
N-BOXの自動ブレーキ(正式名称:衝突軽減ブレーキ、CMBS)は、ホンダの先進安全技術「Honda SENSING」の中核を担う機能です。この機能は、カメラやミリ波レーダーを使って前方の車両や歩行者、自転車などを検知し、衝突の危険がある場合に警告を発したり、自動的にブレーキを作動させたりすることで、事故の回避や被害の軽減をサポートします。
N-BOXの自動ブレーキは、約5km/h以上の速度で走行している際に作動し、速度差が5km/h以上ある車両や歩行者、自転車に対して機能します。システムは段階的に作動し、まず警告音や表示で運転者に注意を促し、その後も回避行動が取られない場合には自動的にブレーキを作動させます。
現行モデルでは、昼間の車両や歩行者だけでなく、夜間の歩行者や昼間に人が乗って移動する自転車も検知できるようになり、安全性能が大幅に向上しています。
N-BOXの自動ブレーキ機能は、モデルの進化とともに大きく発展してきました。初代N-BOXでは、一部改良後に「シティブレーキアクティブシステム」という名称で自動ブレーキ機能が導入されました。このシステムは、低速走行時の前方車両との衝突回避を支援する基本的な機能を持っていました。
2017年に登場した2代目N-BOXでは、大きな転換点がありました。この世代から「Honda SENSING」が全グレードに標準装備されるようになり、安全性能が飛躍的に向上しました。Honda SENSINGには、衝突軽減ブレーキだけでなく、車線維持支援システムや誤発進抑制機能なども含まれており、総合的な安全性能が強化されました。
2019年のマイナーチェンジでは、夜間歩行者検知機能が追加され、暗い環境下での安全性も向上しました。さらに、2023年モデルでは、より広い水平画角のフロントワイドビューカメラと前後8つのソナーセンサーを採用した最新システムが導入され、検知精度が向上しています。
このように、N-BOXの自動ブレーキ機能は年々進化を続け、より高度な安全性能を実現しています。特に、初期のモデルと比較すると、検知対象の拡大や検知精度の向上など、大きな進歩が見られます。
N-BOXの自動ブレーキは、エンジンを始動すると自動的にオンになる設計になっています。そのため、特別な設定をしなくても通常の運転中に機能が作動します。しかし、状況に応じて設定を調整したり、一時的にシステムを無効化したりする方法も用意されています。
自動ブレーキを一時的に無効化したい場合は、「CMBS OFFスイッチ」を長押しします。このスイッチを長押しすると、メーター内に「CMBS OFF」という表示が現れ、システムが停止していることを示します。ただし、エンジンを再始動すると自動的にオンに戻るため、永続的な無効化はできません。
また、N-BOXの自動ブレーキは、警報のタイミングを調整することもできます。警報距離は「遠め」「標準」「近め」の3段階から選択でき、運転者の好みや運転状況に応じて設定可能です。例えば、高速道路では「遠め」に設定することで、より早く警報を受け取ることができます。
設定の確認や変更は、車両のインフォメーションディスプレイから行うことができます。メニューから「Honda SENSING」や「CMBS」の項目を選択し、設定画面に進むことで、現在の設定状況を確認したり、警報タイミングを変更したりすることができます。
これらの設定を適切に活用することで、N-BOXの自動ブレーキをより効果的に使用することができます。特に、運転環境や個人の運転スタイルに合わせて調整することで、快適な運転をサポートします。
N-BOXに搭載されている自動ブレーキは、高い安全性能を持つ一方で、状況によっては誤作動が発生する場合もあります。誤作動の主な原因は、センサーやカメラが障害物を誤認することにあります。
例えば、霧や大雨、雪といった悪天候ではセンサーが正常に動作せず、実際には障害物がないのに自動ブレーキが作動することがあります。また、踏切やガードレールなどの静止物を障害物と認識してしまう場合も報告されています。これにより、運転者が予想しない場面で車両が急に減速することがあり、不安やストレスを感じることがあります。
誤作動への対策としては、以下の方法が有効です。
誤作動が頻発する場合は、システムに異常がある可能性も考えられます。この場合、速やかにディーラーに相談し、システムの点検を受けることをお勧めします。
N-BOXの自動ブレーキは単独で機能するだけでなく、Honda SENSINGに含まれる他の安全機能と連携して総合的な安全性を高めています。これらの機能が相互に補完し合うことで、より効果的な安全運転支援を実現しています。
Honda SENSINGには、自動ブレーキ以外にも以下のような機能が含まれています。
これらの機能が連携することで、様々な状況下での安全性が向上します。例えば、車線維持支援システムが作動している状態で前方に障害物が検知された場合、自動ブレーキと連携して適切な回避行動をサポートします。
また、N-BOXには電子制御パーキングブレーキも搭載されており、エンジンを切った際に自動でパーキングブレーキをかけるよう設定することも可能です。この機能は、パーキングブレーキのかけ忘れを防止し、安全性を高める役割を果たします。
N-BOXの自動ブレーキは、実際の道路状況でどのような効果を発揮しているのでしょうか。利用者からの声や実際の事故データを基に、その効果を検証してみましょう。
多くのN-BOX利用者は、自動ブレーキの存在が安心感につながると報告しています。特に、渋滞時や長時間運転時など、注意力が低下しやすい状況での安全性向上が評価されています。ある利用者は「一瞬の不注意で前方車両に近づきすぎた時に警告が鳴り、事故を未然に防げた」と語っています。
また、高齢ドライバーにとっては、誤発進抑制機能と組み合わせることで、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故リスクを低減できるという声も多く聞かれます。実際に、駐車場での操作ミスによる事故が減少したという報告もあります。
一方で、自動ブレーキの限界を指摘する声もあります。例えば、悪天候時や夜間の検知精度に不安を感じるユーザーや、時に過敏に反応して不要な警告が出ることに戸惑いを覚えるユーザーもいます。
実際の事故データを見ると、Honda SENSINGを搭載した車両は、搭載していない車両と比較して追突事故の発生率が約60%低減しているというデータもあります。特に、低速域での追突事故や歩行者との接触事故において、その効果が顕著に表れています。
ただし、自動ブレーキはあくまで補助的な機能であり、すべての状況で事故を防げるわけではないことも理解しておく必要があります。利用者からは「システムを過信せず、常に注意して運転することが大切」という意見も多く聞かれます。
実際の利用シーンでは、市街地での低速走行時や高速道路での長距離運転時など、様々な状況で自動ブレーキが活躍しています。特に、一瞬の不注意や疲労による判断ミスをカバーする機能として、多くのドライバーに支持されています。
また、自動ブレーキの存在が「より慎重な運転を心がけるようになった」という意識変化をもたらしたという声もあり、安全技術が運転者の意識向上にも貢献していることがうかがえます。
N-BOXの自動ブレーキは、技術的な進化とともに、実際の道路環境での効果も着実に向上しています。利用者の声を反映した改良が続けられることで、今後もさらなる安全性の向上が期待されます。
自動車アセスメント(JNCAP)の評価結果でN-BOXの安全性能を確認できます
自動ブレーキを含む安全装備の進化は、N-BOXの魅力の一つとなっています。技術の進化とともに、より多くの状況で効果的に機能するようになった自動ブレーキは、運転者の安全をしっかりとサポートしています。ただし、どんなに優れた安全技術も、最終的には運転者の注意力と判断が重要であることを忘れてはなりません。
N-BOXの自動ブレーキは、運転者の「もしも」に備える重要な機能です。適切に理解し、活用することで、より安全なカーライフを実現することができるでしょう。