

インセットを5mm変えるだけで、あなたの車は30万円の罰金リスクを抱えることがあります。
「インセット」と「オフセット」、どちらも同じホイールの話で出てくるのに、なぜ名称が2つ存在するのか、疑問に思ったことはないでしょうか。結論から言えば、この2つは同じものを指しています。
2008年7月11日、JATMA(日本自動車タイヤ協会)の提唱により、国際基準に合わせる形で名称が整理されました。それ以前に使われていた「オフセット」という呼び方が、「インセット」「ゼロセット」「アウトセット」という3つの名称に分けられたのです。
つまり、現在の「インセット」は旧来の「プラスオフセット」にあたります。歴史的には「オフセット」という言葉がプラス・ゼロ・マイナス全体を指す言葉として使われていたため、今でも「オフセット」と呼ぶ人が多く、両方の呼び方が混在しているわけです。
国際基準に統一されたのは約18年も前の話。それでも現場では旧称が残るのは、自動車文化の根強さを示しています。
| 現在の名称 | 旧称(オフセット表記) | 取り付け面の位置 |
|---|---|---|
| インセット | プラスオフセット(+◯mm) | リム中心より外側 |
| ゼロセット | オフセット±0 | リム中心と同位置 |
| アウトセット | マイナスオフセット(-◯mm) | リム中心より内側 |
また、輸入ホイールや欧州製ホイールには「ET」という表記が使われることがあります。これはドイツ語「EinpressTiefe(アインプレスティーフェ)」の略で、英語のオフセット(Offset)に相当する言葉です。「ET42」と書いてあれば、インセット42mmという意味になります。「IS」と書かれているものも同様で、InSet(インセット)の略です。
旧称・英語表記・ドイツ語表記が混在しているため、初めてホイールを選ぶ際に混乱するのは自然なことです。いずれも「リム幅の中心線から取り付け面までの距離(mm)」という同じ数値を指しているのだということだけ覚えておけばOKです。
参考:インセット・オフセットの名称変更の経緯と表記の詳細については、JATMA(日本自動車タイヤ協会)やオートバックスの公式解説ページが参考になります。
ホイールを交換しようと思ったとき、ホイールの裏面や商品ページに「17×7J 5-114.3 +48」のような表記が並んでいることに気づきます。この数字の羅列がすべてを語っていますが、最後の「+48」の部分がインセット(オフセット)の値です。
各数値の意味を整理すると次の通りです。
インセットの数値は「プラス(+)」なら取り付け面がリム中心より外側に位置することを示します。この場合、ホイールを装着したときに車体内側へ引っ込む量が多くなります。逆に数値が小さくなる(0やマイナスに近づく)ほど、ホイールは外側に張り出します。
感覚的にイメージしにくい部分なので、例を挙げます。純正ホイールがインセット50で、交換後のホイールがインセット45だったとします。この差の5mmぶん、新しいホイールは外側に出ることになります。5mmというのは大人の小指の爪幅程度。たった5mmに思えますが、フェンダーとのクリアランスが5mm以下の車種では、これだけで干渉が起きることがあります。
インセットの確認場所は主に2つです。
装着中のホイールを調べるには一度取り外す必要があるため、タイヤ交換のタイミングで確認しておくのが効率的です。これが基本です。
インセットを変えると何が変わるのかを、もう少し具体的に掘り下げます。主に「ホイールの出ヅラ(外観)」と「トレッド(左右タイヤの接地幅)」という2つの要素に影響が出ます。
まずホイールの出ヅラについて。インセットの数値を下げる(小さくする)と、ホイールの取り付け面がリム中心より内側に移動するため、ホイール全体が外側に張り出します。フェンダーの端とタイヤの外面が揃う「ツライチ」と呼ばれる状態はこの原理で実現されます。ツライチはレーシングカーのような力強い印象を与えるため、カスタム目的でインセットを下げるドライバーは少なくありません。
次にトレッドへの影響です。インセットを下げてホイールが外側に出ると、左右のタイヤ間の距離(トレッド)が広がります。トレッドが広がると走行安定性は向上しますが、ハンドリングのシャープさは失われます。特にフロントのトレッドが拡大すると、ステアリングがアンダーステア気味(曲がりにくい傾向)になることが知られています。
また、インセットが変わると「スクラブ半径」という数値も変化します。スクラブ半径とはステアリングの回転軸(キングピン軸)の延長線と、タイヤの接地中心との距離のことです。この値が設計値からずれると、アクセルを踏んだときにトーイン(タイヤが内向きに)、ブレーキ時にトーアウト(外向きに)なりやすくなります。数ミリの違いで走りに影響するのはこのためです。
見た目のためだけに安易に変更するのは危険ですね。プロショップで事前に相談するのが原則です。
参考:インセット変更によるスクラブ半径やトレッドへの影響については、Web Car Top(ウェブカートップ)の専門記事が詳しいです。
履けるか否かだけじゃなく数ミリで走りも変わる!じつは難しいインセット選び|Web Car Top(スクラブ半径やトレッド変化など、走りへの影響を専門的に解説)
インセットを変更してタイヤやホイールがフェンダーからはみ出した状態のまま公道を走ると、法的なリスクが生じます。これは決して「念のため」の話ではなく、知らないと30万円の出費につながりかねない現実です。
道路運送車両法第99条の2(不正改造等の禁止)では、保安基準に適合しなくなる改造を行ってはならないと明記されており、違反した場合は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。さらに整備命令が下された場合、従わなければ追加の処分も受ける可能性があります。
では、どこまでが許容されるのでしょうか。2017年の保安基準改正以降のルールは次のとおりです。
つまり、10mm以上はみ出している場合は車検不適合となり、そのまま公道を走れば不正改造車として扱われます。ホイールが1mmでもはみ出せば即アウトです。
インセットを純正値から大幅に変更する場合は、計算だけで判断せず実車での確認が必要です。フェンダーやサスペンションとのクリアランスは車種ごとに異なり、ステアリングを切ったときや段差で沈み込んだときに初めて干渉することも少なくないからです。
心配な場合は、タイヤ専門店やカー用品店でスタッフに確認してもらうのが一番の近道です。オートバックスやイエローハットなどでは、純正サイズからの適合確認を行うサービスもあります。確認してから交換する、それだけで法的リスクはほぼゼロになります。
参考:タイヤのはみ出しに関する車検基準とリスクの詳細は、イエローハットの解説ページがわかりやすいです。
タイヤのはみ出しはどこまでOK?車検で見られるポイントを解説|イエローハット(はみ出し基準・ホイールのNG範囲・車検チェックポイントをわかりやすく説明)
「今使っているホイールのインセットを変えたら、どれだけ外側に出るのか?」これを自分で計算できると、ホイール選びの精度が大幅に上がります。計算に必要なのは「現在のリム幅」と「現在のインセット値」、そして「交換候補のリム幅」と「インセット値」の4つだけです。
手順をシンプルにまとめると以下の流れになります。
具体例で確認してみます。現在のホイールが「17×7J +48」で、交換候補が「17×7.5J +43」だとします。
現在のホイール。
リム幅 7インチ = 7 × 25.4 = 177.8mm → 中心まで 88.9mm
取り付け面から外端まで:88.9 − 48 = 40.9mm
交換候補のホイール。
リム幅 7.5インチ = 7.5 × 25.4 = 190.5mm → 中心まで 95.25mm
取り付け面から外端まで:95.25 − 43 = 52.25mm
外端の差:52.25 − 40.9 = 11.35mm 外側に出る
この例では11mm以上外側に張り出すことになります。1cmを超える変化は決して小さくありません。フェンダーとのクリアランスが15mm程度しかない車種では、干渉ギリギリか完全にはみ出す可能性があります。
計算が苦手な場合でも、「インセット 計算 ツール」などで検索すると、リム幅とインセットを入力するだけで自動計算してくれる無料ツールが複数見つかります。これは使えそうです。
ただし、計算はあくまで「机の上での推定値」に過ぎません。実際の車体には製造公差があり、フェンダーの形状・サスペンションの可動域なども絡んできます。計算値に余裕を持たせた上で、必要に応じてプロの確認を仰ぐのが安全です。
参考:インセットの計算方法と許容範囲については、チューリッヒ保険の解説ページが体系的に整理されています。
ホイールオフセット・ホイールインセットとは。計算方法|チューリッヒ(計算に必要な情報の揃え方と変更時の注意点を詳しく解説)
これは検索上位の記事にはほぼ書かれていない視点ですが、インセットを微調整する目的でホイールスペーサーを使うドライバーが一定数います。スペーサーはホイールとハブの間に挟む薄い金属板で、5mmや10mmのものが市販されています。インセット50のホイールにスペーサーを5mm挟めば、実質的にインセット45と同じ効果が得られます。
しかし、スペーサーの使用にはいくつかの注意点があります。まず、スペーサーを使うとハブボルトの露出長さが短くなるため、ナットの締め付け量が減ります。一般的にハブボルトとナットの有効かみ合い長さはボルト径の1倍以上(M12なら12mm以上)が必要とされており、これを下回ると走行中にホイールが外れる重大事故につながります。
また、スペーサーの厚み分だけホイールが外に出るため、タイヤのはみ出しが10mmを超えないかの確認も必要です。薄いスペーサーなら問題ないことが多いですが、計算せずに「少しだから大丈夫」と思い込むのは危険です。
さらに見落とされがちなのが、スペーサー使用によるハブボルトのねじ切り(破断)リスクです。スペーサー自体は安価ですが、品質の低い製品はわずかな変形がナットの締め付け力を分散させ、走行中の振動でナットが緩みやすくなります。スペーサーは有料です(数百円〜数千円)が、安全のために信頼性の高いブランド品を選ぶことが重要です。
インセットを変えたいという目的がある場合、スペーサーで済ませるか新しいホイールを選ぶかは「変更幅」によって判断するとよいでしょう。5mm以内ならスペーサーで対応できる場合もありますが、10mm以上の変更は最初からインセット値が適切なホイールを探すほうが安全で確実です。
| 変更方法 | コスト感 | 主なリスク | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| インセットが異なるホイールに交換 | 数万円〜 | フェンダー干渉・車検不適合 | 10mm以上の変更を望む場合 |
| スペーサーを挟む | 数百円〜数千円 | ボルト露出量不足・緩み・はみ出し | 微調整(5mm前後)のみ |
インセット変更はmm単位の話ですが、その影響は安全性・法的適合・走行性能の全方向に及びます。「見た目」だけで決めるのではなく、必ず数値と法律の両面から確認する習慣をつけることが、安全で快適なカーライフにつながります。

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