

チューニング86でまず押さえたいのが、吸排気パーツとECUセッティングを「セット」で設計するという考え方です。 NAのFA20は純正状態でも燃料・点火マップがギリギリまで詰められているため、単純に吸排気だけを抜いてしまうと、トルクの谷が強調されたりノッキングマージンが不足したりするケースがあります。 特に4000rpm前後のトルクの落ち込みは、等長エキマニではなく不等長エキマニ+適切なECU書き換えでかなり改善できることが実測データで示されています。
自動車整備士として重要なのは、「部品を変える順番」と「現車セッティングのタイミング」を説明できることです。 例えば、純正交換タイプのエアクリーナーと車検対応マフラー程度のライトチューンであれば、まずは汎用データでのECU書き換えで様子を見て、排気系を一気に変更したタイミングで現車セッティングを行う、といったステップが現場では現実的です。
参考)http://www.phoenixs.co.jp/phoenixs/tuning/toyota/ft86/vol1/86_01.htm
現車セッティング時には、以下のような項目をロガーで常時チェックしておくと安心です。
これらを踏まえ、ユーザーには「サーキット走行をする頻度」「街乗りメインかどうか」「燃費への許容度」をヒアリングし、ECUの味付けを変えていくと満足度が高くなります。 同じパワー値でも、街乗り重視なら中低速トルクとスムーズさ、サーキット重視ならレスポンスと高回転の伸びを重視するなど、狙いを共有することがポイントです。
参考)http://www.okracing.jp/carinfo_86_ecusetting2.html
チューニング86では「パワーより先に足回りとブレーキから」という定番の考え方がありますが、その理由を数値や挙動で説明できると説得力が増します。 ZN6の純正サスペンションは、街乗りとワインディングを両立させたセッティングである一方、経年劣化と走行距離の増加で減衰力が低下しやすく、乗り心地の悪化や姿勢制御の乱れにつながります。
特に86はFRでリア荷重が比較的軽いため、リアの剛性・減衰特性を適切に上げることで挙動が一気に安定することが知られています。 これは、フロントを固めるよりリアの補強バーやサスペンションを見直した方が、コーナリング中のリアの追従性が改善し、ステアリング操作に対する車体の遅れが減るためです。
参考)トヨタ86 カスタマイズ大作戦 その5 with TOM’S…
整備士として作業する際には、以下のポイントを押さえると良いでしょう。
特にブレーキは、安全装置としての役割が大きく、パワーアップ前にパッド・フルード・ホースのリフレッシュを提案しておくと、プロらしいアドバイスになります。
参考)”86 Racing”チューニング|スーパーオートバックス浜…
チューニング86で忘れがちなのが、保安基準と車検の観点です。86はユーザー層的に改造指向が強く、車検時に「このパーツは大丈夫か?」と相談される場面が多くなります。 自動車整備士としては、性能向上だけでなく「適法かどうか」「継続検査で問題が出ないか」をセットで説明する責任があります。
具体的には、以下のポイントが要注意です。
86はボルトオンターボやスーパーチャージャーのキットも流通しており、その場合は構造等変更検査が必要になるケースも出てきます。 このあたりを曖昧にせず、「この仕様ならここまでは車検OK」「ここから先は構変が必要」と線引きして伝えることで、ユーザーとの信頼関係を築けます。
また、OBD検査の浸透に伴い、ECU書き換えの内容によっては自己診断機能や排ガス関連の監視に影響が出る可能性もゼロではありません。排ガス計測値や診断機能を無効化してしまうような極端なセッティングは避け、あくまで保安基準内でのチューニングを心がけることが、これからの時代の「プロの整備士」に求められるスタンスです。
チューニング86に関するトラブルは、単純なパワーの出しすぎよりも「組み合わせのミスマッチ」や「管理不足」で起きることが多いです。 例えば、吸排気を大きく変更したのに燃調をほとんど触っておらず、高負荷域で極端にリーンになってピストン冠面がダメージを受けたケースや、油温管理が不十分でサーキット走行中にオイルが極端に劣化し、メタルの抱き付きにつながったケースなどが典型例です。
こうしたトラブルを防ぐためには、以下のような事前説明と点検が有効です。
また、チューニング済みの中古86を持ち込まれた際には、どのメーカーのどのECUデータが入っているか、吸排気パーツの組み合わせが適切かを一度棚卸しすることが重要です。 そのうえで、「一度ノーマルに戻してから再セッティングする」「現状仕様を前提に安全重視で詰め直す」など、リスクの少ない方針を提案するとトラブルを減らせます。
検索上位ではパワーアップや車高調の話が中心ですが、自動車整備士だからこそできる「地味だけど効くチューニング86」がいくつかあります。 例えば、ブッシュ類やマウント類のリフレッシュ・強化は、カタログスペックに現れにくいものの、乗り味とレスポンスを大きく変えるポイントです。 劣化したブッシュを見抜くのは、日頃から足回りを見ている整備士の得意分野と言えるでしょう。
もう一つの独自視点として、「冷却」と「潤滑」をチューニングメニューの中心に据えるという考え方があります。 具体的には、ラジエーターやオイルクーラーの容量アップだけでなく、エンジンルーム内の熱害対策、適切な粘度のエンジンオイル選定、ミッション・デフオイルのグレードアップなどです。 ユーザーからは見えにくい部分だからこそ、プロの目で現車の使われ方を判断し、オーバーヒートやオイル焼けのリスクを先回りして潰しておくことができます。
さらに、配線処理やアースの取り回し、センサー類の取り付け位置の工夫も、故障防止と診断性向上に効くチューニングです。 こうした「見えないところの仕事」がしっかりしていると、後から別のショップや整備士が車を見たときにも評価され、結果的に店や整備士個人の信頼につながります。
86 / BRZのECU現車セッティングと吸排気最適化の具体的なグラフやセッティング例は、OKレーシングの解説ページが参考になります。
86 / BRZ ECU現車セッティング+吸排気最適化解説
FA20の吸排気チューニングやECUパラメータ(燃料マップ・点火マップ・カムタイミングなど)の概要は、フェニックスパワーのFT86チューニング情報が詳細です。
フェニックスパワー FT86チューニング情報
86(ZN6)の足回りリフレッシュや乗り心地悪化の原因と改善メニューについては、KINTO FACTORYの解説が実務的な資料になります。

トラスト(TRUST) Greddy (グレッディ) オーバーパイプ ZN6 / ZC6 86 /BRZ 第1触媒後から第2触媒前のジョイントパイプ径を拡大 10510602