ウイングステー自作で車検落ちを防ぐ材料と手順

ウイングステー自作で車検落ちを防ぐ材料と手順

ウイングステーを自作するための材料・手順と車検対応の完全ガイド

自作したステーのエッジを面取りしないと、車検でその場で不合格になります。


この記事でわかること
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材料の選び方

アルミ・鉄・ステンレスの特徴と板厚の目安を解説。自作に失敗しない素材選びのポイントをまとめます。

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製作の手順

型紙取りから切断・穴あけ・溶接・塗装まで、自作ステー製作の具体的な工程を順番に解説します。

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車検・保安基準の注意点

自作ステーが引っかかりやすいエッジ形状・サイズ規定・補強方法を、保安基準に基づいて具体的に説明します。


ウイングステー自作に使う材料の選び方|アルミ・鉄・ステンレスの違い





ウイングステーを自作するとき、最初に迷うのが素材選びです。よく使われる素材は大きく3種類あり、それぞれ特性が異なります。


まず「鉄(SS材・軟鋼)」は加工しやすく溶接もしやすいのが最大のメリットです。板厚3mm前後のフラットバーや鉄板を使う方が多く、プラズマカッターやグラインダーで整形できるため、自宅DIYでも取り組みやすい素材です。ただし錆びやすいため、完成後に塗装や防錆処理が必須になります。


次に「アルミ」は軽量なのが大きな魅力ですが、溶接の難易度は鉄よりかなり高くなります。特にA6063系は溶接すると熱影響部の強度が著しく低下するため、厚みを増す必要があります。サーキット走行を前提とする場合、強度面から7N01系(溶接可能なジュラルミン)やA5052系を選ぶ方も多いです。板厚はt=6〜10mm程度が目安とされています。アルミのTIG溶接には交流溶接機と専用の溶接棒(例:φ2.0の5356)が必要です。


「ステンレス」は耐食性が高く錆びにくいのが特長ですが、重量が増しやすく、加工の難易度も高めです。鉄とステンレスの溶接は技術的には可能ですが、素材の相性や熱収縮の違いに注意が必要です。


まとめると、入門者には「軟鋼(鉄)の板厚3mm前後」が最も扱いやすい素材です。


| 素材 | 重量 | 溶接難易度 | 耐食性 | 備考 |
|------|------|------------|--------|------|
| 鉄(軟鋼) | ⚫普通 | 🟢やさしい | ❌錆びる | 板厚3mm前後が基本 |
| アルミ(A5052) | 🟢軽い | 🟠難しい | 🟢良好 | t=6〜10mm、交流TIG必須 |
| アルミ(7N01) | 🟢軽い | 🟠やや難しい | 🟢良好 | SS材程度の強度あり |
| ステンレス | ❌重い | 🟠難しい | 🟢非常に良好 | 加工コスト高め |


ちなみに、サーキット走行用にアルミ一枚板でt=10mmを検討する方も多いですが、専門家からは「6063は溶接後に強度が下がるため、かなりの肉厚が必要」とのアドバイスがあります。強度の設計には慎重に向き合うことが条件です。


参考として、各素材のTIG溶接に必要な電流や溶接棒の選び方について詳しい情報が以下にまとまっています。


車のウイングステー溶接・制作の実例(フラットバーや鉄板を使った手順)。


ウイングステー自作の基本手順|型紙・切断・穴あけ・溶接の流れ

実際の製作工程は大きく5ステップに分けられます。それぞれのポイントを理解しておくと、完成度が大きく変わります。


ステップ1:型紙(ケガキ)を作る


既存のステーや純正ステーを外して、鉄板にマジックでケガきます。このとき、マジック線の少し外側をなぞって切断するのがポイントです。内側に入りすぎると後から修正が効きにくくなります。


ステップ2:切断する


プラズマカッターやグラインダーの切断砥石を使って切り出します。プラズマカッターはアーク光でマジック線が見えにくくなるため、溶接面などで遮光すると精度が上がります。アルミの場合はバンドソーが静かで直交度も出やすくておすすめです。2枚以上同じ形状が必要な場合は、クランプや点付け溶接で固定してから同時に加工すると、穴位置のズレを防げます。


ステップ3:穴あけ・面取り


ボルト穴の位置を正確に合わせるため、2枚同時に点付け溶接して固定した状態でドリル加工するのが定番の方法です。穴あけ後は必ずエッジをグラインダーや電動ヤスリで面取りしてください。これは後述する車検の保安基準にも直接関わります。面取りは必須です。


ステップ4:溶接・組み付け


フラットバーや角パイプを溶接して形状を仕上げます。溶接後はグラインダーでビードを整えるとよりきれいに仕上がります。組み上がったパーツを実際のウイングに当てて、穴位置や平面度を確認してから本締めしましょう。


ステップ5:塗装・防錆処理


鉄製の場合は必ず塗装が必要です。溶接ビードを残したまま塗装すると凸凹が目立つため、ビードをグラインダーで平らにしてから塗装すると仕上がりがきれいです。黒の缶スプレーやウレタン塗料を使う方が多く、コスト面でも手軽です。


工程は多いですが、手順通りに進めれば問題ありません。


アルミ角パイプを使った足部分の溶接・製作実例はこちらに詳しく掲載されています。


ウイングステー自作で見落としがちな車検の保安基準|エッジ形状とサイズ規定

自作ステーが原因で車検に落ちるケースで最も多いのが、ステーのエッジ(角・端部)の処理不足です。意外ですね。


道路運送車両法の保安基準では、車体外面から外側に向かって突出した部分に対して、直径100mmの球体が直接触れる箇所はR2.5mm(半径2.5mm)以上の丸みが必要と定められています。自作したアルミ板や鉄板のステーは、切断面や肉抜き部分に鋭利なエッジが残りがちです。この処理を怠ると、形状や寸法が問題なくても検査官の判断で不合格になります。


保安基準を要約すると、次のポイントをすべて満たす必要があります。


- ステーを含むウイング全体がリヤバンパー後端よりはみ出さないこと
- ウイング側端がボディ最外側から165mm以上内側にあること(翼端板と車体の隙間が20mm以下の場合は除く)
- エッジがR2.5mm以上の丸みを持っていること(または硬度が60ショア以下であること)
- 溶接またはボルト・ナットで確実に固定されていること


「60ショア以下」とは、おおよそ消しゴム程度の硬さです。硬いアルミや鉄のステーをエッジ処理せずに取り付けた場合、硬度条件も形状条件も満たさないことになります。


自作ステーのエッジ対策として有効なのは、グラインダーによる研磨で面取りする方法と、スキマテープなどのゴム材(耐熱性のある両面テープ付きゴム)を貼り付ける方法です。後者はコストが安く、温度範囲が−50℃〜150℃のものを選べば走行中の熱にも対応できます。車検を通すためにエッジの丸め処理は必須の作業と覚えておけばOKです。


GTウイングの保安基準に関する詳細な解説は以下の記事が参考になります。


ウイングステー自作後のトランク補強方法|当て板なしだとトランクが凹む理由

自作ステーを製作しても、取り付け部の補強を怠ると走行中にトランクが変形・陥没するリスクがあります。これが、補強を後回しにした人が最も後悔するポイントです。


GTウイングが発生するダウンフォースは、100km/h走行時の調整次第ですが40〜50kg程度とされています。これだけの荷重が左右2本のステーの取り付け点に集中してかかります。トランクの外板は、一般的に0.8mm〜1.0mm程度の薄い鋼板で作られています。ステーをボルト1本で留めただけでは、ほぼ確実にトランクが凹みます。重いですね。


補強方法のポイントは以下の通りです。


- 当て板の使用:トランクリッド裏側のステー固定部に、市販のアルミステーや鉄プレートを当て板として追加し、荷重を広い面積に分散させます。


- ゴム板の挿入:ステーとトランク表面の間に、厚さ3mm程度のゴム板を整形して挟みます。トランクはほとんどの場合わずかに湾曲しているため、そのままボルト締めするとトランクを変形させてしまいます。ゴム板が曲面に追従して密着性を高め、防水・防錆にも役立ちます。


- 大径ワッシャーの使用:裏側のナット締め時に大きめのワッシャーを使うことで、荷重をさらに分散できます。


- トランク骨格への固定:当て板をトランクリッド裏側の骨格(リブ)にも固定すると、強度が大幅に向上します。


締め付け順序は「表側:ステー→ゴム板→トランク表面」「裏側:トランク裏面→ゴム板→ワッシャー→ナット→当て板→骨格」が基本です。


シリコンコーキング剤を隙間に充填しておくと防水・防錆効果がさらに高まります。これは使えそうです。


GTウイングの取り付けとトランク補強方法の詳細は以下を参考にしてください。


GTウイングの取付方とトランクの補強方法とは|グーネットマガジン


ウイングステー自作の独自視点|スワンネック形状にする利点と製作難易度の現実

スワンネック型のウイングステーは、近年のスーパーGT車両やGT3マシンで採用されている形状で、ウイング翼面の上ではなく下からステーを通す構造です。通常の下付きステーと比べて、翼面上面の気流を妨げないため理論上のダウンフォース効率が高まります。この点から「スワンネック化したい」と考えるDIYユーザーが増えています。


しかし、スワンネックステーを完全に自作しようとすると、製作難易度は一気に上がります。アルミ6mm厚の板から切り出す場合、大きさが60×70cm程度になることも珍しくなく、材料費だけで数千円〜1万円以上かかります。曲げ加工を含む場合は板金加工業者への外注も現実的な選択肢です。


また、スワンネック構造は取り付けの際にウイング翼面に穴あけが必要になるケースが多く、既製品ウイングのリベット・接着剤を除去して上面に取り付けステーを固定する作業が加わります。まずウイングの素材確認が条件です。


DIYでの自作実績として、みんカラの180SXオーナー事例では「アフターパーツのGTウイング(1600mm)のリベットをドリルで破壊して除去し、ウイング上面に穴を開けてスワンネックステーを固定」という手順が紹介されています。作業時間は12時間以上と記録されており、難易度は「上級」と評価されています。


一方で、完全自作ではなく金属加工業者にステーと台座のワンオフ製作を依頼する方法もあります。自分で設計図を書いて加工業者に持ち込むスタイルで、費用感は材料・加工込みで2万円程度から。市販の専用スワンネックステーが5〜7万円程度することを考えると、コストを半額以下に抑えられる場合もあります。つまり予算と技術力でアプローチを分けるのが賢明です。


スワンネックステー製作の参考実例(180SX・DIY)。
スワンネックGTウイングステー製作 その1|みんカラ(180SX)




GTウイングステー ハイマウントブラケット ボルテックス用 275mm 27.5cm アルミ製 ブラックアルマイト VOLTEX ステー 自社制作品 【275】