

「チタン合金ボルトは鉄より剛性が低いため、足回りに使うと理論上デチューンになります。」
バイクのカスタムパーツのなかで、チタンボルトは根強い人気を誇っています。その理由はシンプルで、軽くて錆びず、見た目も美しいからです。しかし、チタンボルトを選ぶ際にまず把握しておかなければならないのが、「チタン」という素材には大きく分けて純チタンとチタン合金の2種類があるという事実です。
純チタンと聞くと、いかにも高品質なイメージがあります。しかし実態は違います。
バイク用途で使えるだけの強度を持つのは「チタン合金」、なかでも「Ti-6Al-4V(64チタン)」と呼ばれるタイプです。この名称はチタン(Ti)にアルミニウム(Al)を6%、バナジウム(V)を4%配合した合金であることを示しています。同じ素材を指す呼び名としては「JIS60種」「Gr5(グレード5)」「TAB6400」なども使われており、混乱しやすいので注意が必要です。
| 素材 | 引張強さ | 比重 | 備考 |
|------|----------|------|------|
| 純チタン | 約390 MPa | 4.5 | ホームセンター品に多い |
| 64チタン(Ti-6Al-4V) | 約895 MPa以上 | 4.4 | バイク用の定番 |
| ステンレス(SUS304) | 約590 MPa | 7.9 | 一般的なカスタムボルト |
| クロモリ(SCM435) | 約900 MPa | 7.8 | 純正高強度ボルト |
64チタンの強度はバイク部品では最高クラスとされるクロモリとほぼ同等です。しかも重さは鉄の約57%しかありません。鉄製ボルト100gと同体積のチタン合金ボルトはわずか57gという計算になります。これがバイクカスタムにおける軽量化の根拠です。
一方、ホームセンターで「チタンボルト」として売られている純チタン製品の引張強さは約390 MPaと、64チタンの半分以下です。純チタン=高品質という思い込みで選ぶと、重要部位での使用で折れるリスクがあります。
つまり64チタンが条件です。バイク用チタンボルトを購入する際は「Ti-6Al-4V」または「64チタン」という表記を必ず確認しましょう。
参考:チタンボルトの真実とは?知っておきたいホントのところ(モトロックマン)
チタンボルトの最大の魅力は軽さです。しかしどれほど軽くなるのか、具体的なイメージを持っている人は意外と少ないかもしれません。
まず金属の比重(同じ体積あたりの重さの比)を確認しましょう。
- 🔵 アルミ:2.7
- 🔶 チタン(Ti-6Al-4V):4.4〜4.5
- ⚪ ステンレス:7.9
- ⚫ 鉄(クロモリ):7.8〜7.9
鉄と比べてチタン合金は約57%の重量です。ステンレスとの比較でも大幅に軽くなります。
モトロックマンが公開しているデータによると、キャリパーマウントボルト M10×60 の場合、純正(鉄製)が42gに対し、同社のチタンボルトは23g。差し引き19gの削減になります。1本で葉書1枚分(約5g)よりも多い軽量化が実現できます。
「たった19gでしょ?」と感じるかもしれません。しかしバイク全体で同様にボルトを置き換えた場合、100本以上のボルト・ナット類の合計では数百gの削減になることもあります。バネ下重量はバネ上の数倍の影響があるとも言われるため、ホイール周りやフォーク周辺のボルト交換は走行感に寄与することがあります。
コスト面ではこのように理解するとわかりやすいです。チタンボルト1本あたりの価格は製品によって異なりますが、同サイズのステンレスボルトの数倍から十数倍になるのが一般的です。モトロックマンのキャリパーマウントボルト(M10×60)は1本あたり2,050円、1gの軽量化コストは約107円という計算になります。
軽量化は費用対効果が高いとは言えません。ただし、錆びない・割れない・美しいという複合的なメリットを含めて考えると、バイク愛好家にとっての総合的なコストパフォーマンスは独自の価値を持っています。
参考:ボルトの軽量化・チリも積もれば山となる(モトロックマンブログ)
チタンボルトはどこに使っても同じ効果があるわけではありません。バイクのボルトは場所によって求められる役割が異なるため、部位ごとに適した素材を選ぶのが正解です。
まず、交換に向いている部位と向いていない部位を整理します。
✅ チタンボルトが効果的な部位
| 部位 | 主なメリット | 注意点 |
|------|------------|--------|
| ブレーキキャリパーボルト | 軽量化・防錆・振動減衰 | スレッドコンパウンド使用を推奨 |
| フォーク関連ボルト | 振動減衰特性によるハンドリング改善 | かじり対策が必要 |
| フェンダーやカウル固定 | 軽量化・防錆・ドレスアップ | アルミボルトでも代用可 |
| ディスクローターボルト | 軽量化・熱伝導率の低さが有利 | 専用品を使用すること |
| エンジンカバーボルト | 錆防止・ドレスアップ | 高温部位には不適 |
❌ チタンボルトが不向きな部位
- マフラーフランジ付近:大型車では500℃近くになる高温部位。一般的なステンレスは耐熱400℃が限界であり、チタン合金も同様に高温環境に長期曝露されると強度が低下する場合があります。純正の鉄ボルトが最適です。
- アクスルシャフト・スイングアームピボット:剛性が求められる部位。チタンはヤング率(剛性)が鉄やクロモリの約半分しかないため、理論上のデチューンになる可能性があります。MotoGPのレギュレーションでもこれらの部位にチタン使用を禁止しているほどです。
フォークやブレーキ周りのチタンボルトに「ハンドリングが良くなった」というインプレッションが多いのは事実です。これはチタン合金の振動減衰特性によるもので、大げさに言えばボルト自体がわずかにサスペンション的な役割を担います。剛性が上がるわけではありませんが、路面からのノイズの伝わり方が変化するため、ライダーに「剛性感が上がった」という感覚をもたらすことがあります。
これは使えそうです。特に古い車両や長年乗り続けているバイクでは、ボルトの締め付け状態が適正値に戻るだけでも体感変化につながることがあります。
参考:バイクに適したボルトの素材を考えてみた(ライダーブログ)
チタンボルトを語る上で、かじり(焼き付き)問題は避けて通れません。実はチタンは素材の特性上、かじりが起きやすい金属のひとつです。
かじりとは、ボルトを締め込む際にネジ山同士が摩擦熱で溶着し、二度と回せなくなる現象です。チタンがかじりやすい理由は以下の特性にあります。
- 🔥 熱伝導率が極めて低い:Ti-6Al-4V の熱伝導率は約7.6 W/(m·K)。鉄(80)やステンレス(16)と比べて著しく低く、摩擦で発生した熱がネジ山付近に溜まりやすい
- 💧 摩擦係数がやや高い:特にアルミ合金のネジ穴にチタンボルトを締め込む組み合わせは相性が悪い
- 🔁 膨張幅が大きくなりやすい環境:熱がこもりやすいため、温度変化での膨張率が問題になるケースがある
かじりが発生してしまうと、ボルトを強引に回そうとするとネジ山をつぶし、最悪の場合バイクの車体側のネジ穴(めねじ)を破損させます。修理コストは数千円〜数万円に膨らむことがあります。
対策は明確です。
1. スレッドコンパウンド(焼き付き防止剤)を使用する
スレッドコンパウンドはネジ山の摩擦を低減し、かじりをほぼ完全に防止します。ただし注意点があります。グリスを塗ることで摩擦が下がるため、トルクレンチで規定トルクをかけてもオーバートルクになるリスクがあります。グリスの量や塗布箇所によっても摩擦係数が変わるので、熟練が必要な方法でもあります。
2. ゆっくり、丁寧に締め込む
摩擦熱の発生を抑えるため、低速でゆっくりと締め込むことが基本です。
3. DLC・PVDコーティング済みのボルトを使う
DLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理を施したボルトは表面硬度が極めて高く、摩擦係数を大幅に下げます。MotoGPのファクトリーチームでも使われている技術で、プロメカニックが時間的余裕なく作業する現場での定番です。価格はアップしますが、かじりリスクをほぼ排除できる安心感があります。
かじり対策が条件です。特にアルミ製のフレームやエンジンカバーにチタンボルトを使う場合は、必ずスレッドコンパウンドを準備してから作業を始めましょう。
参考:かじらない方法とドライ潤滑ボルトの解説(モトロックマンブログ)
チタンボルトを選ぶ理由のひとつに、錆びない・腐食しないという特性があります。これは多くの人が知っていることです。ただしその仕組みを深く理解している人は少なく、実はもっと重要な側面があります。
チタンが錆びない理由は、空気に触れた瞬間に酸化被膜(不動態被膜)を自動的に形成するからです。この被膜は他の金属のそれと比べてはるかに強固で安定しています。アルミやステンレスも酸化被膜を形成しますが、塩水・酸性雨・汗などによって破られることがあります。チタンの不動態被膜には弱点がほとんどなく、半永久的に錆を防ぎます。
そして見落としがちな、より重要な特性があります。チタンは接触する相手の金属も錆びさせないのです。
異なる金属が接触し、水にさらされると「異種金属接触腐食」が発生します。電位(イオン化傾向)の差によって、電位の低い側の金属が腐食する現象です。たとえばステンレスボルトを電位の低いアルミやマグネシウムのホイールに使うと、接触部のアルミが徐々に腐食していきます。
| 電位の高低(腐食しやすさ) |
|---------------------------|
| ステンレス → 鉄 → アルミ → マグネシウム(最も腐食しやすい)|
チタンはこの反応を引き起こしません。表面の不動態被膜が安定しているため、外部への化学的影響をほぼゼロに保ちます。つまりアルミホイールや高価な鍛造マグネシウムパーツにチタンボルトを使うことは、パーツそのものの保護にもつながります。
いいことですね。人体にチタンが人工骨や歯科インプラントとして使われているのも、同じ理由です。金属アレルギーを引き起こさず、生体に悪影響を与えないことから医療分野でも信頼されています。
バイクのアルミフレームやアルミホイールに純正の鉄ボルトを使い続けると、年数が経つにつれ接触部分が茶色く変色したり固着したりすることがあります。チタンボルトへの交換は、バイク本体のパーツを長期間にわたって保護するという観点でも、長く乗り続けたいオーナーにとって合理的な選択です。
参考:チタンの入門編・ファクトリーチームはなぜチタンボルトを使うのか(モトロックマンブログ)
チタンボルトの導入において、多くの記事で語られるのはメリットや素材の話ばかりです。ところが実際のトラブルのほとんどは、取り付けの際のトルク管理の誤りから発生しています。ここは検索上位の記事ではあまり掘り下げられていない、実践的なポイントです。
ボルトを締め付けるとき、整備の現場ではトルクレンチを使って規定値(Nm:ニュートンメートル)で管理するのが基本です。しかし、グリスを塗布した状態でそのままトルクレンチを使うと、規定値に達する前にボルトが実質的にオーバートルクになってしまいます。
なぜかというと、トルクレンチが計測しているのは「軸力(ボルトが締まる力)」だけではなく、「摩擦(抵抗)+軸力」の合計値だからです。グリスで摩擦が減ると、実際の軸力が必要量に達していても、計測値が低く出て「もっと締めなければ」と感じてしまいます。結果、ボルトを過剰に締め込んでネジ山を傷めることになります。
つまりこういうことですね。グリスを使うときは、規定トルクをそのまま適用してはいけない場面があります。
具体的な対応策として。
- スレッドコンパウンドを使う場合は、塗布量を最小限(ネジ山2〜3山程度)にとどめ、塗りすぎないようにする
- DLC/PVDコーティング済みボルトの場合は被膜の潤滑効果が安定しているため、メーカーが専用のトルク値を提示していることが多い。そちらを優先する
- 純正ボルトから交換する際は、ボルトの座面径の違いに注意する。座面が小さいと、接触面積が減り締結力が低下する。同じ締め付けトルクでも、座面が純正の半分になれば締結力も変化する
チタンボルトは軽い・強い・錆びないと三拍子揃っていますが、それを発揮するには取り付けの段階でのミスがないことが前提になります。特に足回りやブレーキ関連は走行安全に直結するため、「なんとなく締めた」では済まない箇所です。
初めてチタンボルトを交換する場合は、まずカウルやフェンダーなど走行安全に直結しない外装部分から始め、作業の感覚を掴んでから足回りに移行するのが現実的な順序です。作業に自信がない場合はショップへの依頼も選択肢のひとつです。
参考:チタンボルトのメリット・デメリット(alumania)

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