

ヒューズ電源の向きを逆に差すだけで、走行中に純正ECUまで道連れでヒューズが飛ぶことがあります。
ヒューズボックスから電源を取り出す作業を始める前に、まず「ACC電源とは何か」を正確に押さえておく必要があります。ACC電源(アクセサリー電源)とは、車のキーをACCポジションに回した段階、またはプッシュスタート車ならスタートボタンを1回押した段階で通電する電源のことです。エンジンが止まっている状態では電気が流れないため、電装品を取り付ける際に最もよく使われる電源です。
エンジンがかかっていなくてもナビやオーディオが動く状態、それがACC電源の状態です。ドライブレコーダーやLEDフット照明など、「エンジンをかけたら動いてほしい」電装品の取り付けに最も適しています。
車の電源には主に4種類あります。常時電源(BATT電源)は文字通り常に12Vが流れており、キーをオフにしても電気が来ています。ACC電源はキーをACCにした段階で通電します。IG電源(イグニッション電源)はエンジン始動に連動した電源で、走行に関わる制御装置の多くがこのラインから電力供給を受けています。そしてイルミ電源は、車のライトを点灯させたときだけ通電する電源です。
ACC電源とIG電源は混同されがちです。どちらもエンジンOFF時には電源が切れますが、IGはACCよりもさらに重要な制御系に使われているため、取り出し時のリスクが格段に高くなります。取り出すなら原則、ACC電源が安全です。
参考:ACC電源とIG電源の違いについて詳しく解説されています。
ACC電源とIG電源(イグニッション)はなにが違う? - DIYラボ
ヒューズボックスの場所は車種によって異なりますが、運転席足元の奥(Aピラー根元付近)や助手席グローブボックス裏にあることが多いです。取扱説明書にも記載されているので、最初に確認しておきましょう。
ヒューズボックスのカバーを開けると、数十個のヒューズが並んでいます。その中からACC電源のヒューズを探すのに必要なのが「検電テスター」です。検電テスターは1,000円前後から購入でき、エーモン製(型番A49や後継の4932)が定番です。プラス電源の通電を調べるだけなら、入門用の安価なもので十分機能します。
使い方は、まずテスターのクリップを車体金属部分(ドアヒンジなど)にはさんでアース接続します。次にスタートボタンを1回押してACCオンの状態にし、テスターの先端をヒューズ上面の金属露出部分(2か所ある)に当てていきます。
テスターが光ったら通電しているヒューズです。重要なのはここから先です。エンジンをOFFにして、テスターの反応が消えることを確認してください。エンジンOFFでも光り続けるなら、それは常時電源であってACC電源ではありません。これが判別の決め手です。
実は、ACC電源が流れているヒューズは、ヒューズボックス内のヒューズ全体から見るとごく少数です。30系ヴェルファイア前期の場合、ACC電源ヒューズはヒューズボックス内に3種類しかなく、90系ヴォクシーなどでも選択肢は同様に限られます。「全部のヒューズからACC電源が取れる」と思っている方は多いですが、そうではありません。つまり、闇雲に試すより狙い目を知っておくことが重要です。
参考:ACC電源が流れているヒューズの種類と選び方の詳細はこちら。
ACC電源が取れるヒューズが見つかったとしても、すべてのヒューズが電源取り出しに適しているわけではありません。特に注意が必要なのが「ECU-ACC」と表記されたヒューズです。
ECU-ACCは、車のコンピューター(ECU)に使われているACC電源ラインのヒューズです。30系ヴェルファイアを例にすると5A、90系ヴォクシーでは7.5Aという小さな容量のヒューズです。ここにヒューズ電源を差して作業中にショートさせてしまうと、ECUまで影響が及ぶ可能性があります。ECUは車の制御の中枢であり、故障した場合の修理費用は数万円から場合によっては10万円以上になることもあります。
もうひとつ、やってしまいがちな間違いが「空きスロットから電源を取る」ことです。ヒューズボックスを開けると、ヒューズが差さっていない空のスロットが目に入ることがあります。検電テスターを当てると電源が来ているように見えることもあり、「ここに差せばいいじゃないか」と思ってしまいがちです。しかしこれは絶対にNGです。
空きスロットは、メーカーがオプション電装品用に設けた予備の差し込み口であることが多く、その先がどこにつながっているかを正確に把握しないまま電源を取るのは危険です。ヒューズ電源を差すことで、本来はつながっていなかった別の回路まで電気が流れてしまう恐れがあります。また、その回路の電流許容量が不明なため、細いパターンの配線が先に切れてしまうリスクもあります。ショートのリスクが高い行為です。
選ぶべきヒューズは「シガーソケット(CIG)」と表記されたものです。シガーソケットのヒューズは容量が大きく(多くの車で15A)、万が一ヒューズが飛んだとしてもシガーソケットが一時使えなくなるだけで、他の重要な回路には影響しません。ほとんどの国産車でACC電源であることが確認されており、最もリスクの低い選択肢です。
| 車種 | シガーソケットヒューズの電源 |
|:------|:---------|
| トヨタ ヴェルファイア 30系 | ACC電源 |
| トヨタ ヴォクシー 90系 | ACC電源 |
| ホンダ N-BOX JF3/4系 | ACC電源 |
| スズキ ジムニー JB64系 | ACC電源 |
| ニッサン ノート E13系 | IG電源 ※例外 |
ただしニッサン ノート E13系のようにシガーソケットがIG電源の車種もあるため、テスターでの確認は作業前に必ず行いましょう。これが原則です。
参考:どのヒューズから取ってよくて、どれがNGかを解説した権威ある記事です。
電源を取ってはいけないヒューズと、取ってもいいヒューズの違い - DIYラボ
ACC電源の取り出し先となるヒューズが決まったら、次は実際に電源を取り出すための「ヒューズ電源」を用意します。ヒューズ電源とは、純正ヒューズと差し替えて使うアイテムで、コードが付いた先から電源を取り出せる構造になっています。
ヒューズ電源を選ぶときには、2つの要素を確認する必要があります。
- ヒューズの形状:車によって「低背(ていはい)」「ミニ平型」「平型」の3種類があります。これらに互換性はなく、形状が合わないと差さりません。最近の国産車の多くは「低背」が採用されていますが、車種によって異なります。純正ヒューズを実際に抜いて目視で確認するのが最も確実な方法です。
- アンペア数:純正ヒューズと同じアンペア数のヒューズ電源を選びます。例えば純正が15Aならば、15Aのヒューズが先端に付いたヒューズ電源を選びます。アンペアを変えると保護回路として正常に機能しなくなる恐れがあります。
ヒューズ電源から実際に取り出せる電流量は、エーモンの製品を基準にすると以下のとおりです。
| 元のヒューズのアンペア | 取り出せる電源の量 |
|:------|:------|
| 5A | 3A |
| 7.5A | 5A |
| 10A | 5A |
| 15A | 5A |
| 20A以上 | 10A |
たとえばシガーソケットのヒューズが15Aであっても、取り出せるのは5Aまでです。これは純正回路が約3倍程度のマージンを持って設計されているため、その余裕分だけを拝借する設計思想によるものです。ドライブレコーダー(消費電流0.3A前後)やLEDフット照明(0.1〜0.5A程度)であれば5Aで十分余裕があります。
容量オーバーに陥りやすいのは、1か所のヒューズから複数の電装品の電源をまとめて取ろうとするケースです。各電装品の消費電流を合算したうえで、取り出せる上限アンペア以内に収まるか必ず確認してから作業を進めましょう。取り出せる量には上限があるということですね。
参考:ヒューズから取れる電源容量の考え方がわかりやすく説明されています。
車のヒューズから取れる電源容量。限界は何アンペア? - DIYラボ
ヒューズ電源には「差し込む向き」があります。ここは多くの初心者がつまずく最重要ポイントです。普通のヒューズ交換は向きがなく抜いて差し替えるだけなので、同じ感覚でやってしまうと逆向きになることがあります。
ヒューズ電源を差し込むべき向きは「コードが付いている側を、電源側(バッテリー側・上流側)に向ける」です。電源側とは、検電テスターを当てたときに反応する(電気が来ている)方の端子です。この向きにすることで、後付けした電装品側に過電流が流れたときに、ヒューズ電源のヒューズが先に飛んで回路を守る設計になっています。
逆向きに差した場合はどうなるか。ヒューズ電源のヒューズよりも先に純正の大きいヒューズが切れてしまいます。例えば、後付け電装品側で5Aのヒューズ電源を使っていても、逆向きだと純正の10Aや15Aが先に切れます。運が悪ければ純正の重要回路が影響を受け、ECUヒューズと共有している回路では思わぬ誤作動を招くこともあります。保護機能が逆に働くという状態です。
正しい手順を以下にまとめます。
1. ヒューズボックスの目的のヒューズを抜く(エンジンOFF状態で)
2. ACCオンにして、2つの端子のうち検電テスターが反応する方を確認する(これが電源側)
3. エンジンをOFFに戻す
4. ヒューズ電源のコードが付いている側が「電源側」の端子に当たるよう向きを確認してから差し込む
5. ACCオンにして、ヒューズ電源のコードに電気が来ているかを検電テスターで確認する
6. 電装品のプラス線をヒューズ電源のコード先端(ギボシ端子メス)に接続する
7. 電装品のマイナス線はボディアース(金属部分のボルト)に接続する
向きを確認するだけで作業の安全性が大きく変わります。慣れないうちは作業前にマスキングテープなどで「電源側」の端子に印をつけておくとミスを防げます。向きさえ守れば問題ありません。
参考:ヒューズ電源の正しい取り付け方が写真付きで丁寧に解説されています。
ヒューズ電源の正しい付け方(取り出し)。向きに注意!! - DIYラボ
数多くの取り付け事例を見ていると、同じ失敗が繰り返されていることがわかります。ここでは実際によくある3つの失敗パターンと、それを防ぐための対策を紹介します。
失敗①:エンジンONのまま作業してショートさせる
ヒューズを抜いた状態でACCをオンにしたまま作業を続け、ヒューズ電源のコード先端が金属に接触してショートするケースです。ショート時には一瞬で大電流が流れ、最悪の場合は配線の焼損につながります。対策はシンプルで、「ヒューズを差し替える作業はエンジンをオフにした状態で行う」ことです。ACCオンにするのは、電源側を確認するときと、作業完了後の動作確認のときだけにしましょう。
失敗②:常時電源とACC電源を混同して取り出す
「ACCオンで反応するから」という理由だけでヒューズを決めてしまい、エンジンOFF後も電源がオフにならないケースです。常時電源はエンジンOFF時にもACCオン時にも反応するため、ACCオンの段階でテスターが反応するのは当然です。エンジンOFF後に反応が「消えること」を確認してはじめてACC電源と判断できます。常時電源に接続すると、駐車中もドラレコやLEDが動き続け、バッテリー上がりのリスクが高まります。ACCモードでの放置はバッテリーが4〜5時間で上がるリスクがあるとも言われており、常時電源接続ではさらに早まります。
失敗③:ヒューズの形状・アンペアを確認せずヒューズ電源を購入する
「低背」「ミニ平型」「平型」の3種類は形状が全く異なり、互換性はゼロです。現物を確認せずに購入すると差さりません。また、純正が15Aなのにヒューズがないからといってアンペア数を変えると、保護機能が正常に働かなくなります。純正ヒューズをラジオペンチで抜いて現物を確認してから購入するのが正しい手順です。これが条件です。
3つの失敗に共通しているのは「手順を省略してしまう」という点です。検電テスターで確認し、エンジンOFFで作業し、現物でヒューズを確認する。この3ステップを守るだけでほとんどのトラブルは防げます。
実際の作業で使用するヒューズ電源はエーモン製が入手しやすく、品種も豊富です。ホームセンターやカー用品店で購入できるほか、Amazonなどのオンラインショップでも入手できます。購入前に手持ちの純正ヒューズを持参または写真を撮っておくと選びやすくなります。
参考:エーモン公式のヒューズ電源を使ったDIY手順が画像付きでまとめられています。
エーモン公式:ヒューズボックスからの電源取り出し(ヒューズ電源)

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