

パッドを巻いていないピラーバーは、そのままでは車検に通らず再検査費用が別途かかります。
ピラーバーとは、車体のピラー(柱)と柱の間を金属製のバーで接続する補強パーツです。車体のねじれを抑え、コーナリング時の安定性や乗り心地を向上させる目的で取り付けられます。
取り付け位置によって名称が変わります。フロントガラス横の「Aピラー」同士をつなぐものはフロントピラーバー(またはストラットタワーバーと混同されることもあります)、運転席と後部座席の間の「Bピラー」をつなぐものがBピラーバー、後部座席後ろの「Cピラー」同士をつなぐものがリアピラーバーです。軽自動車やミニバンでよく使われるのは、主にリアピラーバーです。
リアピラーバーが人気の理由は、軽自動車やハッチバック車はリアゲートの開口部が広い分、後部の剛性が低くなりやすい構造にあります。バーで左右のCピラー(またはDピラー)を結ぶことで、コーナリング中のヨレを抑え、サスペンションが正確に動くようになります。
つまり走行安定性の向上が目的です。
| 種類 | 取り付け位置 | 主な対象車種 |
|---|---|---|
| フロントピラーバー | Aピラー(フロントガラス横) | セダン・スポーツカー |
| Bピラーバー | センターピラー(ドア間) | 4ドアセダン・ミニバン |
| リアピラーバー | Cピラー・Dピラー(後部) | 軽自動車・ハッチバック・ミニバン |
ストラットタワーバーとピラーバーは別物です。ストラットタワーバーはエンジンルーム内でサスペンションのアッパーマウントを左右でつなぐもので、ピラーバーは車室内のピラー間をつなぐものです。どちらも剛性向上が目的ですが、取り付け位置と車検上の扱いが異なります。これは覚えておけばOKです。
ピラーバーが車検に通るかどうかは、「むき出しかどうか」が最大の分かれ目です。
車検の根拠となる法律は「道路運送車両の保安基準 第18条(車枠及び車体)」です。この条文には、乗員の安全を確保するための設計基準が定められており、衝突などの際に乗員が車内の構造物に接触してケガを負うリスクを下げることが求められています。金属がむき出しのまま乗員の頭部や身体に触れる位置にバーが設置されていれば、検査員から「乗員に過度の傷害を与えるおそれがある」と判断されることがあります。
実際にみんカラなどのSNSでも、「ピラーバーを付けたまま車検に持っていったら、むき出しを指摘されて一度不合格になった」という報告が複数あります。特にリアピラーバーは後部座席の乗員の頭部に近い位置に設置されるケースが多いため、より厳しく見られます。
不合格になる代表的なパターンをまとめます。
ここで大切なのは、「ピラーバー自体が禁止されているわけではない」という点です。パッドを適切に装着し、しっかり固定されていれば車検に通るケースがほとんどです。ただし、検査員によって判断が変わるグレーゾーンが存在するのも現実です。厳しいところですね。
また、ディーラーでの車検の場合は、保安基準の適否とは別に「社内規定による入庫拒否」が起きることもあります。社外品のピラーバーが装着されていると、「改造車」として点検・整備を断られるケースも報告されています。ディーラー車検を希望する場合は、事前に確認しておくことをおすすめします。
参考:保安基準18条の原文(国土交通省)
道路運送車両の保安基準 第18条(車枠及び車体)|国土交通省
保安基準の「乗員への危険を防ぐ」という要件をクリアする最も現実的な方法が、パッド(緩衝材)の装着です。具体的な対策は大きく3つあります。
① 専用ピラーバーパッドを購入する
カワイ製作所(KAWAI WORKS)は、自社のピラーバーに取り付けられる専用パッドを販売しています。長さ1,100mmタイプが約2,100円、1,500mmタイプが約2,800円です。はがきの横幅がおよそ14.8cmなので、1,100mmは約7枚分の長さ。バー全体をしっかり覆える長さを選ぶことが大切です。専用品はバーの直径に合わせて設計されているため、ズレにくく耐久性も高いです。これは使えそうです。
② ホームセンターの水道管用断熱チューブを活用する
カー用品店や専用品がなくてもすぐに対応できる方法として、ホームセンターで売っている「水道管の凍結防止カバー(保温チューブ)」が広く使われています。スポンジ状の素材で切れ目が入っており、バーにはめ込むだけで装着できます。コーナンやカインズなどで1本200〜500円程度から購入可能で、ガムテープや結束バンドで固定すれば完成です。
ただし、ずれやすい・見栄えが悪い・耐久性が低いというデメリットがあります。車検をとにかく通したい場合の応急処置として使うのが現実的です。
③ 車検時だけバーを取り外す
ブラケット(取り付け金具)はそのままで、バー本体だけを取り外して受検するという方法も有効です。みんカラの整備手帳でも「バーを外せばあとは問題なし」という報告が多く見られます。バーはボルト数本で固定されているケースがほとんどなので、取り外しと再取り付けの手間は比較的小さいです。
対策選びに迷ったら、まず「専用パッド購入→パッド込みで車検を受ける」が最もトラブルが少ない方法です。
参考:ロールバー・ピラーバーへのパッド装着と保安基準の関係
ロールバーを装着したままでも車検に通る?基準について解説|Dr.輸入車ドットコム
ピラーバーを取り付ける際、構造変更の申請が必要なのかどうかを気にする方も多いです。これが意外と知られていない点です。
国土交通省が定める「指定部品」という制度があります。指定部品とは、安全・環境面での問題がないとして国が認めた部品のことで、指定部品であれば取り付けても構造等変更検査(いわゆる「構造変更」)の申請が不要です。
ストラットタワーバーは指定部品に分類されています。一方で、ピラーバーは製品の種類・取り付け方によって扱いが異なります。ボルトオンで取り付けられる「固定的な取り付け」に該当する場合は指定部品の範囲内とみなされるケースがありますが、溶接などの「恒久的な取り付け」の場合は構造変更扱いになりえます。
つまり着脱できる取り付けが基本です。
また、もし後部座席を取り外してピラーバーを設置するケースでは、乗車定員が2名に変更となるため、乗員数変更の構造変更申請が必要になります。これは乗車定員が関わる変更のため、見落とすと違法改造扱いになりかねません。もともと2人乗りの車なら問題ありません。
「わが車のピラーバーは指定部品扱いになるのか」を確認する最も確実な方法は、取り付けを依頼する整備工場や運輸支局に直接問い合わせることです。
参考:指定部品の取り扱いについての国の通達
指定部品(構造装置の軽微な変更時)の取扱いについて|国土交通省通達
車検に通ることだけを目標に考えると見落とされがちなのが、日常走行中の安全性の問題です。
ピラーバーは剛性を高めるためのパーツですが、裏を返せば「固い構造物が乗員の頭部に近い位置にある」ということです。国内の交通事故調査では、後部座席付近に装着された金属製バーが、急ブレーキや側面衝突の際に乗員の頭部や肩に接触し、怪我が拡大した事例が報告されています。特にリアピラーバーは後部座席の乗員の頭に近い高さに設置されるため、子どもや小柄な人が同乗する際は注意が必要です。
パッドを巻く本来の目的は「車検を通すため」ではなく「乗員を守るため」です。これが原則です。
車検対策でパッドを巻いた後も、次のポイントを定期的に確認することをおすすめします。
また、チャイルドシートを後部座席に設置している家庭では、ピラーバーの形状と位置がシートと干渉しないかを必ず確認してください。万が一の衝突時に金属バーとチャイルドシートの間で子どもへの圧力が増す可能性があります。痛いですね。
走行性能を上げるために取り付けるパーツが、取り付け方次第で安全性を下げるという逆説はしっかり覚えておく必要があります。日頃から少し気をつけるだけで、このリスクは大きく下げられます。
ピラーバーを新たに購入する場合は、最初から「車検対応」を意識した製品を選ぶと、後から対策に手間とコストをかけずに済みます。
カワイ製作所(KAWAI WORKS)は軽自動車から国産普通車まで幅広い車種に対応したピラーバーを製造・販売しているメーカーです。最大の特長は前述の通り「専用ピラーバーパッド」が別売りで用意されていること。パッドは1,100mmと1,500mmの2サイズがあり、自車のバー全長に合わせて選べます。ボルトオン固定が基本で、DIY初心者でも取り付けやすい設計です。
ラルグス(LARGUS)は車高調メーカーとして有名ですが、調整式リアピラーバーも人気があります。調整式のため複数車種に対応しやすく、長さをミリ単位で合わせられます。純正パッドも販売されており、車検対策が一式で揃えられます。スズキ・ダイハツ・ホンダなど軽自動車を中心に対応車種が豊富です。
選ぶ際のポイントをまとめます。
Amazonや楽天市場には車種を問わない「汎用ピラーバー」も多く販売されており、価格は2,000〜5,000円台が中心です。ただし汎用品は適合精度が低いものもあり、取り付けの際にがたつきが生じるケースがあります。車検の観点からは「しっかり固定されていること」が必須条件なので、車種専用品を選ぶのが安心です。
参考:ラルグス公式サイトのピラーバー紹介ページ
調整式リアピラーバー|LARGUS OFFICIAL SITE
参考:カワイ製作所のボディ補強パーツ一覧
ボディ補強パーツ|カワイ製作所(KAWAI WORKS)