

ピカールで磨いた後に油分を残すと、次の走行でマフラーに汚れが焼き付いてシミになります。
ステンレスマフラーは、鉄製マフラーと比べてサビにくく、美しい光沢を長く保てる素材です。しかし「サビにくい」と「汚れない」は別の話です。走行を重ねるごとに、泥・鉄粉・排気ガスによる汚れやくすみが蓄積していきます。
そこで登場するのが、金属磨き剤の定番「ピカール」です。日本磨料工業が製造するピカール液は、研磨粒子の平均粒径が約3ミクロン(番手目安#4000相当)という非常に細かい粒子を使っているため、ステンレス表面を傷つけにくく、酸化被膜や軽い汚れを除去しながら光沢を復活させてくれます。これが使える、ということですね。
ピカールには複数の種類があり、マフラー磨きで使われるのは主に以下の3つです。
| 製品名 | タイプ | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| ピカール液 | 液体(灯油系溶剤) | 定番中の定番。#4000相当の細かい研磨粒子 | くすみ・酸化被膜の除去・鏡面仕上げ |
| ピカールネオ | 液体(低臭溶剤) | ピカール液から臭いを大幅に抑えた改良版。研磨力は同等以上 | 臭いが気になる屋外・屋内作業 |
| ピカールネリ | ペースト状 | 研磨粒子が粗め。頑固な汚れに強い | しつこい変色・錆・くすみの除去 |
ピカール液とピカールネオの違いは、溶剤の種類だけです。ピカール液は灯油が溶剤として使われているため独特の臭いがありますが、ピカールネオは低臭溶剤を使用しており、キッチンや室内でも使いやすくなっています。研磨力に差はないため、臭いが気になる場合はネオを選ぶだけでOKです。
なお、ピカール液・ネオは開封後1年以内を目安に使い切ることが公式に推奨されています。長期間使っていない缶は、固まっている場合があるので要注意です。灯油または水を少量混ぜてよく振れば元に戻ることがあります。
ピカールはステンレスマフラーの「くすみ取り・光沢出し」には優秀ですが、茶色い熱焼けを完全に落とすには不十分な場合もあります。焼けが気になるなら「ピカール ステンクリア」に切り替えるのが近道です。
公式メーカーであるピカール(日本磨料工業)の製品Q&Aページでは、適した金属の種類や使用上の注意が詳しく解説されています。
ピカール公式 よくある質問(ステンレスへの使い方・注意点あり)
磨きの仕上がりを左右するのは、実は「磨き始める前」の準備です。いきなりピカールをウエスに付けてゴシゴシしても、表面に砂や泥粒が残っていれば細かなキズの原因になります。下準備が基本です。
まず確認しなければならないのが、マフラーの温度です。走行直後や、アイドリング後しばらく経った状態でも、マフラーは触れないほど熱くなっていることがあります。エンジンを切ってから最低1〜2時間は待ち、素手で触れる温度まで完全に冷却してから作業を始めてください。熱い状態でピカールを塗布しても液がすぐに蒸発してしまい、研磨効果がほとんど出ません。
冷えていることが確認できたら、カーシャンプーを溶かしたバケツの水とスポンジで、マフラー全体の泥・油汚れを洗い流します。この時、排気口から水が内部に大量に入らないよう、水の向きには注意してください。水洗い後はウエスで水分をしっかり拭き取り、完全に乾いてから磨きに入ります。
ピカール液を使った磨き手順は、以下の流れが基本です。
磨いたウエスを見ると、黒ずんだ汚れがべったりついているはずです。これはステンレス表面の酸化被膜や焼き付き汚れが除去された証拠です。汚れが取れているということですね。
テールエンド(出口部分)の内側も忘れず磨いておくと、仕上がりの印象が大きく変わります。手が届く範囲で全体を磨いたら、最後にマイクロファイバークロスで乾拭きして仕上げます。乾拭き後の輝きは、磨きっぱなしの状態より格段に上がります。
また、磨き後に油分が残っていると、次の走行時に熱で焼き付いて新たな汚れになります。仕上げの乾拭きは磨き残し除去だけでなく、油分・ピカール成分の完全除去のためにも欠かせない工程です。丁寧に、これが条件です。
ステンレスマフラーが走行を重ねると現れる「茶色・青紫色の焼け色」は、排気熱による酸化膜の変色が原因です。これはただの汚れではなく、ステンレス表面の金属組成が熱によって変化した状態です。つまり、通常の汚れ落としとはアプローチが異なります。
ピカール液(通常の研磨タイプ)でも軽い焼けは改善できますが、しっかり焼け色が入った箇所には研磨だけでは時間がかかります。そこで登場するのが「ピカール ステンクリア(品番17600)」です。ステンクリアは研磨剤に加えて「リン酸」などの酸性成分を配合しており、酸が焼けの成分を溶解し、研磨剤がそれをこすり落とすという「Wパワー」で熱焼けを除去します。
ステンクリアの研磨剤はアルミナ粒子で、平均粒径2〜3μm(#4000番相当)と細かく設定されているため、傷が残りにくいのも特長です。容量は320mlの大容量タイプで、サイレンサー・エキパイを何度も繰り返し処理できます。これは使えそうです。
ステンクリアの使い方はシンプルです。
焼けが濃い場合は③〜⑤を数回繰り返してください。静置時間は守ることが大切で、塗ってすぐこすっても十分な効果が出ません。2〜3分が条件です。
⚠️ 使用時は必ず保護手袋を着用してください。酸性タイプのため、素手で扱うと肌に刺激があります。また、塩素系洗剤と混ざると有害なガスが発生することがあるため、作業前に近くに塩素系の洗剤がないことを確認してください。
ステンクリアで焼けを落とした後、さらにピカール液やエクストラメタルポリッシュで磨き込むことで、ステンレス本来の輝きを取り戻せます。「焼け落とし→磨き仕上げ」の2ステップが、最も効果的なコンビネーションです。
焼け落とし専用品について、販売店2りんかんの詳細解説ページも参考になります。
「ピカールだけで磨いても、なんとなくまだくすんでいる気がする」という場合、原因の多くは表面の細かいキズや深い変色が残っているためです。これは研磨力が足りていないサインで、耐水ペーパーを組み合わせることで解決できます。
鏡面仕上げに近づけたい場合の一般的なアプローチは、番手の粗いものから細かいものへ順番に磨いていくことです。目安は以下の通りです。
| 工程 | 使うもの | 目的 |
|---|---|---|
| ①粗削り(必要な場合のみ) | 耐水ペーパー #400〜#600 | 深い錆・大きな変色を削り落とす |
| ②中磨き | 耐水ペーパー #800〜#1200 | 前工程のキズを消していく |
| ③仕上げ研磨 | 耐水ペーパー #1500〜#2000 | 表面を滑らかに整える |
| ④鏡面仕上げ | ピカール液・ネオ(#4000相当) | 光沢を出し、酸化被膜を除去 |
ポイントは、番手を一気に上げないことです。たとえば#600番で磨いたのに次に#2000番へ飛ぶと、#600の傷が残ったままになってしまいます。「一段上の番手で、前の段階のキズを消してから次へ」が鉄則です。これが原則です。
耐水ペーパーで磨く際は、水を付けて湿らせた状態で使うのが基本です。水の潤滑作用で摩擦熱を抑え、目詰まりも防げます。一方向だけではなく縦・横と向きを変えながら磨くと、均一な面に仕上がります。
ただし、一般的なくすみやちょっとした焼けであれば、耐水ペーパーを使わずピカール液だけで十分な仕上がりが出ます。耐水ペーパーは「深いキズ・頑固な錆・目立つ変色がある」場合に使うものとして位置付けておくと、必要以上にマフラーを削ってしまうリスクを避けられます。
また、マフラーの磨き作業でポリッシャー(電動工具)を使うと作業時間と体力を大幅に削減できます。ただし電動工具は回転速度と圧力の管理が難しく、使い慣れていない場合は摩擦熱で表面を傷める可能性があります。最初は手磨きで感覚をつかんでから、必要に応じてポリッシャーを検討するのが安全です。
せっかくピカールで磨いてきれいにしても、メンテナンスを放置すればまたすぐ汚れます。磨いた後の「仕上げケア」と「日常的な維持」を意識することで、輝きを長持ちさせることができます。
磨き直後にやるべき最重要作業は、油分の完全除去です。ピカールの成分・手の皮脂・作業中に付着した油分が残ったまま走行すると、エンジン熱によってそれらがマフラー表面に焼き付いてしまいます。これが新たな茶色いシミの原因になります。痛いところですね。仕上げ拭きには、繊維が細かくて吸油力の高いマイクロファイバークロスが最適です。
その次のステップとして、耐熱ワックスでのコーティングが効果的です。耐熱ワックスは通常のカーワックスと違い、エンジンやマフラーが発する高温に耐えられる特殊シリコン皮膜を形成します。製品によりますが、耐熱温度250℃〜300℃程度まで対応したものが各社から販売されています。
ただし、耐熱ワックスは万能ではありません。塗布後の拭き上げが手間で、量が多すぎると焼けた際にムラになることがあります。また、エキパイ(排気管)は部位によっては600℃以上になるため、耐熱ワックスだけでは保護しきれない場合もあります。エキパイへの適用は慎重に判断してください。
日常的な維持としては、以下が現実的です。
- 🚿 洗車のついでにマフラーも水拭き:泥・鉄粉・塩分(融雪剤)を早期に除去するだけで劣化が遅れます
- 🧻 走行後の乾拭き:熱が残っている状態は避け、冷えてから乾いたクロスで表面を軽く拭くと汚れの固着を防げます
- 🔁 定期的なピカール磨き(目安:3〜6か月ごと):早めに磨けば軽い汚れのうちに落とせるため、作業時間が大幅に短くなります
最後に、車のステンレスマフラーの場合、マフラーが車体の下に位置しているため、手が届く範囲での作業に限定されます。無理な姿勢での作業はケガにつながるため、ジャッキスタンド(ウマ)を使って車を安全に持ち上げた状態で作業するか、専門のカーショップやバイクショップに依頼することも選択肢に入れてください。
DIYにこだわりすぎて体や安全を犠牲にするのは本末転倒です。仕上がりを重視する場合や自力での作業が難しい場合は、プロに任せることで確実な輝きと安全を両立できます。無理のない範囲での施工が基本です。

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