

ハマー内装の相談で多いのは、シート表皮のひび割れ・色あせ・シワで、年式が進んだ個体ほど「交換しかない」と誤解されがちです。実際は、状態によっては専用塗料でのリペア(クリーニング→ペイント→乾燥を繰り返してシワを整える)という現実的な選択肢があり、交換より費用を抑えられる場合があります。シートを新品交換すると高額になりやすい、という前提を共有したうえで、リペアと張替えの線引きを説明できると成約率が上がります。
参考:レザーシートのひび割れを塗装リペアで復元する工程(下処理~ペイント~乾燥の流れ)
張替えを選ぶ場合、ハマー内装は「面積が大きい=粗が目立つ」ので、素材選定が仕上がりを左右します。実例として、車内全体をベージュ系で統一し、ウルトラスエードを多用して張替え、ステアリングもスエード張替え、シートにはクロスステッチ、さらに張替え不可部位は塗装で統一する、といった全面施工が行われています。つまり“部分だけ高級素材”ではなく、塗装や縫製で質感の段差を潰す発想が重要で、整備工場が外注管理する場合でも指示書に落とし込む価値があります。
参考:H2の内装全張替え(ウルトラスエード、クロスステッチ、張替え不可部位は塗装で統一)
現場的に意外と効くのが「色の選び方」です。ホワイトやベージュ系は高級感が出る一方、乗降部の擦れ・ジーンズの色移りが早期に出やすいので、入庫時に運転席サイドサポートの摩耗方向を見て、表皮の目(シボ)やコーティング有無まで確認しておくと後々揉めません。さらに、3列シートを含む仕様では、2列目・3列目の使用頻度が低くても“日射で硬化して割れる”ケースがあるため、触診で硬さの差を見て、同時施工か部分施工かを提案するのが安全です(未施工部だけ質感が浮くのも、ハマー内装では目立ちます)。
【整備士メモ(見積もり前の観察ポイント)】
ハマー内装の作業で詰まりやすいのが、センターコンソール~センターパネル周りの脱着です。H2はセンターコンソールを外さないとパネルに辿り着きにくく、ビス点数も多く、トルクスを含むため、手順を飛ばすと“外れないから力でいく”事故が起きます。実際の脱着例では、コンソールボックス内のビス、蓋(ひじ掛け)部のトルクス、リア側センターパネルのビス、シフトノブ固定、嵌め込みのシフトパネル(爪3か所)と順に進み、ようやくコンソールパネルにアクセスできる流れが紹介されています。
参考:H2のセンターコンソール脱着手順(ビス位置、トルクス、爪、配線注意)
整備士として押さえたいのは「樹脂の爪」よりも“爪の金具”です。嵌め込みパネルの爪金具が外れて車内に落ちると回収が大変で、しかも戻し時のガタつき・ビビり音の原因になります。さらに、シガーライター等の配線を断線させやすい箇所があるため、引っ張る方向とストロークを決め、コネクターを先に逃がす(手が入らないなら鏡や内視鏡を使う)と事故率が下がります。こうした「戻した後に出る異音」を未然に潰すのが、内装作業を“整備品質”として成立させるコツです。
【脱着での事故あるある(予防策つき)】
ハマー内装は、社外ナビやモニター増設など“電装カスタム歴”がある個体が多く、分解すると裏側に配線が密集していることがあります。センターパネル脱着例でも「ナビの裏は配線がウジャウジャで隙間がない」旨が語られており、整備で触れると既存配線の取り回し不良が一気に顕在化します。つまり、内装を開ける作業は「配線の健全性点検」でもあり、結束・保護・アース品質を見直すチャンスです。
参考:センターパネル脱着後の裏側状況(配線密集で作業性が厳しい点)
また、ハマー内装では“ウッドパネル化”された個体も見かけます。ナビ取付の体験談として「ウッドパネルだらけ」という記述があり、見た目は豪華でも、後付けパネルの固定方法(両面テープ、クリップ追加など)によっては、真夏の熱で浮き・反り・ベタつきが出ることがあります。ここでの整備士の立ち回りは、外装や機関と同じく「再現性のある固定」に戻すことで、単なる取付ではなく不具合予防として価値を出せます。
参考:H2のナビ取付時に見られたウッドパネル内装の記述(後付け内装の存在確認)
モニター埋め込みやナビ移設を伴う作業では、配線延長の品質が後々を決めます。実例では、センターパネルを外して純正配線コネクターを確認し、エアコン操作パネルを後方へ移設するために“配線を1本1本延長して製作”し、パネルをカット→樹脂パテ等で成形→仮組を繰り返して位置決めする、という工程が紹介されています。整備工場目線では、この「延長部のハンダ/圧着方式、収縮チューブ、引っ張り荷重の逃がし、ノイズ対策」を標準化できると、クレームの多くを事前に潰せます。
参考:H2のモニター埋め込み・ナビ移設での配線延長とパネル成形の実作業
【電装絡みのチェック項目】
ハマー内装で「やって良かった」が出やすいのが、天張り(ルーフライナー)やピラー周りの張替えです。販売・施工事例として、天張りをアルカンターラで張替えるカスタムが紹介されており、視界に入る面積が大きい分、車内の印象が一気に変わります。整備士としては、天張りを触る=ルームランプ配線やクリップ、ピラー内の取り回しに介入することになるため、作業前にSRS(エアバッグ)関連の有無や配線の固定状態を必ず確認し、異音の元になりやすいクリップ欠品も同時に潰すと品質が上がります。
参考:H2の内装張替え(天張りアルカンターラ張替え)事例ページ
アルカンターラ系素材は高級感が強い一方で、手の脂やホコリの乗り方がレザーと違い、メンテナンスを誤るとテカりが出ます。納車時に「ブラッシング方向」「強い溶剤を避ける」など最低限の扱い方を添えると、施工品質が長持ちしてリピートにもつながります。さらに、天張り垂れの原因が“接着剤の劣化”だけでなく、下地ボードの粉化や吸湿にあるケースもあるため、表面だけ張り替えても再発する可能性を説明し、必要なら下地補修まで提案するのが誠実です。
【天張り作業の落とし穴】
ハマー内装の“意外に効く”独自視点は、カスタムや張替えそのものより「異音(ビビり・カタカタ)を整備メニューとして扱う」ことです。内装を分解する車は、既にどこかのパネルが浮いていたり、樹脂片が出ていたり、走行中に音がするなどの兆候があることが少なくありません。実際に、インパネの浮きや樹脂片、カタカタ音をきっかけに内装を外す事例もあり、原因究明の入口が“音”であるケースが現場では多いです。
参考:H2で異音やパネル浮きをきっかけにインパネ脱着に至った事例
ここで整備士が価値を出せるのは、異音を「部品交換」ではなく「再現→切り分け→復元品質」で解決することです。例えば、センターパネル脱着で言及されているように爪金具が落ちる・クリップが弱る・配線束がパネル裏に当たる、といった要素は、組み上げの僅かなズレで音になります。点検時は、走行再現が難しければ、停車状態で手で荷重をかけて音源を探り、当たり面にフェルトや緩衝材を追加し、締結トルクを均一化するだけで体感が大きく変わります。
参考:脱着時に注意すべき爪・金具・配線干渉の記載(異音の原因になりやすい)
【異音診断を商品化するコツ】
ハマー内装の整備・張替え・電装作業は、単発の作業に見えて「複合品質」になりやすいのが特徴です。たとえばシート張替えは縫製の美しさだけでなく、シート脱着時にフロアの配線を噛ませない、内装樹脂を傷つけない、復元後にシートレールの締結と異音を確認する、という整備的なプロセスがあって初めて完成します。ナビやモニター作業も、画面が映ることよりも、延長ハーネスの耐振動性、パネル成形の干渉有無、熱の逃げ、配線の固定、将来の脱着性(次の整備でまた開けられるか)までを設計すると“良いカスタム”になります。
また、ハマー内装はパーツが大きく、作業時間が読みづらいので、工数の説明を丁寧にするほどトラブルが減ります。センターコンソールの脱着手順にあるように、ビス点数が多く段取りが重い車は、途中で作業を止めるほど復元不良のリスクが上がるため、「今日はここまで」がやりにくい部類です。見積もり段階で、分解して初めて分かる追加作業(クリップ欠品、過去の加工、配線の無理な延長)を“発見時の連絡ルール”として合意しておくと、現場のストレスとやり直しが激減します。
整備士向けに最後に一つだけ、現場の言葉に落としておきます。ハマー内装は「豪華にする」より「ちゃんと戻す」が難しい車です。だからこそ、張替え・天張り・配線・パネル脱着を、全部“復元品質”で語れる工場は強い。仕上がりの写真が映えるのはもちろんですが、納車後に静かで、触ってもガタがなく、次の整備で素直に外せる――そこまで作り込んだ内装は、派手さ以上に評価されます。