

安く済ませようとしたPTFEコーティングが、年間でガラスコーティングより2万円以上高くつくことがあります。
PTFEとはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene)の略称で、フッ素樹脂の一種です。一般的に「テフロン™」という名前で知られていますが、テフロンはアメリカのケマーズ社(旧デュポン社)の登録商標であり、PTFE素材そのものを指す汎用名称ではありません。つまり「PTFEコーティング=テフロンコーティング」とおおむね同義で使われていますが、厳密には異なります。
フライパンや炊飯器の内釜にも使われているこの素材は、「くっつかない」「汚れが落ちやすい」という特性で日常生活に浸透しています。車のボディに応用した場合も、同じ原理でボディ表面に薄い被膜を形成し、水や油汚れを弾く効果を発揮します。
ただし、調理器具への施工と車への施工には大きな違いがあります。フライパンは高温で焼き付けてフッ素を定着させますが、車ボディへの施工ではシリコーンなどの成分と組み合わせることで、焼き付けなくても塗装面に定着する仕組みになっています。つまり「フッ素単体」ではなく「フッ素系コーティング」として使われます。これが基本です。
PTFEの主な特性は非粘着性・耐熱性・耐薬品性・撥水性・撥油性・低摩擦性など、非常に多岐にわたります。特に車のボディ保護という観点では、以下の特性が直接的に役立ちます。
| 特性 | 車ボディへの効果 |
|---|---|
| 撥水性 | 雨水や洗車の水をよく弾き、水滴と一緒に汚れが流れやすい |
| 撥油性 | 排気ガス・油性の汚れが付着しにくく、ガラスコーティングにない特性 |
| 耐熱性 | 200℃前後まで耐えられ、炎天下や走行熱から塗装を保護 |
| 防汚性 | 表面張力が低いため汚れがつきにくく落としやすい |
「撥油性はガラスコーティングにはない」という点は特筆に値します。シリコーンやガラスを主成分とする他のコーティングは油性汚れへの対応が弱いのですが、PTFEはこの点で唯一無二の性能を持っています。都市部を走行する車、幹線道路をよく使う車は排気ガスや油分を含んだ汚れが付きやすく、PTFEコーティングの恩恵を受けやすい状況といえます。
PTFEコーティングとは?基礎と応用を詳しく解説(compasu.co.jp)
※PTFEの特性である非粘着性・耐薬品性・撥水撥油性など、車への応用に役立つ基礎情報が整理されています。
PTFEコーティング(フッ素系コーティング)の施工費用は、一般的に軽自動車・コンパクトカーで2〜4万円、普通車で2.5〜5万円程度が相場です。ガラスコーティング(普通車で8〜18万円)と比べると、初期費用は明らかに安く見えます。コスパが高いと思いがちです。
ところが、ここに大きな落とし穴があります。
PTFEコーティングの耐久期間は一般的に3〜6ヶ月程度とされています。条件が悪ければ1〜2ヶ月で効果が薄れることもあります。仮に3ヶ月ごとに3万円の施工を繰り返すと、1年間で12万円の出費になる計算です。一方、ガラスコーティングは1回の施工で3〜5年持つものも珍しくなく、goo-netの情報によれば「ガラスコーティング6万円で3年持続なら年間2万円、ポリマー系6,000円で3ヶ月持続なら年間2万4,000円」という試算が成り立ちます。
つまり、PTFEコーティングを毎回プロに依頼し続けると、長期的にはガラスコーティングよりも高くなるケースがあります。痛いですね。
もちろん、PTFEコーティングを「市販のDIY製品」で自分施工する方法もあります。市販品は数千円〜1万円程度のものも多く、頻度の高い再施工コストを大幅に抑えることができます。ただしプロ施工と比べると仕上がりのムラや耐久性で差が出ることは覚悟が必要です。
費用対効果を最大化するポイントは「使用目的の明確化」です。新車購入直後や、すでにガラスコーティングが施工されている車の上から「維持メンテナンス」として薄く重ねる用途では、PTFEコーティングは非常に合理的な選択になります。また、「車をこれから売る予定がある」「2年以内に乗り替える」というケースでも、長期耐久コーティングに大きな投資をするよりもPTFEコーティングでコストを抑える判断が有効です。
| コーティング種類 | 初期費用(普通車) | 耐久期間 | 年間換算費用(目安) |
|---|---|---|---|
| PTFEコーティング | 3〜5万円 | 3〜6ヶ月 | 6〜20万円 |
| ガラス系コーティング | 5〜8万円 | 6ヶ月〜1年 | 5〜8万円 |
| ガラスコーティング | 8〜18万円 | 3〜5年 | 1.6〜6万円 |
コーティングの作業時間と料金相場(goo-net)
※ガラスコーティングとポリマー系コーティングの年間換算費用を比較した実用的なデータが記載されています。
PTFEコーティングの仕上がり品質と耐久性を左右するのは、コーティング剤の品質よりも「下地処理の精度」です。これが原則です。どれだけ高品質なPTFEコーティング剤を使っても、塗装面が汚れたままであったり油分が残っていたりすると、コーティングが正常に密着せず数週間で剥がれてしまうことがあります。
下地処理の基本的な流れは以下の通りです。
- 🚿 シャンプー洗車:表面の泥・砂・ホコリを丁寧に除去する。研磨剤入りのカーシャンプーは被膜を傷つけるため使用しない。
- 🧲 鉄粉除去:鉄粉除去剤や粘土クリーナーで塗装面にくっついた鉄粉を除去。これを怠るとコーティングの均一な密着が妨げられる。
- 💧 水垢・イオンデポジット除去:ウォータースポット(水垢の白い輪状の跡)はコーティング前に専用剤で除去しておく。
- 🧴 脱脂処理:シリコン系の油分や前回のコーティング残渣を専用の脱脂剤で完全に除去する。これがコーティング密着の要。
脱脂処理はとくに見落としがちな工程です。DIYで施工する際、「しっかり洗車したからOK」と思って脱脂をスキップすると、コーティングが浮いたり部分的に弾かれたりして、施工直後からムラのある仕上がりになることがあります。
下地処理の後は、スポンジや専用アプリケーターでPTFEコーティング剤を薄く均一に塗布し、すぐに拭き上げます。直射日光が当たる環境では塗布前に乾燥してしまいムラになるため、屋内や日陰での作業が必須です。施工後は1〜2時間程度、雨や水に触れないようにします。
プロ施工では、さらに電動ポリッシャーを使った「研磨(磨き)」工程が入る場合があります。塗装表面の細かい傷を平滑にしてからコーティングを入れることで、光沢感と密着性が大きく向上します。料金が高くなる分、プロ施工を選ぶ最大の理由はこの「磨き+コーティング」のセット工程にあります。
カーコーティングの施工方法とDIYでの下地処理手順(rat-g.jp)
※下地処理の手順と脱脂の重要性について、DIY向けに詳しく解説されています。
「PTFEコーティングとガラスコーティング、どちらが自分に向いているのか」という疑問は、多くの車オーナーが持つ悩みです。どちらが優れているかではなく、「どちらが自分の使い方に合っているか」で判断するのが正解です。
PTFEコーティングの最大のアドバンテージは、撥油性と施工コストの低さ、そして柔らかい被膜による「傷の目立ちにくさ」です。フッ素系コーティングの被膜はやわらかいため、細かいキズが入ってもコーティング層が吸収・馴染みやすく、ガラスコーティングのように「被膜が割れてキズが目立つ」という事態が起きにくい側面があります。これは使えそうです。
一方でガラスコーティングの強みは圧倒的な耐久性と硬度です。被膜硬度は9H前後のものもあり、飛び石や軽いこすり傷を防ぐ効果があります。メンテナンスの頻度が少なく済み、長期で見たときの費用対効果も高い傾向があります。
どちらのコーティングが向いているかを見極める判断基準として、以下の観点が参考になります。
- 🏙️ 走行環境が都市部・幹線道路中心 → 撥油性に優れるPTFEコーティングが有利
- 🌳 青空駐車・紫外線にさらされやすい → 耐久性重視でガラスコーティングが有利
- 🔄 2年以内に乗り換え予定 → 長期耐久コーティングは不要、PTFEで十分
- ✨ 長期間ピカピカを維持したい → ガラスコーティングまたはセラミックが適切
- 💰 初期投資を抑えたい → PTFEコーティング(ただし再施工サイクルに注意)
また、「PTFEとガラスの組み合わせ」という選択肢もあります。ガラスコーティングを下地として施工し、その上にPTFEコーティングを定期的に重ねるという方法です。ガラス被膜の硬さと耐久性を維持しながら、表層のPTFEが汚れを弾き、洗車を楽にする効果が期待できます。一部の専門施工店では「ガラス+フッ素(PTFE)ダブルコーティング」という名称でこのメニューを提供しています。
フッ素系カーコーティングのメリット・デメリット詳細解説(cosmo-oil.co.jp)
※撥油性がガラスコーティングにはない特性であることや、フッ素系コーティングの具体的な効果について詳しく記載されています。
PTFEコーティングの弱点のひとつは「洗車によって被膜が剥がれやすい」という点です。正しいメンテナンスを続けなければ、3ヶ月の耐久期間がさらに短縮される可能性があります。
施工直後(48〜72時間以内)は水に触れさせないことが最低限のルールです。コーティング剤が完全に定着する前に水や雨にさらされると、定着不良を起こして白化や剥離の原因になります。
定着後の洗車では、次の点に注意が必要です。
- 🧼 研磨剤入りカーシャンプーは使わない:研磨成分がPTFEの被膜を削り取ってしまいます。必ずノンスクラッチ・pH中性のシャンプーを選ぶこと。
- 🚗 洗車機の使用は被膜定着後から:施工直後1ヶ月以内はとくに洗車機を避けるのが無難です。定着後であれば洗車機の水圧程度で被膜が剥がれることは少ないとされています。
- ☀️ 炎天下での洗車は避ける:水滴が蒸発してイオンデポジット(水垢)が発生しやすく、被膜へのダメージも大きくなります。
- 🪣 手洗い洗車の頻度は1〜2週間に1回が理想:汚れを長期間放置すると固着してコーティングへの負担が増します。
また、PTFEコーティング施工後に撥水効果が弱まってきたと感じたら、それが再施工のサインです。市販のPTFEコーティングスプレー(SOFT99の「Fusso Coat」など)を使って、自分で手軽にトップコートを追加する方法も広く行われています。1,500〜3,000円程度の製品で施工できるため、プロに頼まなくても維持コストを低く抑えられます。これは覚えておけばOKです。
施工後のケアの中で、見落としがちなのが「ガラス面のPTFEコーティング」です。フロントガラスにフッ素系コーティングを施すと、雨天走行時の視界が劇的に改善します。時速60km以上での走行中はワイパーなしでも視界が確保できるレベルの撥水効果が得られる製品もあり、安全性向上という観点からも積極的に活用したいメンテナンスのひとつです。
カーコーティング後の洗車頻度と正しい手順(art-pro.co.jp)
※コーティング後の洗車タイミング・使用すべきシャンプーの種類・洗車頻度の目安が詳しく解説されています。

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