
車のプラスチックパーツは、軽量で成形性に優れているため、現代の自動車には欠かせない素材となっています。バンパーやフェンダーモール、ダッシュボードなど、車の内外装に幅広く使用されていますが、その反面、傷がつきやすく、経年劣化による白化現象も起こりやすいという特徴があります。
プラスチックパーツに傷や割れが生じた場合、修理方法を知っておくことで、部品交換のコストを大幅に削減できる可能性があります。この記事では、車のプラスチックパーツの修理方法について詳しく解説します。
車に使用されるプラスチックパーツは、主にPP(ポリプロピレン)という素材で作られています。このPPは成形性に優れ、安価に加工できるという大きなメリットがあります。また、頑丈で粘り強い特性を持っているため、衝撃を吸収する必要があるバンパーなどの外装部品にも広く採用されています。
主な車のプラスチックパーツには以下のようなものがあります。
これらのパーツは軽量であるため、車の燃費向上にも貢献しています。また、金属パーツと比較して、軽度の衝突時には変形して衝撃を吸収し、元の形状に戻りやすいという特性もあります。
しかし、プラスチックパーツには以下のようなデメリットもあります。
これらのデメリットがあるものの、その利点から現代の自動車では不可欠な素材となっています。
プラスチックパーツの修理が必要となるケースは様々ですが、主に以下のような状況が考えられます。
特に外装部品であるバンパーやフェンダーモールは、日常的に傷つきやすい部位です。また、内装パーツであっても、頻繁に触れるドアハンドル周りやダッシュボードなどは、使用頻度が高いため傷がつきやすくなっています。
プラスチックパーツの傷や破損は、見た目の問題だけでなく、以下のような機能面での問題も引き起こす可能性があります。
これらの問題を防ぐためにも、プラスチックパーツの適切な修理は重要です。
軽度の傷や小さな割れであれば、DIYでの修理も可能です。自分で修理することで修理費用を大幅に削減できますが、技術と適切な道具が必要になります。以下に、主な修理方法をご紹介します。
1. プラスチックリペア
プラスチックリペアは、電熱で溶着ピンを熱し、割れた箇所に渡すように埋め込んで補修する方法です。この方法は強度が高く、しっかりとした修理が可能です。
プラスチックリペアの基本的な手順。
プラスチックリペアキットは市販されており、1万円前後で購入できます。ただし、使用には一定の技術が必要で、失敗すると見た目が悪くなる可能性があります。
2. 接着剤による修理
接着剤を使った修理も広く行われている方法です。プラスチック専用の強力接着剤を使用することで、割れた部分を接合できます。
接着剤修理の手順。
この方法は比較的簡単ですが、強度はプラスチックリペアより劣る場合があります。また、接着剤の種類によっては、プラスチックの種類に合わせて選ぶ必要があります。
3. パテによる修理
プラスチック用のパテを使用して、欠損部分や深い傷を埋める方法です。
パテ修理の手順。
パテ修理は欠損部分の補修に適していますが、割れた部分の接合には向いていません。また、パテ自体の強度は元のプラスチックより劣るため、構造的な強度が必要な部分には不向きです。
4. 補修テープによる応急処置
緊急時の応急処置として、プラスチック補修テープを使用する方法もあります。
補修テープの使用手順。
この方法は一時的な応急処置に適していますが、恒久的な修理としては不十分です。また、見た目も良くないため、目立たない場所での使用が望ましいでしょう。
自分で修理する際の注意点。
自分での修理に自信がない場合や、大きな破損の場合は、プロの修理業者に依頼するのが賢明です。プロの修理には以下のようなメリットがあります。
プラスチックパーツの修理を依頼できる主な業者は以下の通りです。
1. 板金塗装業者
板金塗装業者は、車の修理を専門とするため、プラスチックパーツの修理にも対応しています。長年の経験と技術を持つ業者が多く、高品質な修理が期待できます。
2. ディーラー
車のディーラーでも修理を受け付けています。自社で修理工場を持っていない場合は、提携している修理工場に依頼することになります。メーカー純正の部品や塗料を使用するため、仕上がりの品質は高いですが、費用は比較的高額になる傾向があります。
3. カー用品店
一部のカー用品店では、プラスチックパーツの修理サービスを提供しています。料金プランが明確で比較的リーズナブルな価格設定が特徴です。ただし、店舗によっては外注に出すため、修理完了までに時間がかかる場合があります。
4. ガソリンスタンド
一部のガソリンスタンドでも、プラスチックパーツの修理を受け付けています。給油や洗車のついでに相談できる便利さがあります。ただし、専門的な修理は外注となることが多いです。
修理費用の目安
プラスチックパーツの修理費用は、破損の程度や修理方法、パーツの種類によって大きく異なります。一般的な費用の目安は以下の通りです。
これに対して、新品部品に交換する場合の費用は。
修理を依頼する際は、複数の業者から見積もりを取り、修理内容と費用を比較検討することをおすすめします。また、修理後の保証内容についても確認しておくと安心です。
プラスチックパーツの修理技術は年々進化しており、より高品質で環境に配慮した修理方法が開発されています。ここでは、最新の修理技術と環境への取り組みについて紹介します。
最新の修理技術
ポリバンスは、酸素を除去した加熱窒素を使用し、割れたプラスチックと同じ補修素材で樹脂溶接を行う技術です。この技術により、強度・品質・コストのバランスに優れた修理が可能になりました。従来の方法では難しかったプラスチックの完全修復が実現し、新品同様の強度を確保できます。
最新のコンピューター診断機を用いて、修理したパーツが本来の機能を果たすかどうかを確認する技術も普及しています。特に、センサー類が多数搭載された現代の自動車では、微妙な角度のズレがあるだけで機能不全を起こす可能性があるため、この技術は非常に重要です。
一部の先進的な修理工場では、3Dスキャナーで破損部分を正確に計測し、3Dプリンターで補修部品を作成する技術も導入されています。これにより、複雑な形状のパーツでも正確に修復できるようになりました。
環境への配慮
プラスチックパーツの修理は、新品部品への交換と比較して環境負荷が少ないという大きなメリットがあります。多くの修理業者が以下のような環境に配慮した取り組みを行っています。
従来の溶剤型塗料に代わり、VOC(揮発性有機化合物)排出量の少ない水性塗料を使用する修理工場が増えています。これにより、環境への負荷を大幅に削減できます。
プラスチックパーツの修理は、SDGs(持続可能な開発目標)の「つくる責任 つかう責任」に貢献します。新品部品の製造・輸送に伴うCO2排出量を削減し、プラスチック廃棄物の発生も抑えられます。
一部の修理業者では、リサイクルプラスチックを補修材料として活用する取り組みも始まっています。これにより、資源の有効活用とプラスチック廃棄物の削減を同時に実現しています。
環境に配慮した修理を希望する場合は、水性塗料の使用やSDGsへの取り組みを行っている修理業者を選ぶことをおすすめします。
プラスチックパーツの修理を検討する際、修理すべきか交換すべきかの判断は重要です。また、修理を行う上での注意点も知っておく必要があります。
修理と交換の判断基準
軽度から中程度の破損であれば修理が適しています。大きな破損や複数箇所に及ぶ破損の場合は、交換を検討した方が良い場合もあります。
バンパーなど安全性に関わる部分の大きな破損は、修理ではなく交換を選ぶべき場合があります。特にセンサー類が埋め込まれている部分は慎重に判断しましょう。
修理費用と交換費用を比較し、費用対効果を考慮します。修理費用が交換費用の70%を超える場合
※中古車の場合は、修理・交換よりも車を買い直したほうが安いケースもあります。