

タワーバーを付けてもコーナリングで横転しやすくなることがある。
「タワーバーを付けたのに何も変わらなかった」という声はネット上に多く存在します。しかしこれは、タワーバーそのものが無意味なのではなく、車種・走行シーン・取り付け方式が噛み合っていない場合がほとんどです。
そもそもストラットタワーバーが生まれた背景を押さえておく必要があります。コーナリング中、車体にはボディをねじろうとする大きな力が加わります。とくにサスペンションの上部取り付け部(ストラットタワー)は、サスが縮む際に外側へ「こじ開けられる」ような力がかかりやすい構造です。左右のストラットタワーをバーで繋ぐことで、この開こうとする力を互いに打ち消し合わせる——それがストラットタワーバーの基本的な仕組みです。
理屈は明快です。しかし実際には「効果を体感できない」ケースが少なくありません。
その最大の理由は、サスペンション形式の違いにあります。ストラット式のサスペンションは、コーナリング時にハブが弧を描くように動く構造上、アッパーマウント(ストラットタワー)を外側へ押し開こうとする力が発生しやすく、タワーバーが非常に有効に機能します。一方、ダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式では、サスペンションがほぼ垂直方向に縮む設計のため、ストラットタワーを横方向に開こうとする力がほとんど発生しません。つまり、ダブルウィッシュボーンやマルチリンクの車にタワーバーを付けても、効果はほぼ体感できないという結論になります。
もう一つの理由が、近年の車体剛性の向上です。2010年代以降に製造された多くの国産車は、衝突安全基準の強化に対応する形でボディ剛性が飛躍的に高まっています。もともとボディ剛性が十分に高い車に後付けでタワーバーを装着しても、補強する余地自体が少なく、変化を感じにくいのです。
つまり「効果なし」です。ただし、それは特定の条件下での話です。
参考:タワーバーの効果と車種別の適合についての詳細な解説
タワーバーに効果はあるのか? ストラットタワーの剛性について - くぬぎランナー
どの車に付けるかが、効果を左右する最大のポイントです。以下に判断の目安をまとめました。
| 条件 | 効果が出やすい | 効果が出にくい |
|---|---|---|
| サスペンション形式 | ストラット式 | ダブルウィッシュボーン式・マルチリンク式 |
| 車体剛性 | 旧型・廉価グレードで低め | 最新型・上位グレードで高め |
| 走行シーン | サーキット・高速コーナリング | 街乗り・低速走行のみ |
| 足回り | 車高調・スポーツサス装着済み | 純正ノーマルサスペンション |
代表的な「効きやすい車種」として挙げられるのが、ホンダ・シビック(ストラット式)、トヨタ・GR86(ストラット式)、スバル・インプレッサ(ストラット式)などです。一方、マルチリンクを採用するBMW 3シリーズや、ダブルウィッシュボーンを用いるホンダ・レジェンドなどでは、タワーバーを付けても「何が変わったのかわからない」と感じるドライバーが多いとされています。
街乗りオンリーでノーマルサスのままの車に付けると、効果は薄いということですね。さらに、純正サスペンションのような柔らかいセッティングの車にタワーバーを装着すると、ロール量が増加し、かえって乗り味がフラフラしやすくなるという逆効果が生じる可能性もあります。
これは次のメカニズムによるものです。タワーバーでボディ剛性が上がると、本来ボディがたわんで受け流していたサスペンションへの入力が、そのままサスペンションに集中するようになります。すると、ストロークが増えてロール量が増大します。ロールが増えれば外側タイヤへの荷重が増し、グリップが間に合わなければアンダーステアが強まります。特にフロントにタワーバーを付けた場合、ハンドルの切り始めの反応は良くなるものの、切り続けても車が曲がらないアンダーステアが出やすくなるのです。
リアに装着した場合は逆に、リアのロールが増えることでスピンのリスクが上がるという指摘もあります。これは意外ですね。
参考:ボディ剛性とタワーバーのデメリットについての解説
実は、タワーバーの「形状と取り付け方式」を間違えると、2万円払っても効果がほぼゼロになります。これは大きな出費ですね。
タワーバーには大きく分けて、次のようなタイプがあります。
安価なシャフトタイプの中には、コーナリング中の複合入力に対してバー自体がねじれてしまい、補強効果を十分に発揮できないものもあります。とくに「取り付け部とバーがボルトで繋がれたセパレートタイプ」は、そのボルト部分にガタが生じやすく、経年でゆるんだまま走り続けるリスクもあります。
競技者が溶接一体型しか使わないのは、まさにこの理由からです。競技用では、アルトワークス・GT-R・ランエボなどの純正タワーバーも溶接タイプで、スチール製のものが多いとされています。
また、「アルカーボン素材」と書かれた製品には注意が必要です。これはアルミ素材の表面にカーボン調シートを貼り付けただけの製品で、カーボン繊維の本来の軽量・高剛性という恩恵はほとんど受けられません。見た目の高級感と実際の性能は別物、ということですね。
製品選びの基準をまとめると次のようになります。
価格帯は、国産アフターパーツメーカー(CUSCO・OKUYAMA・BLITZ など)の主力品で1万円台後半〜3万円台が中心です。取り付け工賃は店舗によりますが、5,000円〜1万円程度が相場とされています。DIY取り付けも可能で、17mmのメガネレンチさえあれば、多くの車種でストラットアッパーのナットを外してバーを固定するだけで作業が完了します。ただし、取り付けに「遊び(たわみ)」が残っていると補強効果はゼロになるため、バーをピーンと張った状態で確実に締め付けることが必須です。
参考:ストラットタワーバーの種類と形状による効果の違い
ストラットタワーバーとは?どのような効果のあるパーツか - CRナビ
タワーバーを付けたのに効果がなかった、あるいは乗り心地が悪化したという人の多くは、足回り全体のバランスを考えずに取り付けているケースが目立ちます。これは本来の使い方ではないということです。
ストラットタワーバーはあくまで、ボディ剛性が不足している部分を補うためのパーツです。本来サスペンションがストロークすべき場面で、先にボディがたわんで逃げてしまっている車に対して有効なのです。したがって、ベストな順番は次のようになります。
まず、足回りの状態を確認します。純正サスペンションが著しく劣化しているなら、まずダンパーやスプリングを交換するのが先決です。サスペンションの性能が発揮されていない状態でボディだけ固めても、操縦性は改善しません。
次に、タワーバーを装着してサスペンションが受け止める入力を増やします。このとき、ロール量が増える可能性があるため、スタビライザー(アンチロールバー)の強化も同時に検討するとバランスが取れます。スタビライザーは左右のサスペンションを繋ぎ、ロールを抑制するパーツで、タワーバーとセットで考えると相乗効果が期待できます。
最後に、アライメント調整を行います。タワーバー装着後は、サスペンションへの入力の仕方が変わるため、ホイールアライメントがズレることがあります。アライメントが狂ったままでは、直進安定性が低下したり、タイヤが偏摩耗したりするリスクがあります。タワーバー取り付け後には、アライメント測定を1回行うことを強く推奨します。相場は1軸あたり5,000円〜1万円程度です。
こうした一連の流れを踏まずに「とりあえずタワーバーだけ付ける」という判断をした場合、お金と時間を使った結果として効果を感じられないどころか、乗り心地が悪化するリスクもあります。痛いですね。
タワーバーは「それ単体で車が激変するマジックアイテム」ではなく、足回り全体のセッティングを整えた上で、最後のピースとして機能するパーツと理解するのが正しい認識です。
参考:タワーバー装着後のアライメント調整の重要性
ストラットタワーバーを取付けていても車検に通すことはできるのか - グーネットピット
他のサイトではあまり触れられていない「取り付け前の自己診断」の視点からまとめます。これを知っておくと、無駄な出費を防げます。
タワーバーを付けて体感を得やすい条件は次の5項目で確認できます。
この5項目のうち3つ以上が当てはまるなら、取り付ける価値はあるといえます。2つ以下の場合は、費用対効果を慎重に考えましょう。
なお、車検については安心してください。ストラットタワーバーは国土交通省が定める「指定部品」の扱いで、保安基準を満たした製品であれば構造等変更申請も不要で、そのまま車検を受けることができます。ただし、取り付け後にボンネットと干渉したり、車体番号が隠れたりする場合は車検不合格になる可能性があるため、取り付け位置には注意が必要です。
また、スチール製タワーバーを選んだ場合の重量は最大でも3kg程度であるため、車両重量への影響はほぼゼロです。軽量化を重視するならアルミ製を選ぶと良いでしょう。同じ補強効果をアルミ製で得ようとするとスチール製の1.5〜2倍の価格になることが多いですが、重量を1〜2kg程度削減できます。
タワーバーはただの「棒」ではありません。正しい知識で選べば、確実に走りに変化をもたらすパーツです。一方で、「なんとなく良さそうだから」という理由だけで選ぶと、1万円以上の出費が無駄になる可能性があります。これが条件です。
参考:ストラットタワーバーの車検適合と指定部品に関する国土交通省の基準
ストラットタワーバーを取付けていても車検に通すことはできるのか - グーネットピット
Enough data gathered.

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