

ポールスター車は、元々ボルボのハイパフォーマンス部門として発展し、現在は独立したEVブランドとして展開されているのが特徴です。 ボルボ・カーズグループ傘下であるため、シャシーや安全思想はボルボと共通点が多く、日本の整備現場でも「ボルボの派生系」として捉えるとイメージしやすい構造になっています。
中でも初期のポールスター車を語るうえで重要なのがプラグインハイブリッド・クーペのポールスター1で、ボルボのSPAプラットフォームをベースにCFRPボディを組み合わせた少量生産モデルです。 その後、ポールスター2・3・4・5といったEVセダン/SUVへと展開し、最新のポールスター5では専用アーキテクチャ「PPA」を採用するなど、ボルボから離れた独自技術も増えつつあります。
参考)ポールスター (自動車ブランド) - Wikipedia
また、ポールスター車は生産面でも特徴があり、ポールスター4を韓国のルノーコリア自動車釜山工場で生産するなど、マルチ拠点での製造戦略を取っている点も、部品調達やリコール対応を考えるうえで知っておきたいポイントです。 このようにブランド背景を押さえておくと、「ボルボ系EV」としての共通整備ノウハウと、「ポールスター固有仕様」を切り分けて考えやすくなります。
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ポールスター車の代表格として、まず挙げられるのがポールスター1で、2.0L直4ガソリンターボ+スーパーチャージャーに3基の電動モーターを組み合わせ、システム出力600hp/最大トルク1,000Nmを発生するプラグインハイブリッド・クーペです。 0-100km/h加速4.2秒という高性能とCFRPボディによる軽量・高剛性を両立しており、サスペンションやブレーキもハイパフォーマンス寄りの味付けになっているため、整備時には足回りやタイヤの状態管理が重要になります。
EVとしての量販モデルはポールスター2で、電気モーターAWDとシングルモーター仕様が用意されるCセグメント寄りの5ドアファストバックです。 さらに上位にはSUVのポールスター3・4、そしてフラッグシップのポールスター5が控えており、とくにポールスター5は800Vシステムを採用し、デュアルモーター仕様で748hp、パフォーマンス仕様では884hp/1,016Nmというスーパーカー級のスペックに達しています。
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ポールスター5のような高電圧・高出力EVでは、駆動用バッテリーの冷却系や高電圧配線の取り扱いが整備上の重要テーマとなり、従来の12V主体の車両よりも系統図の理解と絶縁管理がシビアになります。 同時に、ソフトウェア制御の比率が高く、トルクベクタリングや回生ブレーキ制御も複雑化しているため、異常時にはメカだけでなく制御ロジックも含めた診断が求められます。
ポールスター車のパワートレーンで特徴的なのは、PHEVとEVで構成が大きく異なる点です。PHEVのポールスター1やS60/V60 T8ポールスター・エンジニアードでは、前輪駆動用の2.0Lターボ+スーパーチャージャー付きエンジンと、後輪を駆動する電動モーターを組み合わせたレイアウトを採用し、前後の駆動を別々のユニットで担っています。
この構成では、エンジン側の補機類やATだけでなく、リアアクスル側のモーターと減速機、さらに高電圧ケーブルの取り回しが追加されるため、下回り作業の際には従来のAWD以上に「どのラインが高電圧か」を意識したリフトアップ・支持作業が必要です。 特にS60 T8ポールスター・エンジニアードではセンターコンソール内部に駆動用バッテリーを配置しており、室内からのアクセスや配線・冷却系統の取り扱いにも注意を要します。
参考)〈ボルボS60 T8ポールスター・エンジニアード〉現実のクル…
EV専用プラットフォームを使うポールスター3/4/5では、床下に大容量バッテリーを敷き詰め、前後モーターでAWDを実現する形が主流です。 ポールスター5のPPAプラットフォームは800V化により急速充電能力と高効率化を狙った設計で、整備上は絶縁抵抗の測定や高電圧シャットダウン手順の習得が必須となります。 モーターは瞬時トルクが大きいため、ドライブシャフトやマウント類の疲労がガソリン車以上に蓄積しやすく、定期点検でのガタやブーツ亀裂のチェック頻度を高めるとトラブル防止に有効です。
ポールスター車はボルボ譲りの安全思想を強く受け継いでおり、エアバッグや各種センサー、アクティブセーフティ機能がきわめて多層的に組み合わされています。 とくにエアバッグ関連については、ボルボサポート情報の中で「エアバッグおよび関連安全装置の整備または修理は、必ずPolestar認定サービスメカニックが行う必要がある」と明記されており、一般整備工場が安易に手を出してはいけない領域がはっきり示されています。
この方針は、ステアリングやダッシュボード周りだけでなく、シート内蔵エアバッグやサイドカーテン、シートベルトプリテンショナーなど、多数の安全装置が連携して作動する近年のEVならではの事情を反映したものです。 誤った分解・配線修理があると、事故時にエアバッグが正常に開かないだけでなく、誤爆や診断不能状態を招くリスクもあるため、入庫段階で「どこまでを自社で行い、どこからを正規/認定工場に回すか」の線引きを決めておくことが、整備経営上も重要になります。
また、ポールスター・エンジニアード系車両では、ESCや駆動制御と連動した専用ドライブモード(ポールスターモード)が設定されており、ブレーキ・サスペンション・ステアリング制御のチューニングも純正とは異なるマップが用いられています。 こうした車両に社外サスやブレーキ、タイヤを組み合わせる場合は、ABS/ESCの介入タイミングや、ハーネス取り回しへの影響まで含めて説明・確認しないと、不具合時に責任範囲が曖昧になるおそれがあります。
参考)https://tsu.vc-dealer.jp/news/3200/
ポールスター車・ポールスターエンジニアード関連では、ソフトウェアによる性能チューニングも大きな柱であり、「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」と呼ばれる公式アップグレードがボルボ向けに提供されています。 このソフトは、シフトポイントやスロットルレスポンス、ブースト制御、トルク配分などを最適化し、中速域での加速応答やコーナリング中の安定性を高める内容になっており、単にパワーアップするだけでなく、扱いやすさを重視したキャリブレーションが特徴です。
例えば、AWDモデルではリアホイールへのトルク配分を増やし、発進トラクションの向上やコーナリング中のアンダーステア低減を狙った制御が組み込まれています。 また、横Gがかかったコーナリング中にはギアホールド機能で不用意なシフトアップを防ぎ、姿勢変化を抑えるといった細かい配慮もされているため、試運転時には「どのモードでどう駆動配分が変わるか」を意識して評価することが重要です。
参考)ボルボS60 T8ポールスターエンジニアード(4WD/8AT…
整備現場の独自視点として押さえておきたいのは、こうしたソフトウェアチューニングが入っている車両ほど、足回りやタイヤ、ブレーキ、冷却系の負荷がじわじわ高まりやすいという点です。純正でもブレンボキャリパーや強化サスが組み合わされることが多く、パッド摩耗やローターのヒートスポット、ブレーキフルードの劣化診断を通常車よりも短いサイクルで提案すると、トラブル予防と満足度向上につながります。 同時に、非正規のECU書き換えやOBD経由のチューニングが入っている個体も混在し得るため、「公式ポールスターソフトかどうか」「いつ導入されたか」をユーザーに確認しておくと、保証や診断の判断に役立ちます。
検索上位ではあまり語られていませんが、ポールスター車は日本国内での販売台数がまだ多くないため、「最寄りにポールスター・ボルボ正規工場がないエリア」では、地方の一般整備工場が実質的な“駆け込み寺”になるケースが増えていくと考えられます。 このとき、いきなり高電圧系やエアバッグに手を出すのではなく、「12V補機系」「タイヤ/ブレーキ」「足回り」「車検整備」のような低リスク領域から受け入れメニューを明確化してスタートすることが現実的です。
具体的には、ボルボ系に精通した整備工場が、ボルボ専用テスターとあわせてポールスター車の基本診断を受け持ち、保証修理や安全装備・高電圧系は正規/認定工場に依頼するという役割分担が、一つのモデルケースになります。 さらに、納車前後の保証や初期不良対応で「最寄りの整備工場に搬入すれば修理費用を販売店側が支払う」というスキームを組んでいる中古車販売店もあり、こうした枠組みに参加すれば、ポールスター車ユーザーとの接点を増やしつつ、無理のない範囲でEV時代のノウハウを蓄積できます。
参考)ボルボ XC60 T8 ポールスターエンジニアード|ボルボ中…
独自視点として有効なのは、「ポールスター車専門」を名乗る前に、ボルボPHEV/EVの整備実績を丁寧に発信し、段階的にポールスター車の入庫を増やしていく戦略です。 Webサイトやブログで「EVは高電圧系以外は通常整備と共通するポイントが多い」「安全装備は認定メカニックと連携して対応する」といったスタンスを明確に示しておくと、ユーザー側も安心して相談しやすくなり、結果的にEV・ポールスター車オーナーの“かかりつけ工場”として選ばれやすくなります。
ボルボS60/V60 T8ポールスター・エンジニアードの試乗記で、ハイブリッドシステムやポールスターモードの挙動が詳しく解説されています(駆動レイアウト・モード別挙動の把握に有用です)。
ボルボS60 T8ポールスターエンジニアード試乗記(webCG)
ボルボ向け「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」の公式説明で、トルク配分やシフト制御の変更内容が整理されています(ソフトウェアチューニングの理解に有用です)。
ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア解説(ボルボ・カー津)
ポールスター5の800Vアーキテクチャや出力スペックがまとまっている記事で、最新ポールスター車の技術トレンドを掴むのに役立ちます。
ポールスター5 技術解説記事(intensive911)
エアバッグ関連整備はPolestar認定サービスメカニックが行う必要があることを示すボルボ公式サポート情報です(安全装備の取扱い方針の確認に有用です)。
EX30 エアバッグの点検整備 | Volvo Support JP

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