

アルトリフトアップは「何mm上げるか」より先に「どの方式で上げるか」を決めると、整備品質が安定します。代表的には、車高調整(車高調)、スペーサー方式、アップサス(スプリング交換)の3系統です。方式ごとに“上げ幅の自由度”と“副作用が出る領域”が違うため、ユーザー用途(林道・雪道・段差対策・見た目)を最初に言語化してから部品を選ぶのがコツです。
スペーサー方式のメリットは、スプリングもショックも純正を活かしやすく、乗り心地・耐久面で読みやすい点です。たとえばHA36向けのスペーサー方式では、フロント約35mm/リア約35mmアップの事例があり、数値以上に上がったように見えるという言及もあります(ボディ形状の影響)。(参考:シルクロードの開発記事)
また同記事では、アルトワークス(RS)と通常アルトでフロントショックが異なり、ロッド太さやスタビブラケット有無によりスペーサーサイズを分けた、という実務寄りの注意点が書かれています。ここは現場で「型式は合ってるのに合わない」トラブルの温床なので、部品手配時点で“ワークス/RS/通常”“2WD/4WD”の枝分かれを必ずチェックしてください。
一方、車高調整(車高調)系はセッティング自由度が大きい反面、過度な上げ幅でジオメトリが崩れやすく、後述のアライメントと補機類(センサー類)の影響を無視できません。市販キットでも「フロント~+40mm/リア~+40mm」程度を“純正系統に不具合が出ない範囲”として設計している例があり、メーカー側も上げ幅に上限思想を持っています。まずはこの“おおむね40mm圏内”を安全側の目安として捉え、そこから先は追加対策(補正パーツや点検頻度増)込みで提案すると説明責任を果たしやすいです。
整備士向けの手順としては、部品を組む前に次を決めておくと後戻りが減ります。
・目標の上げ幅(例:30~40mm)
・方式(スペーサー/アップサス/車高調整)
・アライメントを「測定だけ」か「調整込み」か(多くの場合は調整込みが正解)
・タイヤ外径を変えるか(外径アップは干渉チェックの工数が増える)
【参考リンク:製品仕様(上げ幅目安・注意事項)】
Spiegel:アルトワークスHA36S向けリフトアップキット仕様と注意事項(~+40mm目安、制御系への影響注意)
アルトリフトアップ後に「走れるけど気持ち悪い」状態を作る最大要因は、アライメントの置き去りです。リフトアップするとアーム角度が変わり、静止状態のキャンバーやトーが変化しやすく、直進性・ステア戻り・タイヤ摩耗に直結します。特にフロントは“トー”が体感に出やすく、ユーザーが最初に不満を言うのもここです。
現場でありがちな流れは、キャンバー補正(キャンバーボルト等)を入れたら「トーインが付いた」→そのまま納車→跳ねる・フラつく・片減り、というパターンです。実際、キャンバーボルトを入れるとトーインが付くのでタイロッドでトー調整を行った、という作業例も複数見られます。つまり、キャンバー補正は“単独で完結しない”前提で工程を組むべきです。
おすすめの段取りは次の通りです。
「どのくらいの数値が正解か」は車両状態や用途で変わりますが、少なくとも“調整できる構造の範囲で、トーを仕上げる”ことが品質ラインです。アライメントテスターが使えるなら理想ですが、最低でもハンドルセンターと直進性、タイヤ摩耗の出方(片減り)を説明できる状態で返すとクレームが減ります。
【参考リンク:整備現場のアライメント作業例】
グーネットピット:スズキ アルトのアライメント調整(キャンバー・トー補正の作業例)
リフトアップは“車高が上がるだけ”ではなく、駆動系・ブーツ類の角度条件も変えます。ここで意外と効くのが、ドライブシャフトブーツの「蛇腹の汚れ方」を点検指標にする方法です。これは派手なカスタム談義よりも、日々の整備品質に直結する実務ネタなので、整備士ブログの独自価値にもなります。
ブーツの蛇腹は通常まんべんなく汚れますが、角度が厳しくなると“蛇腹同士が当たっている部分”が走行中に擦れて、そこだけ汚れが落ちたり(=きれいな帯が出たり)します。DIY Laboの解説では、この「汚れていない(きれいな)箇所がある」こと自体が、走行中に蛇腹がペタっとくっついているサインだと説明されています。ブーツは回転しているため、当たり→離れを高速で繰り返し、摩耗して破けやすくなる、という理屈です。
さらに実務的に重要なのが、FF車で問題が出やすいのは左右均等ではなく「左側(助手席側)ブーツになりやすい」という指摘です。ミッション配置の関係で左のドライブシャフトが短く、角度変化の影響が出やすいという説明があり、点検時に“右側だけ見て安心しない”という注意につながります。リフトアップ車でも条件次第で同様の負担の偏りが出るので、定期点検のルーチンに「助手席側ブーツの蛇腹の汚れムラ確認」を入れると、予防整備の説得力が増します。
また、同解説では応急的・予防的な手として、当たりが出ている段にグリスを塗って摩耗を遅らせる方法が紹介されています。スプレー潤滑では持たず、落ちにくい“固めのグリス”がポイント、かつ全周に塗る必要があるという具体性があるので、記事内で「点検→兆候あり→対策」の流れに落とし込めます。
【参考リンク:ブーツ寿命を延ばす点検と対策(汚れムラ・助手席側チェック・グリス塗布)】
DIY Labo:ドライブシャフトブーツの寿命を延ばす方法(汚れ方で当たりを判定、助手席側を重点点検)
アルトリフトアップで見落とされがちなのが、サスやタイヤだけでなく「車高変化に伴う制御系の前提条件」まで変わる点です。市販キットの注意事項にも、ヘッドライトオートレベリング機能、衝突被害軽減ブレーキ機能、誤発進抑制機能などについて、装着に伴う影響は考慮していない/車高変化でレーダー照射角が変わり制御に影響が出る可能性がある、と明記されている例があります。ここを読まずに作業すると、ユーザーが「警告灯が点いた」「効き方が違う気がする」と言ったときに説明が苦しくなります。
整備士としては、次のように“納車品質の一部”として扱うのが安全です。
・警告灯の有無をスキャンツールで確認(入庫時/納車前で比較)
・ヘッドライトの照射位置を確認(光軸は地域や設備で扱いが異なるが、少なくとも確認と説明は行う)
・先進安全装備付き車は、取付前に「影響が出る可能性」を同意形成しておく(書面が望ましい)
ここは検索上位のカスタム記事だとさらっと流されることが多い一方、整備士向けの記事では“責任範囲と確認項目”として深掘りする価値があります。リフトアップは見た目の変更だけでなく、車両が環境を認識する前提(高さ・角度)にも触れる改造だ、という観点を入れると記事の信頼性が上がります。
【参考リンク:制御系への影響注意(オートレベリング・衝突被害軽減・誤発進抑制・レーダー角度)】
Spiegel:リフトアップに伴う制御・作動への影響の可能性(注意事項)
検索上位の“見た目・キット紹介”だけでは拾いきれない独自視点として、整備受け入れ時の「トラブル予防メモ」を作っておくと強いです。リフトアップはユーザーの満足度が高い一方、再入庫につながる小さな違和感(直進性、段差での突き上げ、異音、ブーツ飛び)も増えやすいので、先回りのチェック項目がそのまま工賃の正当化にもなります。
おすすめのメモ項目は次の通りです(現場でそのまま使える形に寄せます)。
・入庫時のタイヤ外径と銘柄(外径差はスピード表示・干渉・フィーリングに影響)
・上げ幅(前後・左右差)と最終地上高(次回点検で“下がった/上がった”を判断できる)
・アライメント:トー調整の有無、ハンドルセンター、試走の結果
・助手席側ドライブシャフトブーツ:蛇腹の汚れムラ、グリス付着、にじみ
・先進安全装備:警告灯、作動確認、ユーザー説明の実施記録
加えて、ユーザー説明では“メリット”と同じくらい“維持の作法”を伝えるとリピートにつながります。例えば「リフトアップ後は、点検のたびにブーツの蛇腹の汚れムラを見て早期発見する」「タイヤを太く・外径大きくするなら干渉チェックをセットでやる」「直進性の違和感はトーで改善できることが多い」など、具体的な言い回しがあると強いです。
最後に、整備士ブログとしての“意外性”を一つ入れるなら、「ブーツは破れてから交換」ではなく「汚れムラの段階で負担を読める」という話は刺さります。派手さはないですが、現場で本当に役に立つ情報が“整備士向け”記事の価値になるため、ここを丁寧に書くことでAIっぽい薄味からも自然に離れられます。

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