

安いタワーバーを付けると、むしろ事故の修理代が2倍以上に膨らむことがあります。
クルマが走っていると、タイヤから入ってくる力はサスペンションを通じてボディに伝わります。その中でも、ショックアブソーバーの上端を固定している「ストラットタワー」と呼ばれる山型の部分は、コーナリング時の横Gや、段差での突き上げなど、あらゆる方向の力を受け続けます。
問題は、左右のストラットタワーがそれぞれ独立して動いてしまうことです。右コーナーでは右のストラットタワーが押し上げられ、左は引き下げられる動きが生じます。この左右のアンバランスな動きがボディのねじれを生み出し、ハンドルを切ってもなかなか曲がらない、ブレーキング時に車がふらつくといった症状につながります。
つまり原因はここです。
そこで登場するのが「ストラットタワーバー(タワーバー)」という補強パーツです。左右のストラットタワーをバー(棒)で物理的に繋ぐことで、片方に加わった力をもう片方にも伝達し、ボディのねじれを抑制します。イメージとしては、両手で持ったゴムシートの両端を同時に支えるようなもので、片手だけで支えるよりはるかに安定します。
ストラットタワーバーは国土交通省の定める「指定部品」に該当するため、一般的な製品であれば取り付けたまま車検を受けることも可能です。ボルトオンで取り付けられる手軽さもあり、ボディ補強パーツの入門として長年人気を集めています。
効果が出やすいのは、ボディ剛性が比較的低い旧型の国産スポーツカーや、ハッチバック、オープンカーなど開口部の広いボディ形状の車種です。一方、近年の新型車は出荷時点で高張力鋼板を多用した高剛性ボディを採用していることも多く、追加補強の恩恵を感じにくいケースもあります。
OKUYAMA(カービング)|ストラットタワーバーの製品ラインナップと解説
タワーバーを選ぶとき、見た目が似ていても素材と形状の違いが効果に直結します。これが最重要ポイントです。
まず素材は大きく4種類に分かれます。
| 素材 | 特徴 | 価格目安 |
|---|---|---|
| 🔵 スチール | 剛性が高く安価。重量増がデメリット | 5,000〜15,000円 |
| 🟡 アルミ | 軽量でしなやかな剛性感。コスパ良好 | 15,000〜40,000円 |
| ⚪ チタン | 軽量かつ高強度。高価だが耐久性◎ | 40,000〜80,000円以上 |
| ⬛ カーボン | 最軽量。「アルカーボン」は見た目だけの場合あり | 20,000〜100,000円以上 |
ここで一つ注意が必要です。「アルカーボン」と呼ばれる素材はアルミにカーボンシートを貼り付けただけの製品が多く、価格差は見た目だけで性能差はアルミと変わらない場合がほとんどです。見た目のカッコよさにお金を払うか、実際の剛性にお金を払うか、目的をはっきりさせてから選ぶと失敗がありません。
次に大きく差が出るのがバーの形状です。丸い単純なシャフト(パイプ)タイプは重量あたりの曲げ剛性がどうしても低くなります。断面が楕円形になった「オーバルバー(オーバルシャフト)」は、同じ重量でも断面二次モーメントが大きくなるため、曲げに対してより強く、実際の補強効果が格段に上がります。カーブで横Gがかかったとき、バー自体がしなってしまう安価なシャフトタイプとは体感が全く異なります。
さらに上位となるのが「カウルブレース一体型」と呼ばれる構造です。ストラットアッパーマウントから、エンジンルームとキャビンを隔てるバルクヘッド(隔壁)まで繋ぐ設計で、前後方向の入力にも対応できます。通常のタワーバーは左右方向の入力に対しては有効ですが、両前輪が同時に段差に乗り上げるような前後方向の力には補強効果が薄いのが実情です。カウルブレース一体型はこの弱点も補えるため、同じボルトオン製品の中では最も高い補強効果が期待できます。
結論はシンプルです。予算が許すなら「オーバルバー形状+しっかり固定される取り付け部」を最低条件にするのが基本です。
Auto Messe Web|素材・構造の違いによる効果の差を詳しく解説
タワーバーは万能ではありません。取り付け前に必ずデメリットを把握しておく必要があります。
最初に理解しておきたいのが、乗り心地の変化です。ボディ剛性が上がると、路面からの小さな凹凸や段差の振動がよりダイレクトにシートを通じて身体に伝わります。スポーツ走行では「路面インフォメーションが増えて良い」と感じる人が多い一方、毎日の通勤で悪路を通る場合は「突き上げが辛い」と感じることも十分あります。特に足回りがノーマルのままでタワーバーだけを付けると、バランスが崩れて違和感が増すケースもあるため注意が必要です。
次に注意すべきが、アンダーステアの増大です。ボディのねじれが減ることでステアリングの切り始めは素直に反応するようになりますが、その後のコーナー途中では逆にアンダーステア(思ったより曲がらない状態)が強まる傾向があります。これは車体がロールしにくくなり、荷重移動が減るためです。
また、ベテランのレース経験者の間では「雨天時のコースではタワーバーを外した方が走りやすい」という話が古くから伝わっています。路面が濡れてグリップが低下した状況では、ボディが適度にしなる状態のほうがタイヤへの負担が分散されて扱いやすくなるという考え方です。公道でここまで意識する機会は少ないですが、補強すれば無条件に良くなるわけではないことを示す好例です。
最後に見落とされがちなのが、事故時の被害拡大リスクです。左右のストラットタワーがバーで繋がっていると、たとえば右フェンダー側への衝撃がタワーバーを通して左側にも伝わり、反対側のボディまで変形してしまう場合があります。修理費用が両側に発生するため、板金代が単純計算で倍近くなるリスクがあります。痛いですね。
これらのデメリットが嫌なら、付けなくていいということです。タワーバーはあくまでスポーツ走行の快適性・性能向上を目的としたパーツであり、普段乗りが中心のファミリーカーに無理に取り付ける必要はありません。
タワーバーの取り付け自体は、工具さえ揃えれば比較的DIYしやすい部類の作業です。基本的な流れを確認しておきましょう。
まず用意する工具は、ソケットレンチ(17〜19mmが多い)、ラチェットハンドル、エクステンションバー、トルクレンチの4点が最低限必要です。車種によってはエンジンルームのカバー類を外すためにドライバーやクリップ外しも必要になります。
手順はシンプルで、エンジンルームのストラットアッパーマウント上部にある固定ナットを外し、タワーバーのブラケットをあてがってから同じボルト穴に共締めします。「共締め」とは、元々付いていたナットを外してタワーバーのブラケットごと共に固定する方法です。新たに穴を開ける必要がないため、ボルトオン取り付けと呼ばれています。
ここで重要な注意点があります。タワーバーを取り付ける際は「遊び」がない状態、つまりバーがピンと張った状態でボルトを本締めすることが絶対条件です。ターンバックル(長さ調整ネジ)が付いている製品の場合は、左右のブラケットを仮止め後にバーの長さを調整し、テンションがかかった状態を確認してから本締めします。遊びがある状態で固定してしまうと、コーナリング中にガタが出て補強効果をほとんど発揮できなくなります。
取り付け後に確認すべきなのは2点です。エンジンルーム内の他パーツとバーが干渉していないか(特にホース類・配線・エアクリーナーボックス)と、ボルトの締め付けトルクが適正かどうかです。一般的なストラットアッパーマウントのナット締め付けトルクは25〜40N・m程度の車種が多いですが、必ず車両の整備マニュアルで確認することをお勧めします。
自信がない場合は専門ショップへ依頼するのが確実です。工賃は多くの場合3,000〜8,000円程度で、安全を買うコストとして決して高くはありません。
タワーバーを選ぶとき、「どんな車に乗っているか」と「どんな走り方をするか」によって最適解が変わります。これは意外と知られていません。
スポーツカー・ハッチバック系の場合、すでにある程度のボディ剛性を持っている車種でも、サーキット走行やワインディングでの走行を楽しむなら、オーバルバー形状のアルミ製以上を選ぶのが基本です。ホンダ・シビック(FL5型)やトヨタ・GR86(ZN8型)などは純正品またはそれに準ずるメーカー純正オプションが存在しており、取り付け精度の面で最も信頼度が高いと言えます。
ミニバンやSUVの場合、ボディが大きく重心が高いため、ストラットタワーバーの補強効果は相対的に体感しやすい傾向があります。高速道路でのレーンチェンジ時のふらつきが気になる方は、試してみる価値は十分あります。アルファードやヴォクシーなど人気ミニバン用の製品は多くのアフターパーツメーカーから専用品が出ています。これは使えそうです。
セダン・クーペ系では、フロントにタワーバーを入れてもリアとのバランスが取れないと偏った特性が出ることがあります。この場合はフロントとリアの両方に取り付けるか、フロントだけにとどめて足回りのアライメント調整とセットで行うのが理想です。
いずれの車種でも共通して言えることは、タワーバー単体の効果だけでなく、足回りのアライメント調整も組み合わせて初めて真の効果を実感できる、という点です。補強後は必ずアライメントをチェックする習慣をつけておくと、ハンドリング改善の恩恵を最大限に受けられます。アライメント調整の工賃は一般的に1万5,000〜3万円程度が相場です。
カーナビ.jp|ストラットタワーバーの形状・素材・効果の差を詳しく解説

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