

ブレーキフルードを2年以上換えていないと、坂道でブレーキが突然効かなくなって追突事故を起こすリスクがあります。
バイクのブレーキフルード交換をショップに依頼した場合、フルード代込みで1ライン(前輪または後輪1系統)あたり2,900円〜5,000円程度が標準的な費用の目安です。前後両方のラインを交換すると、合計で5,000円〜10,000円前後になるケースが一般的です。
ただし、この金額はあくまでシンプルな車種の場合です。カウル(外装)の脱着が必要なフルカウル車では別途脱着工賃が上乗せされ、トータルコストが1,000〜3,000円ほど増えることがあります。
代表的なショップの参考工賃を以下にまとめます。
| ショップ名 | フルード代別工賃(1ライン) | フルード代込み(1ライン) |
|---|---|---|
| 2りんかん | 2,500円〜 | 2,900円〜 |
| ナップス | ※オイル工賃ページに統合 | 別途確認 |
| ラフ&ロード | シングル 2,750円〜 | 2,750円〜(DOT4込み) |
フルード自体の単価は、1Lボトルで約500円〜2,000円程度(規格やメーカーによって異なる)です。1回の交換で使う量は0.5〜1L前後なので、フルード代単体はそれほど高くありません。
つまり費用の大半は工賃です。
「工賃が高い」と感じる方にとっては、DIY交換の選択肢も現実的になってきます。ただし、DIYには一定の注意点があります。後述の「自分で交換する場合」のセクションで詳しく説明します。
参考として、費用の全体像が把握しやすいショップの工賃一覧を確認しておくと安心です。
バイク用品専門店「2りんかん」のブレーキ系工賃一覧はこちら。
2りんかん ブレーキ・ハンドル工賃表(税込価格を掲載)
バイクのブレーキフルードは、乗っていなくても劣化が進みます。これが車のエンジンオイルとの最大の違いです。グリコール系のブレーキフルードは「吸湿性」があるため、リザーバータンクのわずかな空気の出入りだけで、少しずつ水分を吸収してしまいます。
交換の一般的な目安は以下の3つです。
- 2年に1度:走行頻度にかかわらず、2年が経過したら交換を検討する
- 走行距離1万〜2万km:ツーリングや通勤で距離が伸びるバイクは距離でも判断する
- 色が茶色〜黒に変化したとき:リザーバータンクのフルードが透明感を失い、茶色や黒に濁っていたら交換サイン
特に見落としやすいのが、125cc以下の原付二種や250cc以下の軽二輪に乗っているケースです。これらのバイクは車検がないため、強制的に点検を受ける機会がありません。気づいたら4〜5年交換していなかった、という事態になりやすいです。
車検があるバイク(400cc超)は車検のタイミング(2年ごと)に交換するのが管理しやすいですね。
一方、車検なしのバイクオーナーは、スマートフォンのカレンダーアプリや整備手帳などを使って、「次の交換時期」を自分で記録しておく習慣が非常に重要です。購入時の整備記録書に交換日を書き込んでおくだけでも、見落とし防止に役立ちます。
ナップスによる劣化前後の比較と交換のタイミングについて参考になる解説記事。
ブレーキフルードを交換・補充する際に必ず確認しなければならないのが、DOT(Department of Transportation)規格です。これはアメリカ運輸省が定めた性能基準で、数字が大きくなるほど沸点が高くなる仕組みです。
バイクでよく使われるDOT規格の沸点比較は以下のとおりです。
| 規格 | ドライ沸点 | ウェット沸点 | 主成分 |
|---|---|---|---|
| DOT3 | 205℃以上 | 140℃以上 | グリコール系 |
| DOT4 | 230℃以上 | 155℃以上 | グリコール系 |
| DOT5 | 260℃以上 | 180℃以上 | シリコン系 |
| DOT5.1 | 260℃以上 | 180℃以上 | グリコール系 |
国内のほとんどのバイクはDOT4指定です。
ここで注意が必要なのが、上位規格への交換・混合に関するルールです。DOT4指定のバイクにDOT3を入れてしまうと、沸点が下がってしまうため危険です。「数字が小さいほど良い」と誤解している方は要注意ですね。
逆にDOT4指定車にDOT5.1を入れることは技術的には可能な場合もありますが、メーカー指定外の使い方になるため推奨されません。
さらに注意が必要なのがDOT5です。DOT5はシリコン系であり、グリコール系のDOT3・DOT4・DOT5.1とは成分が根本的に異なります。混合は絶対に禁止です。古いフルードに新しいものを足すのではなく、必ず全量を交換するのが原則です。
自分のバイクが何のDOT規格を指定しているかは、マスターシリンダーのキャップ(フタ)の上面に印字されていることが多いので、そこで確認できます。
DIYでブレーキフルードを交換する場合、必要な費用はフルード代と工具代を合わせて約3,000〜5,000円程度が目安です。工具は一度揃えれば次回以降は使い回せるので、2回目以降はフルード代だけで済みます。
ショップへの依頼費用(1ライン2,900〜5,000円)と比較すると、前後2ライン分の節約効果は1回あたり数千円になります。
DIY交換に必要な主な道具は以下のとおりです。
- ブレーキフルード(DOT規格はバイクに合わせて選ぶ):500〜2,000円程度
- 透明ゴムチューブ(耐油性):200〜300円
- 空のペットボトルや密閉できる容器(廃液受け)
- スパナ(8〜10mm)またはモンキーレンチ
- ワンマンブリーダー(エア混入防止器具):1,000〜3,000円
これは使えそうです。ただし、ブレーキはバイクで最も重要な安全装置です。作業後に必ずブレーキレバーを握ってフィーリングを確認し、引きずりや抜けがないかチェックすることが欠かせません。
DIYで最も多い失敗が「エア抜き不足」です。交換後にブレーキレバーがスカスカになる(スポンジーな感触になる)場合は、ブレーキライン内に気泡が残っています。この状態で走行するとブレーキが効かなくなるため、再度エア抜きが必要です。
ワンマンブリーダーを使うと、一人でもエア抜きがしやすくなります。初めてDIYに挑戦する方は、信頼性の高い道具を準備するのが安心への近道です。
モーターファン誌による実践的なブレーキフルード交換・エア抜き手順の解説。
ブレーキフルードを長期間放置すると、最終的に「ベーパーロック現象」と呼ばれる深刻な事態が発生するリスクがあります。これはブレーキが突然まったく効かなくなる現象です。
メカニズムを整理しておきましょう。
ブレーキフルードはグリコール系(一般的なDOT3・4)の場合、空気中の水分を吸収する吸湿性を持ちます。水分を吸収すると沸点が急激に下がります。ナップスのデータによると、新品時のドライ沸点が266℃あったフルードが、水分混入率3.5%(交換から1〜2年後の典型的な状態)になると沸点は165℃まで下がります。なんと約100℃も沸点が低下するのです。
これは、夏場の連続ブレーキングで十分に沸騰しうる温度です。
フルードが沸騰すると気泡が発生し、ブレーキレバーを握っても液圧がキャリパーに伝わらなくなります。ブレーキが効かない状態です。峠の下り坂でブレーキをかけ続けたとき、やけにレバーが軽くなったと感じたら要注意です。
劣化の影響はベーパーロック現象だけではありません。水分を含んだフルードは金属を錆びさせるため、マスターシリンダーやキャリパーのピストンが固着するリスクもあります。こうなるとフルード代数百円では済まなくなり、キャリパーオーバーホール(2りんかんの工賃で11,000円〜)や最悪は部品交換が必要になります。
フルード代が安くても、放置すると痛い出費になりますね。
定期的な交換が安全と節約の両立につながります。2年ごと、または走行距離1万kmを目安として、ブレーキフルードの交換を習慣化しましょう。特に長距離ツーリングや峠走行の前には、リザーバータンクのフルードの色を目視でチェックするだけでも、早期発見につながります。
ベーパーロック現象の仕組みとブレーキフルード劣化の関係について詳しく解説された参考記事。
損保ジャパン|ベーパーロック現象とは?原因・仕組みをわかりやすく解説

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