗り込む・降りる際に雨をまともに受けやすく、シートや内装が濡れるリスクも上がります。
また強風時のドア開閉にも注意が必要です。強風のときにドアを勢いよく開けるとダンパーに過大な負荷がかかり、消耗を早める原因になります。丁寧な扱いを意識する必要があります。
さらに細かい点では、乗り降りの動作がやや特殊になるため慣れるまでに時間がかかること、同乗者(特に後部座席がない2ドア車の場合)へ説明が必要になることもあります。
これらのデメリットを知った上で導入を検討するのが賢明です。
駐車場の制約については、事前に自宅・職場・よく使う駐車場の天井高(目安:シザーズドア全開で2m以上必要)を測っておくことを強くおすすめします。それだけで導入後の後悔のほとんどは防げます。
JAVA(ジャバ):シザードアとガルウィングの違い・スーパーカーが縦開きドアを採用する理由・デメリットを詳しく解説したコーティング専門店の解説ページ
実際にシザーズドア キットの購入・施工を進める前に、5つの確認事項を整理しておきましょう。これを怠ると費用の無駄遣いや後悔につながります。
① 自分の車に対応するボルトオンキットがあるかを最初に調べてください。対応キットがない場合は汎用品になりますが、前述の通り仕上がりと手間に大きなリスクがあります。Amazon・楽天・専門ショップサイトで車種・型式名で検索するのが最も手軽な方法です。
② 信頼できる施工ショップを探せるかも重要です。シザーズドアの施工経験が豊富なショップかどうかを確認しましょう。グーネットピット(goo-net Pit)などでは「ガルウィング」「シザーズドア」の施工実績でショップ検索ができます。
③ 普段使う駐車場の天井高が2m以上あるかを必ず確認してください。機械式・タワー駐車場の多くは2m未満に設定されており、利用不可になります。特に契約駐車場をすでに持っている方は注意が必要です。
④ キットの保証・アフターケアの有無を確認してください。多くのシザーズドアキットは「保証なし・アフターケアなし」と明記されています。施工後のトラブルにどう対応するかを事前に施工店と話し合っておくのが安心です。
⑤ 購入後の維持費を試算しておくことも忘れずに。ダンパー交換(2年ごと・約3万円)+ヒンジ点検(年1回・有料)が発生することを見込んだ上で、年間維持コストを計算しておきましょう。
これら5点を確認した上で進めれば問題ありません。
シザーズドア キットは、ひと手間かけて選ぶことで「気軽だった」がいつまでも「最高の判断だった」に変わるカスタムです。憧れのスーパーカー然とした開き方を愛車で再現するためにも、焦らず情報収集を丁寧に行ってから進めましょう。
sinsya1.net:ガルウィング・シザーズドアキットの価格相場・工賃・車検対応について整理されたまとめ記事