

警告灯が消えても、ダイアグコードの履歴は車のコンピューターに数十〜数百回分の走行データとともに残り続け、2024年10月以降のOBD車検で突然「不合格」になる可能性があります。
ダイアグコードとは、自動車に搭載されているECU(電子制御ユニット)が記録する「故障診断コード」のことで、DTC(Diagnostic Trouble Code)とも呼ばれています。英語1文字と4桁の数字で構成されており、例えば「P0300」のように表示されます。この組み合わせだけで、最大1万通りの故障情報を記録できる仕組みです。
コードの先頭にあるアルファベットは、車のどのシステムに異常があるかを示しています。
| アルファベット | 対象システム | 代表的な例 |
|---|---|---|
| P(パワートレイン) | エンジン・ミッション | P0300:複数気筒の失火 |
| B(ボディ) | エアバッグ・シートベルト | B1100:エアバッグECU故障 |
| C(シャシー) | ABS・ブレーキ | C0200:ABS系統の異常 |
| U(通信) | ECU間ネットワーク | U0100:ECU通信エラー |
次に、アルファベットの後ろに続く最初の数字(0〜3)がコードの種別を決めます。「0」は国際標準規格(SAE/ISO共通)のコードで、どのメーカーの車でも同じ意味を持ちます。一方「1」や「2」はメーカー独自のコードで、同じ数字でもトヨタとホンダでは意味が異なる場合があります。
つまり「P0120」は世界共通の意味を持つということです。
このような構造を知っておくと、スキャンツールで読み取ったコードを一覧表で調べる際に、「P0〜」なら汎用の検索サイトで調べられるのに対し、「P1〜」のコードはメーカー別の整備マニュアルやディーラーに確認する必要があることがわかります。コードの読み方さえ掴めば、整備士と話すときの理解度が大幅に上がります。
参考:OBD2の故障コード体系についてウィキペディアで詳しく解説されています。
国産車でよく見られる主要なダイアグコード(Pコード)を以下にまとめます。「P0」で始まる汎用コードは全メーカー共通ですが、実際の修理では車種固有のメーカーコードも確認が必要です。
汎用コード(P0:全メーカー共通)
| コード | 内容 | 主な原因 |
|---|---|---|
| P0100 | エアフローセンサー系統異常 | MAFセンサー不良・配線断線 |
| P0110 | 吸気温センサー系統異常 | センサー劣化・コネクター接触不良 |
| P0120 | スロットルポジションセンサー異常 | センサー故障・スロットルボディ汚れ |
| P0171 | 燃料システム:リーン(薄い) | インジェクター詰まり・エアリーク |
| P0300 | ランダム失火(複数気筒) | プラグ劣化・コイル故障・燃料系異常 |
| P0301〜P0308 | 特定気筒の失火 | 各気筒のプラグ・コイル故障 |
| P0400 | EGR流量異常 | EGRバルブ詰まり |
| P0420 | 触媒コンバーター効率低下 | O2センサー劣化・触媒本体の劣化 |
| P0500 | 車速センサー系統異常 | センサー故障・配線不良 |
| P0601 | ECUメモリエラー | ECU内部故障 |
トヨタ独自コード(P1)の代表例
トヨタ車でよく記録されるメーカー固有コードとして、P1349(VVT制御異常)があります。これはエンジンオイル内の異物の噛み込みでも発生するため、オイル交換を定期的に行っていない車に出やすい傾向があります。P1346(VVTセンサー異常)とあわせて、トヨタのVVT-i搭載車で頻繁に見られるコードです。
日産・ホンダの代表的なコード
日産では、古い世代の車(OBD1時代)に「22」(水温センサー異常)や「12」(エアフローセンサー異常)などの2桁コードが使われていました。現代のOBD2対応車では「P0115」(冷却水温センサー)のように統一フォーマットに移行しています。ホンダでも同様に、現行車はP0XXX形式の汎用コードが中心です。
スズキ・ダイハツ軽自動車の傾向
スズキの軽自動車では「P0340」(カムポジションセンサー系統)や「P0130」(O2センサー異常)が比較的多く見られます。ダイハツも同様の汎用コードを採用しており、軽自動車ユーザーでもOBD2スキャナーで十分に読み取り可能です。
メーカー別の詳細なコード一覧は整備マニュアルが最も正確です。
参考:国産8メーカー対応の故障診断コード一覧について、以下のページで確認できます。
エンジン警告灯の手動ダイアグ方法(メーカー別) - 大分県自動車整備振興会
ダイアグコードを自分で読み取るには、OBD2スキャナー(診断機)が必要です。ディーラーや整備工場に依頼すると診断料だけで3,000〜6,000円かかることもあります。これが条件です。
スキャナーは大きく3つのタイプに分かれています。
- 🔧 入門機(3,000〜8,000円):Pコードの読み取りと消去に特化したシンプルな機器。スマートフォンのBluetoothと連携するタイプも多く、専用アプリで日本語表示が可能。初心者にも扱いやすいです。
- 🔧 中級機(1万〜5万円):エンジン以外にABS・エアバッグ・AT・VSCなど複数システムの診断が可能。ライブデータ(センサーのリアルタイム数値)も確認でき、整備の精度が上がります。
- 🔧 プロ用高機能機(10万〜100万円超):アクティブテスト(アクチュエーターの動作確認)やコーディング変更まで対応。ディーラーや整備工場が使うプロ向け機器です。
一般のカーオーナーなら、入門機〜中級機で十分対応できます。
注意点が1つあります。スキャナーをOBD2ポートに常時接続したままにすると、エンジンを切っていてもスキャナーが電力を消費し続けるため、乗る頻度が少ない車ではバッテリー上がりの原因になります。使用後は取り外す習慣をつけることが大切です。
OBD2ポートは運転席の足元付近(ハンドル下)に設置されているのが一般的で、台形の16ピンコネクターが目印です。接続してエンジンをかけると、数秒でスキャナーに車両情報が表示されます。
参考:OBD2診断機の選び方とおすすめ機種については、以下の記事が参考になります。
2024年10月から、国産乗用車(2021年9月以降に発売されたモデル)を対象にOBD検査が本格的に車検の必須項目となりました。これは重要な変化です。
OBD検査では、検査員がスキャンツールで車のECUに記録された「特定DTC」を読み取ります。特定DTCとは排出ガスや安全装置に関わる重要な故障コードのことで、これが1件でも検出されると車検は不合格となります。
ここで多くのドライバーが誤解しているのが、「ダイアグコードを消去すれば車検に通る」という考え方です。消去はダメです。
なぜなら、ダイアグコードを消去すると同時に「レディネスコード」もリセットされるからです。レディネスコードとは、O2センサーや触媒コンバーターなどの排ガス関連システムが「正常に自己テストを完了した」かどうかを示す記録です。これが「未完了」状態になっていると、OBD検査では「検査保留」または不合格の扱いになります。
さらに深刻なのは、コード消去の「痕跡」がECUに残ることです。
診断履歴の削除記録が残っている場合、不正操作とみなされる恐れがあります(整備工場・検査機関側の確認事項として周知されています)。つまり、コードを消しても通れないどころか、「隠そうとした形跡」まで記録に残るという構造です。
レディネスコードを「完了」状態に戻すには、コード消去後に規定のドライビングサイクル(一定の走行条件を満たした試運転)を実施する必要があり、車種によっては30分以上の走行が必要なケースもあります。車検前に安易なリセットをしてしまうと、かえって余計な時間とコストがかかります。
参考:OBD車検の仕組みや不合格条件について、国土交通省の関連情報を整理した記事です。
2024年10月から始まるOBD検査とは - JAFMate
警告灯が消えたからといって、故障の記録が消えているわけではありません。これが盲点です。
OBD2対応のECUは、異常を検知してDTCを記録したあと、その後の走行で異常が再発しない状態が数十〜数百トリップ(エンジン始動〜停止の回数)続いた場合に、ようやく自動で消去する仕組みになっています。警告灯の消灯はあくまで「直近の異常が再発しなかった」というサインに過ぎず、コード自体は履歴として残り続けます。
この仕組みを知らないと、次のような損失につながります。
- 💸 中古車購入時のリスク:試乗した段階では警告灯が消えていても、診断機を当てると過去の故障履歴(ペンディングコード)が残っていることがあります。特定の故障を繰り返している車を適正価格より高く買ってしまうリスクがあります。
- 💸 修理の先送りによる費用増大:P0420(触媒効率低下)などのコードは、初期段階では警告灯が消えることもありますが、放置すると触媒本体の交換が必要になり、修理費用が数万〜10万円以上に膨らむケースがあります。
- 💸 OBD車検での予期せぬ不合格:上述の通り、履歴コードが特定DTCに該当する場合は車検不合格になります。車検直前に初めて気づくと、修理費用に加えて再検査の時間と費用も発生します。
対策はシンプルです。年に1〜2回、OBDスキャナーで履歴コードを確認する習慣をつけておくだけで、これらのリスクをほぼ防げます。入門機クラスのスキャナーなら3,000〜5,000円程度で購入でき、ディーラーへの診断依頼(1回3,000〜6,000円)を数回節約するだけで元が取れます。
また、中古車を購入する際は販売店にOBD診断結果の提示を求めることも有効な手段です。これは使えそうです。
参考:警告灯が消えた後も故障コードが残る仕組みについて、整備士目線で詳しく解説されています。
車の警告灯が消えたけど放置していい?整備士目線で徹底解説 - familiar-ex.com
ダイアグコードの確認は、整備士だけの特権ではありません。入門機スキャナーさえあれば、誰でも数分で自車の故障履歴を確認できます。
自分でコードを読む最大のメリットは、ディーラーや整備工場へ持ち込む前に「何が起きているか」をある程度把握できることです。例えば「P0171:燃料系リーン」というコードが出ていれば、エアフィルターの詰まりやインジェクターの問題が疑われます。事前知識があれば、整備士から「全システム点検が必要です」と言われたときに、本当に必要な箇所とそうでない箇所を自分で判断する目安になります。
これが条件です。コードの意味を調べてから整備工場へ行くことです。
スキャナーで読み取ったコードの意味を調べるには、以下の方法が実用的です。
- 🔎 「コード番号+車名」でGoogle検索する(例:「P0420 プリウス」)
- 🔎 みんカラなどの自動車コミュニティで実例を調べる
- 🔎 OBDLink・Torque Proなどのスマホアプリの内蔵コードデータベースを活用する
なお、コードを確認しても修理判断に迷う場合は、無理に自己解決しようとせず、専門の整備工場に相談するのが安全です。コードの読み取りと消去は自分でできても、センサー交換やECUの再学習はプロに任せる場面が多くあります。
大事なのは「コードを知ること」と「修理を自分でやること」は別だという点です。
ダイアグコード一覧の知識は、車の状態をコントロールするための「読解力」です。普段の点検に加えて、年1〜2回のOBD自己診断を習慣化することで、突発的な故障や車検トラブルを未然に防ぐことができます。OBD車検が義務化された今、この知識は全ての車オーナーにとって必要不可欠になりました。
参考:OBD検査の詳細な準備事項と対象車種については、国土交通省の情報をもとにまとめられた以下のページが参考になります。
OBD車検とは?2024年10月から始まる新検査について - Goo-net