
セバスチャン・オジエは1983年12月17日、フランス・オート=アルプ県ギャップ生まれのラリードライバーです。元々はスキーのインストラクターという異色の経歴を持ち、2005年にFFSA(フランス自動車スポーツ連盟)主催の若手ドライバー発掘プログラムに選ばれ、22歳という遅いスタートながらラリードライバーの道に進みました。
参考)セバスチャン・オジェ - Wikipedia
2008年にはJWRC(ジュニア世界ラリー選手権)でシリーズチャンピオンを獲得し、その才能がシトロエンに認められました。WRカーでの初戦となった同年最終戦のラリーGBでは、SS1でベストタイムを記録するという驚異的な走りを見せ、SS5までラリーをリードしました。
参考)セバスチャン・オジエ
2010年のラリー・ポルトガルでWRC初優勝を達成し、同年は日本(北海道)でも優勝を果たしました。2013年からフォルクスワーゲンに移籍すると、2013年から2018年まで前人未到のWRC 6連覇を達成。2017年にはMスポーツ・フォードに移籍し、さらに2年連続で世界王者となりました。
参考)No.17 セバスチャン・オジェ
2020年にはTOYOTA GAZOO Racing WRTに加入し、2020年と2021年にドライバーズタイトルを獲得。これにより、3つの自動車メーカーをまたにかけてチャンピオンに輝くという偉業を成し遂げました。
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WRCのポイントシステムは、選手権の行方を大きく左右する重要な要素です。2025年シーズンから新しいポイント制度が導入され、最終的にラリーをフィニッシュした総合10位までのドライバーに総合ポイント(25、18、15、12、10、8、6、4、2、1ポイント)が与えられるようになりました。
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さらに、日曜日の上位5人のドライバーが獲得できる「スーパーサンデー」のポイント(5、4、3、2、1ポイント)と、パワーステージの上位5人に与えられるボーナスポイント(5、4、3、2、1ポイント)が加算されます。つまり、完全優勝すれば最大35ポイントを獲得できることになります。
このシステム変更により、勝者をより重視する配分となり、劇的なタイトル争いが生まれやすくなりました。2025年シーズンでは、オジエは6戦のうち2戦を欠場しながらも、4戦で3勝を挙げてドライバー選手権2位に浮上し、首位のエルフィン・エバンスに19ポイント差と迫りました。
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2023年シーズンには、オジエは8戦にのみ出場しうち3戦で優勝するという効率的な戦い方を見せ、フルシーズン参戦しなくてもタイトル争いに絡める実力を証明しました。WRCプロモーターのシニアスポーツディレクターは「このアップデートされたシステムは、忘れられない瞬間と激しいタイトル争いをもたらした2024年のフォーマットの全体的な成功に基づいています」と説明しています。
ラリー・モンテカルロは、1911年に初めて開催されたWRCで最も長い歴史と伝統を誇るターマック(舗装路)ラリーです。舞台はモナコからフランス南部にかけての山岳地帯で、降雪に見舞われて滑りやすく、多くのドライバーが路面コンディションに泣かされてきた「世界最難関」とされるラリーです。
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オジエはこのラリー・モンテカルロで歴代最多となる10勝を記録しています。2023年の開幕戦では、SS1から首位を守り抜いて9度目のモンテカルロ優勝を飾り、5メーカーをまたぎ優勝するという快挙を達成しました。そして2025年の開幕戦でも優勝し、通算10勝目を達成しました。
参考)WRC第1戦ラリー・モンテカルロ【結果】
このラリーでは、路面状況が一瞬で凍結路面に変化するなど、「最も攻略が難しい」状況が続きます。2025年開幕戦は、非常に多くの不確定要素が重なり、いつにも増して難易度の高いラリーとなりましたが、オジエは抜群の適応力を発揮して優勝しました。
参考)「完全に凍ってる」世界最速ラリーで衝撃光景…一瞬で凍結路面へ…
オジエのモンテカルロでの圧倒的な強さは、適応力の高さと卓越したドライビングテクニックによるものです。視聴者からは「さすがオジエ」「キレッキレ」といった称賛の声が上がり、超一流のドライビングに多くの人が魅了されています。
参考)https://www.redbull.com/jp-ja/sebastien-ogier-rally-tips-for-success
TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)は、オジエの活躍により数々のタイトルを獲得してきました。2020年にトヨタに加入したオジエは、シーズン2勝を飾って通算優勝回数を49に伸ばし、7度目のドライバーズタイトルを獲得しました。2021年にはシーズン5勝で通算8回目のドライバーズタイトルを獲得しています。
トヨタは2025年10月19日、WRC第12戦「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」で5年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得しました。この快挙について、豊田章男会長は「5年連続のタイトルをありがとう」とチームへの感謝を述べています。
参考)豊田章男会長「5年連続のタイトルをありがとう」ランチアの最多…
トヨタの戦略は、信頼関係を築いたドライバー、コ・ドライバーたちとともにマニュファクチャラー、ドライバー、コ・ドライバーの3冠達成を目指すというものです。2024年シーズンからは、カッレ・ロバンペラとオジエがGR YARIS Rally HYBRIDのシートをシェアする形となり、オジエはパートタイム参戦ながらも勝利を重ねています。
参考)TOYOTA GAZOO Racing、2024年のWRC・…
TGR-WRTの技術陣による開発努力も、オジエの優勝を支える重要な要素となっています。ドライバーたちは特にクルマの「バランス」が重要であると語り、良いバランスが感じられないクルマでは精度の高い走りができないと指摘しています。
参考)WRCな日々 DAY68 - TGR-WRT技術陣の開発努力…
オジエの強さの秘密は、卓越したドライビングテクニックにあります。特にラフグラベルラリーでは、パンクをさせない走り方が非常に重要ですが、オジエはタイヤへの「当てかた」が非常に上手いと昔から言われています。
タイヤで最も弱いのは側面のサイドウォール部であり、角が尖った石に当たると側面が裂けたり穴が開きやすくなります。一方、地面と接するトレッド面は比較的外部からの衝撃に強い構造のため、オジエはなるべくタイヤのサイドを石に当てないように、ラフな路面ではクルマのコーナリング姿勢を絶妙にコントロールしているのです。
2025年第6戦「ラリー・イタリア サルディニア」では、オジエは荒れた路面を走り抜き、パンクと無縁のままライバルに7.9秒差をつけて優勝しました。この優勝により、2004年にこのラリーがWRCに加わって以降、最も多くの勝利を手にしたドライバーとなりました。
メキシコでのオジエは、クルマをあまりドリフトさせず、極端に表現するとターマック(舗装路)を走るかのように運転しているとされ、メキシコでの7回目の制覇を達成しています。このように、オジエは路面状況やラリーの特性に応じて走り方を変える高い適応力を持っています。
参考)WRCな日々 DAY43 - メキシコ7回目の制覇 オジエの…
オジエ自身は「できるだけ、様々なタイプのマシンのドライブ方法を学ぶように努めてみよう。後輪駆動、前輪駆動、4輪駆動などすべてのタイプをね」と語り、多くの種類のマシンを経験することの重要性を強調しています。
参考)https://www.redbull.com/jp-ja/rally-driving-how-to-start
<参考リンク>
WRCで通算8度のチャンピオンを獲得したオジエのキャリアと実績の詳細
セバスチャン・オジェ - Wikipedia
トヨタのWRC参戦体制と戦略についての公式情報
セバスチャン・オジエ | ドライバー情報 | TOYOTA GAZOO Racing
オジエが語る勝利のマインドセットとラリードライバーとして成功するためのアドバイス
セバスチャン・オジエが語る「勝利のマインドセット」| Red Bull