

フロントリップを付けたまま車検に臨もうとすると、「絶対に外さないといけないのでは?」と思っている人が多いですが、実はフロントリップが地面に擦るほど低くても最低地上高の測定対象外のため、車検に通ることがあります。
フロントリップ(フロントスポイラー、エアダム)は「道路運送車両法」において「指定部品」に分類されています。これが何を意味するのか、まず押さえておきましょう。
指定部品とは、国土交通省が「ユーザーが好みで追加・変更する可能性が高く、安全面や環境面への影響が比較的少ない部品」として定めたカテゴリです。フロントスポイラーやエア・ダムがこれに含まれます。
指定部品をボルト・ナット・両面テープ・接着剤といった「固定的取付方法(溶接・リベット以外)」で取り付けた場合、車検証の記載事項(全長・全幅・全高)に変更があったとしても、法律上は「変更なし」とみなされます。つまり構造等変更検査が不要です。
これは重要なポイントです。
「フロントリップを付けると全長が数センチ伸びるから、構造等変更手続きが必要では?」と考えている人は少なくありません。しかし指定部品をボルト止め・両面テープで取り付けている限り、どんなにサイズが変わっても構造等変更検査なしで通常の継続車検(車検更新)として受検できます。これが原則です。
ただし「構造等変更が不要」と「車検に通る」は別の話です。指定部品であっても、保安基準そのものに適合していなければ車検は通りません。以降のセクションで、その保安基準の中身を詳しく解説していきます。
参考:国土交通省 依命通達「自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて」にフロントスポイラーが指定部品として明記されています。
国土交通省:自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて(依命通達)
フロントリップが車検に通るかどうかを左右する、もっとも厳格な基準が「角部の形状」です。角が鋭利かどうか、ここが最初の関門になります。
道路運送車両の保安基準では、フロントリップ(バンパー下部のエア・スポイラ)の角部について次のように定めています。
| 角部の高さ(h) | 角部の間隔(δ) | 必要な角部半径 |
|---|---|---|
| 5mm以上 | ー | 半径5mm以上の丸み |
| 5mm未満 | 25mmを超え40mm以下 | 半径1.0mm以上 |
| 5mm未満 | 25mm以下 | 半径0.5mm以上 |
つまり、バンパー下部に取り付けるフロントリップの先端は、半径5mm以上の丸みが必要です。半径5mmというのは、直径1cmの円の縁の丸みと同じサイズ感です。ちょうど消しゴムの角くらいの丸みをイメージするとわかりやすいでしょう。
ただし、角部の硬さが60ショア(A)以下の柔らかい素材であれば、この半径の要件が免除される場合もあります。実際、ウレタンやゴム製の柔らかいフロントリップはこの例外に当てはまりやすく、形状が多少鋭利でも適合しやすい点が特徴です。
問題になりやすいのは、FRP(繊維強化プラスチック)製の硬いフロントリップです。硬い素材で角部が鋭利に仕上がっていると、半径5mmの基準をクリアできず車検不適合になります。見た目がシャープでカッコいいデザインのものほど、この基準で引っかかるリスクが高い点を覚えておきましょう。
参考:国土交通省 保安基準告示(エア・スポイラの角部基準)の詳細はJAFの資料でも確認できます。
「フロントリップを付けたら最低地上高が9cmを切る」という理由で、車検前に外してしまう人がいます。しかしこれは、損をしているかもしれない行動です。
道路運送車両の保安基準が定める最低地上高(9cm以上)の測定対象には、「エアダムスカート・エアカットフラップなど樹脂製のもの」は含まれません。つまり、樹脂・ウレタン・ゴム製のフロントリップは最低地上高の計測対象外です。
もう少し具体的に説明します。地面と車両底面の距離を測定する際、タイヤと連動するブレーキローターの下端やサスペンションのロアアームなども対象外です。そして同様に、樹脂製のフロントリップも対象外の扱いになります。
極端な例では、「路面に擦るほど大型のフロントスポイラーでも、それだけを理由に車検は落ちない」というケースもあるほどです。
ただし、注意が必要です。
FRP製の硬い素材のフロントリップで、なおかつ地上高が実質的にゼロに近い場合は、検査官が「安全な走行に支障がある」と判断して不合格とすることもゼロではありません。また、リップによって物理的に検査機器が車両底部に入らなくなった場合、検査自体が受けられないケースも報告されています。
最低地上高9cmが原則です。リップが測定対象外だとしても、ある程度の地上高を確保しておくのが現実的な対策といえます。
参考:最低地上高と測定対象外部品の詳細はこちらで確認できます。
Auto Messe Web:エアロパーツは最低地上高9cm未満でも保安基準適合になる理由
「フロントリップは車検に通る」という情報だけを信じて準備不足で臨むと、思わぬところで不合格になることがあります。実際に車検で引っかかりやすいNGパターンを整理しましょう。
NGパターン① 最外側(車幅)からはみ出している
フロントリップの横方向の張り出しが、バンパー上端より上部で車体の最外側(最も外側)より外に出ていると保安基準違反になります。バンパーの下端より下方にあるリップは、前後方向の突出については例外規定があります。ただし左右方向(幅方向)については例外が狭く、車体の最外側から165mm以内に収まっていること、もしくはウイング端部と車体との隙間が20mm以内であることが条件です。サイドへの張り出しが大きいウイングレット形状のリップは特に注意です。
NGパターン② FRP製リップの角部が鋭利なまま
前述の通り、FRP製など硬い素材で仕上げられたリップは角部の形状が問われます。半径5mm未満の鋭利なエッジが残っているものは保安基準不適合です。DIYで仕上げたものや、格安の海外製品にはこのケースが多いため注意しましょう。ヤスリで面取りをして半径5mm以上の丸みをつければ対応できますが、確実に5mm以上あるかどうかを実測することが条件です。
NGパターン③ 全長が車検証記載値より±3cmを超えている(溶接・リベット取り付けの場合)
ボルト止めや両面テープなら指定部品扱いで変更なしとみなされますが、溶接やリベットで取り付けた場合は「恒久的取付方法」になります。この場合は全長の変化が車検証の値から±3cm以内でないと、構造等変更検査が必要になります。カスタムショップで恒久的に固定された状態で購入した場合は、この点を必ず確認しましょう。
いずれも知っておけば回避できるポイントです。厳しいところですね。
フロントリップを購入する際、「車検対応品」「保安基準適合品」と書いてあれば安心と感じる人は多いでしょう。しかし、ここに落とし穴があります。
「車検対応品」の表示はメーカーが付けているものであり、国が認証したわけではありません。メーカーが想定した取り付け方法・取り付け車種で正しく装着された場合のみ、保安基準を満たすという前提条件があります。
チェックすべき点を具体的に挙げると次のようになります。
- 対応車種が自分の車種・年式に一致しているか
- 取り付け方法がボルト・ナットまたは両面テープ(指定部品の固定的取付方法)であるか
- 角部の仕上げが半径5mm以上の丸みを持っているか(FRP製の場合は特に確認)
- 張り出し幅(サイド方向)が車体の最外側より内側に収まっているか
- メーカーが保安基準のどの条項に適合しているかを明記しているか
最後の点は特に重要です。「車検対応」と書くだけで根拠を示していない商品は、実際に検査をしたわけではないケースもあります。購入前にメーカーのウェブサイトや問い合わせで適合根拠を確認できる商品を選ぶと安心です。
また、社外品の中には経年劣化で角部が欠けたり割れたりするものもあります。割れたリップの断面は鋭利になりやすく、当初は車検対応品でも使用しているうちに不適合になるリスクがある点も知っておきましょう。これは使えそうな情報ですね。
車検前に気になる場合は、ディーラーや陸運局の「予備検査(テスター屋)」を活用する方法があります。本番の検査前に状態を確認できるため、「通るかどうか不安」というストレスを事前に解消できます。
参考:エアロパーツの車検基準と選び方の詳細はこちらが参考になります。
車検の速太郎:エアロパーツが付いていても車検に合格できる?具体例や取り付け方法
「車検は通ったけど路上で違反になる」というケースがあります。これが意外に知られていない落とし穴です。
車検に合格することと、公道走行が常に合法であることは別の問題です。車検に通った状態であっても、その後に保安基準に違反する改造(例:フロントリップを付け足す、損傷した部分が鋭利になるなど)をした場合は「不正改造」として扱われます。
不正改造に対する罰則は、道路運送車両法第99条の2により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。また、改善命令を受けた場合、15日以内に整備して陸運支局等へ現車提示する義務が生じます。この整備命令に従わなかった場合、さらに50万円以下の罰金が科される可能性があります。
路上での取り締まりは、国土交通省と警察が合同で実施する「不正改造車排除運動」(毎年6月が強化月間)の期間中に特に多くなります。知らないでいると、思わぬ出費につながるリスクがあります。
整備不良として検挙された場合も、制動装置などの整備不良は違反点数2点・罰金9,000円、そのほかの保安基準違反は1点・7,000円の反則金が科されます。金額は小さく見えるかもしれませんが、点数が加算される点では痛いですね。
フロントリップ装着後は定期的に状態を確認することが大切です。特にFRP製リップは走行中の小石や段差による割れが起きやすく、割れた断面が鋭利になっていると保安基準違反になります。定期的に目視確認するだけで、このリスクを大きく減らせます。
参考:不正改造の罰則・取り締まり基準について正式な情報はこちらで確認できます。

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