

レカロシートの強度証明書を用意しても、シートレールがメーカー違いなら車検に落ちます。
シートレールとは、シート本体を車のフロアに固定するための部品です。走行中に衝突事故が起きた場合、乗員の体重のおよそ20倍にもなる衝撃荷重がシートにかかるとされており、そのシートを支えるシートレールには非常に高い強度が求められます。
保安基準(道路運送車両の保安基準)では、座席および座席取付装置について「自動車が衝突等による衝撃を受けた場合において、乗車人員等から受ける荷重に十分耐えるものでなければならない」と規定しています。これがシートレールの車検適合性を判断する根拠となる条文です。
つまり基本の考え方は単純です。シートとシートレールがセットで「十分な強度を持つ」と証明できなければ、保安基準不適合と判断されます。
問題は、この「証明」をどのように行うかにあります。メーカーが組み合わせをセットで試験し、その結果を書類として発行するという仕組みになっているため、シートとレールが別メーカーだと試験の組み合わせが異なり、証明書が存在しないという状況が生まれます。これが「異メーカー組み合わせNGの原則」です。
社外シートメーカーとして車検対応品の強度証明書を発行できるのは、現状では主にレカロ(RECARO)、ブリッド(BRIDE)、スパルコ(SPARCO)の一部モデルとされています。通販サイトや中古市場で見かけるノーブランドのシートレールには、そもそも保安基準適合の証明書が存在しないため、年式に関わらず車検対象の車両であれば不合格リスクが高くなります。
カワイ製作所|シートレールの保安基準について(強度証明書類の発行方法や注意事項を詳しく解説)
シートレールに関する保安基準の適用は、車の年式(製作年月日)によって3段階で異なります。ここが最も混乱しやすいポイントなので、整理して押さえましょう。
まず最初の節目が平成19年7月1日です。この日以降に製作された乗用自動車(3ナンバー・5ナンバー)については、シートおよびシートレールに「装置の指定を受けた座席及び座席取付装置またはこれに準ずる性能を有するもの」でなければならないと規定が強化されました。ここで重要なのは「乗用自動車」と限定されている点で、この時点では4ナンバーの貨物車は適用外でした。
次の節目が平成24年6月30日です。この改正により、貨物の運送の用に供する自動車(4ナンバー車など)にも同様の基準が適用されました。ただし、平成24年6月30日以前に製作された貨物車・乗車定員11人以上の車両については適用外という経過措置があります。つまり旧い年式の4ナンバー車であれば、この改正後も社外シートレールが車検適合となるケースがあります。
そして最大の変化をもたらしたのが平成29年7月19日の改正です。この改正により、道路運送車両法施行規則が変更され、「視認等では基準適合性の審査が困難なもの」については、新規検査だけでなく継続検査(いわゆる2年ごとの車検)においても、申請者が保安基準適合を証する書面(試験成績書など)を提出しなければならないとなりました。
平成29年以前は、車検場の担当者の目視確認で通過できていたケースが多くありました。いわゆる「グレーゾーン」で合格していた車両が、この改正以降は書類提出が必須になったことで、突然不合格になるケースが全国で増えたのです。
| 車の年式(製作年月日) | 適用ルール | 強度証明書 |
|---|---|---|
| 昭和50年3月31日以前(乗用) | シートの強度基準が現行より大幅に緩い | 不要な場合あり |
| 平成6年4月1日以降(全車) | 難燃性の証明が必要(シート材質) | 難燃性証明のみ |
| 平成19年7月1日以降(乗用) | 座席・座席取付装置の強度基準が適用 | 必要 |
| 平成24年7月1日以降(貨物も) | 貨物車にも強度基準が適用拡大 | 必要 |
| 平成29年7月19日以降(全車検) | 継続検査でも書面提出が義務化 | 毎回の車検で提出必須 |
年式が古い車だからといって、油断は禁物です。昭和50年(1975年)3月31日以前に製作された車であれば、シート保安基準の適用外になるとする解釈もありますが、それ以降の年式であれば何らかの基準は適用されます。現実的に「証明書が不要」と言い切れるのはごく一部の旧車に限られると考えた方が無難です。
Auto Messe Web|前回は「合格」も突然「不合格」はなぜ?シート&シートベルトの車検基礎知識(平成29年改正の詳細な解説)
実際に車検で不合格となるケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。自分が当てはまるものがないか確認してください。
① シートとシートレールのメーカーが異なる
最もよくあるパターンです。「レカロのシートにブリッドのレール」「レカロのシートにノーブランドのレール」といった組み合わせは、保安基準適合試験がセットで行われていないため、強度証明書が存在しません。平成29年7月以降の継続検査では書面確認が必須のため、この状態では車検を通せません。同一メーカーの正規品の組み合わせが条件です。
② オークション・フリマアプリで購入したシートレール
ヤフオクやメルカリなどで入手した中古のシートレールには、刻印やシリアルナンバーが消えていたり、そもそも証明書の発行が不可能なケースが多くあります。たとえ外観が正規品に見えても、シリアルナンバーが確認できなければ強度証明書を発行してもらえません。カワイ製作所では「他社名が記載されているシートレール」の証明書発行は不可としており、出所が不明な品は車検前にリスクを確認する必要があります。
③ 強度証明書はあるが、組み合わせが試験対象外
「RECARO SR2・3・4/A-8モデルは、初年度登録が2012年6月以降の車両との組み合わせは不適合」(カワイ製作所の案内より)というように、シートとレールが正規品であっても、車両の年式と組み合わせによっては証明書の効力がなくなるケースがあります。シートとレールの組み合わせだけでなく、車両の年式まで含めた3つの要素の整合性が重要です。
④ 2ドア車のフルバケットシートで両席がリクライニング不可
2ドア・3ドア車で乗車定員が3名以上(軽自動車は4名以上)の場合、運転席か助手席のどちらか一方は必ずリクライニングシートでなければなりません。これは後部座席から緊急脱出できるよう乗降口の有効幅600mm以上を確保するためです。両席をフルバケットシートにすると、リクライニングが物理的にできないため、この基準を満たせず車検NGとなります。
⑤ シートバック(背面)が剥き出し
カーボンやFRPなどのシェル素材が剥き出しになっているフルバケットシートを装着した場合、後部座席のある車では「シートバックプロテクター」の装着が必要です。後部座席の乗員保護の観点から定められた基準で、プロテクターなしだと車検不合格になります。ただし、2シーター車や後部座席を取り除いて構造変更申請を行った車両は例外となります。
これらのパターンは「うっかりやってしまいがち」なものばかりです。特に中古でシートを購入した場合は、書類の有無と組み合わせの適合性を必ず事前に確認しましょう。
みんカラ|貨物車の社外シートレールと車検(4ナンバー車の適用除外条件と保安基準条文の詳細な検討)
社外シートを装着している場合、車検前に強度証明書(保安基準適合試験成績書)を準備することが必要です。取得方法はシートメーカーによって異なりますが、代表的な流れを紹介します。
レカロ(RECARO)シートの場合
レカロシート本体の証明書は、RECAROオフィシャルサイト内の「車検資料自動送付受付」ページから申請できます。申請時には車検証の記載事項(車名・型式など)、シート本体の製造番号、シートレールの製造番号が必要です。
シートレールの強度証明書については、レールメーカーへの申請が必要です。代表的なのがカワイ製作所で、ハガキまたは専用フォームからの申請が可能です。費用はシートレール1脚につき1,000円(書類発行手数料・送料・代引き手数料・消費税込み)で、受付から発送まで約10日かかります。急いでいる場合は至急扱い(1脚2,000円、翌営業日発送)も選べます。
注意点として、車検時に書類が届くよう、少なくとも2週間前には申請することをおすすめします。申請書類が証明するのはシートレール自体の強度であり、車検の合否を保証するものではありません。実際に車検に通るかは最終的に検査員が判断します。
手続きに必要なものをまとめると:
- 🔑 シート本体の製品保証書・製造番号(シリアルナンバー)
- 🔑 シートレールの製品保証書・製造番号(シリアルナンバー)
- 🔑 車検証のコピー(車名・型式が確認できるもの)
中古でシートを購入して保証書がない場合、シートに刻印されたシリアルナンバーを確認してメーカーに問い合わせるのが最初のステップです。刻印が消えている、あるいは確認できない場合は強度証明書の発行自体が不可能になるため、購入前にかならず確認することが大切です。
書類申請をするタイミングに合わせて、シートやレールのシリアルナンバーをメモしておくか、スマートフォンで写真を撮って保存しておくのが便利です。
カワイ製作所|よくあるご質問(強度証明書の申請費用・手続き方法などを公式が回答)
一般的な情報として「正規品のシートとレールを揃えて証明書を用意すれば大丈夫」とよく言われます。ただし、それだけでは見落としが生じるケースがあります。ここでは、検索上位の記事ではあまり触れられていない盲点を3つ紹介します。
盲点①:証明書の宛先は「車検を受ける工場」であり、オーナーではない
強度証明書はオーナーの元に届くのではなく、車検を受ける整備工場・ディーラーへ送付されます(レカロの場合)。つまり、「どこの工場で車検を受けるか」を決めてから申請しないと、書類が正しい場所に届きません。車検日の直前に申請して「書類が届く前に車検を受けてしまった」というトラブルも実際に起きています。申請は車検予約と同時に行い、受け取り先の工場名・住所を正確に伝えることが重要です。
盲点②:「前回車検が通った」は次回の保証にならない
平成29年7月の改正前後で、同じ車・同じシートで「前回は合格、今回は不合格」というケースが多数発生しました。また、検査場や担当検査員によって判断基準の厳しさに地域差があるとされており、「前回の検査場で通ったから今回も大丈夫」とは言えません。これは知らないと本当に困る盲点です。
盲点③:貨物車(4ナンバー)でも平成24年7月以降製作なら書類が必要
「4ナンバーの軽バンだから乗用車向けの規定は関係ない」と思っている方も多いはずです。しかし前述の通り、平成24年7月1日以降に製作された貨物車にも座席・シートレールの強度基準が適用されました。現行モデルのハイエースバン(4ナンバー)やN-VANなどは当然この対象に入るため、バケットシートに交換する場合は乗用車と同様に書類準備が必要です。「貨物車だから関係ない」は古い認識だということです。
これらは「知っていれば損をしない」情報です。特に盲点①の「書類の送付先問題」は、直前になって慌てるケースが多いので、早めに動くことが一番の対策になります。
みんカラ|社外シート装置車の車検(実際の検査場でのやり取りと地域差・H19年前後の運用の実態レポート)

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