エンジンブレーキのオートマとマニュアルの正しい使い分け方

エンジンブレーキのオートマとマニュアルの正しい使い分け方

エンジンブレーキのオートマとマニュアル、正しく使い分けられていますか?

エンジンブレーキはDレンジのまま使っても、ブレーキランプが点かず後続車に追突されるリスクがあります。


この記事でわかること
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エンジンブレーキの基本と仕組み

アクセルを離すだけでかかる「エンジンブレーキ」の正体と、フットブレーキとの根本的な違いを解説します。

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オートマ車での正しい使い方

Dレンジだけじゃない。S・B・2・Lレンジを使ったシフトダウンで、AT車でも強いエンジンブレーキをかける方法を紹介します。

⚠️
知らないと損するリスクと節約術

フットブレーキ多用でブレーキパッドが半分以下の寿命になる事実や、フェード現象による「ブレーキが効かなくなる」危険を回避する方法を解説します。


エンジンブレーキとはどんな仕組みか、オートマ・マニュアル共通の基礎知識





エンジンブレーキとは、アクセルペダルから足を離すことでエンジンの回転抵抗を利用して車を減速させる仕組みのことです。ブレーキペダルを踏まなくても速度が落ちる、あの現象がまさにエンジンブレーキです。特別な操作をしなくても、普段の運転の中で自然と使われています。


ポイントはエンジンが「タイヤに引っ張られて回される」状態になること。アクセルを踏んでいる間はエンジンがタイヤを回しますが、足を離すと逆にタイヤがエンジンを回す状態になります。このときエンジン内部の圧縮抵抗や摩擦が「ブレーキ力」として働くわけです。


🔑 フットブレーキとの最大の違いは「ブレーキランプが点かない」こと。これは後述する追突リスクに直結するため、絶対に覚えておく必要があります。


もう一つ重要な仕組みが「フューエルカット(燃料カット)」です。アクセルを離したとき、エンジン回転数がおおむね1,500回転以上あれば、車の制御コンピューターがガソリンの噴射を自動的に止めます。つまり、エンジンブレーキをかけている間はガソリンをほぼ消費しない状態になります。これが「エンジンブレーキを使うと燃費が良くなる」と言われる根拠です。ただし回転数が下がりすぎると(おおむね1,000回転以下)、エンストを防ぐために燃料が再供給されます。燃費改善の効果が出るのは「ある程度速度がある状態でアクセルを離す場合」に限られます。


| 比較項目 | エンジンブレーキ | フットブレーキ |
|---|---|---|
| 制動力 | 弱め(緩やかに減速) | 強め(急停止も可能) |
| ブレーキランプ | 🔴 点灯しない | ✅ 点灯する |
| 燃料消費 | ほぼゼロ(フューエルカット) | 変化なし |
| ブレーキパッドへの負担 | なし | あり(摩耗する) |
| 使いやすい場面 | 下り坂・長距離減速 | 急停止・交差点停車 |


オートマ車・マニュアル車どちらも、この基本的な仕組みは共通です。ただし効き方と操作方法に大きな差があります。


エンジンブレーキのオートマとマニュアルの効き方の違い

オートマ車(AT車)とマニュアル車(MT車)では、エンジンブレーキの「強さ」に明確な差があります。結論から言うと、マニュアル車のほうがエンジンブレーキはよく効きます。


マニュアル車はクラッチを介してエンジンとタイヤが直接つながっているため、ギアを落とすとエンジンの回転抵抗がダイレクトにタイヤへ伝わります。4速→3速→2速とシフトダウンするたびに強いブレーキ力が発生し、長い下り坂でも速度コントロールがしやすいのが特徴です。


一方、オートマ車(AT・CVT)にはエンジンとタイヤの間に「トルクコンバーター」という部品が入っています。これが一種のクッションとして働くため、エンジンの回転抵抗がタイヤに伝わりきらず、結果としてエンジンブレーキの効きがマニュアル車より弱くなります。


つまり力の差はここです。


- MT車:エンジンとタイヤが直結 → エンジンブレーキ強め
- AT車(CVT含む):トルクコンバーター経由 → エンジンブレーキ弱め
- ハイブリッド車(プリウスなど):回生ブレーキとエンジンブレーキが組み合わさる → 独自の特性


AT車のエンジンブレーキが弱いことで起きやすいトラブルが「フェード現象」です。下り坂でブレーキが弱いと感じてフットブレーキを多用してしまい、ブレーキパッドが過熱してブレーキが効かなくなる。この状況に陥りやすいのがAT車です。対策が必要ですね。


もっとも、AT車でも「シフトダウン」によって強いエンジンブレーキを引き出すことは十分可能です。DレンジからS・B・2・Lレンジへ落とすことで、MT車に近い制動感を得られます。次のセクションで詳しく解説します。


エンジンブレーキのオートマ車での使い方とシフトダウンの手順

AT車でエンジンブレーキを強めたい場合、シフトレバーを下げてギアを固定します。車種によって表記が異なりますが、代表的なものは次の通りです。


| レンジ表記 | 主な車種 | 強さの目安 |
|---|---|---|
| D → 2 → L | 来のAT車全般 | 順に強くなる |
| D → S → B | CVT車(プリウス・フィット等) | SよりBが強い |
| D → M(パドルシフト) | 多段AT・スポーツ系 | 段数で調整 |


シフトダウンの手順は「1段ずつ落とす」のが鉄則です。高速走行中にDレンジからいきなりLレンジに入れると、急激なエンジンブレーキが発生して車が不安定になる危険があります。必ずD→2(またはS)→L(またはB)と、順番に落としましょう。


具体的な使いどころを整理すると、次のような場面が挙げられます。


- 🏔️ 長い下り坂や峠道:DレンジのままフットブレーキだけでなくS・Bレンジへ落として速度を抑える
- 🛣️ 高速道路の出口(ランプウェイ):本線から降りる際にSレンジへ入れてスムーズに減速
- 🔴 遠くに赤信号が見えたとき:アクセルを早めに離してエンジンブレーキだけで徐々に減速
- 🌨️ 雨・雪の滑りやすい路面:急なフットブレーキを避け、エンジンブレーキで穏やかに減速


これは使えそうです。


一点注意が必要なのは「後続車への合図」です。エンジンブレーキではブレーキランプが点灯しません。後ろに車がいるときはフットブレーキを軽く踏んでランプを点灯させ、減速中であることを知らせましょう。後続車との車間距離が十分でなければ、エンジンブレーキだけの減速は追突リスクを生みます。


参考:AT車でのシフトダウンとエンジンブレーキの使い方についての解説


エンジンブレーキとは?燃費を向上させるフットブレーキとの使い分け方を解説!(SBI損保)


エンジンブレーキを使うとブレーキパッド代が最大2倍長持ちする節約効果

エンジンブレーキを積極的に活用するメリットのひとつが「ブレーキパッドの長寿命化」です。フットブレーキを使うたびにブレーキパッドは摩擦で削れていきます。これが地味に大きな出費になります。


実際、ある整備士の調査によれば、フットブレーキを頻繁に踏む運転をしているドライバーと、丁寧な運転でブレーキを最小限に抑えているドライバーを比較すると、パッドの寿命が2〜3倍も違うケースがあるとされています。


乗り方1つでブレーキの消耗度は3倍変わる(SmartDrive)


ブレーキパッドの交換費用の目安は、一般的な国産車の場合で工賃込み1〜2万円程度(前後4輪交換の場合は3〜6万円前後)です。フットブレーキだけに頼る運転を続けると、交換サイクルが早まり、車検ごとに出費が発生することになります。


エンジンブレーキを上手に使えばパッドの寿命が2倍になる、というのは大げさではありません。


さらに、ブレーキパッドの減りが早い運転ではブレーキローター(ディスク)も傷みやすく、こちらの交換費用は1〜3万円/枚程度かかります。4輪交換となれば一気に数万円の出費になります。エンジンブレーキの活用は、ブレーキ周り全体のメンテナンスコストを抑える効果があると言えます。


あわせて知っておきたいのが「燃費改善効果」との合わせ技です。エコドライブの指針となっているReCooの試算では、減速時に早めにアクセルを離してエンジンブレーキを活用するだけで、燃費が約2%改善されるとされています。


減速時は早めにアクセルを離そう(ReCoo エコドライブ)


年間走行1万kmのドライバーで燃費が2%改善されると、ガソリン代換算でも年間数百〜1,000円以上の節約になります。金額だけ見ると小さく感じますが、ブレーキパッドの節約と組み合わせれば、長期的に数万円単位の差が生まれます。


節約だけではなく、フットブレーキへの依存を減らすことで「フェード現象」や「ベーパーロック現象」のリスクを大幅に下げられる点も見逃せません。特に夏場の山道や長い下り坂では、フットブレーキを使いすぎたドライバーがブレーキが利かなくなる状態に陥るケースがあります。エンジンブレーキが身を守ることにもなります。


エンジンブレーキを多用するとAT車が壊れる?オートマ車で知っておくべき注意点

「エンジンブレーキを多用するとAT車が故障する」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。これは半分正解で半分は誤解です。


正しい方法でシフトダウンしてエンジンブレーキをかける分には、AT車の故障原因にはほとんどなりません。むしろ適切なエンジンブレーキの活用はフットブレーキへの依存を減らし、車全体のコストを下げることにつながります。


問題になるのは「誤った操作」のケースです。具体的には次の2つが挙げられます。


- ⚠️ 高速走行中に一気に最低ギアへ落とす:急激なエンジンブレーキでATミッションへの負荷が急増する
- ⚠️ 走行中にNレンジやRレンジへ操作する:エンジンとタイヤの回転が切断・逆転し、ATに深刻なダメージを与える


AT車のミッション修理費用の相場は修理内容によって大きく異なります。ATFオイル交換程度なら8,000〜30,000円で済みますが、ATミッション本体の交換・オーバーホールとなると15〜50万円、輸入車・高級車では100万円を超えることもあります。


ATミッション故障の原因と症状・修理費用の相場(グーネット)


ATミッションが壊れる主な原因として「エンジンブレーキの使いすぎ(急激なシフトダウン)」「ATFオイルの未交換」「急発進・急ブレーキの繰り返し」が挙げられています。つまり、「正しく使う限りは問題なし」が基本です。


ATFオイルが条件です。ATFは走行距離が増えるにつれて劣化・汚染されていきます。一般的にはメーカー推奨の交換時期(走行距離2〜4万kmごと、または2〜4年ごとが目安)を守ることで、ATミッションのトラブルは大幅に予防できます。定期点検の際に確認する習慣をつけると安心です。


マニュアル車の場合はクラッチを切った状態(クラッチを踏み込んでいる状態)でギアを落とすため、操作ミスが起きにくく、エンジンブレーキのかかり方も自然にコントロールできます。AT車より操作の自由度が高い反面、知識なしで運転すると「クラッチを踏まずにシフトを入れる」などのミスで傷める場合があります。どちらの車でも「丁寧に・段階的に操作する」ことが長持ちの秘訣ですね。




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