

パワステのオイル漏れを放置すると、引火点120℃のフルードが排気管に触れて車両火災になる可能性があります。
パワーステアリングポンプ(パワステポンプ)が劣化・故障しはじめると、いくつかのわかりやすいサインが現れます。早期に気づけるかどうかで、修理費用が数万円単位で変わってくることもあります。これは覚えておきたいですね。
最もわかりやすいのが「ハンドルが重くなる」という感覚です。普段はスムーズに回せていたハンドルが、特に車速の低い駐車場内の切り返しや据え切り時に急に重さを感じるようになったら、パワステポンプの異常を疑うべきシグナルです。パワステポンプは油圧を発生させてハンドルのアシスト力を生み出しているため、ポンプの能力が落ちると当然アシスト力も低下します。
次に多いのが「異音(ウィーン・ギュー・うなり音)」です。ハンドルを切るたびに「ウィーン」という高音や「ギュー」という擦れるような音がエンジンルームから聞こえる場合、パワステポンプ内部のベアリング摩耗や、フルード量の不足によるエア噛みが起きている可能性があります。異音が出る理由は、ポンプ構成部品の摩耗や、フルード経路内への空気混入によって正常な油圧が伝わらないためです。
また「エンジンルームや駐車場の地面に赤茶色のオイル染み」が見られる場合も要注意です。これはパワステフルードが漏れているサインで、放置するとフルード量が激減してポンプが焼き付くだけでなく、引火点が約120℃と低いパワステオイルが排気管に触れた場合に車両火災に発展するリスクがあります。エンジンオイルの引火点が約350℃であることと比べると、その危険性の高さがわかります。
症状をまとめると以下の通りです。
- 🔴 ハンドルが重い・アシスト力が弱くなった:特に低速・据え切り時に顕著
- 🔴 ウィーン・ギュー・うなり音がする:ハンドル操作のたびに異音が発生
- 🔴 エンジンルームや地面に赤茶色のオイル染み:フルード漏れのサイン
- 🔴 左右でハンドルの重さが違う:片側だけアシストが弱い状態
- 🟡 パワーステアリング警告灯が点灯:電動・電動油圧式の場合に発生
これらの症状は1つでも出たら問題ありません、ではなく速やかな点検が必要です。特に異音とオイル漏れが同時に出ている場合は、パワステポンプの損傷がすでにかなり進んでいると考えてよいでしょう。
無視できない大きなパワーステアリングポンプの問題(ACT JAPAN)
パワステポンプには、エンジンオイルや冷却水のような「定期交換スケジュール」が公式には設けられていません。つまり基本的に「壊れたら交換する」という部品に位置づけられています。これが原則です。
ただし、経験則として整備士の間では以下の目安が語られています。
| 指標 | 目安 |
|------|------|
| 使用年数 | 約17〜20年 |
| 走行距離 | 約17万〜20万km |
| 不具合発生時 | 症状出次第、即点検 |
一方で、パワステポンプの寿命を縮める運転習慣があることはあまり知られていません。意外ですね。具体的には以下のような操作がポンプに大きな負荷をかけます。
- 据え切り(車が停止したままハンドルを回す):ポンプ内圧が最大になるため、最も負荷が高い操作です
- ハンドルをロック位置まで回しきる:ポンプに過剰な圧力がかかり、フルードの温度を急上昇させます
- 狭い駐車場での頻繁な切り返し:低速でのハンドル操作が続くため、ポンプへの累積負荷が大きくなります
- サーキット走行:高回転・高負荷状態が続くことでポンプの消耗が早まります
パワステポンプへの負荷はフルードの油温を上昇させます。高温になったフルードはホースやガスケットなどゴム製部品を内部から劣化させ、最終的にオイル漏れへとつながります。つまりオイル漏れはポンプそのものより先に、ホース・ガスケットの劣化として現れることも多いのです。
また、もう一点見落とされがちな事実があります。パワステフルード(パワステオイル)そのものの定期交換も重要です。フルードの交換目安は一般的に3〜5年または走行距離3〜5万kmとされています。これを怠ると劣化したフルードがポンプ内部の金属部品を摩耗させ、本来20万kmもつはずのポンプが10万km以下で故障するケースもあります。
パワステオイルの交換目安と交換しないと起きるトラブル(カーアクセサリーニュース)
交換費用の相場は「どの部品を選ぶか」によって大きく変わります。パワステポンプの交換には、主に「新品」と「リビルト品(リビルド品)」の2択があります。費用の構造を理解しておくことが大切です。
🔧 新品パワステポンプで交換した場合の費用目安
| 項目 | 費用目安 |
|------|----------|
| 新品ポンプ(部品代) | 3万〜8万円 |
| 工賃 | 約3万円 |
| パワステホース(高圧側) | 1万〜3万円 |
| パワステオイル | 約1,000円 |
| 合計(ホース交換含む場合) | 約7万〜14万円 |
🔄 リビルト品(リビルド品)で交換した場合の費用目安
| 項目 | 費用目安 |
|------|----------|
| リビルト品(部品代) | 2万〜8万円 |
| 工賃 | 約3万円 |
| パワステホース(高圧側) | 1万〜3万円 |
| 合計(ホース交換含む場合) | 約6万〜14万円 |
実際の事例を見てみると、スバル・インプレッサ WRX STI(リビルト品)では部品代2.1万円+工賃9,000円で合計約3万円、トヨタ・アリオン(リビルト品)では部品代3.6万円+工賃1.2万円で合計約4.8万円というケースもあります。
なお、輸入車や大型車の場合は大幅に費用が上がります。ディーラーに依頼したメルセデス・ベンツ Eクラスでは、新品ポンプ7万円+工賃1万円で合計約8万円という事例もありますが、電動式パワステを含む総合修理になると工賃込みで20万円を超えることも珍しくありません。つまり車種によって費用差は非常に大きいです。
ここで一つ重要なポイントがあります。パワステポンプを交換する際、高圧側のパワステホースも同時に交換することが一般的に推奨されています。ポンプと同じタイミングで劣化していることが多く、ポンプ単体を交換してもホース側が破れてしまうと再度工賃がまるごとかかるからです。まとめて交換する方が結果的に費用を抑えられます。
リビルト品(リビルド品)とは、使用済みの部品を分解・洗浄し、摩耗・劣化した箇所を新品パーツに換えて性能を回復させた部品のことです。新品に比べて30〜50%程度コストを抑えられるケースが多く、パワステポンプの交換でも非常に多く使われています。
ただし、リビルト品にはいくつか知っておくべき注意点があります。これは使えそうです。
まずリビルト品の品質は、製造・検査を行うメーカーによって差があります。日本国内でリビルト品の品質基準を統一する法的規制はなく、メーカー各社が独自の基準で検査を行っています。そのため、信頼性の高いメーカーの製品を選ぶことが重要です。アーネスト(Honest)などの専門メーカーや、自動車整備工場が実績として使ってきた国産リビルトメーカーの製品を選ぶと安心度が高まります。
次に、リビルト品の多くは「コア返却制度」が設けられています。これは、交換した古いポンプ(コア)をリビルトメーカーに返却することで、部品代の一部が戻ってくる仕組みです。返却を忘れるとコア代(数千円〜1万円程度)が戻ってこないため、整備工場に依頼する際は事前に確認しておきましょう。
品質面で見ると、劣化していない部品を再利用するリビルト品と、全部品が新品の純正品の間には当然差があります。ある整備士の言葉を借りれば「リビルト品が新品と変わらないとは言えない」というのが正直なところです。特に古い車のリビルト品はコアとなる中古部品そのものの個体差があるため、取り付け後に初期不良が発生するケースもゼロではありません。
とはいえ、多くのリビルトメーカーは1〜2年間または1〜2万kmの保証期間を設けており、保証期間内の不良については無償交換に対応していることがほとんどです。整備工場でリビルト品を使う場合は、保証の有無と期間を必ず確認することをおすすめします。
リビルト品とは?デメリットや試したいケースについて整備士が解説(グーネット)
パワステポンプの交換で見落とされがちなのが「エア抜き作業」です。エア抜きを正しく行わないと、交換したばかりの新品ポンプが内部破損するリスクがあります。これは必須です。
エア抜きとは、フルードを補充した後にパワステ回路内に残った空気(エア)を完全に抜く作業のことです。ポンプ内部にエア(空気)が残った状態でエンジンをかけると、フルードが正常に循環せず、ポンプが空回りして焼き付きを起こすことがあります。せっかく5〜8万円かけて交換したポンプが、エア抜きのミスで即座にダメになる可能性があるわけです。痛いですね。
エア抜きの基本手順は以下の通りです。
1. ポンプ取り付け後、リザーバータンクにフルードを規定量まで補充する
2. エンジンをかけずに(クランキングのみ)、ハンドルを左右いっぱいに5〜6回切り返す
3. リザーバータンク内のフルードが泡立って白濁するのを確認する
4. エンジンをクランキング(始動はしない)し、再度ハンドルを左右に切り返す
5. フルード量が減らなくなり、白濁が消えたらエア抜き完了
6. エンジンを始動してハンドルを数回切り、プレッシャーホース周辺のオイル漏れを確認する
DIYで交換にチャレンジする方の失敗談として最も多いのが「エアがなかなか抜けない」「いつまでもタンクが泡立つ」というものです。これは焦らず繰り返すことで解消されますが、もしエンジンをかけた状態でエア噛みが残っていると、ポンプから「ガガガ」「ゴゴゴ」という異音が続くことがあります。その場合はすぐにエンジンを止め、エア抜き作業をやり直す必要があります。
また、パワステポンプ交換後は必ずオイルタンク(リザーバータンク)も洗浄するか交換することが推奨されています。タンク内のストレーナー(フィルター)に古いフルードのスラッジが詰まっていると、新品ポンプに目詰まりによるダメージを与えることがあります。リビルト品の交換マニュアルにも「タンクの洗浄は必須」と明記されているほどです。
パワーステアリングポンプ交換時の取扱注意事項(アーネスト公式PDF):エア抜き手順と洗浄の必要性が詳細に記載
パワステポンプの不具合を「まだ走れるから」とそのままにしている方も少なくないはずです。しかし放置が招くリスクは、想像より深刻です。
❶ 車検に通らなくなるリスク
パワステが故障した状態、またはパワステ警告灯が点灯した状態では車検を通過できません。パワステ警告灯が点灯している場合は、ハンドル操作に違和感がなくても不合格となります。また、オイル漏れが確認できる状態でも「油脂類の漏れ」として車検不合格の対象となります。車検の直前に発覚して慌てることのないよう、日常的な点検が重要です。
❷ 修理費用が雪だるま式に増えるリスク
パワステポンプのオイル漏れを放置した場合の修理費増大は特に注意が必要です。フルードが減り続けると、最終的にポンプが焼き付きを起こします。焼き付いたポンプは交換必須で、さらに漏れたオイルが周囲のゴム部品(ホース、ブーツ類)に付着して劣化を早めるため、連鎖的に複数部品の同時交換が必要になるケースもあります。最初はホース交換だけで数千円で済んだものが、放置したために合計10万円超の修理になる事例も珍しくありません。
❸ 走行中の重大事故リスク
パワステが完全に機能しなくなると、ハンドルが「重ステ」状態になります。力のある成人男性でもスムーズなハンドル操作が困難になる重さです。特に高速道路での車線変更、交差点での急ハンドル、緊急回避が必要な場面などで、操作が間に合わない危険があります。また前述のように、パワステフルードの引火点は約120℃と低く、漏れたオイルが高温になった排気管に滴れると車両火災に発展するリスクもあります。
結論はシンプルです。症状が出たら迷わず整備工場に持ち込みましょう。早期対応が修理費用を最小限に抑え、安全を守ることにつながります。
パワステ故障をそのままはダメ。原因と症状、費用の目安を整備士が解説(グーネット)

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