

スキャンツール補助金を受けていない整備工場では、あなたの車検費用が5,500円以上割高になる可能性があります。
スキャンツール補助金は、国土交通省が推進する「先進安全自動車(ASV)整備環境確保事業」の一環として実施されている制度です。自動車の電子制御技術が急速に進化するなか、整備工場が現代の車に対応できる診断機器を導入するための費用を国が一部負担してくれる、非常に実用的な支援策です。
2025年度は2つのフェーズで実施されました。令和6年度補正予算による補助(申請期間:2025年3月31日〜2026年1月30日)と、令和7年度予算による補助(申請期間:2025年11月25日〜2026年1月30日)です。両方とも申請が先着順で進められ、予算がなくなり次第終了となっています。
補助の内容はシンプルです。対象は自動車整備事業者で、補助率は購入費用の3分の1、1事業場あたりの上限額はスキャンツール本体で15万円、研修費用で1万円、合計で最大16万円の補助が受けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 購入費・研修費の1/3 |
| 補助上限(スキャンツール) | 15万円/1事業場 |
| 補助上限(研修費) | 1万円/1事業場 |
| 対象事業者 | 自動車整備事業者(認証予定者を含む) |
| 申請方式 | 先着順(予算がなくなり次第終了) |
| 事務執行機関 | TOPPAN株式会社 |
先着順が条件です。「そのうち申請しよう」という姿勢では、気づいたときには予算が尽きている可能性があります。実際、令和6年度補正予算の補助金は11月6日に予算上限100%に達し受付を終了しています。つまり1年も経たずに締め切られました。
整備工場の方は早め早めに動くのが基本です。
参考:補助事務執行団体(TOPPAN株式会社)による公式申請サイト
被害者保護増進補助金 先進安全自動車の整備環境の確保に対する支援(令和7年度)
参考:国土交通省による令和7年度スキャンツール補助事業のプレスリリース
国土交通省|令和7年度スキャンツール補助事業を開始します!
申請の流れは、整備工場の負担を最小限に設計されています。他の補助金制度に比べて手続きが簡略化されており、相見積もりが不要で診断レポートなどの実績報告も不要という点は大きなメリットです。
申請の大まかな流れは以下のとおりです。
申請に必要な書類は用途ごとにいくつか存在しますが、主なものをまとめると次のとおりです。
- 基本書類: 整備事業所の認証書、整備士手帳などの資格証明書、法人の場合は履歴事項全部証明書、個人の場合は運転免許証など
- 購入証明: スキャンツールの請求書・領収書の写し、補助対象機器の写真
- 研修受講の場合: 研修受講証明書、請求書・領収書の写し
- 振込先確認書類: 通帳のコピー(口座情報がわかるページ)
これは実際にやることは1つです。書類を揃えて公式サイトから申請するだけ、と覚えておけばOKです。
注意点として、補助金で購入したスキャンツールには「一定期間の保有義務」があります。安易に処分したり転売したりすると問題になりますので、この点は必ず押さえておきましょう。また、令和6年度補正予算分と令和7年度予算分では、購入時期の条件が異なります。令和7年4月1日〜令和8年2月13日の間に購入した機器は令和6年度補正予算補助金で申請でき、令和7年4月1日以降に購入した機器は令和7年度予算補助金でも申請できます。どちらに申請するかを事前に確認することが重要です。
参考:申請手順と書類について詳しく解説
ブロードリーフNEXT|スキャンツール補助金のススメ
スキャンツール補助金が毎年継続して実施される背景には、OBD検査の義務化があります。これは一般のドライバーにも直接かかわる大きな制度変更です。
OBD(オンボードダイアグノスティクス)とは、車に搭載された電子制御装置(ECU)の状態を監視・記録する車載診断システムのことです。エアバッグ、衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシストといった先進安全装置が正常に機能しているかどうかを、外部のスキャンツールを接続することで確認できます。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2021年10月〜 | 12ヵ月点検にOBD点検が追加、車検場でプレテスト開始 |
| 2024年10月〜 | 国産車を対象にOBD検査が車検に義務化 |
| 2025年10月〜 | 輸入車にもOBD検査が拡大 |
| 2026年度〜 | スキャンツール補助上限が30万円に倍増(方針) |
OBD検査の仕組みはこうです。検査用スキャンツールを車のOBDポートに接続し、ECUに記録された「故障コード(DTC)」を読み出します。そのデータを自動車技術総合機構のサーバーに照会し、特定の重大な故障コードが検出されれば車検不合格となります。
つまり、整備工場がスキャンツールを持っていない場合、そもそもOBD検査ができません。OBD検査に対応できていない工場では、そこで車検を通せない状況が生まれます。整備工場がスキャンツールを導入することは、工場の都合だけでなく、車に乗るすべての人に直結する問題です。
OBD検査の対象車かどうかは、車検証の備考欄に「OBD検査対象車」と記載されているかどうかで確認できます。2021年10月以降に登場した新型国産車であれば、多くの場合は対象となっています。自分の車が対象かどうか確認しておくとよいでしょう。
参考:オートバックスによるOBD検査の基礎解説
補助金と言うと「整備工場の話」と思いがちですが、実はドライバーの財布にも直接影響します。これが多くの方が見落としているポイントです。
OBD検査が義務化されたことで、車検費用に変化が生じています。まず全ての車に「技術情報管理手数料」として1台あたり一律400円が法定手数料として追加されました。これはOBD検査システムを維持するための費用で、OBD検査の対象外となる旧車も支払い義務があります。
OBD検査対象車の場合は、これに加えて整備工場側がOBD検査の実施手数料を別途請求できます。費用感は工場によって異なりますが、3,300円〜5,500円(税込)を設定しているところが多く見られます。
整備工場がスキャンツールを導入しているかどうかが、車検費用の差を生むということです。
さらに注目すべきデータがあります。業界団体の全整協が実施した会員アンケートによれば、OBD検査に対応した料金を徴収しているのは約8割にとどまり、約2割の工場は「顧客離れを懸念して料金転嫁をしていない」という実態が明らかになっています(2025年9月時点)。料金を転嫁していない工場では、設備投資の負担を自工場が丸ごと吸収していることになります。
痛いですね。そういった工場こそ、補助金の活用が急務です。
スキャンツール補助金によって工場側のコスト負担が軽減されれば、OBD検査料金が抑えられるか、あるいはスムーズに導入・対応が進むことで地域の整備環境全体が底上げされます。補助金の活用は回り回って、車に乗る私たち一般ドライバーの利益につながる構造になっています。
また、スキャンツールを使った故障診断が精度よく行われることで、気づかないままだった衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストの誤作動も発見できるようになります。これは費用面だけでなく、走行安全性の確保という面でも大きなメリットです。車に乗る立場から見れば、信頼できる整備工場がスキャンツールを持っているかどうかを確認する習慣をつける価値は十分あります。
実際に補助金を活用するとどれくらいのコスト削減になるのかを、具体的な数字で確認しておきましょう。
スキャンツールの価格帯は製品によって異なりますが、OBD検査にも対応した汎用的なものだと、おおよそ20万円〜50万円前後が相場です。補助率は3分の1、上限15万円なので、具体的な節約効果は次のようになります。
| 購入額 | 補助金(1/3) | 実質負担額 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約6万7千円 | 約13万3千円 |
| 30万円 | 約10万円 | 約20万円 |
| 45万円以上 | 15万円(上限) | 30万円〜 |
たとえば30万円のスキャンツールを購入した場合、補助金によって実質的な負担は20万円になります。喫茶店のコーヒーに換算すると(1杯500円として)2万杯分の節約です。小さな整備工場にとってはかなり大きな助けになります。
研修費用の補助も見逃せません。スキャンツールを正しく使いこなすためには研修が欠かせませんが、その費用の3分の1(上限1万円)も補助されます。つまり設備投資だけでなく、人材育成にも補助が及んでいます。これは使えそうです。
さらに、2026年度以降の見通しも重要です。国土交通省は2026年度において1事業者あたりの補助上限額を現行の15万円から30万円へ倍増させる方針を2025年9月に発表しています。25年度当初予算(3億6,500万円)と比較しても約2.4倍の予算規模になる見込みで、国としてスキャンツールの普及を本格的に後押しする姿勢が明確です。
2025年度のうちに申請しそびれた整備工場の方は、2026年度の動向に注目しておく価値があります。補助額が倍増するタイミングを逃さないためにも、国土交通省や補助事務執行機関のウェブサイトでの情報収集を習慣にしておきましょう。
参考:国交省による2026年度スキャンツール補助金倍増方針の報道
日本自動車車体工業会|国交省、2026年度のスキャンツール補助金を倍増 最大額30万円
一方で、2025年6月時点では補助金の利用率がわずか14.2%にとどまっているというデータもあります。補助金があることを知らない、申請手続きが面倒そうで後回しにしているなど、せっかくの制度が活用されていないケースが多いようです。補助金の締め切りには期限があります。知っていれば得できる制度だからこそ、早めの行動が肝心です。

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