ピロボール注油の正しい知識と足回りメンテの全手順

ピロボール注油の正しい知識と足回りメンテの全手順

ピロボールへの注油と足回りメンテナンスの正しいやり方

注油すればするほど、ピロボールの寿命が縮まるケースがあります。


この記事でわかること
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ピロボールの種類と注油の可否

「テフロンタイプ(無潤滑型)」と「メタルタイプ(潤滑型)」では、注油の必要性がまったく異なります。間違えると逆効果になります。

⚠️
注油が寿命を縮める理由

注油禁止タイプに油を塗ると、砂・砂利が油に引き寄せられてピロボールに噛み込み、摩耗を一気に加速させてしまいます。

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正しいメンテナンス手順と交換時期

清掃→判定→必要であればグリスアップの3ステップが基本です。交換目安は一般的に20,000〜30,000kmとされています。


ピロボールとは何か?注油が必要な理由を基礎から理解する





「ピロボール」という名前は聞いたことがあっても、どんな構造でなぜメンテナンスが必要なのかを正確に理解している方は少ないかもしれません。


ピロボールとは、金属製のボール(球体)が外輪に収まった構造の軸受部品です。正式名称は「スフェリカルベアリング」といい、多方向への動きを吸収しながら荷重を受けられるのが特徴です。車のサスペンション系では、アッパーマウントやサスペンションアームのブッシュ部分などに使われています。


市販車の多くはゴムブッシュが採用されていますが、スポーツ走行を目的としたチューニングカーでは、このゴムブッシュをピロボールに交換する「ピロ化」が行われます。ゴムは衝撃を吸収してくれる半面、強い入力でたわむため、ホイールアライメントが微妙に変化してしまいます。金属製のピロボールにすれば、そのたわみがなくなり、ハンドル操作への反応がダイレクトになるわけです。


つまり基本は「金属と金属が接触しながら動く部品」ということですね。


金属同士が擦れ合う以上、摩耗は避けられません。だからこそ注油・メンテナンスの話が出てくるのですが、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。注油が効果的なタイプと、注油が逆効果になるタイプが存在するのです。


この違いを知らずに「金属同士が接触しているんだからグリスを塗っておこう」と作業してしまうと、かえってピロボールの寿命を縮める結果になりかねません。次のセクションで詳しく解説します。


ピロボールの注油NGタイプと注油必須タイプ——2種類の見分け方

ピロボール(スフェリカルベアリング)には大きく2つのタイプがあります。この区別が注油の是非を決めるうえで最重要ポイントです。


① テフロンタイプ(無潤滑型)


ボールの表面、あるいは外輪との接触面に自己潤滑性を持つテフロン(PTFE)ライナーが接着・成形されているタイプです。テフロン素材自体が潤滑材として機能するため、グリスなどの潤滑剤は不要です。


これが注油NGタイプです。


テフロンタイプに油脂系のグリスを塗ってしまうと、表面に油分が付着します。油分はいわば"砂のり"のように機能してしまい、道路から巻き上げられた砂・砂利・細かな異物がボール表面に付着しやすくなります。そのまま動作するたびにその砂が研磨剤として働き、テフロンライナーや金属面を削り取ってしまうのです。


メーカーのTEINなど多くの車高調メーカーが採用しているのが、このテフロンタイプです。「ドライ潤滑が基本」という表現で注油禁止を訴えているメーカーも多く存在します。


② メタルタイプ(潤滑型)


テフロンライナーなどを持たず、金属面そのもので摺動するタイプです。こちらはグリスによる潤滑が必須です。グリスが切れた状態で使い続けると、金属同士の摩擦が過大になり、摩耗が急速に進みます。最終的にガタが発生し、走行中に「ゴトゴト」「ガタガタ」という異音につながります。


見分け方が難しい場合は、車高調や足回りパーツのメーカー公式マニュアルを確認するのが原則です。


自分の車に取り付けられているピロボールがどちらのタイプかを把握しておくことが、正しいメンテナンスの第一歩です。わからなければメーカーへの問い合わせが確実です。


ピロボールへの注油の手順——メタルタイプの正しいグリスアップ方法

メタルタイプ(潤滑型)のピロボールを使用している場合は、定期的なグリスアップが必要です。ただし、ただグリスを塗ればいいというわけではなく、順番と方法が重要になります。


ステップ1:清掃(砂・砂利・グリスの除去)


まず既存の汚れや古いグリスを取り除くことが先決です。砂や砂利が付いたままグリスを追加してしまうと、砂がグリスの中に混入してしまいます。砂の粒子は硬く、金属面を削る研磨剤と同じ働きをするため、グリスの中に砂がある状態は最悪です。


清掃には、パーツクリーナー(脱脂スプレー)を使い、細かい異物をしっかりと吹き飛ばします。ブラシを使って物理的にこそぎ取ることも有効です。清掃後は完全に乾かしてから次のステップへ進みましょう。


清掃が条件です。


ステップ2:グリスの選択


ピロボールに使うグリスとして一般的に推奨されるのは、耐水性・耐熱性・耐荷重性に優れたリチウム系グリスやモリブデン配合グリスです。モリブデンは固体潤滑剤として機能し、金属同士の直接接触を防ぐ効果に優れています。


ただし、ゴムブーツが近くに存在する場合は、ゴムを侵食しないシリコン系グリスが適切です。足回りのボールジョイントなど周辺パーツとの兼ね合いも意識しましょう。


グリスはチューブタイプよりも、手が届きにくい箇所に対してはスプレーグリスが扱いやすくておすすめです。


ステップ3:塗布


清掃後、乾いた状態のピロボール表面にグリスを薄く均一に塗ります。塗りすぎると余分なグリスが外に出て、そこに砂が付着するリスクが生まれます。薄く広く馴染ませるイメージで作業します。


また、グリスニップル(注油口)が付いているタイプはグリスガンを使って内部に充填する方法が一般的です。グリスニップルがない場合は、表面に直接塗布します。


ピロボールの注油・清掃を怠るとどうなる?ガタと異音の発生メカニズム

メンテナンスを怠ったとき、実際に何が起きるのかを具体的に理解しておくことは重要です。知らないうちに走行安全性に影響が出ている可能性があるからです。


ピロアッパーマウントのピロボールにガタが発生する主な原因は4つあります。①砂や砂利の噛み込み、②経年劣化、③雨による錆、④グリス切れです。


これらはそれぞれ独立して起きるだけでなく、連鎖することもあります。例えば、グリスが雨で流れて切れた状態(④)のまま放置すると、金属同士の摩擦が増え(②が加速)、さらに砂が噛み込みやすくなる(①が発生)という悪循環です。


厳しいですね。


ピロボールにガタが出た状態で走行すると、サスペンションが動くたびにピロボールのわずかなズレが繰り返し発生します。路面の段差を乗り越えたとき、ハンドルを切ったとき——そのたびに「ゴトゴト」「ゴンゴン」という金属がぶつかる低い音が車内に響くようになります。


一度ガタが発生したピロボールは、修復することができません。


交換しかない、というのが現実です。ピロボールアッパーマウントを丸ごと交換した場合、部品代は20,000〜50,000円程度、工賃が1箇所あたり7,000〜10,000円が相場とされています。消耗品として割り切る必要はありますが、適切なメンテナンスで寿命を延ばすことは十分可能です。


ガタが出始めると判断できる前兆サインとして、まだ車体に取り付けた状態でもハンドルを切った際に普段とは異なるこもった異音が出始めることが挙げられます。気になる音が発生したら、早めに専門業者に点検を依頼するのが賢明です。


ピロボールの注油と一緒に行いたい——交換時期の自己チェック方法

グリスアップや清掃を行うタイミングは、同時にピロボールの劣化度合いを確認する絶好の機会です。部品の交換時期を正しく判断できると、突然の異音トラブルを未然に防げます。


一般的なピロボールの交換頻度は20,000〜30,000kmが目安とされています。ただし、これはあくまで一般論です。サーキット走行や悪路での使用が多い場合は、10,000km前後でもガタが出ることがあります。走行環境によって寿命は大きく変わるということですね。


車高調からアッパーマウントを取り外した状態でのチェック方法


最も確実な方法は、車高調からピロボールアッパーマウントを取り外して直接触れることです。ピロボールのボール部分に指を添えて、上下・左右に動かしてみます。このとき、わずかでもガタ(ぐらつき)を感じたら、交換を検討すべきサインです。


また、ガタはなくてもボールがほとんど抵抗なくスルスルと動く場合も要注意です。これは摩耗が進みすぎて接触面がすり減っている状態を示しており、交換時期が近づいているといえます。


痛いですね。


車体に付いたまま確認する方法(目視・音による判断)


ボンネットを開けてピロアッパーマウント周辺を目視確認します。ピロボール表面に砂・砂利が多く付着していたり、錆が見える場合は要清掃・要点検です。


走行中の異音(特に段差通過時や低速でのハンドル操作時)が以前より大きくなったと感じる場合も、ガタの可能性があります。


足回りのメンテナンス全体を定期的に点検したい場合は、Aragosta(アラゴスタ)やTEINなどの車高調メーカーが提供しているオーバーホールサービスを利用するという選択肢もあります。街乗り中心であれば15,000〜20,000kmを目安にオーバーホールが推奨されているメーカーもあります。


ピロボールの注油と清掃の頻度——走行スタイル別の目安と独自視点

「どのくらいの頻度でメンテナンスすればいいか」という疑問は、実は走行スタイルによって答えがまったく異なります。ここでは街乗り・ワインディング・サーキットの3パターンに分けて考えてみます。


街乗り中心の場合


舗装路がメインで悪路走行がほとんどない場合、ピロボールへの砂・砂利の噛み込みリスクは比較的低いです。メタルタイプであれば、車検ごと(2年に1度)のグリスアップを目安にするのが現実的です。テフロンタイプであれば、グリスアップは不要で清掃のみ実施します。


ワインディング・峠走行が多い場合


路面状態が変化しやすく、雨の影響も受けやすい環境です。グリス切れや砂の噛み込みリスクが上がります。6ヶ月〜1年に1回の清掃と、メタルタイプであれば同タイミングでのグリスアップが望ましいといえます。


サーキット走行がある場合


プロのレーシングカーが走行のたびにコンプレッサーエアでピロボールを清掃している事実からも分かる通り、サーキット走行では単位時間あたりのストレスが街乗りとは比になりません。走行会のたびに目視確認、数回ごとに清掃・グリスアップを行うのが理想です。


これが基本です。


独自視点:「洗車のついでにピロボールを覗く」習慣の有効性


あまり語られない視点として、洗車のたびにボンネットを開けてピロアッパーマウント周辺を覗く習慣が非常に有効です。洗車は2週間〜1ヶ月に一度行う方が多く、そのタイミングでピロボール周辺の砂・砂利の堆積状況を目視確認するだけで、ガタの兆候をかなり早い段階でキャッチできます。


車高調を装着しているドライバーでも、アッパーマウント周辺まで目を向けている方は意外と少ないものです。高圧洗浄機やエアスプレーで異物を吹き飛ばすだけでも、メンテナンス効果は十分あります。


足回りの点検・メンテナンスに慣れていない方や、初めてピロボールのグリスアップに挑戦する方は、メーカー公式の整備情報を確認することをおすすめします。


TEIN(テイン)の公式ブログには、ピロボールのタイプごとのメンテナンス方法が写真付きで丁寧に解説されており、初心者でも理解しやすい内容です。


【参考】TEIN公式ブログ「車高調メンテナンスの疑問にお答え! Vol.1」— テフロンタイプと潤滑タイプの違い、日常メンテナンス方法について詳細解説(みんカラ)


また、ピロアッパーマウントにガタが出る原因と対策を詳しく知りたい場合は、以下のページも参考になります。


【参考】「ピロアッパーマウントにガタが出る4つの原因と対策方法」— 砂・錆・グリス切れ・経年劣化の4原因と、ガタが出た場合の対処手順を図解で説明(Freedom)




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