燃料電池車水素自動車違いを徹底比較する仕組みとメリット

燃料電池車水素自動車違いを徹底比較する仕組みとメリット

燃料電池車水素自動車違い

燃料電池車と水素自動車の主な違い
燃料電池車(FCV)

水素と酸素の化学反応で発電し、電気でモーターを駆動する電気自動車

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水素エンジン車

水素を燃料として直接エンジンで燃焼させて走行する車

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環境性能

どちらも走行時は水のみを排出し、CO2排出量がほぼゼロの環境に優しい車

燃料電池車の仕組みと発電方法


図解・燃料電池自動車のメカニズム 水素で走るしくみから自動運転の未来まで (ブルーバックス)

 

燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)は、水素タンクに貯蔵した水素と空気中の酸素を燃料電池内で化学反応させることで電気を発生させ、その電気でモーターを回転させて走行する電気自動車です。この化学反応では水素と酸素が結びついて水(H2O)が生成されるため、排出されるのは無害な水蒸気のみで、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)といった有害物質は一切発生しません。
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燃料電池は「発電する装置」であり、一般的な乾電池のように容量に制限がなく、水素を供給し続ける限り安定的に電気を取り出すことができます。水素ステーションでの補給時間は約3分程度と短く、ガソリン車の給油とほぼ同等の利便性を実現しています。
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水素自動車の燃焼システムと特徴

水素エンジン車(水素自動車)は、従来のガソリンエンジンをベースに燃料供給系と噴射系を変更し、ガソリンの代わりに水素を燃料として直接エンジンで燃焼させて走行する車です。水素は燃焼速度がガソリンの約8倍と速く、低速域からトルクの立ち上がりが早く、レスポンスの良い走りが特徴です。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-fcv-demerit-future/

燃焼時には空気を取り込むため、微量の窒素酸化物(NOx)が発生しますが、既存の後処理技術を活用することで排出量を大幅に抑えることが可能です。また、水素エンジンは既存のエンジン技術やノウハウを活かせるため、燃料電池車と比較して開発コストや車両価格を抑えられる可能性があります。
参考)水素自動車はどのように動く?メリット・デメリットも合わせてチ…

燃料電池車と水素自動車のコスト比較

燃料電池車の車両価格は高額で、トヨタの代表的なモデル「MIRAI(ミライ)」は726万円から861万円、ホンダの「CR-V e:FCEV」は809万円と、同格のガソリン車やハイブリッド車と比較して割高です。この高価格の主な要因は、燃料電池に使用されるプラチナなどのレアメタルがディーゼルエンジン車の数倍必要となるためです。
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一方、水素エンジン車は既存のエンジン技術を流用できるため、燃料電池車よりもイニシャルコストを抑えられる見込みがあります。また、燃料電池車用の水素は純度99.97%と高純度が必要でコストがかかりますが、水素エンジンは純度の低い水素にも対応できるため、将来的にはランニングコストも抑えられる可能性があります。
参考)https://www.yanmar.com/jp/about/ymedia/article/hydrogen.html

燃料費に関しては、水素価格を1kgあたり1,200円とした場合、MIRAIで約850km走行する燃料費は約9,360円となり、同程度の航続距離を持つハイブリッド車のガソリン代とほぼ同等です。
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燃料電池車における水素ステーション設置状況

日本国内の水素ステーション設置数は、2025年4月時点で約154カ所となっており、ガソリンスタンドの約2.7万カ所やEV急速充電器の約1.1万口と比較すると大幅に少ない状況です。地域別の内訳を見ると、首都圏43カ所、中京圏49カ所、関西圏18カ所、九州圏12カ所、その他29カ所と、四大都市圏に集中しています。
参考)EVに負けたFCVのその後(Ⅸ)

当初、2025年には320カ所、2027年には500カ所の設置が目標とされていましたが、2023年3月に179カ所まで増加した後、2025年には156カ所に減少しており、目標達成は困難な状況です。2023年6月に改定された水素基本戦略では、2030年度までに900基から1,000基程度の整備を目指す方針が示され、今後は乗用車だけでなく商用車や港湾地域など多様なニーズに対応するマルチステーション化が進められる予定です。
参考)進まない?水素ステーション

燃料電池車の航続距離と燃費性能の実力

燃料電池車の航続距離は、1回の水素充填で約810kmから850kmと、ガソリン車に匹敵する長距離走行が可能です。トヨタMIRAIの場合、Zグレードで146km/kg、Gグレードで152km/kgの燃費性能を実現しており、水素タンク容量は3本合計で141L(前方64L+中52L+後方25L)となっています。
参考)トヨタ「MIRAI」の燃費は?航続距離や充填方法・時間、走行…

クラウンセダンFCEVは約820kmの航続距離を誇り、価格は730万円から830万円と、MIRAIよりも若干リーズナブルな設定となっています。このように燃料電池車は、電気自動車(EV)が充電に数時間を要するのに対し、わずか3分程度の短時間で水素を充填でき、すぐに長距離走行が可能になるという大きな利点があります。
参考)次世代モビリティ−水素自動車(燃料電池車)のメリットと課題 …

エネルギー効率の面でも、燃料電池車はガソリン内燃機関の約2倍の高効率を実現しており、経済的な効果が期待できます。
参考)FCV(燃料電池自動車)のメリットは? 仕組みやEVとの違い…

燃料電池車が普及しない理由とメリット

燃料電池車のメリットは、走行中のCO2排出量がゼロで環境負荷が極めて低く、静音性が高く加速もなめらかで快適な走行性能を実現している点です。また、災害発生時には非常用電源として活用でき、大容量の電力を供給できる点も大きな強みとなっています。
参考)FCV(燃料電池自動車)とは?メリット・安全性からEVとの違…

しかし、普及が進まない主な理由として、車両価格が700万円以上と高額であること、水素ステーションの整備が遅れていること、燃料電池に使用するプラチナなどのレアメタルコストが高いことが挙げられます。特に地方では水素ステーションがほとんど設置されておらず、日常的な利用が困難な状況です。
参考)自動車整備士お役立ち情報

2025年時点での日本国内のFCV普及率は約1.5%にとどまり、販売台数も限定的です。ただし、将来的には2040年までに40万台以上の普及が見込まれており、インフラ整備の進展とともに市場拡大が期待されています。
参考)燃料電池自動車の普及率は?FCV販売台数と将来予測

燃料電池車選びで知っておくべき独自の視点

燃料電池車を選ぶ際には、現在の居住地域だけでなく、将来的な生活圏の移動も考慮する必要があります。水素ステーションは首都圏、中京圏、関西圏、九州圏の四大都市圏とそれらを結ぶ幹線道路沿いに集中しているため、これらの地域間を頻繁に移動するドライバーにとっては利便性が高くなります。​
また、燃料電池車は外部給電機能を備えているため、キャンプやアウトドア活動、災害時の電源確保など、移動式発電機としての活用価値も考慮すべきポイントです。さらに、企業の脱炭素経営やSDGs推進の観点から、法人での導入は企業イメージの向上や環境配慮のアピールにもつながります。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/15/15/11501/pdf?version=1690277951

一方、水素エンジン車はまだ市販化されていませんが、トヨタがモータースポーツでの実証実験を進めており、将来的には燃料電池車よりも手頃な価格で水素を活用できる選択肢として注目されています。既存のガソリン車から水素エンジン車への改造も技術的には可能で、エンジンのフィーリングを楽しみたいドライバーにとって魅力的な選択肢となる可能性があります。
参考)水素自動車とは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説

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