

乾燥路で4WDのまま走ると、駆動系オイルが焼き付いて修理費が数十万円になることがあります。
パートタイム4WDとは、通常は2WD(二輪駆動)で走行し、雪道や悪路などが必要なときだけドライバーが手動でスイッチやレバーを操作して4WDに切り替えるシステムです。「必要なときだけ4WDを使う」という意味で「パートタイム」という名前がついています。
フルタイム4WDとの大きな違いは、センターデフの有無にあります。フルタイム4WDはセンターデフを持ち、常時4輪に駆動力を配分しながらカーブ時の回転差も吸収します。一方パートタイム4WDはセンターデフを持たず、4WDに切り替えると前後輪が直結状態になります。この「直結」という構造が、後述する乾燥路での注意点につながってきます。
構造がシンプルなぶん、部品点数が少なく車体が軽くなるのが特徴です。これにより、通常走行での燃費がフルタイム4WDより有利になります。また、4WD状態では前後輪が完全に直結されるため、片輪が空転してもほかの車輪でしっかりトラクションを確保できます。本格的な悪路走破性が高いのは、この直結方式ならではのメリットです。
現在のトヨタ車においては、パートタイム4WDを採用しているのは主に本格オフロード・アウトドア用途の車種に限られています。採用例が少なくなっているのは、普段使いの利便性を考慮すると自動で4WDに切り替わるシステムのほうが扱いやすいからです。つまり、パートタイム4WDは「本格的な悪路走行を想定したユーザー向けの選択肢」という位置づけと言えます。
(上記リンクはトヨタの公式サイトで、フルタイム・パートタイムそれぞれの特徴を公式に解説しているページです)
トヨタの現行ラインナップでパートタイム4WDを採用しているのは、ハイラックスとランドクルーザー70の2車種です。意外と少ない数字ですね。現代のトヨタでは、RAV4やハリアーなどSUVの多くが電子制御の「ダイナミックトルクコントロール4WD」や「E-Four」を採用しており、手動切り替えのパートタイム方式は本格派の2車種に絞られています。
🚛 ハイラックス(Hilux)
ハイラックスは、トヨタが誇るピックアップトラックです。パートタイム4WDを採用しており、ダイヤルスイッチで2H・H4・L4の3モードを切り替えます。
| モード | 状況 | 特徴 |
|--------|------|------|
| 2H(2WD) | 一般舗装路・高速道路 | 燃費重視、通常走行 |
| H4(ハイ4WD) | 雪道・砂利道・滑りやすい路面 | 高速寄りの4WD |
| L4(ロー4WD) | ぬかるみ・急坂・極悪路 | 低速・高トルクの4WD |
ハイラックスの車体サイズは全長5,335mm×全幅1,855mmと大柄で、最低地上高は235mm(Z GRスポーツ)を確保。積載能力も高く、アウトドアや農作業などのヘビーユースに向いています。ディーゼルターボエンジン(2GD-FTV、2.4L)を搭載しており、最大トルクが420N·mと力強い走りが特徴です。
🏔️ ランドクルーザー70(Land Cruiser 70)
ランドクルーザー70は、1984年から続く正統派オフロードSUVです。2014年に期間限定で復刻され、現在も根強い人気を誇っています。こちらもパートタイム4WDを採用しており、レバー操作で2H・H4・L4を切り替えます。
ランドクルーザー70の特筆すべき点は、ラダーフレーム構造と強靭なサスペンションによる走破性の高さです。最低地上高は210mm確保されており、河川敷や山岳路など本格的なオフロードシーンでの信頼性は折り紙付きです。エンジンは1GR-FE型4.0Lガソリンエンジン(279ps・381N·m)を搭載します。
どちらの車種も、アウトドアやオフロードを積極的に楽しむユーザー向けに設計されています。普段は街乗りが中心で、冬だけ雪道を走りたいという用途にはほかの4WDシステムのほうが向いている場合があります。
KINTO:トヨタの四駆(4WD/E-Four)27車種一覧と種類解説
(トヨタ全車種の4WDシステムを種類別に整理した参考ページです)
パートタイム4WDの使い方で最も重要なのが、乾燥した舗装路では4WDモードで走ってはいけないという点です。これを知らずに4WDのままドライブしてしまうと、二重の意味で大きなリスクがあります。
まず起きるのが「タイトコーナーブレーキング現象」です。
パートタイム4WDは前後輪が直結された状態になっています。カーブを曲がると、内側と外側のタイヤでは進む距離が異なります(外側のほうが大きく回るため)。通常、前輪と後輪でも同様の回転差が発生しますが、センターデフがないパートタイム4WDはこの差を吸収できません。
その結果、後輪が前輪を「押し出そう」とする力が逆向きに働き、急にブレーキがかかったような引っかかり感・スキール音・振動が発生します。これがタイトコーナーブレーキング現象です。高速道路や一般道のカーブで突然この状態になると、運転操作に支障が出ることもあります。
次に怖いのが、駆動系の焼き付きによる破損リスクです。トヨタ自身もハイラックスのカタログやメーカーサイト上で「乾燥した舗装路面および高速道路では、H4またはL4で走行すると駆動系部品に悪影響を与え、駆動系のオイル漏れや焼き付きなどにより事故につながることがあります」と明記しています。
具体的には、前後輪の回転差を無理に吸収しようとするトランスファー内部の部品に熱が集中し、オイルが焼け付くことがあります。こうなると、トランスファーやデフの交換が必要になり、修理費は数十万円規模になるケースもあります。また、タイヤへの偏った負荷でタイヤが早期摩耗し、寿命が大幅に縮まるという問題も起きます。
駆動系の損傷は「走り方のミス」で発生します。これは結論は乾燥路では必ず2WD(2H)に戻すことが基本です。
(11年間日産自動車にてエンジニアとして勤務した専門家による解説記事です)
パートタイム4WDを長持ちさせながら性能を最大限に引き出すには、3つのモードの正しい使い分けが不可欠です。
🔵 2H(2WD・後輪駆動)の使いどころ
晴天・雨天を問わず、乾燥した舗装路および高速道路では必ず2Hで走ります。これが基本です。燃費も最も良く、車への負担も最小限に抑えられます。「今日は少し雨が降っているし、念のため4WDにしておこう」という気持ちも理解できますが、舗装路が濡れているだけでは4WDは不要です。雨で表面が濡れた舗装路は、まだ4WDでなくても十分に走れます。
🟡 H4(ハイ4WD)の使いどころ
H4を使うのは、雪道・凍結路・砂利道・深い水たまりなど「滑りやすい路面」に入るときです。走行前に舗装路を外れるタイミングで切り替えるのが理想です。ハイラックスのH4は走行中でも切り替えられますが、切り替えは60km/h以下の速度で行うことが推奨されています。速度が高すぎると切り替え時に駆動系に負担がかかります。
H4での走行速度は、主に時速30〜80km程度が目安です。高速道路でH4に入れたまま走るのはNGで、これも駆動系を傷める原因になります。
🔴 L4(ロー4WD)の使いどころ
L4はぬかるみ・急な登り坂・岩場など「極悪路」専用のモードです。ギア比が下がり、非常に低速で大きな力が出せます。L4への切り替えは原則として停車状態で行う必要があります。エンジンをかけたまま、完全に停車してからトランスファーをL4に入れましょう。
| シーン | 推奨モード |
|--------|-----------|
| 晴れた舗装路・高速道路 | 2H |
| 雨で濡れた舗装路 | 2H(舗装路なら2Hで十分) |
| 雪道・凍結路・砂利道 | H4 |
| ぬかるみ・岩場・急坂 | L4 |
「雪が見えたら即4WD」が合言葉です。発進前に切り替えておくことで、スリップした後に慌てて切り替えるより安全に走れます。
トヨタには現在、5種類以上の4WDシステムが存在します。パートタイム4WDを選ぶべきかどうかは、自分の使用シーンをよく考えることが重要です。
パートタイム4WDが向いている人
- 週末に本格的なオフロードや山岳路に行く機会が多い
- ピックアップトラックで農作業や荷物の積載が必要
- 雪深い山間部に住んでおり、ラッセル(雪かき走行)が必要なレベルの路面を走る
E-Four(電気式4WD)・ダイナミックトルクコントロール4WDが向いている人
- 主に街乗りや高速道路の走行が中心
- 冬の雪道(一般的なスキー場までの道程度)を走る機会がある
- 普段の燃費も重視したい
E-Fourはプリウスやヤリス、ノアなどに搭載されており、路面状況を自動感知して自動的に4WD状態に切り替えます。ドライバーが手動で切り替える必要がなく、乾燥路での運転制限もありません。これは使い勝手の面で大きなメリットです。
一方、4WDとしての走破性の「最大値」はパートタイム4WDのほうが高い場面があります。本格的な悪路で前後輪を直結することで、片輪が完全に浮いても残りの車輪でしっかり前進できます。これはE-Fourなどのシステムでは対応しにくいシーンです。
コスト面で言うと、パートタイム4WD車のハイラックス(Z GRスポーツ)は約598万円(2024年時点)、ランドクルーザー70(4ドアバン)は約440万円です。これらはSUVとしては高めの価格設定ですが、本格オフロード性能と耐久性を考えると、強いシーンでは代わりが効かない存在です。
ライフスタイルに合わせて「本格4WDが必要か」「普段使い優先か」を整理すると、選択が自然と絞られてきます。
ネクステージ:パートタイム4WDとは?フルタイム4WDとの違いや代表的な車種(自動車整備士監修)
(整備士資格保有者が監修した、パートタイム4WDとフルタイム4WDの比較解説記事です)
パートタイム4WDを長く快適に使い続けるには、いくつかの維持管理の知識が役立ちます。乗り方だけでなく、日常のメンテナンス意識が、5年後・10年後の維持費に直結します。
🔧 タイヤの摩耗に気をつける
パートタイム4WDのH4モードでは前後輪が直結されるため、4輪が均等に路面を踏みしめます。これは悪路走破性の観点では有利ですが、前後のタイヤサイズや摩耗具合に大きな差があると、4WD状態で強い負荷がかかります。4本のタイヤを同一銘柄・同一摩耗状態に揃えておくことが重要です。
タイヤの溝の深さの目安として、新品時は約8mm、使用限界は1.6mmとされています。4本の溝深さの差が2mm以上になると、4WD時のトルク差が大きくなり、トランスファーに余計な負担がかかります。これは条件が整えば大丈夫です。前後異なる摩耗のタイヤを装着したまま4WDで走るのは禁物です。
🛢️ トランスファーオイルの定期交換
パートタイム4WDのトランスファーにはオイルが充填されており、内部部品の潤滑と冷却を担っています。このオイルは劣化すると潤滑性能が落ち、内部のギアやシャフトを傷めます。
一般的な交換目安は40,000〜50,000km、または2〜3年程度が目安です。オフロード走行の機会が多いオーナーは、通常の半分以下のペース(2万km程度)で交換するとより安心です。交換費用は工賃込みで5,000〜15,000円程度が目安で、これは維持費として決して高くありません。
🔍 4WDへの切り替え頻度が低いオーナーへの注意点
パートタイム4WDを年に数回しか使わない場合、定期的に4WDに切り替えて短時間走行することが推奨されます。長期間2WDのみで走り続けると、トランスファー内部のオイルが偏ったり、切り替え機構が固着しやすくなります。「いざ雪道で4WDに切り替えようとしたら動かなかった」というトラブルは、意外と少なくありません。月に1回程度、駐車場などでH4に切り替えて10分ほど走るだけで機構の固着予防になります。
これは使えそうです。知っているかどうかで、いざというときの安心感がまるで変わります。
パートタイム4WDは「使いこなしてこそ真価を発揮する」システムです。正しい知識と定期的なメンテナンスを組み合わせれば、10年・20万km以上の長期使用も現実的です。ハイラックスやランドクルーザー70の中古市場での高い残価率は、そのタフさを証明しています。
JAF:4WD車で車庫に入れる際、ブレーキがかかったようになる原因は?
(タイトコーナーブレーキング現象についてJAFが公式に解説しているQ&Aページです)

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