シフトダウン エンジンブレーキで燃費向上と安全走行を実現するコツ

シフトダウン エンジンブレーキで燃費向上と安全走行を実現するコツ

シフトダウンとエンジンブレーキの基本

この記事のポイント
🚗
シフトダウンの効果

ギアを下げることで強力なエンジンブレーキを発生させ、フットブレーキへの負担を軽減できます

燃費向上のメカニズム

アクセルオフ時にシフトダウンすることで燃料カットが作動し、ガソリン消費を抑えます

⚠️
安全な使い方

段階的なシフトダウンと適切なタイミングが、エンジンへの負担を減らし事故を防ぎます

シフトダウンとエンジンブレーキの仕組み

シフトダウンによるエンジンブレーキは、ギアを低速段に落とすことでエンジン回転数を上げ、エンジン内部の抵抗を利用して減速する仕組みです。走行中にアクセルペダルから足を離すと、エンジンは空気の流入が制限され、インマニからピストンまでが真空に近い負圧状態になります。この負圧が吸気工程時のピストンの降下運動を大きく妨げ、減速力を生み出しているのです。
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低いギアほどエンジンの回転数が高くなるため、エンジンの抵抗(圧縮抵抗、ポンピングロス、機械抵抗)が増加し、減速力が強まります。例えば4速よりも3速、3速よりも2速のほうが強いエンジンブレーキがかかります。この特性を活用することで、フットブレーキだけでは得られない緩やかで持続的な減速が可能になります。
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オートマ車では、Dレンジから2(セカンド)やL(ロー)レンジにシフトダウンすることでエンジンブレーキを調整できます。マニュアル車では、クラッチを切り、低いギアにシフトダウンしてから再度クラッチを接続することでエンジンブレーキをかけます。
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シフトダウンの燃費向上効果とメカニズム

シフトダウンを伴うエンジンブレーキの使用は、燃費の向上に繋がります。アクセルペダルから完全に足を離してシフトダウンすると、エンジンの制御によって燃料カットが入り、理論上は燃料噴射量がゼロになります。そのため、エンジンブレーキを使っている間はガソリンの消費が少なくなり、その状態で走行し続けている間は燃費が向上します。
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ただし、燃費改善効果は小さく、格段に燃費が良くなるものではありません。また、車速が下がりエンジン回転数が低下してアイドリング回転付近までになると、エンジンストールを防ぐため通常通りに燃料噴射が復帰します。坂道を下っているときにアクセルオフにしている場合も、理論上は燃料カットとなりますので、燃費は良くなります。
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エンジンブレーキを正しく使うことで燃費が悪化することはありませんが、その効果を過度に期待しすぎないことが重要です。燃費向上よりも、安全性の向上やブレーキシステムへの負担軽減という観点でエンジンブレーキを活用するのが現実的でしょう。
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シフトダウン時のAT車とMT車の違い

オートマ車とマニュアル車では、シフトダウンによるエンジンブレーキの操作方法が大きく異なります。AT車の場合には、エンジンブレーキをかけやすいといえるでしょう。変速が多いので、1段下げるだけで少しのブレーキをかけることができ、坂道や峠道で速度調整したいときも、ギアをシフトダウンして希望する速度に調整できます。​
一方、AT車の場合は車種によっては変速ショックが大きくなるほど、ギア比に差が出ていることが多いです。「ロー(L)」や「2」と表記されているギアにシフトチェンジしますが、高速域では活用できないので注意が必要です。パドルシフトが搭載されている車であれば、CVTなど無段変速でシフトしていても、擬似的なシフトができるのでエンジンブレーキを活用できます。​
MT車では、クラッチを切り、低いギアにシフトダウンしてから再度クラッチを接続してエンジンブレーキをかけていきます。シフトダウンするギアは、車速や道路状況によって調整します。MT車の減速時には、ブレーキを踏んで落としたい速度まで減速し、目標の速度になったらクラッチペダルを奥までしっかりと踏み込み、シフトレバーを現在の速度に適した低いギアに入れ、クラッチペダルをゆっくりと戻していく4つのステップで操作します。
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シフトダウン時の注意点とデメリット

シフトダウンによるエンジンブレーキには注意すべき点がいくつかあります。最も重要なのは、シフトダウンの際は一段階ずつ操作することです。たとえば、Dレンジから一気にLレンジまで下げてしまうと、急激な減速となり、後続車に追突される危険性があります。エンジン回転数も高回転になり、エンジンや駆動系への負担も大きくなるため、故障の原因にもなります。​
エンジンブレーキはブレーキランプが点灯しないため、後続車に減速していることが伝わりにくいというデメリットがあります。そのため、追突のリスクを避けるため、フットブレーキとの併用が推奨されます。特に高速道路や交通量の多い道路では、エンジンブレーキを使用する前に軽くフットブレーキを踏んで後続車に減速の意思を伝えることが重要です。
参考)エンジンブレーキを正しく使わないと危険!使うべき場面も!

速度が速い状態で必要以上にシフトダウンしてしまうと、エンジンに大きな負担がかかります。適正回転数を無視して早すぎるシフトアップや無理なシフトダウンをすると、エンジンやミッションに過剰な負荷をかけてしまいます。急激なシフトダウンはエンジンブレーキが効きすぎて危険な場合もあるため、スムーズな動作を心がけましょう。
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シフトダウンによる下り坂でのフェード現象とベーパーロック現象の回避

長い下り坂や急な下り坂でシフトダウンによるエンジンブレーキを活用することは、フェード現象とベーパーロック現象という2つの危険なブレーキ障害を回避するために極めて重要です。フェード現象とは、フットブレーキを長時間使用することでブレーキパッドが過熱し、制動力が低下する現象です。長い下り坂や急な減速が続く場面では、ブレーキ性能の低下が命に関わるリスクを伴います。​
ベーパーロック現象は、ブレーキ液が高温で沸騰し、ブレーキ圧が失われる現象です。これも長時間のブレーキ使用が原因となるため、エンジンブレーキを活用することで発生を抑えることが可能です。特にオートマ車では、シフトレバーを「L」や「2」に切り替える簡単な操作でエンジンブレーキを強化できます。​
オートマ車の場合は、Dレンジから2(セカンド)やL(ロー)レンジにシフトダウンし、ミッション車の場合は、坂道の勾配に合わせて低いギアにシフトダウンします。ただし、急なシフトダウンはタイヤロックをまねき、スリップの原因となるため、フットブレーキで速度を十分落としてからシフトダウンするようにしましょう。下り坂などでフットブレーキだけを使用するのが長くなりそうなときに、段階的にシフトダウンを使用すると効果的です。​

シフトダウンのタイミングと実践的な使い方のコツ

シフトダウンを効果的に使うためには、適切なタイミングと正しい操作方法を身につけることが重要です。長い下り坂や急な下り坂では、エンジンブレーキを併用することでブレーキへの負担を軽減し、安全に走行できます。坂道の勾配に合わせて低いギアにシフトダウンすることで、フットブレーキの過熱を防ぐことができます。​
高速道路では、エンジンブレーキの併用がスムーズな減速と渋滞緩和につながります。高速道路は一般道よりも速度が高いため、減速にはより長い距離と時間が必要となります。フットブレーキのみで急減速すると、後続車も追従してブレーキを踏むことになるため、渋滞を誘発してしまいます。そのため、早めにアクセルを離してエンジンブレーキを活用し、必要に応じてシフトダウンすることで、緩やかな減速を実現できます。​
マニュアル車でシフトダウンする際は、ブレーキで安全な速度まで減速し、クラッチペダルを奥までしっかりと踏み込み、シフトレバーを現在の速度に適した低いギアに入れ、クラッチペダルをゆっくりと戻していくという4つのステップを踏みます。クラッチを戻していくと、エンジンとタイヤの動力が繋がり始める「半クラッチ」の状態になり、動力が繋がり始めたのを感じたら、さらにゆっくりとペダルを戻し、完全に繋ぎます。この時、少しだけアクセルを踏んであげると、よりスムーズに繋がりやすくなります。​
オートマ車では、アクセルペダルを緩やかに離し、強いシフトダウンを避けることが重要です。また、フットブレーキとの併用が必要な場合もあるため、状況を見極めて操作することが求められます。シフトダウンするとエンジンの回転数が上がりますが、回転数が上がりすぎるとエンジンに負担がかかるため、車速に応じた適切なギア選択が必要です。
参考)エンジンブレーキはうざい?かけ方、フットブレーキとの使い分け…

最近の車種には、パドルシフトやマニュアルモードを搭載したオートマ車も増えています。これらの機能を活用することで、CVTなど無段変速でシフトしていても、擬似的なシフトができるのでエンジンブレーキを効果的に活用できます。シフトダウンは運転技術の向上だけでなく、車の性能を最大限に引き出し、安全で経済的な運転を実現するための重要なテクニックといえるでしょう。​