
アクセルペダルは自動車を運転する上で最も重要な操作装置の一つですが、実は「オルガン式」と「吊り下げ式」という2種類の機構方式が存在します。この2つの方式は、取り付け構造や操作感が大きく異なり、それぞれに明確なメリットとデメリットがあります。
参考)車のオルガン式ペダルと吊り下げ式ペダルは何が違うのか?
日本では吊り下げ式が広く採用されている一方で、BMW、メルセデス・ベンツ、ポルシェなどの欧州車や、マツダなどの国産高級車ではオルガン式が主流となっています。最近ではトヨタのアルファード・ヴェルファイアといった高級ミニバンにもオルガン式が採用されるなど、その採用範囲は拡大傾向にあります。
参考)【オルガン式ペダル】高級車で選ばれる理由は?簡単操作と疲労低…
自分の愛車がどちらのタイプかを確認するには、運転席に座ってアクセルペダルの構造を観察してみましょう。ペダルが床面から直接立ち上がっているように見えればオルガン式、上部から棒状のパーツで支えられているように見えれば吊り下げ式です。
参考)オルガン式ペダルと吊り下げ式ペダルのメリット・デメリット -…
カーメイト(CARMATE) 車用 ペダル RAZO コンペティションスポーツ MT B&C RP85
オルガン式ペダルは、楽器のオルガンのペダルのように車の床面に設置されており、ペダルの下端を支点として蝶番で固定されている構造です。この方式では、足裏全体を使ってペダルを操作するため、非常に自然な動作でアクセルコントロールができます。
最大のメリットは、ペダルを踏み込む際の足の軌跡とペダル自体の軌跡がほぼ一致することです。このため、違和感なく踏み込むことができ、アクセルコントロールが容易になります。特に高速道路など、長時間アクセルペダルに足を置いている状況では、かかとを安定させて操作できるため疲労軽減効果が期待できます。
参考)アクセルペダルNEO
安全性の面でも優れた特徴があり、左右の足をしっかりかかとまでつけて操作するため、アクセルとブレーキの踏み間違いが起きにくいとされています。マツダは自社の全車種にオルガン式を採用しており、運転時の疲労軽減と踏み間違い防止を重視した設計思想を掲げています。
参考)- 山口マツダのブログ
スポーツ走行においても、ヒールアンドトゥなどの高度なペダルワークに対応しやすい配置が実現できるため、操作性を追求するドライバーにも支持されています。実際、NEOPLOTなどの社外品メーカーからも、スポーツ走行を意識したオルガン式アクセルペダルが販売されています。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%AB%20%E3%83%9A%E3%83%80%E3%83%AB/
吊り下げ式ペダルは、ステアリングホイールのシャフト下あたりを支点として、リンク棒に装着されたペダルを足裏の上半部で操作する構造です。ペダルが上から吊り下げられているように見えることから、この名称で呼ばれています。
参考)吊り下げ?オルガン?
吊り下げ式の最大のメリットは、製造コストが安いことです。オルガン式と比較すると構造がシンプルで部品点数も少ないため、その分車両価格を抑えることができます。このコストメリットが、日本の多くのコンパクトカーや大衆車で採用されている主な理由となっています。
参考)オルガンと吊り下げどっちがいいの? アクセルペダルメリット・…
また、長年にわたって日本車で広く採用されてきたため、多くの日本人ドライバーが吊り下げ式の操作感に慣れているという点も見逃せません。慣れ親しんだ操作フィーリングは、安心感や運転のしやすさにつながります。
ただし、ペダルワーク時の足の軌跡とアクセルペダルの軌跡が踏めば踏むほど離れていくため、かかとを活用してペダルワークを調整する必要があり、オルガン式と比較すると操作の難易度は高くなります。一般道での反復操作が多い運転では、この特性がやや不利に働く場合もあります。
国産車では、マツダが全車種でオルガン式を採用しており、人間中心の設計思想「人間工学」に基づいたペダル配置を実現しています。トヨタも近年、アルファード、ヴェルファイア、ランドクルーザーなどの高級車種でオルガン式を採用するようになってきました。
参考)トヨタ新型「アル・ヴェル」にも採用! 最近増えた「オルガンペ…
一方、多くの国産コンパクトカーや軽自動車では、コストパフォーマンスを重視して吊り下げ式が採用されています。ただし、同じメーカー内でも車種によって異なる方式が採用されているケースがあるため、購入前に確認することをおすすめします。
参考)最新車でもまちまちの謎! アクセルペダルに「吊り下げ」「オル…
輸入車においては、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、ポルシェなどのドイツ車を中心に、ほぼ全車種でオルガン式が標準となっています。欧州では古くからオルガン式が主流であり、長距離走行が多いヨーロッパの道路環境に適した選択とされています。
参考)オルガン式ペダルのメリットとは?マツダやポルシェが使う理由を…
右ハンドル仕様の輸入車では、左ハンドル仕様から変更する際にペダル配置に違和感が生じることがあるという指摘もあります。特にペダルの横位置がオフセットしているケースがあり、これは右ハンドル化に伴う設計上の制約によるものです。
参考)右ハンドルの輸入車に感じるペダルの違和感は、どうすればいい!…
近年、高齢ドライバーを中心としたアクセルとブレーキの踏み間違い事故が社会問題となっており、ペダルの種類と踏み間違い防止の関連性に注目が集まっています。
参考)踏み間違い防止の切り札!?? 愛車は吊り下げ式かオルガン式か…
オルガン式は、かかとを床につけた状態で操作するため、足の位置が安定しやすく、ペダルの位置を把握しやすいという特徴があります。このため、アクセルとブレーキを間違えにくいとする見解もあり、実際にマツダは踏み間違い防止効果を自社のオルガン式ペダルの利点として挙げています。
ただし、ペダルの種類だけで踏み間違い事故を防げるわけではありません。国土交通省や自動車メーカー各社は、前後の障害物を検知して急加速を抑制するペダル踏み間違い急発進抑制装置の開発・普及に力を入れています。後付け可能な装置も増えており、国土交通省が一定の性能基準を満たす装置を認定する制度も運用されています。
参考)ペダル踏み間違い時加速抑制装置の試験方法及び評価方法 / 独…
踏み間違い防止の観点では、ペダルの種類よりも、運転前にペダルの位置を確認する習慣や、前進・後退時に落ち着いて操作することが何よりも重要です。技術的な補助装置はあくまでもドライバーのうっかりミスを補うものであり、安全運転の責任はドライバー自身にあることを忘れてはいけません。
参考)ペダルの踏み間違いを防止するには?
愛車のアクセルペダルをカスタムすることで、見た目の向上だけでなく、操作性の改善や耐久性アップといったメリットが得られます。社外品のペダルは、アルミ製やラバー付きなど様々なタイプが販売されており、車種別の専用設計品も増えています。
参考)オシャレは足元から!自動車のペダル交換のメリット・デメリット…
カスタムペダルの主なメリットとして、まず見た目の高級感が挙げられます。純正のゴム製ペダルから銀色に輝くアルミペダルに交換するだけで、足元の印象が大きく変わります。特に足元照明を設置している場合、カスタムペダルの効果は絶大です。
機能面では、滑り止め加工が施された製品が多く、純正ゴムペダルの経年劣化による滑りやすさを解消できます。また、位置調整可能なペダルも販売されており、ヒールアンドトゥなどのスポーツ走行テクニックを行いやすい位置に微調整することも可能です。
NEOPLOTのアクセルペダルNEOのように、ロードスター専用など車種別に最適化された製品もあります。これらは純正ペダルプレートに穴あけ加工が必要な場合もありますが、より自然な操作フィーリングとスポーツ走行への対応力を実現しています。
電気自動車(EV)の普及に伴い、アクセルペダルの役割も進化しています。日産リーフのe-Pedalに代表される「ワンペダル走行」は、アクセルペダルの操作だけで加減速を行う新しい運転スタイルを提供しています。
参考)EVの「ワンペダル」とは?仕組みや使い方、メリット・デメリッ…
ワンペダル走行では、アクセルペダルから足を離すと強い回生ブレーキが作動し、減速から停止まで自動的に行われます。このため、ブレーキペダルを踏む頻度が大幅に減少し、渋滞時や市街地走行での疲労軽減効果が期待できます。
参考)e-Pedalは何がいいのですか? 日産リーフQhref="https://ev2.nissan.co.jp/OWNER/QUESTIONS/DETAIL/1244/" target="_blank">https://ev2.nissan.co.jp/OWNER/QUESTIONS/DETAIL/1244/amp;A
EVのアクセルペダルは、従来のエンジン車と異なり、電気的な信号でモーター出力を制御する仕組みです。このため、ペダルの踏み込み量に対するレスポンスが非常に鋭く、繊細なアクセルコントロールが求められます。この特性に慣れるまでは、意図しない急加速や急減速が起こりやすいため、運転特性の違いを理解することが重要です。
参考)EVをうまく走らせる「コツ」は?
EVやハイブリッド車の回生ブレーキシステムは、エネルギー回収効率を高める一方で、従来のエンジン車とは異なるペダルフィーリングを生み出しています。これは環境性能と運転体験の両立を目指した技術革新の一つと言えるでしょう。
参考)ワンペダルでもツーペダルでもふんわりアクセルは超有効だった!…
アクセルペダルを効果的に使いこなすためには、基本的な操作テクニックを身につけることが大切です。特にMT車でのスポーツ走行を楽しむ方にとって、ヒールアンドトゥは習得すべき重要なテクニックの一つとなっています。
参考)ヒールアンドトゥとは?スポーツ走行するMT車に必要なテクニッ…
ヒールアンドトゥは、ブレーキを踏みながら右足のかかとや側面でアクセルをブリッピング(空ぶかし)し、エンジン回転数を合わせてスムーズにシフトダウンする技術です。正しい手順は、①ブレーキを踏む、②クラッチを切る、③シフトダウンする、④アクセルをあおる、⑤クラッチをつなぐ、という流れになります。
参考)【超高速ドラテク講座】第2回「ヒール&トゥ」MT必須のテクニ…
この技術を習得するには、まずブレーキとクラッチ操作をしっかり身につけ、その後アクセルのあおり具合を調整しながら練習することが重要です。オルガン式ペダルの場合、ペダル配置が最適化されているため、ヒールアンドトゥの操作がしやすい傾向にあります。
参考)ヒールアンドトゥができない理由とやり方のポイントを解説
日常的なアクセル操作においても、急加速や急減速を避け、なめらかなペダルワークを心がけることで、燃費の向上や同乗者の快適性向上につながります。特に信号待ちからの発進時や、高速道路での速度調整時には、繊細なアクセルコントロールが求められます。
参考)EVの賢い乗り方とは?エコドライブの実践方法を紹介!
<参考リンク>
オルガン式と吊り下げ式の詳細な技術解説が掲載されています
オルガン式ペダルと吊り下げ式ペダルのメリット・デメリット
高級車がオルガン式を選ぶ理由について詳しく解説されています
【オルガン式ペダル】高級車で選ばれる理由は?簡単操作と疲労軽減のメリット
ペダル踏み間違い事故の原因と防止方法についての公式情報
JAF - ペダルの踏み間違いを防止するには?