

冷却水をサブタンクに補充する時、水道水を入れていると12万円の修理請求が届くことがあります。
ヒーターコアとは、ダッシュボードの奥深くに設置された、はがきサイズほどの小型熱交換器です。エンジンで温まった冷却水をここに循環させ、ブロアファンで風を当てることで車内に温風を送り届けます。ラジエーターと同じ仕組みですが、サイズがはるかに小さく、内部の水路も非常に細いのが特徴です。
この「水路の細さ」こそが、詰まりトラブルの根本原因です。
詰まりの原因は主に2種類に分かれます。1つ目は「カルキ(炭酸カルシウム)」です。冷却水のサブタンクに補充するとき、水道水をそのまま入れてしまうケースがあります。水道水に含まれるカルシウム成分が加熱・冷却を繰り返す中で結晶化し、細い水路に積み重なっていきます。電気ポットに白い固まりが付くのと全く同じ現象が、ヒーターコア内部で起きているわけです。
2つ目は「錆・スラッジ」です。冷却水(クーラント)には防錆剤が含まれており、これが冷却回路内の金属部品をサビから守っています。しかし防錆効果には寿命があり、ロングライフクーラント(LLC)でも2年程度が限界とされています。それ以上交換せずに使い続けると防錆効果が失われ、エンジン内部の鉄製部品から錆がどんどん発生します。この錆が小さな粒となり、血管のように張り巡らされた冷却回路を流れ、最も細い水路を持つヒーターコアに溜まっていくのです。
つまり、2つの原因です。
| 詰まりの種類 | 主な原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| カルキ詰まり | サブタンクへの水道水補充 | 白い結晶状。クエン酸で溶解可能 |
| 錆・スラッジ詰まり | クーラントの長期未交換 | 赤茶色の泥状。物理的に流し出す必要あり |
注目すべきは、「最新の車には交換不要なスーパーLLCが入っているから安心」という考え方が、実は落とし穴になるケースがある点です。スーパーLLCの防錆効果は確かに長持ちしますが、サブタンクへの水道水補充によるカルキ詰まりは車齢に関係なく起こります。某自動車修理店のブログには、「全然古くない車でもヒーターコアが詰まった」という実例が記録されています。
カルキ詰まりは早期なら対処できます。
クーラント交換とヒーターコア詰まりの関係について(現役自動車整備士による解説)
ヒーターコアが詰まっているかどうかは、実は簡単なチェックで大まかに判断できます。正確な診断はプロに任せるとして、まずは以下の手順を試してみましょう。
最初に確認したいのは「エンジン暖機後10分の温風の出方」です。エンジン始動から10分以上走行した状態で、ヒーターを最強設定にしたとき、吹き出し口から出る風がぬるい・または片側だけ温度が低い場合は要注意です。ある整備事例では、エンジン水温が70℃のとき、助手席側の吹き出し口は41℃を超えているのに運転席側は23℃しかなかったというケースが報告されています。この18℃という温度差が、詰まりの典型的なサインです。
次に「アイドリング中に暖房が弱くなるか」も確認ポイントです。停車中はぬるく、走り出すと暖かくなるという場合、クーラントがヒーターコアへ届きにくくなっているサインである可能性があります。
3つ目の確認は「冷却水の色」です。ラジエーターのリザーブタンクを覗いてみてください。正常なクーラントは緑・青・赤いった鮮やかな色をしています。それが茶色・赤茶色に変色していたり、底に沈殿物が見えたりする場合は、冷却回路全体が錆びて汚染されていると考えましょう。
チェックリストにまとめると。
上の3つに当てはまる場合は「詰まり」が濃厚です。残りの2つ(甘い匂い・足元の湿り)が出ている場合は「ヒーターコア本体の亀裂・漏れ」の可能性があり、洗浄ではなく交換が必要になります。これは別の問題です。
なお、ヒーターが効かないからといって必ずしもヒーターコアが原因とは限りません。サーモスタットの不良、ブロアモーターの故障、クーラント不足なども同様の症状を引き起こします。まずサーモスタットと冷却水量を確認してから、ヒーターコアの疑いに進むのが正しい順番です。
症状の確認が基本です。
車のヒーターが効かない原因と対策(Drive! NIPPON)
詰まりが「カルキ・錆のスラッジ」によるものと判断できたなら、交換の前にDIY洗浄を試す価値があります。用意するものは、ホームセンターで合計2,000円程度で揃えられます。これは使えそうです。
用意するもの:
洗浄の基本的な流れ:
まずエンジンが完全に冷えた状態でヒーターホースを2本外します。通常エンジンルームからアクセスでき、ラチェットとプライヤーがあれば作業可能です。ただし車種によって接続位置が異なるため、事前に車種名+「ヒーターホース位置」で検索して確認しておくと安心です。
ホースを外したら、ヒーターコアのIN側(入口)にバスポンプを繋いだホースを、OUT側(出口)にバケツへ戻るホースを接続します。バケツには40〜50℃のぬるま湯にクエン酸を溶かした洗浄液を用意します。目安は14Lの水に対してクエン酸360g程度です。
バスポンプを動かして循環を開始すると、最初のうちは茶色や赤黒い汚れた液体が出てきます。これが詰まりの原因です。循環を2〜3時間続けた後、洗浄液を入れ替えてもう一度繰り返します。液が比較的きれいになってきたら、今度は真水(可能であれば精製水)を同じように循環させ、クエン酸成分を十分すすぎ洗いします。
途中でバスポンプの吸い口に細かいメッシュのフィルターを付けておくと、剥がれた錆カスがポンプに詰まるのを防げます。これは重要です。
仕上げにホースを反対向きに繋ぎ直し、逆方向からも洗浄液を流す「逆洗浄」を行うと効果が高まります。ヒーターコアの内部は複雑な折り返し構造になっているため、片方向だけでは取れにくい汚れも、反対から流すことで押し出せる場合があります。
洗浄が終わったら元通りに組み付け、新しいクーラントを規定量注入してエア抜きを行います。クーラントは純正指定品か、車種に合ったスーパーLLCを使いましょう。水道水での希釈は再詰まりの原因になるため、必ず精製水で希釈するのが原則です。
実際の洗浄事例(大和自動車)では、2日間・3時間おきに8回の洗浄を繰り返して、泥水のような汚れがようやく透明になったと記録されています。 1回やって効果がなくても、根気よく繰り返すことが重要です。
ヒーターコアのトラブルに直面したとき、選択肢は大きく3つあります。それぞれの費用感と適したケースを整理しておきましょう。
① DIY洗浄:約1,500〜3,000円
バスポンプとクエン酸を購入する費用だけで済みます。工具が手元にあれば、材料費は2,000円以内に収まることがほとんどです。成功すれば修理費用の数十分の一で問題解決できますが、確実に直るとは限りません。詰まりがひどい場合や、アルミ製コアにクエン酸が強すぎる濃度で作用した場合には、かえって腐食させるリスクもあります。クエン酸は薄め(水14Lに360g程度)に使うのが基本です。
② 業者によるヒーターコア洗浄:約1〜3万円
整備工場でラジエーターフラッシュ剤や専用のフラッシングマシンを使って洗浄する方法です。確実性はDIYより高く、合わせてクーラントも交換してもらえます。ただし洗浄で完全に直らない場合は、そのまま交換費用が上乗せされることを念頭に置いておきましょう。
③ ヒーターコア交換:平均77,510円(カープレミア調べ)
ヒーターコアはダッシュボードの奥深くに収まっているため、取り出すだけでもダッシュボードを大幅に分解する必要があります。これが高額の工賃につながっています。部品代自体はそれほど高くなくても、工賃が全体の6〜7割を占めることも珍しくありません。費用の幅は39,260円〜235,630円と非常に広く、車種によって大きく変わります。輸入車(BMWやアウディなど)の場合は構造が複雑なため、特に高額になりがちです。
| 選択肢 | 費用目安 | 成功率 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| DIY洗浄 | 約2,000円 | 詰まりの程度による | カルキ詰まりが主原因の場合 |
| 業者洗浄 | 1〜3万円 | 比較的高い | 錆スラッジが広範囲にある場合 |
| 交換 | 3.9〜23万円 | ほぼ確実 | コア自体が腐食・破損している場合 |
業者に洗浄を依頼する前に、「洗浄で改善しない場合の見積もりも先にほしい」と伝えておくと、後から交換になった場合でも費用の予測が立てられます。これだけ覚えておけばOKです。
なお、MBモータース坂田氏のブログでは「改善が見られずヒーターコア交換した事例の方が、改善した事例より多い」とも記されています。DIY洗浄はあくまで「試してみる価値がある応急処置」として捉え、ダメだったら早めに交換の判断をすることが、長引かせて別の故障を招かないためのポイントです。
詰まりが起きてから対処するよりも、そもそも詰まらせないことが最善です。ここでは、一般的なメンテナンス情報には載っていない「詰まり予防」の視点から整理します。
まず最も重要なのは、「サブタンクには精製水か純水を使う」という習慣です。多くの人が「少し減ったから水道水で補充」という行動を無意識にとっています。これが前述のカルキ詰まりの直接原因です。スーパーLLC(交換不要と言われる冷却水)を使っていても、補充に水道水を使えばカルキはじわじわと蓄積されていきます。精製水はドラッグストアで2L約100円と安く手に入ります。少しの違いが、数万円の出費の差になります。
次に気をつけたいのは「クーラントの定期的な点検と交換」です。スーパーLLCは交換不要と言われますが、これは「防錆剤が効いている間は錆が出にくい」という意味であって、永遠に劣化しないわけではありません。走行距離が10万kmを超えてきたり、車齢が5年以上になったら、冷却水の色や濁りを一度点検してみることを勧めます。茶色く変色していたら、フラッシングしてクーラントを入れ替えるタイミングです。
もう一つ、あまり知られていない予防策があります。それは「冬以外でも定期的にヒーターをONにする」というものです。長期間ヒーターを使わないでいると、ヒーターコア内のクーラントが停滞し、沈殿物が固着しやすくなります。夏場でも月に1〜2回、数分間ヒーターを最強設定にして運転することで、コア内のクーラントを攪拌できます。厳しいところですね。
また、ラジエーターのストップリーク剤(漏れ止め添加剤)には注意が必要です。漏れを一時的に塞ぐ効果がある反面、細い水路をさらに詰まらせるリスクがあります。専門家の間では「応急処置にはなるが、ヒーターコアの詰まりを加速させる可能性がある」として推奨されていません。ストップリーク剤は使い方次第でリスクになる添加剤です。
予防の3点セットとしてまとめると、「補充は精製水のみ」「5年または10万km目安でクーラント点検」「年に数回ヒーターを動かす」この3つを習慣にするだけで、ヒーターコアの詰まりリスクをかなり下げられます。
クーラント管理が詰まり予防の基本です。

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