

細いケーブルで配線したせいで、走行中にボヤ騒ぎになった人が実際にいます。
サブバッテリーシステムの基本から押さえましょう。
車のエンジンが動いている間、エンジンに直結した発電機「オルタネーター」が電力を作り続けています。この電力が、まずメインバッテリーを充電し、余剰分をサブバッテリーにも回す仕組みが「走行充電」です。エンジンを切った後でも冷蔵庫・照明・スマートフォン充電などを使いたい車中泊派やキャンパーにとって、このシステムは欠かせない存在になっています。
一般的な乗用車のオルタネーター容量は60〜130Aです。小型ハイエース(キャンピングカーベース)では約130Aが搭載されることが多く、このうち車両走行に必要な電力が約30〜40A、残りをサブバッテリーへの走行充電に回せる計算になります。タウンエースのような小型バンだと60〜80Aのオルタネーターになるため、走行充電に回せる余裕はさらに少なくなります。これが大事なポイントです。
走行充電には大きく2タイプの方式があります。「カットリレー式(アイソレーター)」と「DC-DC走行充電器」です。カットリレー式は、エンジン始動時のみメインとサブを並列接続してオルタネーターからの電力を流す方式で、構造がシンプルで低コストというメリットがあります。一方、DC-DC走行充電器は入力電圧・出力電圧・電流をすべて電子制御できる高機能タイプです。
つまり、どちらの方式を選ぶかがシステム全体の性能を左右します。
| 比較項目 | カットリレー式 | DC-DC走行充電器 |
|---|---|---|
| 価格目安 | 5,000〜15,000円 | 15,000〜50,000円以上 |
| 電流・電圧制御 | なし(直結) | あり(電子制御) |
| リチウムイオンバッテリーへの対応 | ❌ 非推奨 | ✅ 対応品あり |
| スマートオルタネーター車への対応 | ❌ 非対応 | ✅ 対応品あり |
| メインバッテリー保護機能 | △ 電圧による単純遮断 | ✅ 段階的電流制御 |
近年販売されている多くの国産車・輸入車には「スマートオルタネーター」が採用されています。スマートオルタネーターは燃費向上のためにエンジン回転数に応じて発電量を制御するため、エンジンをかけても電圧が14V以上にならないことがあります。カットリレー式のアイソレーターでは、この電圧変動に対応できずサブバッテリーがまったく充電されないケースが続出しています。これは意外ですね。
スマートオルタネーター搭載車かどうかは、車種の取扱説明書や販売店で確認するのが確実です。2015年以降に発売された車であれば、スマートオルタネーターの可能性を念頭に置いて走行充電器を選ぶことが条件です。
参考:走行充電器とオルタネーター・メインバッテリーの関係を詳説(BLUE SKY CAMPER PROJECT)
配線図の基本を理解すれば、DIYの失敗が大幅に減ります。
走行充電システムの配線は、大きく分けて「①メインバッテリー〜走行充電器(入力側)」「②走行充電器〜サブバッテリー(出力側)」「③サブバッテリー〜負荷(インバーター・冷蔵庫など)」の3つの経路で構成されます。さらに各経路には必ずヒューズを設置します。ヒューズは電源(バッテリー)に最も近い位置に置くのが原則です。
以下が基本的な接続順の流れです。
DC-DC走行充電器のなかには「IGN信号線(イグニッション信号線)」への接続が必要なモデルがあります。この信号線はエンジンキーをオンにしたときだけ通電するヒューズボックス内の端子から引きます。接続しないと「エンジンがかかっているのに充電が始まらない」というトラブルが起きやすいため、取扱説明書の確認が必須です。
また、D+ポートやIGN端子の接続先をオルタネーター直結にする場合と、ヒューズボックスのIG電源端子から取る場合で接続が異なります。メーカーによって推奨接続が違うため、各社の公式マニュアルを参照するのが確実です。RENOGYやLiTimeのマニュアルには日本語対応の詳細配線ガイドが付属しています。これは使えそうです。
バッテリー残量計(バッテリーモニター)を追加する場合は、シャント抵抗(電流センサー)をサブバッテリーのマイナス側に挿入する配線が加わります。インバーター・冷蔵庫・USB充電器など、すべての負荷電流がシャント抵抗を通るよう配線することが条件で、これを間違えると残量表示が狂います。
参考:ハイエース200系での実際の配線図と部位別電流・ケーブル太さ一覧(Mr. おまめ)
ケーブルの太さを「許容電流の上限ギリギリ」で選ぶのは危険です。
サブバッテリーシステムで使うケーブルは、流れる電流量に応じた太さのKIV電線またはHKIV電線(通称「ネツタフ」)を使用します。ケーブルの太さは「スケア(SQ)」という単位で表されます。数字が大きいほど断面積が大きく、より多くの電流を流せます。
注意が必要なのは、KIV電線の許容電流は「周囲温度30℃」での値で規定されているという点です。夏場の車内や配線通路(エンジンルーム附近)の温度は軽く50〜70℃に達することがあります。周囲温度が60℃になると、KIV電線の許容電流は標準値の約0.58倍に下がります。つまり、22SQのKIV電線なら通常は115A流せるはずが、60℃環境では実質約66Aまで許容電流が落ちる計算です。
以下が部位ごとの推奨ケーブル太さとヒューズ容量の目安です。
| 配線箇所 | 推奨ケーブル太さ | ヒューズ容量の目安 |
|---|---|---|
| メインバッテリー ⇔ 走行充電器(入力) | 走行充電器推奨値(例:50A機種→22SQ) | 80A(バッテリー直近に設置) |
| 走行充電器 ⇔ サブバッテリー(出力) | 走行充電器推奨値(例:50A機種→14SQ) | 60A |
| サブバッテリー ⇔ ヒューズブロック | 5.5SQ | 30〜40A |
| サブバッテリー ⇔ インバーター(1000W) | 22SQ(2本掛け推奨) | 150A(ANL型) |
| サブバッテリー ⇔ インバーター(2000W) | 38SQ | 200A(ANL型) |
| サブバッテリー ⇔ シガーソケット | 1.25SQ | 10〜15A |
特に気をつけたいのがインバーター周りの配線です。1000Wのインバーターが最大出力を発揮すると、12V環境では約83A÷変換効率0.9=約92Aが流れる計算になります。22SQが1本では、ヒューズブロックへの配線と合わせて100Aを超える可能性があり、許容電流をオーバーするリスクが生じます。22SQを2本並列で使う「2本掛け」が原則です。
なお、ヒューズは必ずバッテリーのプラス端子から「30cm以内」の位置に設置します。配線が長くなるほど、万が一のショート時に発火するリスクが高まるためです。ヒューズが遠い位置にあると、発火が起きても電流を遮断できません。痛いですね。
インバーター周りの大電流配線には、ANLヒューズ(ブレード型ではなくボルト締め型の大型ヒューズ)の使用が一般的です。ANLヒューズホルダーとセットで準備しましょう。
参考:サブバッテリーシステムの部位別電線の太さと許容電流の詳細解説(KEBlog)
リチウムバッテリーをカットリレー式で充電すると、メインが一瞬でアガります。
サブバッテリーには大きく分けて「鉛ディープサイクルバッテリー」と「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LiFePO₄)」の2種類があります。どちらを選ぶかで、走行充電システムの配線方法や使用機器が根本的に変わります。
鉛バッテリーは内部抵抗が比較的高く、充電中に電圧が徐々に上昇するため、カットリレー式のシンプルな走行充電でも電流が急激に流れすぎることはあまりありません。価格が安く、同じ容量(例:100Ah)でも1万円台から入手できます。ただし重量がネックで、100Ahで約30kg前後あります。
リチウムイオンバッテリーは内部抵抗が鉛の数分の一しかないため、カットリレー式で接続するとオームの法則に従い非常に大電流が流れます。鉛のときと同じリレーを使っていても流れる電流量は大きく増え、ケーブルや端子接続部が発熱するリスクが生じます。結論は「リチウム搭載なら走行充電器(DC-DC型)が必須」です。
また、リチウムバッテリーは充電特性も鉛と異なります。鉛が満充電電圧約12.6V付近に対し、LiFePO₄は満充電電圧が約13.6Vと高めです。カットリレー式では電圧制御がないため、LiFePO₄を100%まで充電できないだけでなく、充電プロファイル(CC-CV方式)を正確に再現できません。同じ100Ahで比較すると、鉛が約30kgなのに対してLiFePO₄は約10〜15kgと半分以下の重さで、サイクル寿命も500〜800回(鉛)に対し2000〜4000回(LiFePO₄)と圧倒的に長持ちします。
以下が簡単な比較です。
| 比較項目 | 鉛ディープサイクル | LiFePO₄(リン酸鉄リチウム) |
|---|---|---|
| 重さ(100Ah) | 約28〜32kg | 約10〜15kg |
| サイクル寿命目安 | 500〜800回 | 2000〜4000回 |
| 価格目安(100Ah) | 10,000〜20,000円 | 30,000〜60,000円 |
| カットリレー式との相性 | ✅ 可能 | ❌ 非推奨(過電流リスク) |
| 推奨走行充電方式 | カットリレー式またはDC-DC | DC-DC走行充電器(必須) |
リチウムバッテリーに切り替える際は、既存のカットリレー式配線をDC-DC走行充電器に置き換えるだけでなく、ケーブル太さやヒューズ容量も見直す必要があります。リチウムはインバーターを使った急激な放電にも鉛より強いため、大電流を流す機器との組み合わせで使われることが多く、配線全体のスペックアップが求められます。これが原則です。
参考:車のサブバッテリー基本知識・鉛とリチウムの比較(LiTime)
作業後の「通電テスト前の確認」を省いた人が、後日車内火災を起こした事例があります。
DIYでサブバッテリーシステムを組む際、ネット記事や動画を参考にしても見落とされやすい「失敗パターン」がいくつかあります。以下に代表的なものをまとめます。
失敗を防ぐための配線完成後チェックリストを独自にまとめます。
走行充電器の選定と配線が終わったら、エンジンをかけた状態でテスターや車載電圧計を使ってサブバッテリーへの充電電流を実測するのがおすすめです。メインバッテリーの電圧も同時にモニタリングできると、過放電方向への異変を早期にキャッチできます。Victron Energy製のBMV-712などのバッテリーモニターは、Bluetooth経由でスマートフォンからリアルタイム確認ができるため、配線完成後の動作確認にも非常に便利です。
走行充電システムのトラブルのほとんどは「接続ミス」「ケーブルの発熱」「IGN信号線の未接続」のいずれかに原因があります。いいことですね、原因が絞れれば対処しやすくなります。
参考:文系でもわかるサブバッテリー配線図のステップ別解説(hiace.fun)

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