ヘッドボルト再使用は締め付けトルクと材質で判断

ヘッドボルト再使用は締め付けトルクと材質で判断

ヘッドボルト再使用の判断基準と正しい管理方法

一度外したヘッドボルトを「見た目がきれいだから」と再使用すると、エンジンが数万円規模のオーバーヒートを起こすことがあります。


🔩 ヘッドボルト再使用:この記事のポイント
⚠️
TTY(トルク・トゥ・イールド)ボルトは原則1回使い捨て

多くの現代エンジンに採用されているTTYボルトは、締め付け時に塑性変形するため、再使用すると破断リスクが急上昇します。

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再使用可否はボルト長さの伸び量で判断する

ボルトの全長を計測し、メーカー指定の許容伸び量(一般的に0.1〜0.3mm以内)を超えていれば即交換が原則です。

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交換を怠ると修理費が10倍以上になるケースも

ボルト1本あたり数百円〜数千円の部品代をケチることで、エンジン本体の損傷による数十万円の修理につながる場合があります。

ヘッドボルト再使用の基本:TTYボルトとは何か





ヘッドボルトには大きく分けて2種類あります。従来型の「標準ボルト(非TTY)」と、現代のエンジンに広く使われる「TTY(Torque-To-Yield)ボルト」です。


TTYボルトは日本語で「降伏点締め付けボルト」とも呼ばれます。締め付け時にわざとボルトを弾性限界(降伏点)付近まで伸ばすことで、ガスケットへの均一な面圧を生み出す設計です。トヨタや日産、ホンダなど主要メーカーのほぼすべてが2000年代以降のエンジンにTTYボルトを採用しています。


問題はここです。TTYボルトは一度適正トルクで締め付けると、金属が塑性変形(永久に伸びた状態)します。つまり、再使用することを前提に設計されていません。


目視では変形がわからないのが怖いところです。見た目がピカピカでも、内部の金属組織はすでに弱くなっています。再使用して再び締め付けると、弾性限界を超えてボルトが破断するリスクが高まります。


エンジンの内部でボルトが折れると、修理費は数十万円規模になります。これが基本です。


ヘッドボルト再使用の判断方法:長さ計測と伸び量の確認

「じゃあ、どうすれば再使用できるかどうかわかるの?」という疑問は当然です。


非TTYタイプの型ボルトや、一部メーカーが「条件付き再使用可」と定めているボルトについては、計測による判断が可能です。具体的には、ボルトの全長をノギスやマイクロメーターで0.01mm単位まで計測し、メーカーが定める「最大許容全長」と比較します。


一般的な許容値の目安は以下の通りです。


  • 新品時の全長に対し、伸び量が0.1〜0.3mm以内なら再使用可とするケースが多い
  • メーカーによっては「外径の減少量が0.05mm以上で交換」と規定している場合もある
  • シリンダーヘッドガスケットのサービスマニュアルに必ず記載されているので、車種別の数値を確認する

計測値がギリギリのラインにある場合は迷わず交換が原則です。


ノギスで10cmほど(はがきの横幅くらい)のボルトを測るだけの作業ですが、この数字が数十万円の修理費を分けることになります。お金と時間の両方に直結する確認です。


なお、ネジ山の状態も目視で必ず確認してください。ネジ山が1山でも欠けていたり、カジリ(金属同士がこすれてできる傷)がある場合は、計測値にかかわらず再使用禁止です。


参考:シリンダーヘッドの整備に関する基礎知識と締め付けトルクの考え方についてはメーカーのサービスマニュアルが最も信頼性が高い情報源です。以下は日本自動車整備振興会連合会による技術情報の参照先です。


日本自動車整備振興会連合会(JASPA)公式サイト:整備技術情報の参照に活用できます

ヘッドボルト再使用で起きる具体的なトラブルと修理費

再使用を判断ミスした場合、どんなトラブルが起きるのでしょうか?
最も多いのが「ヘッドガスケット抜け」です。ボルトの締め付け力が不均一になることで、ガスケットの一部に面圧が集中できず、冷却水や燃焼ガスが漏れ出します。症状としてはオーバーヒート、ラジエーターリザーバーの泡立ち、白煙などが現れます。


この段階での修理費用の目安を整理すると。

  • ヘッドガスケット単体交換:工賃込みで5万〜15万円程度
  • シリンダーヘッド変形が起きた場合の面研・修正:追加で3万〜8万円
  • エンジン本体にダメージが及んだ場合:エンジン載せ替えで30万〜80万円以上

一方でヘッドボルトの新品部品代はどのくらいかというと、国産車の場合1本あたり300円〜1,500円程度、セット(通常8〜16本)で3,000円〜2万円前後が相場です。


つまり2万円以内のボルト代をケチることで、最悪80万円超の出費になるリスクがあります。痛いですね。


エンジン内部でボルトが折れた場合はさらに深刻で、折れたボルトの除去作業だけで工賃が数万円かかることもあります。DIY整備でヘッドボルトを再使用する際は、この金銭リスクを必ず頭に入れておいてください。


ヘッドボルト再使用に関するメーカー別の基準と判断の違い

メーカーによって再使用基準はかなり異なります。意外ですね。


トヨタの多くのエンジン(例:2AZ-FE、1GR-FEなど)では、サービスマニュアルに「TTYボルトは毎回交換すること」と明記されています。これは交渉の余地がない、交換が原則です。


一方でホンダのK20系やL型エンジンの一部では、「計測値が規定範囲内なら再使用可」と記載されているケースがあります。日産のSR20DETやRB系エンジンも同様に、条件付き再使用が認められているモデルがあります。


整理すると主なパターンは3つです。


  • 🔴 再使用禁止(TTYボルト明記):トヨタ系の多くの現行エンジン、マツダSKYACTIV系など
  • 🟡 条件付き再使用可:ホンダK系・L系の一部、日産SR・RB系の旧モデルなど
  • 🟢 再使用可(計測後):旧型の非TTYエンジン(1990年代以前が多い)

自分の車のエンジン型番を確認し、メーカーのサービスマニュアルで必ず調べることが条件です。「前の車では再使用できたから今回もOK」という判断は危険です。エンジン型番が変わればボルトの種類も変わります。


エンジン型番はエンジンルームのプレートやシール、または車検証の「原動機の型式」欄で確認できます。この1ステップが重要です。


参考:各メーカーの整備情報はディーラーのサービスマニュアルが一次情報ですが、以下の自動車整備情報サイトでも車種別の事例を確認できます。


国土交通省:自動車の点検・整備に関する情報ページ(整備基準の基礎知識の参照に有用)

DIY整備でヘッドボルトを扱う際の独自視点:「締め付け順序」こそ再使用より重要

ヘッドボルトの再使用可否ばかりが注目されますが、実はプロの整備士が「再使用より失敗率が高い」と口をそろえるポイントがあります。それが「締め付け順序と段階締め」です。


正規の締め付け手順では、ボルトを中央から外側に向かってらせん状に、複数回に分けて増し締めしていきます。一般的なエンジンでは以下のような手順が定められています。


  • 第1段階:全ボルトを手締め(テンションなし)
  • 第2段階:指定トルクの50%(例:25N・m)で中央から外側へ順番に締め
  • 第3段階:指定トルクの100%(例:50N・m)で同じ順番に締め
  • TTYの場合はさらに「角度締め」(例:90°+90°回転)を追加

これが基本です。この手順を無視して外側から順番に締めたり、一発でフルトルクをかけたりすると、新品ボルトを使っていてもヘッドが歪みます。


頭に絵を浮かべてもらうと、ダンボール箱のフタを四隅から均等に押さえるのと同じ原理です。片側だけ先に押さえると箱が歪みますよね。ヘッドガスケットも同じで、均等な面圧をかけるために決められた順序で少しずつ締めていく必要があります。


トルクレンチを持っていない状態でのヘッドボルト締め付けは絶対に避けてください。感覚での締め付けは「締めすぎ=ボルト破断」か「緩すぎ=ガスケット抜け」のどちらかにつながります。プリセット型トルクレンチであれば3,000円〜1万円程度で入手でき、ヘッドボルトだけでなく足回りやホイールナットの管理にも使い回せます。工具に投資しておくと長期的に得です。


締め付け順序と段階締めを守ることが、再使用可否の判断と同じかそれ以上に重要です。この2点を押さえておけばOKです。


DIY整備を行う際は、必ずその車種のサービスマニュアルを入手してから作業に臨んでください。1,000円前後でPDF版を購入できるケースもあり、整備ミスによる数十万円の損失リスクを考えれば、間違いなく元が取れる投資です。




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