

ウールバフを使うと塗装が剥げて修理代が数万円かかることがあります。
ウールバフは「羊毛(ウール)」で作られたバフで、車のボディ磨きに使う工具のひとつです。ポリッシャーに取り付けて使い、塗装面に付着したキズやウォータースポット(水垢が焼き付いたシミ)、イオンデポジット(雨水に含まれるミネラル分が固着した汚れ)などを削り落とす「下地処理・傷消し工程」に特化したバフです。
ウールバフの最大の特徴は、研磨力の高さです。スポンジ素材のウレタンバフと比べると、切削能力がはるかに高く、深い傷や長年放置した水垢も短時間で落とすことができます。
つまり「キズ消し専用の荒削り工具」と覚えておけばOKです。
ただし、研磨力の高さは「削りすぎのリスク」とセットです。車のクリア層(塗装の一番外側の透明な保護膜)の厚みは、一般的に20〜30μm(マイクロメートル)程度しかありません。これは0.02〜0.03mmの厚みで、コピー用紙1枚分以下の薄さです。ウールバフで同じ場所を磨きすぎると、このクリア層が消えてしまい、カラー層が露出する「塗装剥げ」が起きます。そうなると、DIYでは対応できず板金塗装が必要となり、修理費用が数万円単位になるケースも珍しくありません。
磨きすぎに注意すれば大丈夫です。
また、ウールバフで磨いた後の塗装面には、必ず「バフ目」と呼ばれる細かい磨き傷が残ります。ウールバフはあくまで下地処理の工具であり、このバフ目を仕上げ用のスポンジバフ(ウレタンバフ)で消す「次の工程」が必ず必要です。ウールバフだけで仕上げようとすると、細かいスクラッチ傷だらけになってしまうため、工程の流れを正確に理解してから使いましょう。
バフ磨きの工程順序やバフの種類については、工具・整備品の専門メーカーであるアストロプロダクツの解説が参考になります。
ウールバフは毛足の長さによってさらに「ショートウール」と「ロングウール」に分かれており、選び方を知っておくと仕上がりが大きく変わります。
ショートウールバフは、毛足が5mm前後と短く、耐久性が高いのが特徴です。使い込んでも形が崩れにくく、ハードなキズ消し作業での酷使に耐えられます。研磨力も高く、シングルアクションポリッシャーと組み合わせることで、深いスクラッチ傷や酸化被膜も素早く除去できます。ただし、バフ目が深く入りやすいというデメリットもあります。
ロングウールバフは、毛足が10〜30mmと長く、研磨力が高い上にバフ目が入りにくいという優れた特性を持っています。柔軟性があるため、塗装面への接触が均一になりやすく、曲面にもなじみやすいです。ただし、ショートウールに比べて耐久性が低いため、強力な研磨作業を繰り返すと毛が傷みやすいというデメリットがあります。
スタミナのショート、パワーのロングと覚えましょう。
DIYで自分の車を磨く程度の用途であれば、ダブルアクションポリッシャーとの相性が良いロングウールバフがおすすめです。理由は、ダブルアクションポリッシャーは「回転運動+ランダムな偏心運動」を組み合わせた動きをするため、同じ場所に圧力が集中しにくく、削りすぎを防ぎやすいからです。ロングウールとダブルアクションの組み合わせは「研磨力があるのに扱いやすい」という両取りができる選択肢です。
一方、シングルアクションポリッシャーとショートウールバフの組み合わせは、最強クラスの研磨力を発揮しますが、初心者にはリスクが高すぎます。経験のある中級者以上が、塗装の状態を見極めながら使う組み合わせです。
また、マイクロファイバーバフというものも存在します。選び方の基本的な考え方はウールバフと同じく「毛足の長さ」で性質が変わります。
バフのサイズ選びについても注意が必要です。バフはポリッシャーのパッド径(ベルクロ径)に合わせて選ぶことが原則です。一般的なサイズは75mm(3インチ)、125mm(5インチ)、150mm(6インチ)の3種類で、ポリッシャーの取扱説明書でパッド径を確認してからバフを購入してください。バフ自体の外径ではなく「ベルクロの取り付け面の径」を合わせることがポイントです。サイズ選びはパッド径が条件です。
車磨きにおけるバフの役割と選び方|車磨き専門サイト WC Works
ウールバフは単体では機能しません。必ずコンパウンド(研磨剤)と組み合わせて使います。コンパウンドの粒度(目の粗さ)を誤ると、仕上がりが台無しになるか、場合によっては傷を増やしてしまいます。
ウールバフに合わせるコンパウンドは「細目」または「中目」が基本です。
| コンパウンドの種類 | 粒度の目安 | ウールバフとの相性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 粗目 | 約#500〜#1000相当 | △(熟練者向け) | 深いキズの下処理、耐水ペーパー跡の除去 |
| 中目 | 約#1000〜#2000相当 | ◎(最も相性が良い) | 洗車キズ、ウォータースポット除去 |
| 細目 | 約#2000〜#3000相当 | ○(初心者向け) | 軽度の洗車キズ、くすみ除去 |
| 超微粒子 | 約#3000以上 | ×(組み合わせ不適切) | ウレタンバフ専用の仕上げ研磨 |
具体的な作業手順はこちらの通りです。
これが基本の流れです。
ウールバフで磨き終わった後は、必ずスポンジバフ(ウレタンバフの細目〜極細目)に替えて「バフ目消し」の仕上げ工程を行ってください。ウールバフのバフ目消しにはスポンジバフ+超微粒子コンパウンドが適しています。この工程を省くと、磨き後の塗装面に細かいスクラッチが残り、光が当たるとザラついた見た目になります。
ポリッシャーとバフ、コンパウンドの組み合わせについての詳細なプロ視点の解説はこちらも参考になります。
ポリッシャーとバフとコンパウンドのマッチングが決める仕上がりの差|055オートディテイリング
研磨作業の経験が浅い方が特にやりがちな失敗を5つ取り上げます。これらを知っておくだけで、取り返しのつかないミスを防ぐことができます。
①最初からウールバフを使う
ウールバフは高い研磨力が特徴です。ところが初心者の多くは「早くキズを消したい」という気持ちから最初にウールバフを使ってしまいます。この判断が失敗の元です。特に新車や塗装が薄いリペイント車には、まずウレタンバフの細目から試し、それでもキズが消えない場合にウールバフを検討するのが正しい流れです。
②同じ場所を磨き続ける
「もう少しで消えそう」という気持ちから、同じパネルの同じ箇所を繰り返し磨いてしまうケースは非常に多いです。シングルアクションポリッシャーとウールバフの組み合わせでは、10〜20秒同じ場所に当て続けるだけで、クリア層が消えることもあります。これは痛いですね。同じ場所を磨くなら3〜4回を限度に、光で確認しながら進めることが重要です。
③コンパウンドを使わずにドライのまま磨く
コンパウンドなしのウールバフは、塗装を削るだけで傷が入ります。コンパウンドは「研磨剤」であり、バフと塗装の間に入ることで均一に削れるための「潤滑材」的な役割も果たしています。乾燥状態で磨くと、バフと塗装が直接干渉してしまい、深い傷になります。コンパウンドは必須です。
④エッジや角にバフを当てる
ボディのプレスライン(折り目の部分)や角は、塗装の厚みが他の部分の半分以下しかない場合があります。これらにバフを当てると、ほんの数秒で塗装が剥げます。事前にマスキングテープで保護することで、このリスクをほぼゼロにすることができます。
⑤使い終わったウールバフをそのまま放置する
使用後のウールバフにはコンパウンドが残り、乾燥して固まります。固まったコンパウンドが毛に付着した状態で次に使うと、硬い粒子が塗装に深い傷を入れます。また、乾燥固化したコンパウンドは通常の中性洗剤では落ちにくい特殊成分を含むため、洗車道具専用の粉末洗剤での漬け置き洗いが効果的です。使い終わったらすぐ洗うが原則です。
これらの失敗を知っておけば、ウールバフを安全かつ効果的に使うことができます。
ウールバフを使った後に、黒・紺・濃いグレーといった濃色車で特に問題になるのが「オーロラマーク」です。これはウールバフで均一方向に磨き続けたときに生じる、光を当てた角度によってギラギラ・ザワザワして見える細かいスクラッチ模様のことで、SNSや車関連フォーラムでも「磨いたら余計に汚くなった」という声の多くはこれが原因です。
オーロラマークは「屋外の明るい場所で真正面から見ると気づきにくく、街灯や蛍光灯の下で見ると鮮明に見える」という特性があります。意外ですね。多くの人が「磨けた」と勘違いして作業を終えてしまうため、ガレージや薄暗い場所でのチェックだけでは見落としやすいです。
オーロラマークが出てしまう主な原因は2つあります。1つは「バフを一定方向に動かしすぎること」、もう1つは「ウールバフ後の仕上げ工程(バフ目消し)を行わなかったこと」です。ウールバフは元来バフ目が深く入りやすい性質であり、それ自体は問題ではありません。問題は、その後のバフ目消し工程を省いてしまうことです。
対策としては以下の手順が有効です。
濃色車を磨く予定がある場合は、この工程を省かないことが、「磨いて後悔した…」を防ぐ最大の対策です。
バフとコンパウンドの種類と役割についての詳しい解説はモノタロウの情報が参考になります。
ウールバフは安いものでも1枚1,000〜3,000円程度、プロ向けの高品質品では5,000円を超えるものもあります。正しく手入れして長く使えば、道具代のコストを大幅に抑えることができます。逆に手入れを怠ると、わずか2〜3回の使用で本来の性能を発揮しなくなり、結果として余分な出費につながります。
使用後すぐに洗うことが最重要です。作業後に何時間もそのまま放置すると、コンパウンドが乾燥固化してウールの繊維に固着し、通常の洗い方では落ちなくなります。使い終わったらその日のうちに洗浄することを習慣にしてください。
ウールバフの洗い方の手順はこちらです。
バフを折り曲げて洗うことだけは禁止です。裏面のパッド(ベルクロ面)が変形・剥がれ、ポリッシャーに取り付けられなくなります。また、乾燥は必ず陰干しで行い、直射日光に当てると素材が劣化して毛が硬くなります。
コンパウンドのような油性・樹脂系の成分は一般の洗濯洗剤では落ちにくいです。市販の中性洗剤で落ちない場合は、洗車道具専用の粉末洗剤を使った漬け置き洗い(水15Lに対して適量を混ぜ、一晩浸ける方法)が効果的です。
保管の際は、型崩れしないよう平らな状態で保管するか、専用のバフホルダーを使います。また、複数のバフを重ねて保管するとパッド面が変形することがあるため、1枚ずつ独立した状態で保管するのが理想的です。湿気の多い場所での保管はカビの原因になるため、乾燥した室内での保管が原則です。
プロが実践するバフのメンテナンス方法については、こちらも参考になります。
失敗を防ぐバフの手入れと塗り肌が整った塗膜の磨き作業(PDF)|G&T

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