

自作デュアルマフラーを付けると、車検で「不正改造」として30万円以下の罰金を科されることがあります。
デュアルマフラーとは、排気ガスの出口が2本あるマフラーの総称です。一口に「デュアル出し」と言っても、内部の構造によって大きく2種類に分かれます。これが基本です。
まず「セミデュアル(デュアル出し)」と呼ばれるタイプは、サイレンサー(消音器)は1つのままで、出口だけを2本に分岐させたものです。見た目はデュアルに見えますが、排気経路は途中まで1本です。コストが低く、DIYでも比較的挑戦しやすいのが特徴です。
もう一方は「フルデュアルマフラー」と呼ばれ、エキゾーストマニホールドから出口まで、排気経路が完全に左右で独立しているタイプです。エンジンから2系統の排気路を独立させるため、排気干渉による出力ロスを最小化できます。ただし構造が複雑なぶん、製作コストは約20万円〜とプロショップへの依頼が現実的になる場合もあります。
DIYで狙いやすいのは「セミデュアル」です。なぜなら、既存のマフラーのテール部分にYパイプ(分岐パイプ)を溶接して2本出しにするだけで実現できるからです。パイプの分岐角度・出口位置・クリアランスの3点だけ注意が必要です。
| 種類 | 構造 | 製作難易度 | コスト目安 |
|---|---|---|---|
| セミデュアル(出口2本) | サイレンサーは1つ・出口のみ分岐 | ★★☆(中級) | 材料費数千円〜 |
| フルデュアルマフラー | 排気経路が全長にわたり左右独立 | ★★★(上級〜プロ) | 約20万円〜 |
デュアルマフラーには、消音効果が高くなるという意外なメリットもあります。パイプが細め2本になることで、太いパイプ1本と同等の排気量を確保しながら、音量が抑えられやすいのです。「2本出し=うるさい」は思い込みのことも多いです。
さらに、重量バランスの観点でも左右2本出しはセンター1本出しより有利とされています。ただし、本数が増える分だけパーツが重くなる点は頭に入れておきましょう。
マフラーの出口本数・位置の考え方については、以下の記事も参考になります。
【くるま問答】マフラー・テールパイプの2本出しにどんな意味があるか(Motor Magazine Web)
材料選びが、作業の仕上がりと耐久性を大きく左右します。これは重要です。
最も重要なのはパイプ素材の選択です。ホームセンターには「ステンレス巻きパイプ」という商品が販売されていますが、これはステンレスの薄皮を巻いただけのもので、高温・高圧の排気系に使うと溶接が剥がれたり、耐熱性が不足したりします。マフラー製作に使うべきパイプは「SUS304(ステンレス鋼)」の真ステンレス製です。ホームセンターのものと混同しないよう注意してください。
パイプの外径(φ)については、一般的な乗用車では50.8φ(約5cm径)前後が標準的です。はがきの横幅が約10cmですから、その半分程度のサイズ感です。軽自動車なら38φ程度のものを使う例も多く見られます。
溶接機についてひとつ補足です。100V家庭用コンセントで使える半自動溶接機もありますが、ステンレスの薄肉パイプに対しては「焼け・歪み」が発生しやすく、仕上がりが荒くなりがちです。可能なら200V対応のTIG溶接機を選ぶと品質が上がります。
費用の目安としては、SUS304パイプ(1m・50.8φ)が1本あたり約1,500〜5,000円、溶接機本体が中古品でも3〜5万円程度かかります。初期費用がかかる点は正直に把握しておきましょう。
マフラー製作に向いた素材・溶接棒の選び方については以下が参考になります。
実際の製作工程を順番に見ていきましょう。ここでは最も難易度が低い「出口部分をデュアル化するセミデュアル」の手順を紹介します。
【STEP 1】パイプの角度カット
出口となるパイプを22.5度でカットします。この角度が分岐の起点になります。次に、そのカットした切れ端の反対側を45度でカットします。つまり一本のパイプに22.5度と45度の2カ所の切断面を作ることになります。
パイプのカット長さで、デュアル部分の2本の間隔(クリアランス)が決まります。短くカットするほど間隔が狭まり、長くカットするほど2本が離れます。溶接初心者の場合は間隔を少し広めに取ったほうが溶接しやすいです。これは覚えておけばOKです。
【STEP 2】仮組みと位置決め
カットしたパイプをV字に抱き合わせて仮付け溶接します。この段階での左右均等性が最終仕上がりを決めます。バイスグリップやクランプで固定し、仮付けは4〜6点で行うと後のズレを防げます。
切断面の精度が甘いと隙間が生じ、溶接時に肉盛りが必要になり強度が落ちます。やり直しを恐れず、納得できる形状になってから本溶接に進みましょう。
【STEP 3】溶接(本付け)
45度面同士・22.5度面同士を本溶接します。ステンレスは熱伝導率が低く変形しやすいため、一箇所に集中して熱を入れすぎないことが重要です。少しずつ対称的に溶接するのがコツで、歪みを最小化できます。
【STEP 4】接続部のカットと取り付け
溶接が完了したら、本体との接続箇所をカットして成形します。最後に車体への取り付けと、ガス漏れがないか確認して完成です。
作業全体の難易度は「上級」と評価されることが多く、みんカラの実例ブログでは2日以上かかったという報告もあります。厳しいところですね。「12時間以上」を覚悟して挑む気持ちが大切です。
実際にアルトラパンにデュアルマフラーを自作した詳細な工程は以下で確認できます。
自作デュアルマフラー製作①(みんカラ)※Yパイプ溶接の実例と難易度が確認できます
自作マフラーで一番見落とされがちなのが、保安基準への適合です。結論は、保安基準への適合が絶対条件です。
まず「近接排気騒音」の規制から理解する必要があります。2010年4月1日以降に製造された普通乗用車は96dB以下が上限です。さらに、マフラー交換後は「新車時の近接排気騒音+5dB以内」という追加条件もあります。たとえば車検証に記載の新車時騒音が80dBなら、改造後は85dB以下でなければなりません。
次に取り付け位置の規制があります。1999年1月1日以降に製造された車の場合、マフラーは最低地上高9cm以上、かつフロアラインから10mm以上飛び出してはならないという基準があります。フルデュアルで左右に引き出す際は、車体との干渉・位置のチェックが特に重要です。
これらを守らないと何が起きるのか、具体的に確認しておきましょう。
「車検に通りさえすれば公道でも問題ない」という考え方は注意が必要です。車検を通過した後でも、警察の路上検問で保安基準に不適合と判断されれば整備命令が出ます。痛いですね。
自作マフラーを車検に通すためには、保安基準の近接排気騒音・取り付け位置・最低地上高の3点を記録しておき、検査員に説明できる状態にしておくことが重要です。保安基準の条件さえ満たせばワンオフ(自作)マフラーでも車検を通せます。
国土交通省が発行している違法マフラーに関する法令情報は以下で確認できます。
消音器(マフラー)の切断・取り外しに関する法令(自動車点検整備推進協議会)
「自作にこだわらなくていい理由」を正直に語るのが、この記事の独自視点です。
DIYで自作するメリットは確かに存在します。材料費だけで言えば、ステンレスパイプ数本と消耗品で数千〜数万円で作れます。カスタムの過程を楽しめるという体験価値も大きい。つまり費用と体験、両方に価値があります。
しかし、溶接機を持っていない場合の初期投資を含めると話が変わります。TIG溶接機(200V対応)の新品は5万〜10万円以上します。メタルソーも数万円します。工具類をゼロから揃える場合、材料費を合わせると10〜15万円程度の出費になることがあります。
一方でプロのショップにリアピース(出口周辺)だけのセミデュアル化を依頼した場合、工賃の相場は1〜3万円程度が目安です。材料費を含めても5万円以内で収まることが多いとされています。全体が比較できますね。
フルデュアルマフラーのワンオフ製作となると話は変わり、プロショップへの依頼では「左右2本出し」で20万円〜が相場です。ここまでくると溶接スキルが十分にある人がDIYで挑む意義が生まれます。
| 方法 | 費用目安 | 難易度 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| DIY(セミデュアル) | 材料数千円〜(工具別途) | 中〜上級 | 溶接経験があり道具を持っている人 |
| ショップ依頼(セミデュアル) | 工賃込み〜5万円程度 | なし(依頼) | 確実に保安基準を通したい人 |
| ワンオフ製作(フルデュアル) | 約20万円〜 | なし(依頼) | 本格的な性能アップを狙う人 |
「DIYで溶接できるスキルがあるか」が最も大きな分岐点です。これが条件です。溶接未経験者がいきなりマフラー製作に挑むのは、車の安全に直接かかわる箇所だけに無謀なリスクを伴います。まず鉄パイプで溶接練習を重ねてから挑戦する流れが現実的です。
溶接スキルを磨く手段として、地域の職業訓練校(無料〜低コスト)やDIY向け溶接講座を活用する方法もあります。これは使えそうです。事前の練習が作業品質と安全を守る最大の保険になります。
DIYか依頼かの判断に役立つ、ワンオフマフラーの製作事例は以下で確認できます。
オリジナルフルデュアルマフラーの製作・取付事例(YZ-WORKS)※製作工程と参考価格が確認できます

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