

GFRPのバンパーは衝撃を受けると鉄より先にヒビが入り、5,000円以上の修理費が発生することがあります。
GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)は、ガラス繊維をエポキシやポリエステルなどの樹脂で固めた複合材料です。「プラスチックなのにそんなに強いの?」と思う方も多いでしょう。数字で確認すると、その実力がよくわかります。
一方向に繊維を揃えた一方向GFRP(Vf60%)の引張強度は約900MPaで、炭素鋼S45Cの570MPaを上回ります。ガラスエポキシ積層板(G-10)でも引張強度は約300MPaほどあり、アルミA5052の260MPaと同等以上です。つまり強度そのものは、十分に金属と渡り合えるレベルです。
注目すべきは「比強度(引張強度÷密度)」という指標です。
| 材料 | 密度(g/cm³) | 引張強度(MPa) | 比強度(×10⁴) |
|------|------------|--------------|----------------|
| GFRP(一方向 Vf60%) | 1.90 | 900 | 4.8 |
| ガラエポ G-10 | 1.90 | 300 | 1.6 |
| 炭素鋼 S45C | 7.80 | 570 | 0.7 |
| アルミ A5052 | 2.70 | 260 | 1.0 |
| アルミ A7075(超々ジュラルミン) | 2.80 | 570 | 2.1 |
この表を見ると、一方向GFRPの比強度は炭素鋼の約7倍、超々ジュラルミンの約2倍以上です。これが「GFRPは金属の約3倍の比強度を持つ」と言われる根拠です。つまり比強度が高いということですね。
弾性率(剛性・たわみにくさ)については、GFRPは引張弾性率が35GPa程度で、炭素鋼の210GPaには大きく劣ります。強くても「たわみやすい」素材であることは覚えておく必要があります。これはGFRPの弱点の一つです。
自動車のドアパネルやバンパー、ボンネットにGFRPが使われる主な理由は、この高い比強度と成形の自由度にあります。複雑な曲面形状でも金型を使って一体成形できるため、鉄やアルミより製造コストを抑えながら、軽量で十分な強度を持つ部品を作れるのです。
参考:GFRPを含むFRPの物性値の詳細な数値比較はこちら
スーパーレジン工業「CFRPの物性と特徴」(繊維強化プラスチックと金属材料の物性比較表)
「カーボン(CFRP)とFRP(GFRP)って何が違うの?」これは自動車好きなら一度は持つ疑問です。どちらも繊維を樹脂で固めた複合材料ですが、強度と剛性には明確な差があります。
まず繊維そのものの性能が違います。
| 繊維 | 密度(g/cm³) | 引張弾性率(GPa) | 引張強度(MPa) |
|------|--------------|----------------|----------------|
| Eガラス(GFRP用) | 2.60 | 72〜75 | 3,200〜3,430 |
| PAN系炭素繊維(CFRP用) | 1.75〜1.93 | 230〜588 | 3,300〜7,000 |
引張強度は双方ほぼ同じ水準ですが、炭素繊維の引張弾性率はガラス繊維の3〜8倍です。これが最大の違いです。弾性率が高いほど「たわみにくく、剛性が高い」ということになります。
結果として、CFRPで作った車体パネルはGFRPより格段に硬く変形しにくい半面、コストが跳ね上がります。一方向CFRPの引張強度は2,400〜2,800MPaに達し、GFRPの約3倍です。比強度で見ても、一方向CFRPは15〜18と、GFRPの4.8を大きく超えます。これは使えそうです。
では自動車で実際にどちらが使われているのでしょうか?
一般市販車のバンパー・エアロパーツ・ボンネット・内装パーツにはGFRPが広く採用されています。理由はコストと成形性です。GFRPはポリエステル樹脂やエポキシとガラス繊維を組み合わせ、手積み(ハンドレイアップ)や金型プレス成形で比較的安価に製造できます。一方、CFRPはF1やスーパーカー、一部のスポーツカーのモノコック・ルーフ・ドアパネルなどに使われており、量産コストが大きな課題です。
コストを抑えて軽量化したいならGFRPが原則です。
ロータス社は2023年に新型車のテールゲートやサイドシルに低密度GF-SMC(ガラス繊維シートモールディングコンパウンド)を採用し、アルミと同等の軽量効果を実現したと報告しています。これは、GFRPがCFRPの補助素材ではなく、実用的な車体構造材として十分な強度を持つことを示す好例です。
参考:ロータス新型車へのGFRP採用事例
日経クロステック「帝人のGFRPがロータスの新型車に採用、アルミと同等の軽量効果」
「軽くなると燃費が良くなる」とはよく言われますが、どれくらいの効果があるのでしょうか?ここを具体的に把握しておくと、GFRPパーツへの投資判断がしやすくなります。
鉄の比重は約7.8、GFRPの比重は約1.9です。同じ体積で比べると、GFRPは鉄の約1/4の重さしかありません。たとえば鉄製のボンネットが8kgだとすると、GFRP製に置き換えると約2kgになる計算です。これで6kgの軽量化になります。
車体の軽量化と燃費の関係については、一般的に「車両重量が10%減少すると燃費が約6〜8%改善する」というデータがあります(メーカー・走行条件により差異あり)。仮に車重1,500kgの車で60kgを軽量化できれば、単純計算で燃費が約2.5〜3%改善する可能性があります。
ただし、GFRPの軽量化効果を引き出すには素材特性を正しく活かした設計が条件です。
GFRPは引張強度は高い一方、圧縮強度や衝撃強度(エネルギー吸収性能)は金属より劣るケースがあります。自動車メーカーはこの特性を踏まえ、衝撃を受けやすい部位には鉄や高張力鋼板を残し、空力デバイスや外装パネルなどにGFRPを使うハイブリッド設計を採用しています。これが安全性と軽量化を両立する基本設計です。
市販のFRP製エアロパーツを後付けする場合も同様の考え方が必要です。たとえばフロントバンパー全体をGFRP製に交換すると、純正PP樹脂製より数kg軽量化できることがあります。しかし接触事故時に割れが生じやすいため、走行時の接地リスクや駐車時の縁石ヒットには純正より注意が必要です。軽量化と引き換えに衝撃への対応を意識しておく、これが条件です。
GFRPの強度には優れた面がある一方、見落とされがちな弱点があります。自動車で使う場合は特に重要です。
まず「衝撃(集中荷重)」への弱さです。
島津製作所の疲労試験データによると、ポリアミド樹脂にガラス繊維20%配合したGFRPの静的引張強度は96MPaです。この素材に繰り返し負荷をかける疲労試験では、引張強度の80%(約77MPa)の応力で繰り返し破断が発生することが確認されています。繰り返し衝撃を受けると、静的強度より大幅に低い応力でも破断に至る——これがGFRPの疲労特性の実態です。
厳しいところですね。
次に「紫外線劣化」の問題です。
GFRPはプラスチック樹脂が主成分であるため、屋外で紫外線にさらされると樹脂の分子結合が切断されます。具体的には以下のような変化が段階的に起きます。
- 初期段階: 表面が白っぽい粉を吹くチョーキング現象が発生し、触るとザラザラした感触になる
- 中期段階: 色褪せ・くすみが進行し、ツヤがなくなる
- 重度段階: 樹脂の柔軟性が失われてヒビ割れ・剥がれが発生し、構造的な強度も低下する
この劣化を防ぐ最も効果的な方法は、GFRP表面をゲルコートやトップコートでしっかりコーティングし、紫外線吸収剤を含む塗料で仕上げることです。適切に施工されたGFRP製品は10年経過しても大きな色褪せなく強度を維持できる実績があります。
自動車のFRP製エアロパーツを屋外保管・常用する場合は、年に1〜2回の洗車コンパウンド磨きとUVカット系カーコーティングの施工が、劣化防止に効果的です。紫外線対策を怠ると強度低下につながるため、これは必須と考えておきましょう。
参考:FRPの紫外線劣化メカニズムと対策の詳細
山陽レジン工業「FRPの弱点『紫外線劣化』て気にするべき?影響と対策をプロが解説」
FRP製エアロパーツを選ぶ・修理するうえで、GFRP素材の強度特性を理解しておくと出費を抑えられます。これは知っていると得する情報です。
まず素材の種類を把握することが重要です。エアロパーツには主に以下の3素材があります。
- FRP(GFRP)製: 軽量で強度も十分、補修しやすい。割れても形が崩れにくいので修理しやすい。ただし衝撃で割れやすい
- PP(ポリプロピレン)製: 純正採用が多い。柔軟性があり衝撃に強いが、変形すると復元が難しい
- ウレタン(PU)製: 柔らかく傷が付きにくいが、形状維持性はFRPより劣る
FRP製は割れても「欠片が残る」ため、欠損部分さえ保管しておけば補修しやすいのが特徴です。欠片をきちんと集めておけば修理費が大幅に抑えられる可能性があります。
修理費用の目安は以下の通りです。
| 損傷の程度 | 修理費目安 |
|-----------|-----------|
| 小さなひび割れ・擦り傷 | 3,000円〜5,000円程度 |
| 10cm程度の割れ(パテ・FRP補強) | 5,000円〜10,000円程度 |
| 20cm以内の割れ(1か所) | 約14,000円程度 |
| 大きな割れ・欠損(広範囲) | 15,000円〜(状況次第) |
| バンパー塗装込みの大型修理 | 25,000円〜40,000円程度 |
市販のFRP補修キットを使えば材料費だけで数千円からDIY補修も可能です。基本的な手順は、①損傷部位の脱脂・清掃 → ②ガラスマットと樹脂で裏から積層 → ③硬化後にパテで整形 → ④サフェーサー → ⑤塗装、という流れです。
ただしFRPは塗装を含めた仕上がりの質がプロと素人では大きく異なります。深い割れや欠損が大きい場合は、板金塗装専門店に相談することが安心です。FRP補修の経験が豊富な専門店なら、費用の見積もりを無料で出してくれるところも多くあります。
エアロパーツ装着時は「強い衝撃を受けた後は必ず裏側も確認する」のが基本です。表面のチェックだけでは見えない内部クラックが広がっていることがあります。放置すると修理費が膨らむため、なるべく早く専門店に見せることをおすすめします。
参考:エアロパーツ修理費用の相場と業者選びのポイント
池内自動車「エアロパーツの塗装・修理!費用相場と賢い業者の選び方」
「GFRPを選べばどれも同じ」と思っていたなら、それは少し危険な認識です。実はGFRPの強度は製法・繊維方向・ガラス含有率によって大きく変わります。これはあまり知られていない視点です。
最も大きく強度を左右するのは「繊維の方向性と含有率」です。
繊維を一方向に揃えた「一方向材(UD材)」は、繊維方向の引張強度が900MPaに達しますが、繊維に直角方向の強度は大幅に低くなります(異方性)。一方、繊維をランダムに配置したチョップドストランドマット(CSM)を使ったハンドレイアップ品は等方性に近くなりますが、強度は300MPa以下になることも多くあります。
つまり同じ「GFRP製」でも、製法によって引張強度が3倍以上変わることがあるということですね。
| 製法 | 強度特性 | 自動車向け用途 |
|------|---------|--------------|
| ハンドレイアップ(手積み) | 等方性、比較的低強度 | エアロパーツ、カスタムパーツ |
| SMC(シートモールディング) | 等方性、中強度、量産向き | バンパー、ボンネット、ドア |
| 一方向積層(UD) | 高強度だが異方性あり | 構造部材、補強材 |
ガラス繊維の含有率(Vf)も重要で、Vf60%の一方向材と市販品で多いVf20〜30%品では引張強度に数倍の差が出ます。また、島津製作所のデータではガラス繊維20%配合品の引張強度は96MPaという数字が示されており、UD材の900MPaとは全く別物であることがわかります。
GFRPを選ぶ際の基本的なポイントをまとめると、強度が必要な構造部位にはSMC成形品以上、外装パネルやエアロパーツにはハンドレイアップ品でも十分な強度が得られますが、紫外線対策のゲルコート仕上げかどうかを必ず確認することです。これが条件です。
また、GFRP部品を取り付ける際に「締め過ぎ」は厳禁です。GFRPはネジ穴周辺の圧縮方向の強度が金属より低く、トルクをかけすぎると割れが生じます。純正の鉄製ブラケットを流用する場合は必ずトルク管理を行いましょう。「ちょっと固めに締める」という感覚が、GFRPのヒビ割れを招く原因になります。これはやってしまいがちな失敗です。
参考:GFRPを含む強化プラスチックの製造・特性に関する詳細な解説
日興技研「GFRP・CFRP・FRPとは?強化プラスチックの種類・特徴・用途を解説」

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