

エンジンルームにブーストセンサーをつけると、出費が数万円に膨らむことがあります。
ブーストセンサーとは、ターボエンジンの過給圧(ブースト圧)を計測するための圧力センサーです。ブースト計(ブーストメーター)に数値を送るための"目"にあたる部品で、この取り付け位置が適切かどうかによって、計測精度や機器の寿命が大きく変わります。
ターボエンジンは排気ガスのエネルギーを使ってコンプレッサーを回し、より多くの空気をエンジンに圧縮して送り込む仕組みです。この圧縮された空気の圧力こそが「ブースト圧」であり、基本的な単位は「kPa(キロパスカル)」が国際基準ですが、アフターパーツ市場では今でも「bar(バール)」や「kgf/cm²」が広く使われています。
ブーストセンサーには大きく分けて2つの方式があります。
| 方式 | 仕組み | 特徴 |
|------|--------|------|
| 機械式 | サージタンクなどからホースを車内まで直接引き込んで圧力を計測 | 応答性が高く、安価。ホース引き込み作業が必要 |
| 電子式(電気式) | エンジンルーム側のセンサーが電気信号に変換して車内メーターへ送信 | 多機能(警告・ピークホールド)、ホース不要だが価格は高め |
つまり2種類です。どちらを選ぶかによって、ブーストセンサーの取り付け位置も大きく異なります。
アイドリング時には針が負圧(マイナス)方向へ、アクセルを踏み込んで加速するときには正圧(プラス)方向へ針が振れます。ブースト計の「0」は大気圧を基準とした相対表示なので、アイドリング中でも-40〜-60kPa程度(負圧)が表示されるのが正常です。これが基本です。
ブースト計がなければ、インテークパイプの抜けやターボ不調によるパワーダウン、オーバーブーストによるエンジン破損といったトラブルに、走行中に気づくことができません。とくにブーストアップ(ノーマルより高い過給圧に調整するチューニング)を行う場合、ブースト計の設置は必須といえます。
センサーやホースをどこに接続して「ブースト圧を取り出すか」という問題です。これはブーストセンサー設置において最も重要なステップのひとつで、場所を間違えると正確な数値が出ません。
サージタンク・インテークマニホールドのバキュームホースへの割り込みが定番の手法です。サージタンクとは、エンジンに安定した空気を供給するための貯留室で、スロットルバルブとエンジンの吸気バルブの間に位置しています。ここから伸びているフューエルレギュレーターやキャニスターへつながるバキュームホースをカットし、T型(三叉)ジョイントを噛ませてブーストセンサー用のホースを分岐させます。
なぜサージタンクが定番なのか。パスカルの原理により、流体にかかる圧力は途中に絞り弁などがない限りどこでも同じ値になります。エンジンとスロットルバルブの間であればどこでもブースト圧を取り出せるのですが、サージタンク付近はスペース的に作業しやすく、取り出し口となるホースも探しやすいため、多くの車種でこの位置が選ばれています。
圧力取り出し位置の候補をまとめると以下の通りです。
- サージタンクから伸びるバキュームホース:最も一般的で作業しやすい
- インテークマニホールドのバキュームポート:直接接続できる場合はより確実
- フューエルレギュレーターとサージタンクの間のホース:こちらも定番
作業時はホースやジョイントの接続部を確実に固定してください。接続が甘いとエア漏れが発生し、ブースト計の表示がおかしくなるだけでなく、エンジンコンピューターへの影響が出ることもあります。接続部を軽く引っ張ってみて抜けないかを必ず確認します。これが原則です。
▶ PIVOTブーストセンサーの公式取付説明書(PDF):圧力取り出しの手順図解あり
ここが多くの人が見落としがちな、最重要ポイントです。
電子式ブーストセンサー本体は、必ず車内に取り付けてください。エンジンルームへの設置は禁止です。これは多くのメーカーの取扱説明書に明記されています。PIVOTのDUAL GAUGE PROシリーズでも「ブーストセンサーは必ず車内に取り付けてください。(エンジンルームは不可)」と明確に記載されています。
なぜ車内でなければならないのか。エンジンルームは夏場に100℃を超えることも珍しくない、極めて過酷な環境です。電子センサーの内部には精密な電子部品が使われており、このような高温・振動環境に長期間さらされると、センサーの寿命が大幅に短くなります。最悪の場合、半年〜1年程度で故障・誤作動が始まるという報告もあります。
また、振動もセンサーに対してダメージを与えます。エンジンに直接取り付けてしまうと、常にエンジンの振動にさらされることになり、センサー内部の部品に疲労が蓄積されます。あるユーザーの口コミでも「直接エンジンに取り付けはしないで、車体側に取り付けをするようにしてください。エンジンの振動や熱で圧力センサーの寿命が短くなる事があるからです」と、製品説明書に記載されていたことが報告されています。
センサーの取り付け場所として適切な車内の候補は次の通りです。
- コラムカバー下:コンパクトで配線も短くまとまりやすい
- キックパネル内側上部:水がかかりにくく固定もしやすい
- アンダーカバー裏側:スペースに余裕がある場合に有効
センサーから伸びているホースはエンジンルームから車内へと引き込む必要があります。引き込み方法としては、エンジンルームと車内を隔てるバルクヘッド(隔壁)にあるゴムグロメット(ハーネスを通すゴム製の貫通部品)に穴を開けて通す方法が一般的です。穴を開けた後はコーキング材や防水テープで隙間を塞ぎ、水・排気ガスが車内に入らないようにしてください。これは必須です。
機械式ブースト計の場合、センサーユニットではなく圧力ホース(バキュームホース)そのものをエンジンルームから車内まで引き込みます。この作業が機械式の最大の難関であり、ここを理解していないと工賃が予想以上にかかってしまいます。
ホースの外径は一般的に4mm程度(内径4mm)です。細いホースに見えますが、バルクヘッドの穴を通すときには十分な注意が必要です。車種によってはホースが通せる穴が狭く、無理に通そうとするとホースが折れたり、グロメットを破損させることがあります。穴が小さすぎる車種では電子式への変更を検討するのが現実的です。
引き込みルートには大きく分けて次の選択肢があります。
- バルクヘッドのグロメットを利用:グロメットにキリやドライバーで小さな穴を開けてホースを通す。代表的な方法
- 運転席足元のゴムキャップや防音材の隙間:もともと隙間がある場合はここを活用
- インナーフェンダーを外してタイヤハウス経由で室内へ:手間はかかるが確実な方法
ホースを引き込んだ後は、エア漏れがないかを必ず確認します。エンジン始動後にアイドリングでブースト計が負圧を示さない場合は、ホースのどこかで漏れが発生している可能性が高いです。ホースの折れや接続部のゆるみが発生していないかチェックしてください。
また、ホースが走行中にエキゾーストパイプや動くパーツに接触しないよう、インシュロック(結束バンド)でしっかりと固定することが大切です。ホースが溶けたり断裂したりすると、過給エアが車内に漏れ込む危険があります。ホース固定まで完了して初めて「取り付け完了」です。
なお、エンジン内の圧力が取れるホースの内径が4mm以外の場合は、車種に合ったサイズの変換ジョイントを別途用意する必要があります。適合しないジョイントを無理に使うと圧力漏れの原因になります。
ここが一般的な解説ではあまり触れられない、実際に手を動かして取り付けてみてわかる「痛いポイント」です。
電源配線は最も時間と手間がかかる工程です。多くのブースト計では次の4系統の電源が必要になります。
- 常時電源(バッテリーに直結した常に通電している電源)
- ACC電源(キーをアクセサリー位置にした時に通電する電源)
- イルミネーション電源(スモールライト点灯と連動する電源)
- アース(車体アース)
これらを一から引き込むと、慣れていない人には1〜2時間かかることもあります。最も手軽な方法は、カーナビ裏のハーネスから分岐させる方法です。カーナビ裏の配線には上記4系統がすべて揃っており、タグが付いていることも多いので迷いにくいです。これは使えそうです。
センサー位置が熱源に近すぎると誤作動することも見落としがちです。電子式センサーを車内に置いた場合でも、直射日光が強く当たる場所や、ヒーターの吹き出し口付近に設置すると、温度変化でセンサーが誤った数値を示すことがあります。センサーはインパネ下のなるべく温度変化の少ない場所に設置することが理想です。
OBD2接続タイプはカーセキュリティとの干渉に注意が必要です。OBD2コネクターは1個しかなく、すでにレーダー探知機やドライブレコーダーなどで使用している場合、ブースト計を同時に接続することができません。分岐アダプターを使う方法もありますが、車種によっては通信干渉を起こして誤作動するケースがあります。接続前に他機器との併用可否を確認することが条件です。
メーター本体の取り付け位置では車検の影響も考慮してください。追加メーターそのものを設置することに保安基準上の禁止はありませんが、フロントガラスの視界を妨げる位置への設置や、過度に明るく点滅する照明は整備不良とみなされる可能性があります。ダッシュボード上に設置する場合はガラスから十分に離れた位置にし、夜間照明は眩しすぎない明るさに調整してください。車検時には一時的に取り外すのが無難なケースもあります。
ブーストセンサーやホースの接続部をきちんと固定し、エア漏れがないか確認してから走行することが大前提です。もし自分での取り付けに不安を感じたら、カーショップへ持ち込み取り付けを依頼する方法もあります。工賃の目安は約10,000〜20,000円、作業時間は1〜2時間程度です。

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