

ピカールで磨いたら焼き色が消えて、買い直しに3万円以上かかった人がいます。
ピカールは、日本磨料工業が製造・販売する金属磨き剤で、ホームセンターで300〜500円前後から購入できる、非常にコストパフォーマンスの高い研磨剤です。アルミ、ステンレス、真鍮などあらゆる金属に対応しているため、「チタンマフラーにも使えるのでは?」と考えるオーナーが多いのは自然なことです。
実際、みんカラやYahoo!知恵袋などのコミュニティには「ピカールでチタンマフラーを磨いた」という投稿が多数存在します。ステンレス製マフラーの磨き上げには特に有効で、テカテカの鏡面に仕上げることも可能です。
ただし、ここで重要な前提があります。チタンとステンレスは、見た目は似ていても性質がまったく異なる金属です。チタンマフラー特有の「焼き色」をそのまま活かしたい場合と、一度リセットして磨き直したい場合とでは、ピカールの役割も使い方もまったく変わってきます。つまり「ピカールがチタンマフラーに使えるか」という問いへの答えは、「使える場合もあるが、使い方を誤ると大きな損害になる」というものです。
チタンマフラーの素材特性を理解した上で、ピカールを正しく使うことが大切です。
チタンの焼き色は「塗装」でも「メッキ」でもありません。表面にできた酸化膜(不動態皮膜)の厚さが光の波長と干渉することで、金・黄・橙・紫・青・緑といった色に見える「光学的な発色」です。このメカニズムはシャボン玉の虹色と同じ原理で、酸化膜の厚さが数十ナノメートル(1ナノメートル=0.000001mm)単位で変わるだけで、色が変化します。
走行中の排気熱によって、この酸化膜が自然に育っていくのが「焼き色」の付くプロセスです。一般的に、青色の焼き色は200〜250℃付近で生成され、紫〜黒色は400℃前後でできると言われています。これほど精密な酸化膜は、一度研磨剤で削り落としてしまうと、元と全く同じ厚さに再現することは事実上不可能です。
ピカールをはじめとする研磨剤には「アルミナ(酸化アルミニウム)」などの微細な研磨粒子が含まれており、金属表面を物理的に削ることで光沢を生み出します。この研磨粒子がチタンの酸化膜にも作用するため、ピカールで磨くと焼き色が薄くなったり、完全に消えて銀色になってしまいます。
これは使い方の問題ではなく、研磨剤の本来の働きによるものです。
実際に、アールズギア製ワイバンマフラーのユーザーが「軽くピカールで磨いたら、気をつけたのに焼け色が薄くなってしまった」と報告しており、その後メーカーへの再研磨を依頼するという事態になっています。つまり、少量で優しく磨いたとしても焼き色に影響が出るリスクは存在します。焼き色を大切にしたいなら、ピカールをエキパイ部分に使うのは基本NGと覚えておきましょう。
参考:チタンマフラーの焼き色とメンテナンスについて、メーカー公式のQ&Aが参考になります。
よくある質問 | アールズ・ギア(チタン焼き色の扱いについての公式見解)
チタンマフラーの磨きにピカールを使う場合、「どの部位に使うか」の見極めが非常に重要です。大きく分けると、エキゾーストパイプ部(エキパイ)とサイレンサー部の2つのエリアで対応が異なります。
まず「ピカールを使ってはいけない場所」から整理します。
- 🔴 エキパイ(エキゾーストパイプ)の焼き色部分:走行熱で青・紫・金色に染まった箇所。研磨剤で焼き色が削れ、元に戻せなくなります。
- 🔴 ブラックチタン仕様のサイレンサー:黒色は特殊な表面処理(PVDコーティングや窒化処理)であることが多く、研磨すると黒色が剥げてまだらになります。
- 🔴 純正チタンマフラーの梨地(なしじ)仕上げ面:微細な凹凸で独特の質感を出している部分で、ピカールで磨くと表面の凹凸がならされ、意図しない光沢が出てしまいます。
一方、「ピカールが有効な場所」は以下の通りです。
- 🟢 サイレンサーのテール出口まわり(鏡面仕上げ部):排気スス汚れや軽いくすみを落とすのに有効で、磨き上げるとピカピカになります。
- 🟢 焼き色を全部リセットして素地から磨き直す場合のエキパイ:焼き色を意図的に取り除いてシルバーの素地に戻したい場合は、ピカールで研磨することで表面を整えられます。ただしこの後に再び焼き色を付けるには走行熱が必要です。
この使い分けが基本です。
「うちのマフラーはどっちだろう?」と迷ったときは、磨く前に必ずサイレンサー出口の内側など見えない場所で小テストを行い、表面の変化がないかを確認してください。それが最も確実な判断方法です。
参考:ピカールの使用可否判断や特性について、メーカー公式のQ&A情報が参考になります。
焼き色を残したくない素地部分、またはサイレンサーのテール面をピカールで磨く場合の正しい手順を解説します。手順を守ることが、チタン表面を傷めずに仕上げるための条件です。
【必要なもの】
| アイテム | 目的 |
|---|---|
| ピカール液(またはピカールネオ) | 主研磨剤 |
| マイクロファイバークロス(2〜3枚) | 磨き用・仕上げ用 |
| 中性洗剤・バケツ | 事前洗浄 |
| パーツクリーナー(石油系) | 油汚れの除去 |
| マスキングテープ | 焼き色部分の養生 |
【磨きの手順】
ステップ①:十分に冷ましてから作業する
マフラーが走行直後の場合、表面が200〜300℃以上になっています。やけどの危険があるため、必ず走行後30分以上待って完全に冷めてから作業を始めてください。これは安全上の絶対条件です。
ステップ②:中性洗剤で洗浄する
ホコリや泥、走行中に付着した虫や油脂を中性洗剤で洗い流します。この段階で汚れを落とさないと、磨き作業中にその汚れが研磨粒子と混ざり、表面に余計な傷をつける原因になります。洗浄後はしっかり乾燥させます。
ステップ③:焼き色のある箇所をマスキングする
焼き色を残したいエキパイ部分には、マスキングテープを貼って確実に養生します。「少し離れているから大丈夫」という判断は禁物です。ピカールの研磨成分は布で拭った際に広がるため、必ず磨く箇所の境界線より少し広めにマスキングを施します。
ステップ④:ピカールを少量付けて磨く
マイクロファイバークロスにピカールを米粒大(約0.3cc)だけ取り、一定方向に優しく磨きます。円を描くように磨くと光の反射が乱れてムラになりやすいため、直線的に動かすのが基本です。力を入れすぎると深い傷になるので注意してください。
ステップ⑤:拭き取りと確認を繰り返す
磨き終わったら、別の清潔なクロスでピカールの残液を完全に拭き取ります。ピカールの残留液は乾くと固着して、新たな曇りの原因になります。1回の磨きで効果が不十分な場合は、ステップ④〜⑤を小さな範囲ずつ繰り返します。
磨きすぎないことが大切です。1回の作業で少しずつ様子を見ながら進めることで、仕上がりの美しさが安定します。
「もう磨いてしまった」「焼き色が薄くなってしまった」というときに、どう対処すべきかを整理します。これは意外と知られていない情報です。
パターン①:焼き色が少し薄くなった程度の場合
そのまま走行を続けると、排気熱によって再び焼き色が入ることがあります。特にエキパイは走行ごとに200〜400℃以上の熱にさらされるため、走行距離が増えるにつれ徐々に色が復活するケースもあります。ただし、元と全く同じ色・グラデーションに戻るとは限りません。焦らず様子を見るのが最初の対処法です。
パターン②:大きく焼き色が消えた・黒く剥げた場合
自己修復は難しい状態です。この場合、以下の2つの選択肢があります。
1. マフラーメーカーへの再研磨依頼:アールズギアやヨシムラなど、一部のメーカーでは再研磨サービスに対応しています。実際のユーザー事例では、約3週間で新品同様の状態に戻ったという報告があります。費用はメーカー・パーツによって異なります。
2. バフ研磨専門業者への依頼:バフ研磨専門業者に郵送で依頼することも可能です。三貴研磨などの専門業者では、チタン・ステンレスのエキパイ研磨が5,280円〜、サイレンサーが8,800円〜という料金目安が公開されています(参考料金、2024年時点)。
重要なのは「自分でさらに磨き直そうとしない」ことです。中途半端に削り込んでしまうと、専門業者でも対応が難しくなり、追加費用が発生することがあります。
以下の専門業者サイトで料金・依頼の流れを確認できます。
バイクパーツのバフ研磨料金表 | 三貴研磨(チタン・ステンレス対応)
また、アールズギアのFAQではチタンの焼き色への注意事項が明記されています。
失敗の傷口を広げないこと、これが原則です。
【独自視点:「磨かない」も正しいメンテナンス判断】
チタンマフラーのメンテナンスにおいて、意外と見落とされがちな観点があります。それは「磨かなくてもいい状態を長く保つ」というアプローチです。ヨシムラジャパンの公式FAQでは、「日常的なメンテナンスは中性洗剤での洗車を基本とし、研磨剤の使用は推奨しない」と明記されています。
走行後にマフラーが冷えてから、中性洗剤を含ませた柔らかい布で拭き上げることを習慣にするだけで、表面への汚れの固着が大幅に減ります。油汚れがある場合は石油系パーツクリーナーで拭き取るだけで十分で、ピカールを使う機会そのものを減らすことができます。「磨く前に汚さない工夫をする」という発想が、チタンマフラーの焼き色を長持ちさせる最も合理的な方法です。
参考:ヨシムラジャパンのチタンマフラーに関するメンテナンス公式見解はこちら。
よくあるご質問 | ヨシムラジャパン(チタンマフラーのお手入れについて)

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