

保安基準適合と書かれたカナードでも、車検に落ちることがあります。
カナードとは、フロントバンパーの両サイドに取り付ける小さな翼形状のエアロパーツです。フランス語で「アヒル」を意味する言葉で、レース車両由来の空力デバイスとして知られています。見た目のインパクトが大きく、スポーツカーやチューニングカーのカスタムとして人気があります。
カナードが車検で問題になる最大の理由は、「突起物」として扱われる点にあります。車体の外側に飛び出した形状を持つため、歩行者や自転車乗りが接触した際に怪我を負わせるリスクがあると判断されるのです。つまり問題は「カナード専用の規制」ではなく、外部突起全般に関わる保安基準への適合です。
「カナード」という名称でくくられた特別な基準は存在しません。あくまで突起物規制の範囲内で評価されます。
道路運送車両の保安基準 第18条では、「車体の外形その他自動車の形状は、鋭い突起を有し、または回転部分が突出する等他の交通の安全を妨げるおそれのあるものでないこと」と規定されています。カナードはこの条文の対象となるパーツです。
さらに細目告示である第178条・第100条においては、直径100mmの球体が接触できる範囲内に曲率半径2.5mm未満の突起を有してはならないと定められています。先端が鋭く尖ったカナードは、ほぼ確実にこの基準に引っかかります。これが原則です。
また、カナードを取り付けることで車幅が車検証の記載値を超えてしまうケースも失格の原因になります。取り付け位置の確認は必須です。
カナードの空力効果についても触れておくと、主な働きは「ダウンフォースを直接生み出す」ことではありません。カナードが空気の渦(ボルテックス)を生成し、フロントタイヤハウス内に溜まった空気を引き抜くことで、フロントの揚力(アップフォース)を抑制するのが本来の目的です。意外ですね。
この空力効果が顕著に現れるのは時速80〜100km/h以上の領域です。一般道での走行速度では効果はほとんど体感できないとも言われています。
参考リンク(カナードの空力原理について詳しく解説されています)。
「カナード」の目的はダウンフォースではない!装着する本当の理由と効果 – オートメッセウェブ
カナードが車検を通過できるかどうかは、主に以下の複数の条件を同時に満たすかどうかで決まります。一つでも欠けると不合格のリスクが生じます。
まず最も重要な条件が、「曲率半径2.5mm以上」という形状基準です。これはざっくりいうと「先端が半径2.5mm以上の丸みを帯びている」ということです。2.5mmというのは約シャーペンの芯3本分を束ねたくらいの細さの丸みが必要、とイメージすると分かりやすいです。先端が鋭角に尖ったFRPやカーボン製のカナードは、ほぼこの条件を満たせません。
次に「硬さが60ショア(A)以下」という材質条件があります。60ショア(A)とは、消しゴムや軟質ゴムと同程度の柔らかさです。硬い樹脂やカーボン素材のカナードはこの基準に引っかかります。ゴム製カナードが車検対応として多く市販されているのは、この基準をクリアするためです。
また、突出量に関しても条件があります。
- 突出量が1.5mm未満のもの → 規制の適用除外
- 突出量が5mm未満でかつ外向きの端部に丸みがあるもの → 規制の適用除外
つまり非常に薄くて目立たないサイズであれば、厳密な曲率半径条件を満たさなくても問題ないという除外規定も設けられています。これは条件付きで例外扱いとなります。
さらにエアロスポイラー類の取り付けルールとして、「バンパー上端より下方においては車両の最外側を超えないこと(車幅内に収まること)」が求められます。カナードがバンパー側面に取り付けられる場合、車検証に記載された全幅を1mmでも超えると不合格です。
固定方法も重要です。溶接、ボルト・ナット、接着剤等で車体に確実に取り付けられていることが条件で、走行中に外れる可能性があるテープのみでの固定は認められません。
国土交通省の保安基準細目告示(第178条)の原文は以下で確認できます。
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第178条(国土交通省)
カナード選びで見落とされがちな落とし穴があります。「保安基準適合」と表示された製品を選んでも、車検に落ちる可能性がゼロにならない、という現実です。厳しいところですね。
実際、トヨタ系のチューニングブランド・TRDが販売していた「86前期型用カナード」は、保安基準対応パーツとして販売されていながら、前回の車検では合格していたにもかかわらず、次回の車検で不合格になった事例が複数報告されています。これは車検場・検査員によって判断にバラつきがあることを示しています。
スバルのSTI製カナードも同様です。
STIが「保安適合基準証明書」を発行しているため、理論上は合格できるはずですが、ディーラー以外の車検場に持ち込むと不合格とみなされる可能性があると言われています。STI販売店で装着した際に、この証明書を発行してもらっていなかったユーザーがトラブルになった事例もあります。
なぜこのようなことが起きるのでしょう?
車検の外観検査は検査員の目視による判断が含まれます。法律の数値基準を正確に計測するというよりも、「見た目が危険な突起物に見えるか」という目視評価が加わるケースがあるのです。同一のパーツでも「合格」「不合格」が変わることは、法的には問題があるものの実態として起きています。
この問題を回避するための実践的な対策として、以下のことを覚えておくと役立ちます。
- メーカー・ブランドから発行される保安基準適合証明書(書面)を必ず入手する
- 陸運局や認証工場に事前相談する
- 車検前日にカナードを取り外し、車検後に再装着する方法も選択肢のひとつ
最後の「取り外して持ち込む」方法は、費用をかけずに問題を回避できる実践的な手段です。ただしボルト固定型の場合、バンパーへの穴あけが必要になるため、取り外しを繰り返すとバンパーが傷む点に注意が必要です。
参考リンク(STIカナードの車検問題と証明書について詳しく書かれています)。
【続報】カナード問題 – みんカラ(アビ助のページ)
「カナードを付けたまま車検を通したい」という場合、最初から適切な製品を選ぶことが重要です。後から「やっぱりダメだった」となると、バンパーの穴が残るという取り返しのつかない状態になりかねません。
素材の選択が最初の関門です。カーボン製・FRP製のカナードは高剛性で硬く、60ショア(A)の基準を大きく超えるため車検対応は非常に困難です。これに対して、ゴム製・軟質ウレタン製・軟質エラストマー製のカナードは、材質の柔軟性で基準をクリアしやすくなります。TRDやSTIが純正オプションとして販売しているゴム製カナードがその代表例です。
形状については、先端部分の処理が決め手です。「エッジが半径5mm以上の丸みで処理されているか」という点を購入前に確認しましょう。製品の仕様書に記載がない場合はメーカーに問い合わせるのが確実です。尖っているデザインのカナードは、見た目がいかにも「危険な突起物」に見えるため、検査員の判断でアウトになる確率が上がります。
取り付け位置は、バンパーの最外側(車幅)を超えないことが絶対条件です。車検証に記載されている全幅を超えた瞬間に不合格になります。カナードを取り付けた後、メジャーなどで実測して確認しておきましょう。フロントバンパーのコーナー付近、タイヤハウス前側の位置に収まるサイズを選ぶのが基本です。
サイズが大きければ大きいほど空力効果は高まりますが、車幅内に収まりにくくなりますし、見た目の「危険感」も増します。そのため、車検通過と空力効果のバランスを取るなら、小型・薄型の製品が現実的です。
購入する際は「保安基準適合」の表示だけを信頼せず、メーカーや販売店に「保安適合基準証明書は発行可能か」を確認してから決めることをおすすめします。この一手間が、車検時のトラブルを防ぐ唯一の確実な手段です。証明書の有無が条件です。
参考リンク(車検対応カナードの選び方と注意点がまとめられています)。
ボンピン・カナード・エアロミラー!「違反」になりがちな要注意エアロパーツ – WEBカートップ
車検を通過しないカナードを装着して公道を走行した場合、どのようなリスクが生じるのかを理解しておくことは重要です。これは「車検さえ通ればOK」ではないことを意味します。
保安基準に適合しない状態での公道走行は、道路運送車両法違反となります。具体的には「整備不良車両の運転」として扱われ、違反点数2点・反則金9,000円(普通車)が科される可能性があります。さらに、警察の取り締まりを受けた場合には整備命令が出て、15日以内に基準に適合するよう整備しなければなりません。
もう一つ見落とされがちな問題が保険リスクです。
保安基準に適合しない改造がある状態で事故を起こした場合、任意保険の保険金支払いが一部拒否されるケースが存在します。これは保険約款の「法令違反」条項に抵触する可能性があるためです。万一の事故で「カナードが基準外だった」ことが原因で保険金が下りないとなると、損害賠償を全額自己負担するという最悪の結果になりかねません。
加えて、車検証の記載事項との相違が大きい場合は「構造変更申請」が必要になるケースもあります。全幅の変化が20mm以上になると構造変更検査の対象となり、車検証の記載が変わります。この手続きを踏まないまま走行するとさらに重い処分の対象になります。
カナードを含めたエアロパーツのカスタムを楽しむなら、「車検時だけ外して、公道では保安基準外のパーツを常時装着」という使い方は法的に問題があります。これが原則です。
サーキット走行専用として割り切り、公道走行時は必ず取り外す使い方が、法的リスクと保険リスクの両方を避ける最も安全な選択です。カスタムを楽しむためにも、正しいリスク管理の知識は必須です。
参考リンク(外装カスタムに関する車検基準と法的リスクが整理されています)。

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