

キャンバーボルトを取り付けただけで調整は完了、と思っていませんか?
キャンバー角とは、車を正面から見たときのタイヤと路面のなす角度のことです。タイヤが垂直であればキャンバー角0度、上部が車体側に傾いている状態を「ネガティブキャンバー(ハの字)」、上部が外に開いている状態を「ポジティブキャンバー(逆ハの字)」と呼びます。
国産の一般的な乗用車に多く採用されている「ストラット式サスペンション」は、シンプルな構造で軽量・低コストというメリットがある一方、純正状態ではキャンバー角を調整する機構がほぼ存在しません。ショックアブソーバーとナックルアームが固定されているため、角度の変更が構造的にできないのです。
つまり「純正のままキャンバー角を変えたい」と思っても、何もパーツを追加しなければ調整は不可能ということになります。
| サスペンション形式 | キャンバー調整の可否 | 主な採用車種例 |
|---|---|---|
| ストラット式(純正) | ❌ 基本的に不可 | コンパクトカー・軽自動車など |
| ダブルウィッシュボーン式 | ⚠️ 限定的に可能な場合あり | 一部スポーツカー・SUV |
| 調整式アッパーマウント装着車 | ✅ 可能 | 車高調整式サスペンション装着車 |
| キャンバーボルト装着後 | ✅ 最大±1.75°まで可能 | ストラット式の多くの車種 |
では、なぜキャンバー角の調整が必要になるのでしょうか?
大きな理由のひとつが、タイヤの偏摩耗です。ポジティブキャンバー(外開き)になっているとタイヤの外側ばかりが接地するため、外側だけが早く削れます。逆にネガキャンが強すぎれば内側が偏摩耗します。正しいキャンバー角に調整することで、タイヤが均等に路面と接地し、寿命が延びるとともに走行安定性も改善されます。
もうひとつの理由がコーナリング性能の改善です。コーナリング時に車体はロールしますが、適度なネガティブキャンバーがついていると、ロールした状態でもタイヤの接地面が路面に対してほぼ垂直を保つため、グリップ力が維持されます。
純正状態のキャンバー角は「0付近」に設定されているのが基本です。
参考:ストラット式サスペンションの構造とキャンバー角の関係性を詳しく解説しているページです。
ストラット式サスペンションの仕組みと、キャンバー角の動き|DIYラボ
純正サスペンションのままキャンバー角を調整したいとき、最もコストパフォーマンスに優れた方法が「キャンバーボルト」の導入です。これは純正のストラット固定ボルトと交換するだけで、キャンバー角を変更できる偏芯ボルトのことです。
価格帯は2,000〜6,000円程度(2本セット)とリーズナブルで、ピロアッパーマウントへの交換(15,000〜30,000円)と比較すると非常に安価です。費用を抑えたい方に特に向いています。
キャンバーボルトには大きく分けて以下の2種類があります。
重要な選び方のポイントは車種適合の確認です。キャンバーボルトはストラット式サスペンション専用であり、ダブルウィッシュボーン式などには使えません。また、ボルト径(ボルトサイズ)が車種によって異なります。購入前に必ず適合表で確認してください。
これは見落としがちな注意点です。
純正ボルトより細径のボルトを使う製品もあるため、締め付けトルクも純正とは異なります。例えば純正ボルトが220Nmのところ、キャンバーボルトでは110〜130Nm程度になる場合もあります。過剰な締め付けはボルト破損につながるため、必ずトルクレンチで規定値を守ることが条件です。
また、太めのホイールを装着している場合、キャンバーボルトでキャンバー角をつけるとホイール裏側がショックアブソーバーに干渉する可能性があります。アッパーマウントでキャンバーを変更する場合は、ショックとホイールが一体で傾くため干渉は起きませんが、キャンバーボルトではショックが固定されたままナックルだけ傾くため、ホイール内側とショックの距離が縮まります。ホイールを装着した状態で事前に隙間を確認するようにしましょう。
参考:キャンバーボルトの種類や価格、取り付け対応車種の一覧を確認できます。
キャンバーボルト製品ページ|LARGUS OFFICIAL SITE
実際にキャンバーボルトを取り付ける作業の流れを確認しましょう。難易度は「足回りの作業経験があれば可能」なレベルで、工具さえ揃っていればDIYでも対応できます。
必要な工具:ジャッキ・ウマ(リジッドラック)・トルクレンチ・スパナ(ラチェット)・マーキング用ペン
作業手順は以下の通りです。
接地状態で調整するのが原則です。
作業後に多くの方が見落とすのが、キャンバー角を変えるとトー角が必ず変化するという点です。キャンバーを調整しただけでアライメント測定をしないと、トー角がアウト方向にずれたまま走行することになります。実際の事例では、調整後にフロントがトーアウト10mmになっていたケースもありました。トーがずれたまま走り続けると、タイヤが急速に摩耗するため、キャンバーボルト取り付け後は必ずアライメント調整(トー補正)を行うことが不可欠です。
参考:キャンバーボルトの取り付け手順と注意点をプロが詳しく解説しています。
キャンバーボルトを装着したら終わり、ではありません。前述の通り、キャンバー角を変えるとトー角がずれるため、アライメント調整が必須の作業です。この点を理解せずにいると、せっかくキャンバーを調整しても偏摩耗が悪化したり、燃費が落ちたりする本末転倒な状況に陥ります。
プロに依頼する場合の費用相場はおおよそ以下の通りです。
| 作業内容 | 費用相場(目安) | 所要時間 |
|---|---|---|
| アライメント測定のみ | 約5,500〜12,000円 | 30分〜 |
| 測定+フロント2輪調整 | 約15,000〜20,000円 | 1〜2時間 |
| 測定+4輪全調整 | 約20,000〜30,000円 | 2〜3時間 |
費用はかかりますが、アライメント調整を怠ることで発生するタイヤの偏摩耗を考えると、投資する価値は十分にあります。たとえばトー角が大きくズレたまま走り続けると、タイヤが1シーズン持たずに交換が必要になることもあります。国産コンパクトカーのタイヤ代は4本で3〜6万円程度のため、放置によるコストの方が明らかに高くなります。
アライメント調整は費用対効果が高い作業です。
DIYでトー調整を行う場合は、水糸と2mの棒を使った「仮想長方形法」で測定・調整することも可能です。フロントとリアのハブボルト(ホイールセンター)から水糸までの距離を揃えて長方形を作り、ホイールリムの前後から糸までの距離が左右同じになるようにタイロッドを回して調整します。プロのアライメントテスターほどの精度はありませんが、日常使いのレベルであれば実用的な方法です。
なお、車検時にアライメント工場で調整してもらえるのは基本的にトー角のみで、キャンバー角やキャスター角は対応していない場合がほとんどです。キャンバー角も含めた本格的な調整を望む場合は、アライメントテスターを保有している専門ショップ・タイヤ専門店に持ち込む必要があります。
参考:アライメント調整の費用相場や調整タイミングについて詳しくまとめられています。
アライメント調整の費用相場と調整すべきタイミング|ネクステージ
あまり知られていない事実として、純正のキャンバーボルトにはもともと微細な「ガタ(遊び)」が設けられています。これはメーカーが、軽微なフロント衝突などによるナックル変形リスクを吸収するために意図的に設計したものです。
このガタをうまく活用すると、社外のキャンバーボルトを使わずとも、純正ボルトを緩めて車体に向かって少し押し込み、再締め付けするだけで、わずかにネガティブキャンバー方向へ変化させることが可能です。変化量は非常に小さいものの、費用ゼロで試せる点は魅力的です。ただし再現性が低く、左右均等に揃えるのが難しいため、あくまで「応急処置」や「試しに確認したい場合」に限定して使う考え方が現実的です。
これは使える知識ですね。
キャンバー角の長期管理という観点では、以下のタイミングでの定期確認をおすすめします。
なお、リア側のキャンバー角についてはキャンバーボルトが対応していない場合がほとんどです。リアのキャンバー調整が必要な場合は、調整式ラテラルロッドやキャンバー調整アームの装着を検討することになります。リア側の過度なネガキャンはタイヤの内減りを加速させるため、費用と相談しながら判断することが必要です。
アライメントは「乗り心地」にも「財布」にも直結するものです。
キャンバーボルト自体のメンテナンスも忘れないようにしましょう。走行による振動でボルトが緩むリスクがゼロではないため、取り付け後500〜1,000km走行時点で一度増し締めの確認を行うことを推奨します。長期間確認しないでいると、気づかないうちにキャンバー角がずれてタイヤの偏摩耗が再発することがあります。定期確認が大切な管理の基本です。

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