1963年9月にデビューした2代目ブルーバード410型は、日産の小型乗用車として初めてフルモノコック構造のボディを採用した画期的なモデルでした。この構造により、先代より全長が80mm、ホイールベースが100mm拡大したにもかかわらず、車重増加をわずか15kgに抑えることに成功しています。
410型の最大の特徴は、イタリアの名門デザインハウス、ピニンファリーナによるスタイリングでした。欧州調の洗練されたデザインは、当時の日本車としては斬新で、注目を集めました。特に、なだらかに下降するサイドラインと低い位置に配置されたテールランプは、独特の雰囲気を醸し出していました。
しかし、このデザインは日本市場では必ずしも好評ではありませんでした。特に「尻下がり」と呼ばれるリアデザインは、一部のユーザーから不評を買いました。これが後のマイナーチェンジにつながる要因の一つとなります。
エンジンは、1.2リッターのE1型を搭載。最高出力は60馬力で、当時としては十分な性能を持っていました。また、1964年3月には、ブルーバード初のスポーツグレード「1200SS(スポーツセダン)」が追加されました。これは、SUツインキャブレターを装着し、65馬力まで出力を向上させたモデルで、ブルーバードのスポーティーなイメージ確立に貢献しました。
1965年5月、410型はマイナーチェンジを受け、411型へと進化します。この変更で最も大きな違いは、エンジンの排気量アップでした。1.2リッターのE1型から1.3リッターのJ型へと変更され、最高出力は67馬力に向上しました。これにより、走行性能が大幅に改善されています。
411型で特筆すべきは、「SSS(スーパースポーツセダン)」グレードの登場です。これは1.6リッターのR型エンジンを搭載し、SUツインキャブレターと組み合わせることで90馬力を発揮する高性能モデルでした。最高速度は160km/hに達し、0-400m加速は18.2秒を記録。当時のこのクラスでは類を見ない性能を誇りました。
SSSの登場は、ブルーバードのスポーツイメージを決定づける出来事となりました。これ以降、ブルーバードはスポーティーなセダンとしての地位を確立し、後のモデルにも大きな影響を与えることになります。
また、411型ではブレーキシステムも進化し、SSSグレードには前輪にディスクブレーキが採用されました。これは日産の量産車として初めての試みで、高性能化に伴う安全性の向上にも注力していたことがわかります。
ブルーバード410/411型は、「銭ブル」という愛称でも親しまれています。この愛称の由来は、人気アニメ『ルパン三世』に登場する銭形警部の愛車がブルーバードのパトカーだったことに起因します。
『ルパン三世』のアニメ第1シリーズ(1971年~1972年)から、銭形警部の乗るパトカーとしてブルーバードが登場しました。特に印象的だったのは、1979年に公開された劇場版『ルパン三世 カリオストロの城』での活躍です。この作品で、銭形警部の乗るブルーバードパトカーが大活躍し、その姿が多くの視聴者の記憶に刻まれました。
実は、アニメに登場するブルーバードは厳密には410/411型ではなく、後継の510型をベースにしていると言われています。しかし、「銭ブル」の愛称は410/411型にも広く使われるようになりました。これは、410/411型が日本の警察でパトカーとして広く採用されていたことも影響しています。
「銭ブル」の愛称は、クラシックカーファンの間で今でも親しまれており、410/411型ブルーバードの人気と知名度を高める一因となっています。
1966年4月に行われたビッグマイナーチェンジでは、410型から411型へのデザイン変更が大きな話題となりました。主な変更点は以下の通りです:
1. フロントグリル:
2. ヘッドライト:
3. フロントバンパー:
4. サイドライン:
5. リアデザイン:
6. テールランプ:
7. トランク:
これらの変更により、411型は先代の「尻下がり」デザインの評判を払拭し、よりバランスの取れたスタイリングとなりました。特にリアデザインの変更は、日本市場でのユーザーの好みに合わせた結果と言えるでしょう。
ブルーバード410/411型は、日産のモータースポーツ活動において重要な役割を果たしました。特に注目すべきは、1966年の東アフリカサファリラリーでの活躍です。
1966年4月、日産は411型ブルーバード1300SSをサファリラリーに投入しました。このラリーは、アフリカの過酷な自然環境の中を走る世界でも最も困難なラリーの一つとして知られています。ブルーバードは、この難関を見事に乗り越え、クラス優勝という快挙を成し遂げました。
この勝利は、日本車として初めての国際ラリーでのクラス優勝という歴史的な出来事でした。この成功により、ブルーバードの信頼性と耐久性が世界に証明されることとなりました。
サファリラリーでの勝利は、日産の広告キャンペーンでも大きく取り上げられ、「栄光への5000キロ」というキャッチフレーズとともに、ブルーバードの性能と信頼性をアピールする重要な材料となりました。
また、この勝利を記念して、後に石原裕次郎主演で映画化もされています。ただし、映画では実際のラリーで使用された411型ではなく、後継の510型ブルーバードが使用されました。
モータースポーツでの活躍は、ブルーバードのスポーティーなイメージ強化に大きく貢献しました。これ以降、ブルーバードは単なる大衆車ではなく、スポーツ性能も備えた魅力的なモデルとして認識されるようになりました。
日産の公式ヘリテージサイトでブルーバード1600SSSの詳細情報を確認できます。
ブルーバード410/411型は、生産終了から半世紀以上が経過した現在でも、クラシックカーファンの間で高い人気を誇っています。その理由として以下のポイントが挙げられます:
1. 歴史的価値:
2. デザイン:
3. 希少性:
4. カスタマイズの楽しさ:
中古車市場での価格は、状態や仕様によって大きく異なりますが、良好な状態の個体は高値で取引されています。特にSSS仕様や、モータースポーツ参戦車両のレプリカなどは、コレクターズアイテムとして高額で取引されることもあります。
最近では、日産自身がヘリテージ部品の供給を開始するなど、クラシックカーの維持をサポートする動きも見られます。これにより、今後も410/411型ブルーバードの人気は継続すると予想されます。
また、若い世代のクラシックカーファンの間でも、「銭ブル」の愛称で親しまれ、人気を集めています。SNSなどでは、レストアやカスタマイズされた410/411型ブルーバードの写真が多く投稿され、注目を集めています。
日産のニスモヘリテージパーツプログラムについての詳細はこちらで確認できます。
このように、ブルーバード410/411型は、単なる懐かしい車両ではなく、現代においても魅力的なクラシックカーとして評価され続けています。その歴史的価値と独特の魅力は、今後も多くの自動車ファンを魅了し続けることでしょう。
以上、ブルーバード410型と411型の違い、そしてその歴史的意義について詳しく見てきました。この2つのモデルは、日産の技術力とデザイン哲学の進化を如実に示す重要な存在であり、日本の自動車産業の発展を象徴する車両と言えるでしょう。クラシックカーファンにとっては、今なお憧れの的であり続けている410/411型ブルーバード。その魅力は、時代を超えて色褪せることはありません。