

子役デビューから約20年が経つにも関わらず、シム・ウンギョンは今も世界の映画祭で受賞し続けている。
2003年、MBCで放送が始まった『宮廷女官チャングムの誓い』は、韓国ドラマ史に刻まれた不朽の名作だ。最高視聴率57.8%という驚異的な数字を記録し、日本ではNHKでの放送を通じて「韓流ブーム」の火付け役となった。全54話のこの大河ドラマは、16世紀朝鮮王朝を舞台に、宮廷料理人から王の主治医へとのし上がった女性チャングムの半生を描いたサクセスストーリーである。
その作品の中に、当時まだ9歳だったシム・ウンギョンが出演していた。役どころは見習い女官の小さな端役。しかし、このひとつの小さな出演が、彼女の女優人生の出発点となったのは間違いない。つまり、チャングムの誓いがシム・ウンギョンのキャリアの根っこにある。
当時のドラマは今もなお視聴されており、2026年2月現在もBS日テレで放送中という驚きの事実がある。「チャングムの誓いに出ていた子役の子が今どうなっているのか」と興味を持って調べ始めるファンも少なくない。チャングムの誓いという偉大な作品に関わったことが、彼女のキャリアの礎を作ったともいえる。
視聴率57.8%というのは、どれほどの数字なのだろうか? たとえば日本の地上波ドラマが20%を超えると「大ヒット」と言われる現代の水準から見ると、その数字がいかに桁外れかがわかる。韓国全国民の半分以上が一斉にテレビの前に座っていたイメージだ。チャングムの誓いは、そんな時代を象徴する作品だったということですね。
映画.com シム・ウンギョン プロフィール・作品情報(シム・ウンギョンのデビューから現在に至る出演作一覧や受賞歴を詳しく確認できます)
シム・ウンギョンの子役時代は、「幼少期役の常連」という言葉でよく表現される。チャングムの誓いへの出演後、彼女は数多くの時代劇やドラマで主人公・ヒロインの子ども時代を担う役を次々と獲得した。
特に注目すべきは、2006年の韓国歴史ドラマ『ファン・ジニ』での主人公幼少期役だ。この演技でKBS演技大賞・青少年演技賞を受賞しており、韓国芸能界では「天才子役」と称されるまでになっていた。同年の『春のワルツ』にも出演しており、NHKで日本に紹介された作品にも複数登場している。韓国と日本の視聴者の両方に、この時点で顔が知られていたことになる。これは使えそうですね。
子役としての活動は、単なる下積みではなかった。実力派の監督や先輩俳優に囲まれた環境で演技を磨いた経験は、大人になってからの表現力の土台となっている。実際、彼女が幼少期に出演した作品の多くが、韓国ドラマ史に残る名作ばかりだ。
2008年にも『太陽の女』でKBS演技大賞青少年演技賞を再び受賞。2006年から2008年にかけて2度の演技大賞を受賞したことは、子役としての完成度を象徴する実績だ。10代前半でこれだけの受賞歴を積んでいた女優は、韓国芸能史でも決して多くない。
| 年 | 作品 | 役 | 特記 |
|---|---|---|---|
| 2003年 | 宮廷女官チャングムの誓い | 見習い女官(子役) | 視聴率57.8%の超大作 |
| 2006年 | ファン・ジニ | ファン・ジニ幼少期 | KBS演技大賞 青少年演技賞受賞 |
| 2006年 | 春のワルツ | ソン・イナ幼少期 | NHKで日本放送 |
| 2007年 | 太王四神記 | スジニ幼少期 | NHKで日本放送 |
| 2008年 | 太陽の女 | シン・ドヨン幼少期 | KBS演技大賞 青少年演技賞2度目受賞 |
ハンギョレ日本語版:26歳、演技は18年目…女優シム・ウンギョンが韓国映画の未来だ(子役時代から映画主演までの詳細なキャリア解説記事)
子役から青年期を経て、シム・ウンギョンが映画界で本格的な注目を集めたのは2014年の映画『怪しい彼女』だった。70歳の毒舌なおばあちゃんが、ある日突然20歳の姿に若返ってしまうというコメディ作品で、彼女が演じたのは「20歳の外見を持つ70歳の精神の女性」という複雑なキャラクターだ。
この作品が韓国で動員した観客数は860万人超。当時20歳だったシム・ウンギョン本人が、中身70歳の演技を一切の吹き替えなしで歌唱も含めて演じきった。第50回百想芸術大賞で映画部門最優秀演技賞を受賞したことも、その演技力の高さを証明している。
さらに注目すべきは、この映画が計8か国でリメイクされたという事実だ。1つの映画が8言語でリメイクされたのは当時世界初の記録である。意外ですね。日本でも多部未華子主演でリメイクされた『あやしい彼女』(2016年)が公開されており、日本の観客にも親しまれている。興行収入も約62億7000万円を記録しており、単純な「韓国映画の成功」を超えた、世界的なコンテンツとなっている。
8か国リメイクというのは、例えるなら「同じレシピの料理を8か国の一流シェフが腕を競って調理した」ようなもの。それだけ原作の構造と主演の演技に普遍性があったということだ。シム・ウンギョンの演技力が世界に認められた、最初の大きな瞬間だったといえる。
Wikipedia「怪しい彼女」(8か国リメイクの詳細と各国キャストの情報が掲載されています)
シム・ウンギョンが日本で最も広く知られるきっかけとなったのは、2019年公開の映画『新聞記者』だ。松坂桃李とのW主演で、政府の闇に迫る女性記者を演じた本作で、彼女は第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。日本アカデミー賞の創設は1978年。その歴史の中で、演技部門の最優秀賞を外国人が受賞したのは史上初の快挙だった。
この事実を知ったとき、シム・ウンギョン自身も「全然思わなかったので、全然準備をしていませんでした」と涙ながらに語ったことは有名なエピソードだ。外国人初という記録は、単に国籍の違いを超えた話だ。日本語での演技、日本の映画文化への適応、そして普段から行ってきた日本語学習の成果が認められた瞬間でもある。
彼女が日本語を本格的に学び始めたのは、日本の芸能事務所ユマニテとマネジメント契約を締結した2017年以降だ。わずか2年ほどで通訳なしのインタビューをこなすレベルまで上達し、日本語セリフも自力でこなした。「リーク先」「内閣情報調査室」といった専門用語も含まれていたと本人は語っている。
学習方法は①日本映画を見る、②日本音楽を聴く、③日本人に習う、という3本柱だ。岩井俊二や是枝裕和監督の作品を中学生の頃から繰り返し見ていたという事実も、単なる語学学習ではなく日本の映画文化そのものへの深い関心があったことを示している。その姿勢が結果として評価につながった。
新聞記者の公開から約1年間で4つもの主要賞を日本国内で獲得したことは、彼女がどれほど日本の映画界に衝撃を与えたかを物語っている。これは、実力が条件です。
スポニチ:日本アカデミー賞「新聞記者」3冠 シム・ウンギョン、外国人初の最優秀主演賞(受賞スピーチの詳細なレポートが読めます)
チャングムの誓いから約20年、シム・ウンギョンのキャリアは2025年にさらなる頂点を迎えた。三宅唱監督作品『旅と日々』でつげ義春原作の物語に挑んだ彼女は、2025年8月に開催された第78回ロカルノ国際映画祭で最高賞「金豹賞」をW受賞(金豹賞+ヤング審査員賞)する快挙に立ち会った。ロカルノ映画祭で日本映画が最高賞を受けるのは、2007年の小林政広監督作品『愛の予感』以来、18年ぶりのこととなる。
さらに同年末、第99回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画部門1位に同作が輝き、シム・ウンギョン自身も主演女優賞を受賞した。韓国人俳優としてキネマ旬報主演女優賞を受賞するのも、史上初の快挙だ。日本アカデミー賞に続き、キネマ旬報でも「韓国人初」の記録を樹立したことになる。
この軌跡は、単なる「韓流スター」という枠には収まらない。日本語学習から始め、日本の舞台・ドラマ・映画に精力的に取り組み、国際的な映画祭でも認められた実力を積み上げた結果だ。結論は、継続した努力と挑戦の積み重ねがこのキャリアを作った。
長距離ドライブ中に韓国ドラマを車内で楽しむ人も多い。そういう方にとって「あのチャングムの誓いに子役で出ていた子が、日本でも世界でも最高の賞をとっている」という話は、純粋に驚きと興味を持てるトピックではないだろうか。ドライブ中のポッドキャストや動画コンテンツとして『旅と日々』や『新聞記者』の話題を掘り下げてみるのも面白い選択だ。カーオーディオやスマートフォンのポッドキャストアプリで「シム・ウンギョン」を検索すると、インタビュー音声が複数見つかる。
KBS WORLD日本語放送:シム・ウンギョンさん 韓国人初のキネマ旬報主演女優賞受賞(受賞発表のニュース原文が確認できます)