

ビードクリームを塗らずに作業すると、タイヤ1本ごとにホイールリムが傷ついて修理費が2万円超えになることがあります。
タイヤチェンジャーとは、タイヤのビード(タイヤがホイールリムにはまっている縁の部分)を落とし、タイヤを脱着するための専用工具です。バイクの場合、車のそれとは構造やサイズが異なり、専用品または兼用品をしっかり選ぶ必要があります。
市販されているバイク用タイヤチェンジャーは、大きく分けて「手動式(マニュアル式)」と「電動式(ショップ業務用)」の2種類があります。DIYで使うなら手動式が現実的な選択肢です。価格帯はおおむね5,000円〜25,000円前後で、機能や対応サイズによって幅があります。
手動式の代表的なタイプを整理すると、以下のとおりです。
| タイプ | 特徴 | 価格帯 | 対応サイズ例 |
|---|---|---|---|
| ビードブレーカー一体型 | ビード落とし+台座が一体。作業がスムーズ | 5,000〜15,000円 | 14〜21インチ |
| ヘッドマウント式チェンジャー | ホイールをシャフト固定し、ヘッドでビードをめくる | 8,000〜25,000円 | 16〜19インチ |
| ポータブル式(立作業対応) | 腰への負担が少なく、サーキット持ち込みも可能 | 13,000〜35,000円(セット) | 16〜21インチ |
車用のタイヤチェンジャーをバイクに流用できるか、気になる方も多いでしょう。結論としては、ビード落とし(ビードブレーカー)機能に限れば使える場合がありますが、バイク用ホイールはリム幅が狭く、アクスル径も12〜15mm前後と細いため、アームが届かなかったり固定できなかったりするケースが少なくありません。スポークホイールの場合はさらに注意が必要です。
つまり、バイク専用または対応サイズを確認した兼用品が原則です。
購入前に確認すべきポイントは、①対応インチ数(16〜19インチが一般的なロードバイクの主力サイズ)、②アクスル径(Φ15mm以上対応が汎用性が高い)、③スポークホイール対応かキャストホイール専用か、この3点です。
Webikeによる「Unitロードバイク用タイヤチェンジャー」実使用レビュー(スペック・対応サイズ・作業手順の参考に)
タイヤチェンジャー本体があれば作業できると思いがちですが、それだけでは不十分です。実際の作業を快適かつ安全に進めるためには、チェンジャー以外の周辺工具を揃えることが重要です。
必須で用意するものを整理します。
- タイヤレバー(3本推奨):1本だと途中でずれる。最低2本、理想は3本。DRC製など剛性が高いものが作業しやすい(参考価格:1,554円〜)
- リムプロテクター(3個推奨):タイヤレバーとホイールの間に挟む保護材。アルミホイールやペイントホイールを傷から守る役割を果たす
- ビードクリーム(専用品):タイヤのビード部分に塗る潤滑剤。滑りを良くするだけでなく、ビードシール性も確保する。石鹸水で代用する人もいるが、乾燥が早く作業途中で効力を失う点に注意
- エアバルブ外し(虫外し工具):タイヤの空気を完全に抜くために必要。作業開始前に取り外すことでスムーズに脱気できる
- エアコンプレッサーまたは高圧ポンプ:ビード上げに必須。家庭用自転車ポンプでは流量が不足するため、バイク用タイヤのビード上げには1馬力以上のエアコンプレッサーが推奨される
これが基本セットです。
エアコンプレッサーは特に見落とされがちな盲点です。手動ポンプで代用しようとすると、ビードが上がりきらないまま空気が抜け、何度やり直しても解決しないという状況に陥ります。「ビードが上がらない」原因の大半は空気の流量不足によるものであり、バルブコアを外した状態で素早く大量のエアを送り込む方法が有効です。
タイヤレバーだけは例外です。作業中に曲がったり折れたりするので、安価な汎用品より専用品を選んでおくほうが結果的にコストが安くなります。
MercuryProductsによるバイクタイヤ手組みコツ解説(必要工具・ビード落とし・組み付け手順の参考に)
ここからが実際の作業手順です。ビード落としはタイヤ交換の中で最も体力を使い、失敗しやすい工程のひとつです。正しい手順を押さえておくことで、作業時間と体力を大幅に節約できます。
【STEP1】エアを完全に抜く
まずはホイールを車体から取り外し、バルブキャップとバルブコア(虫)を専用工具で外して完全にエアを抜きます。空気が残ったままではビードが固く張った状態になっているため、次のビード落とし工程がかなりきつくなります。コアを外す際は、空気圧でコアが飛んでいかないよう、指を添えながらゆっくり緩めてください。
【STEP2】ビードを落とす
タイヤチェンジャーのビードブレーカー(クランプ部分)をホイールのリムからできるだけ近い位置に当てて押し込みます。「ホイールギリギリを狙う」のが力が分散せずビードを落としやすいコツです。ビードブレーカーの位置調整は14ポジション対応のものが特に便利で、さまざまなインチ・タイヤ幅に対応できます。
1箇所ビードが落ちれば、その周辺は手で押すだけで落とせるようになります。両面とも同様に落とします。
【STEP3】タイヤをめくり取る(脱着)
ビードが両面とも落ちたら、ホイールをチェンジャー台にアクスルシャフトで固定し、リムプロテクターをセットしてからタイヤレバーを差し込みます。レバーは反り返った側を上(ホイール面側)に向けて使います。
作業中の最大のポイントは「反対側のビードをリムの内側(谷の部分)に落とし込んでおくこと」です。タイヤをめくる側と反対の部分がリム外に出たままだとレバーに大きな力が必要になり、ホイールに傷がつくリスクが高まります。
片面が外れたら、反対側も同様にめくります。ある程度めくったらチェンジャーから下ろし、残りを手で外すほうが楽な場合もあります。これは慣れ次第です。
【STEP4】タイヤを組み付ける
新しいタイヤのビード部分にビードクリームをたっぷり塗ります。内側(ホイールと接する面)全周にガッツリ塗って問題ありません。乾いても滑らなくなるだけで、ゴムの劣化を起こすことはありません。
奥側(チェンジャーの底に近い側)のビードは手で押し込んでいきます。ビードクリームが十分に塗られていれば、半分以上は手で入ってしまいます。手前側(上側)をレバーで組み付ける際、同じく反対側のビードをリムの谷に落とし込んでおくことが重要です。これを怠ると「ミシミシいう」状態になり、強引に入れようとするとビードを傷めます。
チューブタイヤの場合は、ここでチューブを先に入れ、バルブが落ちないよう緩めにナットを仮留めしてから組み付けます。エアバルブの反対側から作業するのがチューブ噛み込み防止の基本です。
ヤングマシンによるストレート製バイク用タイヤチェンジャー実使用インプレ(ヘッドマウント式の操作感・コツの参考に)
タイヤを組み付けたあとのビード上げは、初心者が最も戸惑う工程のひとつです。手順を間違えると、いくら空気を入れてもビードが上がらないまま時間だけが過ぎていきます。
【STEP5】ビードを上げる
バルブコア(虫)は、ビード上げの前に取り付けても問題ありませんが、ビードが上がりにくい場合はコアを外したままエアを送り込むほうが有効です。コアなしの状態では一度に大量のエアが流入するため、ビードが上がりやすくなります。
エアコンプレッサーのノズルをバルブに当て、短く素早くエアを送り込みます。「パン!」という音が2回(前後)すればビードが上がった合図です。音が鳴らない場合は次の対処を試します。
それでも上がらない場合は原因注意です。「タイヤとリムの隙間が大きすぎる」または「ビードが一部歪んで当たっていない」ケースがあります。
【STEP6】空気圧の調整と最終確認
ビードが上がったらバルブコアを取り付け、規定の空気圧まで調整します。バイクの指定空気圧は車種ごとに異なりますが、一般的な中型ロードバイクであれば前輪200〜250kPa、後輪225〜290kPa程度が目安です(車両マニュアルで必ず確認してください)。
確認したら全周目視でビードがリムに均等に収まっているかチェックします。一部だけ飛び出たり沈んだりしているとエア漏れや走行中のビード落ちにつながります。それで大丈夫でしょうか?という視点で、ゆっくり一周確認してください。
ホイールを車体に装着する際、リアタイヤの場合はアクスルシャフトをしっかり前方に当てた状態でナットを締めます。チェーンにウエスを挟んでホイールが回らない状態にし、シャフトを前に寄せてから締め付けると確実です。トルクレンチが手元にない場合は、事前にシャフトとナットにマーキングをしておき、同じ位置まで締め込む方法が有効です。
2りんかんによるバイクタイヤのビードが上がらない原因と対処法(エア流量不足・バルブコア除去法の参考に)
DIYでのタイヤ交換を始めるには初期投資がかかります。しかし中長期的に見ると、工賃の節約効果は非常に大きいです。
まずショップに依頼した場合の相場を整理します。バイクのタイヤ交換工賃は1本あたり3,000〜5,000円が一般的な相場で、前後両方をショップで交換すると工賃だけで6,000〜1万円程度になります。さらに、タイヤをショップ経由で購入するとネット価格より1,000〜5,000円ほど高い場合が多く、前後で計算すると全体的なコストが4万〜7万円規模になるケースもあります。
一方でDIYの場合、タイヤをネットで安く購入でき、工賃はかかりません。工具の初期投資は次の目安です。
| 工具 | 参考価格 |
|---|---|
| 手動式タイヤチェンジャー(ビードブレーカー付き) | 9,000〜25,000円 |
| タイヤレバー(3本) | 3,000〜6,000円 |
| リムプロテクター(3個) | 700〜1,500円 |
| ビードクリーム | 500〜1,000円 |
| エアコンプレッサー(ビード上げ用) | 10,000〜20,000円 |
| 合計(参考) | 23,000〜53,500円程度 |
工具一式の初期投資は約2〜5万円ですが、1回の交換で節約できる工賃は前後で1万円前後です。つまり3〜5回の交換で元が取れる計算になります。複数台所有のライダーや、サーキット走行でタイヤ消耗が早いライダーにとっては、元を取るまでの期間がさらに短くなります。
これは使えそうです。
さらに、DIYにはお金以外のメリットもあります。ショップの営業時間を気にせず夜間でも作業できる点、タイヤの内外逆履きや一時的な交換テストが自由にできる点、スポーツ走行中のサーキット持ち込み交換ができる点などがあります。
節約効果を最大化したいなら、タイヤをネット通販で購入し(例:Webikeや2りんかんオンラインで前後セット2〜4万円程度)、自分で交換することで工賃と仕入れ差額を合わせて年間1〜3万円規模の節約につながることが多いです。
自動車のタイヤ交換に慣れているドライバーがバイクのタイヤ交換に初めて挑戦すると、独特のつまずきポイントにぶつかることがあります。車とバイクではタイヤ交換の構造的な違いが大きく、「車で慣れているから大丈夫」という思い込みが失敗を招くことがあります。
ミス①「ビード落としは軽い力でできる」という思い込み
車のタイヤは断面が大きくビードが落ちやすい設計ですが、バイクタイヤはサイドウォールが厚く剛性が高いため、ビードが頑固に張り付いたままになることがよくあります。特に長期間装着していた銘柄や、ハイグリップタイヤはビードが固く、チェンジャーのブレーカーをリムギリギリの位置に正確に当てないと効果が薄くなります。「固い=壊れている」わけではなく、正確な位置決めと体重をかける姿勢が解決策です。
ミス②「車用のリムプロテクターで代用できる」
車のホイールとバイクのホイールはリム形状が異なり、バイク用の細いリムには車用のリムプロテクターがうまく当たらないことがあります。バイク用専用品(例:デイトナ製リムプロテクター 716円〜)を使えば問題ありません。
ミス③「エアは手元の自転車ポンプで上げられる」
車のタイヤはビードが上がりやすい形状ですが、バイクのリムは断面が深く、ビードを引き上げるのに一気に大量のエアが必要です。家庭用ハンドポンプでは吐出量が少なすぎて、ビードが均等に上がる前に空気が漏れてしまいます。エアコンプレッサーが最も確実な解決策ですが、近くにガソリンスタンドや2りんかんがある場合は、そこのコンプレッサーを借りる選択肢もあります。
バイクのタイヤ交換を車感覚でやるのはダメということですね。
バイク専用の道具と手順を覚えてしまえば、慣れた後は前後交換でも1〜2時間以内に作業を終えられるようになります。最初の2〜3回は時間がかかっても、動作を丁寧に確認しながら進めることが、ホイール傷や空気漏れなどのミスを防ぐ最善の方法です。手動タイヤチェンジャーに慣れることが条件です。
MotoBikeChannel-Blogによる手動タイヤチェンジャー導入レポート(ビッグバイクDIY交換のコスト感・工具選びの参考に)

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