

アクセルを離しただけで突然エンストする車、実はバキュームセンサーの故障が原因のケースが多いです。
バキュームセンサーとは、エンジンへ吸入される空気量(吸気圧)を測定するためのセンサーです。正式には「マニホールド絶対圧センサー(MAPセンサー)」とも呼ばれ、エンジンルームのサージタンク(またはインテークマニホールド)とゴムホースで接続されています。
自動車のエンジンは走るために「空気」と「ガソリン」を混ぜて燃焼させています。この混合気のバランス(空燃比)が崩れると、エンジンはたちまち不調になります。バキュームセンサーはその空気側の情報を正確に取得し、ECU(エンジンコントロールユニット)に伝える役目を担っています。
注目したいのは「バキューム(負圧)」という点です。エンジンが空気を吸い込む際、吸気管内には大気圧よりも低い「負圧」が生まれます。アクセルを踏み込むとこの負圧は小さくなり(大気圧に近づき)、アクセルを離すと負圧は大きくなります。バキュームセンサーはこの圧力変化を電気信号に変換してECUへ常時送り続けています。
つまり負圧の変化=エンジンの負荷状態です。
| アクセル操作 | 吸気管内の状態 | ECUの判断 |
|---|---|---|
| 踏み込む | 負圧が小さくなる(大気圧に近づく) | 燃料噴射量を増やす |
| 離す(アイドリング) | 負圧が大きくなる(真空に近づく) | 燃料噴射量を絞る |
また、バキュームセンサーは「絶対圧」を検出するという特徴があります。これは真空(0)を基準にした圧力の測り方で、標高の高い山岳地帯や天候による大気圧の変化に左右されず、常に正確な吸気管圧力を計測できます。これが大きな強みです。
なお、同じ役割を持ちながらもターボエンジン(過給機付きエンジン)に搭載されるものは「ブーストセンサー」と呼ばれます。NAエンジン(自然吸気エンジン)ではバキュームセンサー、ターボ車ではブーストセンサーという呼称になる点も覚えておくと、整備士や自動車用品店でのやり取りがスムーズです。これだけ覚えておけばOKです。
参考:グーネット自動車用語集「バキュームセンサー」とは
https://www.goo-net.com/knowledge/03685/
バキュームセンサーがどのように機能しているのかを理解しておくと、故障の原因や症状にも納得がいきます。仕組みの核心は「ピエゾ抵抗効果」にあります。
ピエゾ抵抗効果とは、シリコンなどの結晶に力(応力)を加えると電気抵抗の値が変化する性質のことです。バキュームセンサーの内部には、真空状態に保たれたチャンバーの中にシリコンチップが組み込まれており、その片面に吸気管の圧力(負圧)が作用する構造になっています。
圧力がかかるとシリコンチップがわずかにたわみ、その変形量に応じて電気抵抗が変化します。この抵抗変化を内蔵のハイブリッドICが電圧信号に変換・増幅し、ECUへ送信しています。
ECUはこの電圧データをもとに以下のような制御を行います。
0.2Vのズレがエンジン不調を引き起こすことも、実際の整備事例として報告されています。大分県自動車整備振興会の整備事例では、チェイサー(1JZ-GEエンジン)においてバキュームセンサーの特性がわずか0.2Vズレただけで、アイドリング振動が発生したと報告されています。これほど精密なセンサーだということですね。
参考:大分県自動車整備振興会「実践!整備事例 0.2Vの特性ズレがトラブルの原因」
https://www.jaspa-oita.or.jp/jissen/2002/j_1407.html
バキュームセンサーが故障すると、エンジンコンピューター(ECU)は正確な吸気量データを取得できなくなります。その結果、燃料噴射量や点火時期の制御が狂い、さまざまな走行トラブルとして現れます。
代表的な故障症状は次のとおりです。
特に注意したいのが「エンジン警告灯の点灯」です。2017年2月より車検の審査基準が厳格化され、エンジン警告灯が点灯している状態では車検を受けることができません。
放置した場合のリスクが問題です。センサー自体の交換費用は比較的安価で、工賃込みで1〜3万円程度が目安です。しかし放置してECU制御の乱れが続くと、エンジン本体への負担が増大し、最終的にはエンジン自体の交換(30万円以上)が必要になるリスクもあります。
早期発見・早期対処が原則です。
バキュームセンサーと同じく「空気量を測る」と説明されるセンサーに「エアフロメーター(エアマスセンサー)」があります。この2つを混同しているドライバーは少なくありません。実は両者は計測方式も用途も異なります。
| 比較項目 | バキュームセンサー(MAPセンサー) | エアフロメーター(MAFセンサー) |
|---|---|---|
| 計測方法 | 吸気管内の圧力(負圧)から間接的に空気量を算出 | 実際に通過する空気量を直接計測(熱線式など) |
| 主な搭載車 | NAエンジン(自然吸気)が中心 | 比較的新しい国産・輸入車に多い |
| 信号の種類 | 圧力差による抵抗値変化→電圧信号 | 電流値の変化→電気信号 |
| 特徴 | 高地など気圧変化にも対応(絶対圧検出) | 実際の空気質量を直接把握するため精度が高い |
意外なことに、一部の車種では両方を搭載しているケースもあります。これはECUがより精密な制御を行うためで、バキュームセンサーをサブとして使いながらエアフロメーターをメイン計測に使うという構成です。
これは使えそうです。
さらに注目したい点として、バキュームセンサーには「エンジンの脈動を利用した診断」という応用的な使い方もあります。通常、複数気筒のホースを一つのセンサーで計測すると脈動が平均化されますが、あえて脈動を残した状態でクランク角ごとに計測することで、各シリンダーの燃焼状態をリアルタイムで把握する技術が存在します。これはチューニングや精密診断の現場で活用されており、バキュームセンサーが「圧力を計るだけ」のシンプルなパーツではないことを示しています。
こうした特性を知っておくと、整備工場でのセンサー点検の際に「どのセンサーが問題なのか」をより正確に把握できるようになります。
バキュームセンサーが故障し、エンジン警告灯が点灯したまま放置するのは非常にリスクの高い行為です。その最大の理由が「車検不合格」です。
2017年2月以降の車検規定では、エンジン警告灯・ブレーキ警告灯・ABS警告灯・エアバッグ警告灯のいずれかが点灯または点滅している状態では、保安基準を満たさないとみなされ、車検を受けること自体ができません。つまり警告灯が点いたまま車検に持ち込むと、検査すら受けられず帰される可能性があります。車検費用を払ったうえに再検査費用も発生する、という二重の出費になりかねません。
では具体的にどう対処すればよいのでしょうか?
まず、アイドリング中にエンジンがガタガタ振動したり、アクセルを離した際に回転が不安定になったりする兆候が現れたら、早めにディーラーや整備工場でのOBD(オンボード診断)スキャンを依頼することが最善です。OBDスキャナーを使えば、ECUが記録した故障コードを読み取ることができ、どのセンサーに異常があるのかを数分で特定できます。
修理費用の目安として、バキュームセンサー単体の交換は工賃込みで1〜3万円程度が一般的です。一方、放置してエンジン本体にまでダメージが及んだ場合は30万円以上の費用が必要になることもあります。
修理か乗り換えかの判断基準として、愛車の中古車査定額よりも修理費用が高くなる場合は、乗り換えを検討するのが現実的です。走行距離10万km・年式10年以上の車でエンジン系のトラブルが出た場合は、他の部品も同時に劣化しているケースが多いためです。
エンジン警告灯が点灯したら、その日のうちに専門店への予約を入れることが大切です。
参考:廃車本舗「オートマ車なのにエンストした!原因や修理費用」
https://haisyahonpo.jp/column/4738
参考:車検とエンジン警告灯の関係(KINTO マガジン)
https://kinto-jp.com/magazine/k20230424-1/

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