

ニーエアバッグを搭載していても、シートベルトを着けないとエアバッグ作動時の死亡率が約8倍に跳ね上がります。
ニーエアバッグとは、正式名称「SRSニーエアバッグシステム」といい、前面衝突の際にステアリングコラム下部(助手席の場合はグローブボックス下部)から瞬時に膨らみ、乗員の膝・脚部を保護するための装備です。「ニー(Knee)」は英語で「膝」を意味し、その名のとおり下半身への衝撃を集中的に緩和することを目的としています。
エアバッグ全体の歴史は古く、1920年代に特許が認められ、乗用車への実用搭載が始まったのは1970年代のことです。運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグと進化し、ニーエアバッグは比較的新しい部類に入ります。ホンダのグローバルサイトによれば、「各種エアバッグのなかでは比較的新しく採用された装備」と明示されており、搭載車の広がりはここ10年ほどで急速に進んだといえます。
ニーエアバッグの展開の速さは、想像を超えるものがあります。衝突センサーが衝撃を感知してからエアバッグが完全展開するまで、わずか0.1秒以内という設計です。これは人が目をまばたきする時間よりもはるかに短い時間です。
特に注目すべきは、軽自動車への搭載が実現した際の技術的な苦労です。日産「ルークス(2020年型ハイウェイスター)」が軽自動車初のニーエアバッグ搭載車として登場した際、膝まわりのスペースはわずか8mmしかなかったと報告されています。通常の乗用車でも余裕があるとはいえないこのスペースで確実に展開させるため、「2段展開構造」という独自技術が開発されました。まず手前側に高圧ガスを充填して初期展開し、その硬さを利用してリッドを突き破り、次いで全体に一気にガスを充填するという2ステップの仕組みです。開発陣の緻密な工夫の結晶といえます。
参考:軽自動車のニーエアバッグ初搭載の技術背景について詳しく解説されています。
「ニーエアバッグは膝を守るもの」というイメージを持っている方は多いでしょう。しかし実際には、脚部保護以上に見落とされがちな重要な効果があります。
豊田合成の技術資料によれば、ニーエアバッグの主な効果は次の2点です。1つ目は、ステアリングコラムやキーシリンダーなどの硬い部品と膝の直接衝突を防ぐこと。2つ目は、車両前方への腰の移動を抑制することで、シートベルトで乗員を拘束する際に発生する胸部のたわみを約20%軽減できることです。これは非常に重要なポイントです。
つまり、ニーエアバッグが本来の効力を最大限に発揮するのは「シートベルト着用時」に限られます。シートベルトが腰と肩の2点で体を固定しているときに初めて、ニーエアバッグが「体の前進を足元から止める補助」として機能するわけです。シートベルト無しでは下半身の動きを制御できないため、この効果は半減どころか期待できなくなります。
国土交通省の連ラクダ(車の安全情報サイト)によれば、エアバッグが作動した事故においても、シートベルトを着用していない場合は着用者と比べて死亡率が約8倍高いというデータが報告されています。胸部傷害を20%軽減するために設計されたニーエアバッグですが、その前提はあくまでシートベルトの正しい着用です。
逆にいえば、シートベルトをきちんと着けてニーエアバッグ搭載車に乗れば、正面衝突時の胸部への負担が統計的に大きく低減される可能性があります。これは知っておくと「得する」情報です。
また、米国の保険安全研究機関IIHSが2019年に発表した研究結果では、ニーエアバッグはシートベルト着用者の傷害リスクを7.9%から7.4%へと0.5ポイント軽減したものの、統計的有意差は小さく「万能ではない」との見解も示されています。シートベルト未着用の状態でこそ、一定のけが軽減効果が見られる場合もあるとされています。ニーエアバッグはあくまで補助装置です。
参考:ニーエアバッグの効果についてIIHSの研究結果が詳しくまとめられています。
シートベルト着用が条件です。これさえ守れば、ニーエアバッグは脚部と胸部の両方を守る装備として機能します。
ニーエアバッグが実際にどの車種に搭載されているかを把握しておくことは、車選びの重要な判断材料になります。現時点での国産主要車種について整理します。
まずトヨタでは、カローラスポーツ・カローラクロス・アルファード・ヴェルファイア・ヴォクシー・プリウスなど、多くの人気モデルで運転席SRSニーエアバッグが標準または上位グレードに設定されています。カローラスポーツはJNCAP(日本自動車アセスメント)において高い得点率87.8%を誇っており、ニーエアバッグを含む豊富なエアバッグ装備が評価に貢献しています。
ホンダでは、シビック(ハッチバック)に運転席・助手席の両方にニーエアバッグが搭載されており、価格帯211.8万円のクラスで高い安全性を実現しています。プレリュード2026モデルのオーナーズマニュアルにも、運転席・助手席ともにニーエアバッグの記載があります。
日産では、ルークス(ハイウェイスター)・ノート・エクストレイルにニーエアバッグが搭載されています。特にルークスは2020年に軽自動車初のニーエアバッグを搭載し、その後2021年のJNCAP評価で軽自動車初の最高評価を受けた実績があります。意外ですね。
スバルのインプレッサ・クロストレックでは、運転席ニーエアバッグに加え、助手席シートクッションエアバッグも標準装備されています。前面衝突時に骨盤の前ズレを防ぎ、シートベルトの効果をさらに高める設計です。スバルはJNCAPファイブスター賞を複数年獲得しており、安全装備の充実度で業界トップクラスといえます。
三菱のeKスペースでは、7つのエアバッグシステムとともにニーエアバッグが標準装備されています。
このように、ニーエアバッグは一部の高級車だけのものではなくなっており、コンパクトカーや軽自動車にも広がっています。これは使えそうです。
| メーカー | 主な搭載車種(代表例) | 特記事項 |
|---|---|---|
| トヨタ | カローラクロス・アルファード・ヴォクシー | グレードにより異なる場合あり |
| ホンダ | シビック・プレリュード | 運転席+助手席の両席設定も |
| 日産 | ルークス・ノート・エクストレイル | 軽自動車初搭載(ルークス) |
| スバル | インプレッサ・クロストレック | 助手席シートクッションエアバッグも併設 |
| 三菱 | eKスペース | 7エアバッグシステムに含む |
参考:各メーカーのエアバッグ搭載状況と安全評価についてまとめた情報です。
安全のつくりかた エアバッグ編 – Honda Global
ここが特に重要なポイントです。同じ車名・同じ年式でも、グレードによってニーエアバッグが搭載されていない場合があります。
たとえば日産デイズでは、SRSニーエアバッグシステムが「グレード別設定」となっており、全グレード標準装備ではありません。日産の公式ページにもその旨が明記されています。車名だけを見て「ニーエアバッグ搭載車」と思い込んで購入すると、実際には下位グレードで非搭載だったというケースが起こりえます。これはグレード選びで注意が必要です。
中古車を検討する際は、以下の点を必ず確認してください。
- 🔍 車検証・仕様書で装備品欄を確認する(ニーエアバッグの記載有無をチェック)
- 📋 販売店に装備内容の書類確認を依頼する(口頭のみのやりとりは避ける)
- 🖥️ メーカー公式サイトの年式・グレード別装備表と照合する
- ⚠️ エアバッグ警告灯が点灯していないか確認する(センサー不具合のサインの可能性)
また、エアバッグが一度でも展開した車(事故歴あり)の場合は修理状況の確認が必須です。エアバッグは展開後に再利用できず、ユニットごとの交換が必要となります。修理費用の相場はエアバッグモジュール交換で1個あたり5〜15万円、センサー交換で1〜5万円程度。複数のエアバッグが展開した場合は合計20〜40万円の修理費用がかかることもあります。高級車・輸入車の場合はさらに高額になるケースも報告されています。
修理されていない事故車のニーエアバッグは正常に機能しない可能性があります。これは大きなリスクです。中古車購入時には、カーセンサーやグーネットなどの中古車検索サービスで「ニーエアバック装着車」を絞り込み検索する機能も活用できます。
エアバッグの展開・未展開の確認を事前にするのが原則です。
多くの記事でニーエアバッグの「あり・なし」の比較は語られますが、「搭載している車でもその効果を活かしきれていないケース」についてはほとんど触れられていません。ここが意外な落とし穴です。
まず、シートポジションの問題があります。ニーエアバッグはステアリングコラム下部から展開しますが、ドライバーが極端に前傾みのシートポジションで乗車していると、展開時に正確に膝を受け止められないケースがあります。取扱説明書では「できるだけシートを後ろへ引いて正しい運転姿勢を保つ」よう指示しているメーカーが複数あります(テスラのオーナーズマニュアルにも同様の記載あり)。正しい姿勢が前提です。
次に、ダッシュボード周辺への物の設置です。Hondaのサイトでは「ダッシュボードの上に小物入れやぬいぐるみを置くと、エアバッグ展開時にそれらが乗員に向かって飛び出し、思わぬケガをまねくおそれがある」と警告しています。特にコンソール付近への置き物は厳禁です。ニーエアバッグの周囲も同様で、足元にかさばる荷物を置いていると、展開スペースを妨げる原因になります。
さらに、エアバッグには寿命があるという点も見落とされがちです。多くのメーカーは「製造後10〜15年」を目安としており、古い車に搭載されたニーエアバッグは機能不全のリスクがあります。中古車を選ぶ際は年式の確認が大切です。
そして、見落とされやすいのがシートカバーの問題です。市販のシートカバーやフロアマットの中には、エアバッグの展開を妨げるものがあります。ニーエアバッグはステアリング下部から展開するため、足元のマットの配置にも注意が必要です。純正品か、エアバッグ対応と明示された社外品を選ぶのが安全です。
最後に、ニーエアバッグは「作動条件を満たした衝突」でのみ展開します。低速での軽い衝突では展開しない設計になっているため、「ニーエアバッグ搭載車だから全ての衝突で保護される」という誤解は禁物です。あくまで一定以上の衝撃を伴う前面衝突が対象です。
つまり、ニーエアバッグは搭載しているだけで安心ではありません。正しい姿勢・シートベルト着用・適切な車内整理のセットで初めて最大の効果を発揮する装備です。
参考:エアバッグ全般の正しい使い方と注意点がまとめられています。
安全のつくりかた エアバッグ編(NG事例含む) – Honda Global

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